凌辱エロゲ世界でハッピーエンドと復讐を同時に遂げる方法 作:けっぺん
「……どうやら私は、見逃したらしいね。一番見たかったものを」
豪奢な舞台の上に立つオドマオズマを見上げる。
彼の驚愕は、心底からのものだった。
「勇者の覚醒はいつだって見応えがあった。だが、こんな風に一度逃がして、戻ってきたら目覚めていたなんてのは初めてだ」
「……そうだろうね」
クイールより、さらに前の九十八人。
その内何人をあの男が見てきたかは知らない。
だが、こういう経験をした勇者は、きっといないだろう。
「さて。私は期待してもいいのかな。キミが勇者クイールのように、勇者らしい活躍をしてくれることを。或いは、私の目から見て“面白い”何かを仕出かしてくれることを」
「誰かの期待なんて、僕は知らない」
それが手を貸してくれる誰かであろうと、敵である魔族であろうと。
今この瞬間、僕の内から溢れようとする勇気は、リッカのためにある。
体中に満ちた熱さが、勇者の力なのだとしても――彼の言う勇者らしさなんて関係ない。いくらでも捨ててやると、決意したものだ。
そして、面白さなど論外だ。
リッカを絶望させた、オドマオズマの面白さなど、好き好んで応えるものか。
「僕はリッカのために、先に進む」
「――やって見せるがいい。ちなみに、勇者クイールは先に来たからね、迷宮魔法で足止めをさせている。あと一時間は出てこられまい。力を借りるつもりなら、時間を稼ぎたまえ」
親切心……ではないか。
こちらが足掻くための手札を増やしているだけだ。
彼はとことんまで、僕たちの試練を演劇としてしか見ていない。
それでリッカが酷い目に遭ったというのが、腹立たしいけれど。
「……ユーリ、焦ったら駄目。試練はあっちじゃない」
「うん……分かってる。間違えないよ、リッカ」
あんなことを言って、リッカを連れ戻して。
その直後に間違いを犯して失敗するなんてあり得ない。
僕が見据えるべきはオドマオズマではない――外装を軋ませ、今にも動き出さんばかりのナディアだ。
「出来れば、ここからは逃げないでくれたまえよ。そして、その新たな力、存分に見せてくれ――さあ、派手なフィナーレとしようじゃないか!」
オドマオズマが上げていた手を振り下ろした瞬間、ゾンビたちの群れが一斉に動き出す。
足を引き摺らせた、ゆっくりとした動きではない。
体が崩れるのも気にしない。壊れ切る前に爪の先だけでも届かせんとする、勢いに任せた動き。
僕たちに殺到するその群れが、開幕の狼煙だった。
この形態は、リッカが用意したものではない。
“こうなる”という目標も、設計図もなかった。成立したのが奇跡のような状態だ。
詳細は僕もリッカも把握していない。
唯一確かなのは、これは僕たちの力が合わさった結晶であるということ。
この湧き出る熱さも、これまでのどんな姿よりも扱えるようになっている筈……!
「っ、くぁ……!」
技術も何もない。周囲に向けて、その熱さを解き放っただけ。
それが炎として顕現し、死の軍勢を焼き払っていく。
どこまでも届く訳ではないが、あと一歩まで迫っていたゾンビは一気に数を減らした。
リッカの魔法による形態の中で、炎という攻撃手段を有していたものはない。
『リヴィアフューリー』が操る液体のように自在ではなく、相手を捕えることに向いていることもない。
これまでリッカが考案してきた形態に共通して存在していた、敵の妨害によって優位性を確保するコンセプトは存在しない。今の炎は、純粋な攻撃力の発露だった。
「……ほう?」
全身を燃やしながら突っ込んでくる倒し切れなかったゾンビたち。
それらを対処するための武器は、まだ分からない。一人ひとりに攻撃するには、先の炎は負担が大きい。
近接格闘の機会は、少ない訳ではない。そしてこの形態の性能はこれまでのどんな姿より、動きやすく力が溢れるもの。
だが、それゆえに“基本的な技術”が不足していることに気付く。
妨害の手札による補助がない状態で戦う経験の少なさを、性能で補っている状態だ。
「演出は派手だが、立ち回りは落第点。だが……」
――経験など、積んでいけばいい。僕たちの本当の戦いは“これから”なのだ。
手掛かりを引っ張りあげる。相手に近付き、最適な戦闘を行うための、僕にできる立ち回り。
意識がある状態で僕が“させられた”動きの感覚に、可能性を見出す。
「喰らえ勇者ぁぁぁぁ――!」
「ッ!」
「ふぎゃぁっ!?」
動きに溜めを作る。体に一瞬の落ち着きを与えて、次の瞬間に爆発させる。
静から動への転換で相手の不意に飛び込んで、加速した攻撃を叩き込む。
大きく振るった足が、レッドキャップを捉えた。
――ベストな一撃ではない。当たり前だが、見様見真似で扱えるほど甘い技術ではないか。
「……あの動きはアリスアドラの……やれやれ、敵に送る塩にしては質が良いものを」
「おーい……フレア生きてるー? ん? アッシュ行くの? はいはい、がんばりなさいな。……本当に面白いなあ、あの二人」
「 ―――― 」
相手は、ゾンビたちだけではない。
とうとう抑えに限界が訪れ、回転する刃が行く手を阻むゾンビたちを切り拓きながら向かってくる。
「ナディア……!」
「ユーリに、リッカ……! ごめんなさい、もうっ……止められないっ!」
その刃の威力の前では、ゾンビたちは障害にすらならない。
飛び散る肉片の中で刃を躱し、ナディアの懐に踏み込んで腕を掴み、動きを抑え込む。
なおも駆動を続け暴れ回るそれは、きっとこの外装でさえ容易く削り、切り裂くだろう。
「熱ッ……そ、その姿……見違えましたわ。それでわたくしを、助けられるんですの?」
「助ける――助けてみせる!」
「――信じますわよ!」
いつか、旅の中でナディアと手を取り合った“僕たち”がいた。
どんな時も、決して“加害者”とならなかったナディアを、助けられるというならばリッカも迷いはしない。
リッカは既にナディアの魔法の構造を見て取った。
それを通し、そしてナディア自身を通して、感覚的に、焼き切るべき術式が分かる。そこに高い威力を叩き込めば……!
「 ――――! 」
「っ!?」
膠着状態になった僕たちを狙って飛び込んでくるブラックドッグにナディアの腕を――刃を突き刺して、その隙に退避する。
あの獣にとっては、その刃さえ致命傷には至らない。
ただ刃の勢いによって体が削られ、黒い灰が派手に飛び散っていくだけだ。すぐにまた、本来の形を取り戻すだろう。
倒し切る方法は、僕もリッカも見つけられない。二人では見つけられない筈だった。
だというのに――
「 ―――― 」
あの獣は向こう側から、こちらの“つながり”にアクセスしてくる。
表情はない。虚ろから届いた光のような、頼りない輝きの瞳は何を訴えているかは分からない。
ただ、自身を“こうやって”倒せばいいと伝えながら、その牙を向けてくる。
それが出来る機会は、まだ先。
もしもあの獣の向けてくる意思が本当なのであれば、だが。
「……案外対処出来てるな。あのグレムリンが来ればもっと面白いことになったんだが」
炎熱で、手足で、ゾンビを打ち払いながら、一気に力を高められる瞬間を求める。
ナディア、ブラックドッグ、ゾンビの大軍。それから……時々レッドキャップ。
これらを相手にしたまま、ナディアの魔法を破壊できるほどの威力を実現させるには、隙が足りない。
「くっ……!」
「ユーリ……っ」
もっとこの魔法は、可能性を広げられる。
けれど、高まり続ける熱さを完全に操るための感覚が掴めない。
体の中に満ちて、外に零れんばかりのきらめき。
ほんの少し油断すれば存在のすべてを焼いてしまわんほどの力を、クイールはもっと自在に使いこなしていた。
彼女はどうやっている。どうすれば、この力は制御できる。
「――てやぁあああああああ!」
――完全な勇者が帰還したのは、その時だった。
聖剣が放った閃光が彼女を隔離していた魔法を力尽くで粉砕し、飛び散った破片の中心に黄金が現れる。
「は? いや……流石に早くないか?」
「戻ってきたら全部終わってた、なんて情けないじゃないですか! そりゃあ全力で戻ってきますよ!」
大幅にオドマオズマの想定を超える形で戻ってきたクイール。
そうだ――彼女のように、陰ることのない輝きは操ることが出来るものだ。
「――クイール!」
「ユーリくん! ……って、なんですその姿!? それにその雰囲気……勇者! すっごい勇者です!」
「“すっごい勇者”かどうかは置いといて……この力、どうやって制御するの!? どうやったらキミみたいに、使いこなせる!?」
オドマオズマの隣でぴょんぴょんと飛び跳ねて盛り上がる“先輩”。
そうやっている間にも、クイール自身があの力の扱いに苦慮している様子はない。
答えを求めれば、クイールはぐっと握りこぶしを作りながら、返してきた。
「制御するんじゃなくて、受け入れるんです! ユーリくんは、ユーリくんらしくあるだけでいい! その勇気は意識しなくても、絶対ユーリくんの背中を押してくれるものですから!」
制御の必要はない――制御すべき力ではない。
そう知ることで、不思議なほどあっさりと、腑に落ちた。
この力は、使いこなそうと意識するものではない。元より、僕を後押しするため“だけ”のものなのだ。
「僕らしく……!」
それを徹底するだけで良いのであれば、簡単な話。
リッカを支えて、リッカと共に歩く僕の在り方を想うだけ。
これは僕の意思とは別の力ではない。ひたすらに自分を強く持つことが、この力の本質。
目指す場所を力に変える。この焼けるほどの熱さを、先に進むために受け入れる。これは決して、僕自身を焼く炎ではないのだから――!
「――――!」
「飛んだ……!?」
その時にやるべきだ、やらなければと判断したならば、突き進めばいい。
内から――そしてリッカの“いつか”から供給される力は、辿り着いた限界をも超えて、僕たちに可能性を作ってくれる。
跳び上がった体が落ちていくことはない。背中から放出される炎の如き翼が、宙に浮いた体を支えてくれている。
空はゾンビも、ナディアの外装も辿り着けない場所。
ブラックドッグ、レッドキャップ、リャナンシー――妖精たちも見上げるそこは、求めた一撃を実現させるための、絶好の空間。
「いくよ、リッカ!」
「うん……!」
『ファイナライズ! アクセプション!』
湧き上がる炎が性質を転換させる。
クイールと同じ色……それでいて、また違う方向性を持った輝きが、体中に力を滾らせていく。
これら全て、その一撃のために。この一撃を、最高の威力に変える。
「あれは……!?」
その瞬間に抱いたイメージが、最適な攻撃を形成していく。
灼熱と勇気を一条の矢へ。
立ち塞がるならばどんな障害であっても打ち砕き、切り拓く――ハッピーエンドに至るための決意を力に変えて、足先の一点へ。
真紅と黄金を束ねた流星の如く、
『ユーリ・エクストライク――ッ!』
その威力を待っていたとばかりに、飛び込んでくる灰の獣。
「 ――――! 」
黒い体を蹴り抜けて、その全身を焼き切った。
なおも燃え尽きない灰の中を潜り抜け、ナディアへと突き進む。
「ッ……!」
『――FINALIZE――』
オドマオズマの仕業だろう。
暴れ狂う刃は僕たちを迎え撃たんと、その回転を嵐の如く強めていく。
……負ける訳にはいかない。僕たちが破壊するのは、その嵐のさらに先。
破壊の暴風は、立ちはだかる最後の壁だ。
『――Y-EXTINCTION――』
吹き荒れる風の刃を粉砕していく。
限界以上に強化された力が嵐の影響を極限まで抑え、貫いていく。
「いっけえええええええええええええ――――!」
バキリ、という硬い音と共に、風が散り散りになり刃の群れは結束を失い辺りにばら撒かれた。
そして武器の無くなった外装の中心へとその蹴りが突き刺さる。
緻密な術式の、焼き払うべき一ヶ所に続く道に威力を集中させる。
破壊すべきはその存在を“敵”たらしめている、外装の不死を実現させる根底の術式。
そしてそれさえ焼き切れば、あとは余剰の威力で外装そのものは吹き飛ばせる。
残る威力を最後に蹴り出して、砕け散る外装の中からナディアが飛び出す。
「づ、っ……!」
「っとと……ナイスキャッチ、僕」
投げ出されたその体を、クイールが抱き留めた。
外装が復活する兆しはない。彼女が解放された確信を掴み、着地する。
ナディアの状態を問わないというならば、これで文句は言わせない。
――僕たちの、勝ちだ。
『U-リッカ ユーリフューリー』
【属性】火/勇気
【攻撃力】■■■■■■■
【防御力】■■■■■■■
【素早さ】■■■■■■
【魔 力】■■■■■
【精神力】■■■■■■■■
【
全身を包む真紅のスーツ。
イマジナリマテリアルコーティングを構成する物質にユーリの勇気が含まれたことで飛躍的に性能が向上している。
各種状態異常への耐性も強化されたほか、あらゆる極限環境における生命活動の維持を可能とする。
【ブレイジングブレイブリィブラッド】
スーツの内部に流れる超強化エネルギー。
全身を循環することによる強化効果は装着者から滾る勇気とリンクし、魔法の効果を打ち消す類の特殊攻撃の影響を受けない。
被ダメージに対応する回復効果は本エネルギーに付与された魔法ではなく装着者の勇気が変換されるようになっており、瞬間的な大ダメージさえ受けなければ、諦めない限りの戦闘状態維持が可能となっている。
エネルギーの色は真紅だが、装着者の勇気の高まりにより黄金へと変わりスーツの外へと零れ出す。
【イマジナリサモンユニット】
これまで構築されたU-リッカの各形態における専用機能を追加出力する戦闘補助ユニット。
全身に出力することは不可能なため、同等のスペックは発揮できないが、複数の形態の機能を同時に出力できる。
これにより、複数の形態の強みを合わせ、より発展させた戦法を取ることが可能。
【
ユーリが有する勇者としての能力の神髄によって解放された同調接続機能。
他者とのつながりを補強し、つながった誰かの在り方を受け止める感受性を保護する。
戦う相手の性質や弱点の把握から、共闘の際の連携、さらには可能性の拡張まで幅広く働く。
【
戦闘に求められる強大な出力を実現させる出力装置兼演算装置。
リッカが経験した繰り返しをユーリが理解し、受け入れたことで『U-リンク』が本来の出力機能を拡張。
何百重にも並行増設された術式の同時運用により、ユーリフューリーは容易に限界を突破する。
これにより過剰エネルギーの制御を行い、魔力の翼を展開することによる飛行をも可能とする。
【アッシュレイヤー】
詳細不明。
『D-RIKKA Yデッドリー』
【属性】水/死
【攻撃力】■■■■■
【防御力】■
【素早さ】■■■
【魔 力】■■■■■
【精神力】■
【プロトゼットコーティング-Y】
D-RIKKAの各部に装着される暗い青染めの装甲。
魔法による運動補助が掛かっており、重量ながらそれを感じさせない素早い行動が可能。
【リビングデッドクローズ】
D-RIKKAの全身を覆う包帯の如きボディスーツ。
死者が死者として活動するための特殊な祈りを何層にも重ねて構築されている。
即死攻撃をはじめとした割合ダメージや毒、腐食、麻痺などの状態異常を無効化する。
ただしこのスーツそのものに装着者の防御力を上げる効果は一切なく、単純な物理ダメージや教会に施された聖なる力には滅法弱い。
【カーシングエンチャントブースター】
D-RIKKAの背部に装着された大型出力装置。
戦闘開始と同時に起動し、全身の呪いを時間進行と共に強化していく。
最終的に全能力がおよそ二倍にまで上昇し、特に『ネシュアマキナ-Y』が齎す攻撃力は上位魔族さえ上回るほどになる。
【ネシュアマキナ-Y】
D-RIKKAの右腕に装備された大型近接武器。
術式を起動することで魔力で構築された刃が駆動し、回転によって切断力を大幅に向上させる。
【追想機関イエスタデー】
ネシュアの秘奥たる二つの術式のうちの一つ。“万全たる昨日”。
魔力が万全となった状態を連続的に再生することで実現される半永久機関。
本術式に接続された修復魔法は通常の手段とは比較にならない速度で外装の破損を補填する。
これを的確に破壊しない限り、D-RIKKAそのものを破壊することは不可能だろう。
『アッシュ』
【属性】風/火/水/土/冥界
【攻撃力】■■■■
【防御力】■■■■■■
【素早さ】■■■■
【魔 力】■
【精神力】■
【種族】ブラックドッグ種
墓地をはじめとした死の気配の多い場所に発生し、死を求めて彷徨うブラックドッグは広義の上では自然現象であり、妖精の一種である。
それを否定する者が多いのは、かれらが醜い獣の姿を持ち、死を喰らって糧とする生き物であるからだ。
ブラックドッグはれっきとした生き物であるにもかかわらず、死の属性を有する。
ただの死体からアンデッドに至るまで、あらゆる死に襲い掛かり、捕食することで死の濃度を高めていくという。
凶暴な個体は生者にも積極的に襲い掛かる。標的を殺めれば食糧が増えることを学んだブラックドッグはきわめて危険と言えるだろう。
このような生態を持つ理由は定かではない。
ブラックドッグはとある種族の幼獣であり、多くの死を凌駕し、死の天敵たる属性を得た個体のみが成獣になれると唱える者もいる。
【『残灰』アッシュ】
奇妙な性質を持つこのブラックドッグがいつからネシュア国跡に出没するようになったかは定かではない。
特段生物らしい意識を持っている様子はなく、ブラックドッグとしての機能を遂行するように遭遇したアンデッドを喰らう本個体は、同種の中でも強い力を有し、相当量の死を喰らってきたことが窺える。
それを証明するように複数の属性を宿しているうえ、きわめて特異な冥界の力の一端にも通じているようだ。
体は灰のような性質を持っているらしく、攻撃を受けた部位は飛び散って敵の視界を遮り、再生させながら不意打ちを行うことを得意とする。
この灰を操る能力が、本個体に突然変異的に表れた特殊な能力なのか、何かを喰らって得た能力なのかは不明。
妖精たちが寄り集まって結成した
特段ブラックドッグが他の妖精と協調する生態は確認されていない。とことんまで、同種の例外と言えよう。
【シェリーの評価】
「それが、キミの目的だったんだ。願いが叶って、良かったね」
【ユーリの評価】
「突き抜ける時……不思議な感覚があった。暗くて、冷たいけど……強い感情が、飛び込んできたような」