ほらいぞん 仮   作:ろいやるみるくてぃー

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拾、

 

音を聞いた。

 

新名古屋城からほど近い道路上で、確かに式は音を聞いた。

 

先の戦闘ですっかり聞き慣れてしまった音だ。腹に響く、落ちる音。爆砕術式よりも更に重く響く、爆発の音だ。それは理解した。それを聞いて今思うのは、

 

……祭の始まりの合図?

 

何時もなら、そうと受け取れなくもない考えを、しかし式はすぐに打ち消した。

 

確信の材料。それは、

 

……音の出所が……。

 

式が向いたのは、新名古屋城と反対の方角。そちらは北側にあるのは各務原(カガミハラ)の山渓だ。

 

しかし、夜の今、あるのはただ漆黒の、底無い空間だった。

 

黒い。何がどこにあるかどうかも解らない。ただただ重く湿ったような、先の見通せない霧を黒くしたような闇がある。

 

だが、不意に闇が壊れた。暗がりの中に、照らす光が生まれたのだ。

 

発火の光。

 

炎だ。各務原の山、峰の上に、焔(ホムラ)の形が一つ生まれた。

 

『あれは……』

 

言うと同時に、遠雷に似た音が聞こえてきた。

 

爆発だ。

 

二度目のそれに、出所を確信する。

 

『あのあたり……。三河を監視する聖連の番屋の内、一番高いところのがある筈だよな』

 

確か今期は、三征西班牙の生徒が詰めていた筈だ。

 

……火災とかの事故か?いや、あんな派手な音してんだ、下の番屋が気づかねえ訳がねえ。

 

そこまで思考し、ようやく、

 

……何故、爆発が起きるんだ?

 

『何故……』

 

口にした言葉が先を紡ぐ前に、三つの音が響き出す。

 

一つは、上空を西から東へと、聖連の航空型武神が制空権確保のために飛翔して行く音。

 

もう一つは、西の陸港から聖連の警護艦が浮上し、各務原の火災の方へと向かう音。

 

そして最後の一つは、

 

『何だ、……この音』

 

最後の音は、空から響いていなかった。

 

微かな音、しかし厚みのある染み通るような音が生まれているのは、

 

『地面、いや違う、……もっと底から来てねえか?これ』

 

式は、地の底から届くそれが何であるか、予測をつけることすら出来ない。

 

やがて、音がゆっくりと来た。お、とも、ど、とも聞こえる音。それが、地面を震わせるのではなく、地殻と、その上の大地と空気を共に揺らすようにして、浮き上がり、

 

「――――」

 

長い長い、鼓動を打った。

 

脈だ。

 

血管を押さえたときに指に感じる圧の定期を、長く、数十秒に延ばしたもの。

 

大地が鼓動した。

 

……これは――。

 

聞いたことがある。酒井が、数少ない親子間の話題として持ち出した、松平の四天王として浮かれていたという時期の話だ。

 

「地脈、っていってね」

 

地脈。矛盾許容型の空間構成要素である流体の流れる経路の内、特に太いものをそう呼ぶという。

 

「俺達が現役時代に旧那古野城を造るときは、地脈から流体を分解する地脈炉が出来悪くてさ、何度も暴走しそうになって、こう……、脈みたいな音を、空間にたててたんだよ」

 

憶えている。十年前、三河に新名古屋城が作られると聞いたとき、酒井が懐かしそうに勝手に話し始めたのだ。逃げる式を大人気なく無理矢理捕まえて。

 

「新しくなったってんなら、あの音も、もうしなくなったんかねえ」

 

地脈炉は、Tsirhc(ツァーク)教譜国では廃止されていたが、三河はその範疇に含まれず、まだ稼働していた。ゆえにTsirhc教譜国からの依頼で武装や航空船舶の製作を受注していた三河は、旧式となった地脈炉を何とか持たせて業務をこなしていたという。

 

地脈炉は、地脈から流体を分解し、流体燃料を精製する設備だ。運用には莫大な費用を掛ける一方で、それ以上の流体燃料を獲得出来る。が、それは地脈を吸い上げることで、周囲の地脈を細くし、不安定にするものだ。

 

ゆえに、地脈炉の不安定を示す地脈の鼓動音の表出は、妖物や怪異を呼ぶものとして恐れられていた。しかし、

 

「その音がする中、俺達、平気でメシ食ったりヤニ吹かしてたからね?ほら俺、現役は“大総長(グランヘッド)”とまで呼ばれてたからさあ」

 

『途中で自慢話にすり変わってんぞクソジジイ』

 

あの時は確か、引き取られたばかりというのもあった上、反抗期だったせいか、よく酒井に突っかかっていた。あの頃こそ簡単に返り討ちに合っていたが、今やり合ったらどうなるだろう。今度言ってみようか。あ、でも十年ブランクがあるんだっけ。勝てる自信しか無えや。

 

思い出に浸かる式の頭上、鼓動の空を轟音が抜けていく。

 

聖連の武神。十字型四枚翼の機体だ。元々は武蔵の監視としてついてきたものだが、番屋の火災を見た聖連によって緊急発進したのだろう。

 

三河上空を、三機がそれぞれ時計回りに行き、制空権の維持に努める。

 

何かがあれば、三河を監視し、教皇の“警護”に乗り込んできた三征西班牙が責任を追及されることになる。今、空を行く武神も、たかが番屋の制圧に航空艦が出るのも、三征西班牙の示威と焦りの表れだろう。

 

だが、聖連勢の中で、まだこの鼓動に気づいている者はいないだろう。

 

出場を始めた三征西班牙は山岳側の陽動に釣られた状態で、真の危険が地上側、新名古屋城の地脈炉にあると解っていない筈だ。だから、

 

……上の武神も、対地ではなく対空装備で上がってる。向こうの艦も、番屋の鎮圧用に山岳装備の歩兵ばかりってことだよな。

 

つまり、三河市街に乗り込むには不向きな装備だ。最悪出直し、もしくは、やや不利な状態で三河に乗り込むことになる。

 

『……しょうがねえ。何が起きてんのかは全然解らねえが、地脈炉が問題起こしてんなら、新名古屋城に行くしかねえよな』

 

そう一人ごち、早速実行しようとして、

 

……待て。

 

違和感を感じた。

 

三征西班牙が対地装備で来ないことは見れば解る。空からは、番屋が燃えていることくらいしか異常の把握が出来ないからだ。

 

だが、もしそれが、地脈の異常の発見を遅らせるための手段だとしたら?

 

通常なら考えもしない妄想だが、改修されて十年も稼働してきた新名古屋城が、今になっていきなり異常をきたすことなど考えにくい。

 

だが、

 

……誰かが、意図的にそうしたとしたら?

 

浮かんだのは、タチの悪い冗談のような発想。

 

『おいおい、嘘だろ……?んな馬鹿げたこと誰が――』

 

言葉がそこで止まった。

 

……揺れが……。

 

鼓動が、震えに変わったのだ。

 

同時。それはまるで、空が支えを失ったかのように、何もかもが一度下に押され、

 

「……!?」

 

直後。三河が割れた。

 

地脈炉の暴走が地殻と空間を走る地脈に干渉し、血管が破裂するように空間が弾けたのだ。

 

音が砕け、大気が落ち、大地がもげて、

 

「――!?」

 

崩壊が始まる。

 

 

武蔵の右舷二番艦、多摩の艦首側では、騒ぎの前段階としてのざわめきが起きていた。

 

人々の声を生む原因は、東側の山で起きている火災と、

 

「三河が……」

 

こちらからは山によって見えぬ三河のある方角、山陰の向こうの空が、地面から空に向かって光を放っている。それも、鼓動に似た音と、響きをつけて、だ。

 

空気が揺れていた。風ではなく、来ては戻る揺れだ。一定の圧を持った空気の揺れが、三河の方からこちらに届いている。

 

花火という噂に従って、人々は表層の甲板上に多く群れていた。至る所で屋台が出て、照明もついている。が、それでもまだ薄暗い中、人々は火災と三河の光を見ていた。

 

そんな中、学生服姿の正純がいた。正純は、三河の方を見つつ、

 

「これは……」

 

式と酒井学長は戻ってきているのだろうかと、そう思ったときだ。

 

「――正純様」

 

背後から掛けられた女性の声に、正純は振り返った。視線の先に捉えるのは白の髪の自動人形、P-01sだ。彼女は小脇に分厚い本を抱え、足の裏に黒藻の獣を隠し、

 

「花火というものがよく解らなかったので、始まるまでにと正純様から借りた本を読んでおりましたところ、遂に完読いたしました。率直に申しまして、P-01s、よくやりました」

 

行き交うざわめきの中、静かな声を正純は聞いた。が、P-01sの台詞はそこで止まった。

 

会話の断ち切りに正純は戸惑うが、ややあってから原因に気づく。

 

「あ、ああ、よくやったな。それを読み切るなんて」

 

「Jud.、お褒めに預かり光栄です。この本ですが、政治家、指導者などの位置にいる人々の反応パターンとして、なかなか勉強になりました。偉い人間ほど唐突に悶死したり溢死(イツシ)したり憤死したりするようですが、昨今の流行は引責としてのハラキリのようですね」

 

一体何に興味を持って読んでいたんだろうか、と正純は思うが、触れないでおいた。

 

……人間の行動パターンを知りたいと思うのは、やはり、アレかな。

 

P-01sが働いている店の女店主によると、彼女は去年、三河から武蔵に乗り込んだらしい。

 

らしい、というのも、どうやら、彼女には去年以前の記憶が無いようなのだ。

 

……気づいたら多摩の通りにいた、とか言っていたか。

 

市民登録は誰かによってなされていたという。携帯していた市民証は本物で、本籍は武蔵となっていたというが、本籍地に案内されてみれば、そこは道路となっていた。

 

不明な点が多かったが、市民証が本物であるということと、最初に声を掛けたという軽食屋の店長が保護者になることで生活が赦され、今に至る。

 

しかし、依然として、P-01sの出自は解っていない。ほとんど実権の無いものではあるが、副会長権限を使って色々調べてみたりもしたが、該当製品がない。自動人形の紛失届や捜索願も出ておらず、結局何も解らなかった。

 

そんな、自分の出自が解らない自動人形としては、己が何かを考えたいのだろうか。そのための手本として、人々の判断を本から見ているのではないかと、正純はそう思う。

 

今、P-01sは、またどこから出てきたのか、闇によって目立たない黒藻の獣を数匹連れ、

 

《がんばったよくやったの》

 

などと言ってる黒藻の獣に対してしゃがみ込み、軽く握った拳を見せている。

 

「Jud.、ことわざにもいいます。継続は力なり。如何なる困難もクリア出来ます」

 

そんなにこの本読みにくかったかよー、と思うが、とりあえず判断が付くことが一つある。

 

……今、空に上がっている光は、花火ではないな。

 

何かが起きている。ここでは見物が出来るかもしれないが、いずれ身動きがとれなくなるだろう。何しろ今も人が下階から上がってきて、人の密度が増えている。だから、

 

「私はここから動こうと思うが、P-01sはどうする?」

 

「花火は無いのですか?」

 

「おそらく」

 

《ざんねんむねん》

 

Jud.、とP-01sは足下に頷いた。わずか上を見て、思考の時間を過ごしてから、

 

「どちらへ?」

 

《どちら?》

 

何か段々私も黒藻の獣の話し相手になっていないだろうか、と正純は思うが、

 

「とりあえずここから離れよう。……青雷亭(ブルーサンダー)に神肖筐体(モニタ)があったよな。店主がいるかどうかは解らないが、いるなら、そちらの方がいろいろ解ると思う」

 

Jud.、と頷いたP-01sの背を一度押し、正純は歩き出した。わずかに足は急ぐが、自動人形はマイペースだ。だからわずかに身を前に出して、まだ隙間の残っている人々の間を先に抜け、P-01sに道を造っていく。すると黒藻の獣が、

 

《おさき》

 

と近くの側溝に身を隠し、P-01sが手を振ってそれを見届けた。

 

今、正純の心の中には、焦りにも似た疑念がある。それは、

 

……これは、新名古屋城の地脈炉が暴走しているのではないだろうな……?

 

数は、基本型が四基に統括型が一基。それらが暴走によって地脈を巻き込み暴走すれば、

 

……以前露西亜で起きた炉心爆発は、たった一基で十数キロ圏内を消滅させた。

 

露西亜での暴走の真相は不明だ。何しろ証拠も何も全てが消えたのだから。

 

だが、その爆発が基となって、地脈炉をTsirhc(ツアーク)教譜国では持たなくなっている。

 

三河がそれを持つことを許されたのは、Tsirhc教譜国にとっては禁忌の力を三河で借りることによって、その出力による流体加工品の大量生産を得るという恩恵があったからだ。

 

現在の地脈炉は出力も強化されており、地脈への影響範囲も大きい。

 

それが幾つも暴走したら、と、その思考を正純は口には出さず、しかしこう言った。

 

「……急ごう、事実が確認出来る場所へ」

 

と、言ったときだった。いきなり、背後から光が来た。

 

「!?」

 

おお、という人々の驚きの声に浅く振り返れば、三河の大地側が光を強くしていた。まるで月の光にも見える、しかし明らかな発光現象だ。

 

「あれが、花火ですか?」

 

違う、という言葉は出なかった。

 

音が来たのだ。大気の全てが口を持ったかのように、宙の全てが叫んだ音。

 

次の瞬間、三河の裂ける轟音が、一息にありとあらゆるものを震動させた。

 

 

夜の中で、三河が散り散りに裂け始めた。

 

裂けていないのは一ヵ所だけ。三河の中心にある黒の四角、新名古屋城だ。

 

そして光は、城の三ヵ所から外へと広がった。城を中心に、三河の地表の至る所が、直径数十キロに渡る範囲で張り裂けて光を生んでいく。それもまるで毛細血管が浮き上がったかのように、脈打ちを露わにしていく動きだ。

 

莫大な量の光が一瞬で地表を走り、宙に跳ね上がっては空に光条の森と霧を生んだ。

 

地表側、街道を走り回って状況確認を急ぐ式は、眼前で、三河上空までを半球状に満たす光霧や、林立して鼓動に揺れる光条を見た。

 

式が向かう先は、一連の元凶がいるであろう新名古屋城だ。

 

新名古屋城までの距離は、見積もっても三キロ程度。だが、光の群に迂闊に近づけず、その場に踏みとどまる状況が続く。

 

……イライラすんなあ、これ!

 

正体が解らないことには、対策も練りようが無い。どうしたものかと思っていると、スイカが出てきた。

 

《オイ。お前今、大変なことになってんぞ》

 

『ああ!?こんなときになんだよ!構ってほしいのか!?』

 

《ちげーよ気持ち悪い!

 

――お前、いつの間にか内燃拝気が六も減ってんぞ!》

 

式の足が止まった。

 

その瞬間、光の一部が身体に触れ、

 

《あ、また減った》

 

スピードを上げて走り出した。

 

『ストップ、ストップ!何だこれ!光に触れたら拝気喪失!?どういうことだ!返せ俺の数十分!』

 

《オレが知るかあ――!》

 

拝気とは、流体を仕込める媒体術式と違い、口頭術式を使うときに消費される流体燃料の単位のことだ。

 

拝気は内燃拝気と外燃拝気に分かれ、内燃は瞑想などで自分の内側に溜め込むものだが、外燃は神社や教会で献身活動を行い、その教譜の共有流体槽に貯蓄し、必要とあらば引き落として使用するものだ。

 

拝気を一単位溜めるのには、数時間を要する。また、それを外燃拝気として教譜の共有流体槽に納めれば、その拝気を他者も使用出来るため、拝気の金銭取引も可能だ。

 

ゆえに内燃拝気を使用して術式を行うことは、拝気の蓄積に数時間掛けた苦労と、外燃拝気による金銭取引機会を失うことを意味する。

 

また、式が酒を奉納するように、自身の奉じる教譜の在り方を体現し、神の喜ぶことを供物として奉納する代演奉納を行うことで、拝気の代わりにする方法もある。

 

一番手っ取り早く獲得出来るのは外燃拝気だと言われる中、献身活動など、浅間辺りにバイトで頼まれない限りはやろうともしない式の外燃総拝気量は、ほとんどゼロに等しい。

 

逆に、酒を飲んだりその辺で喧嘩するだけでみるみる貯まっていく内燃総拝気量は、約七十を誇る。同世代どころか大の大人から見ても群を抜く、驚異的に異常な量だ。

 

たまのバイトで外燃拝気が溜まろうものなら、皆がこぞって買いに来るほどだ。

 

そして、その拝気が今、

 

……光のせいで喪失した……?

 

結局、原因は解らない。とにかく用心だけは怠るまい、と走る速度を上げようとしたとき、上から音が降ってきた。

 

見ると、上空、夜の空を三征西班牙の武神三機が飛んでおり、

 

『!』

 

三河の空に昇る光群に触れるなり、失速した。

 

武神は、人工の関節や駆動系によって動く巨大な鎧武者だ。有人で、搭乗の際には搭乗者を情報に分解し、機体の神経系や駆動管理系に流し込むことで起動する。そうすることによって搭乗者は機械の身体を己のものとして扱うことが可能になるのだ。

 

だが、がくりと行動を落とした三機は、慌てて装甲服を翻して姿勢制御を行っており、

 

『予期せぬ失速……、出力を喰われたのか!?』

 

慌てて翼で風を打って体勢を立て直した三機を目で追いながら、

 

『こいつ……、新名古屋城の地脈炉が吸ってんのは、地脈の流体か!』

 

《だとすると、この光、地脈炉から出てるんじゃなくて、地脈炉に吸われて、そっちに向かって収束してるんじゃ……!》

 

『おいおいそれって……、地脈炉暴走による崩壊の典型的パターンじゃねえか……!』

 

今、三河周辺の地脈を走る流体が、新名古屋城へと流れ込んでいる。ゆえに集まった地脈が光り、膨張して大地などを裂く。広がっていく光をなんとか避けながら、

 

『マジで近づけねえ……!……チッ、ここが戦場になるってんなら、どこかで鹿角さんや忠勝さんが武神を迎撃する筈だ!――捜すぞ!今の状況について、色々聞かなきゃならねえ!』

 

光から背を向け、再び三河の市街地へ向けて走り出した。

 

 

やがて、ようやくこの状況を異常と見なした三征西班牙が動きを見せた。

 

三河西側、水路沿いの安定した地表上空に、三征西班牙の警護二艦が接近した。

 

だが次の瞬間、先行する一艦が左舷に砲撃を受け、轟沈した。

 

船殻を貫通する砲撃を行ったのは、三河の自動人形だろうか。ここからでは、それらしき影は見当たらない。

 

そして数分の後、武装を確保した武神二機が西の空から急行した。二機には後続艦が続き、それは、地表側で何かと激突した。式はそれを、消去法で三河の自動人形と推測する。

 

動き出す。

 

地脈炉の暴走による三河の崩壊と、それを止めようとする三征西班牙側、そして三征西班牙側を阻止する三河自動人形達との戦闘が始まった。

 

それを見ながら、式は、恐らく三征西班牙側も抱いているであろう一つの疑問を口にする。それは、

 

『全く、何でだよ……?』

 

叫びを持って、

 

『三河が消滅するかもしれない地脈炉の暴走を、……何故、行う!?』

 

音が来たのだ。大気の全てが口を持ったかのように、宙の全てが叫んだ音。

 

次の瞬間、三河の裂ける轟音が、一息にありとあらゆるものを震動させた。

 

 

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