それ以上でもそれ以下でもないですはい。
ある、からりと晴れた日のこと。
外の青空に反して、なにやら物々しい様子の空き教室。
そこには二人のウマ娘が机を挟む形で向き合い、座っていた。
「…では、ジャスタウェイさん。本当にいいんですね?」
念を押すようにそう問いかけるのはアグネスデジタル。
トレセン学園が誇る『勇者』として知られる。
そしてもう一方は……。
「何をおっしゃいますか。水くさいですよ。同士の危機に駆けつけずして何が芦毛スキーですか」
フッ…と格好をつけてそう言うジャスタウェイ。
普段からこうならば女帝は頭を抱えていないだろうというのはまったくもって余談である。
「そして…これぞ我が力作…」
脇に置かれたカバンをゴソゴソとして、取り出したるは分厚い封筒。
それを愛おしげにひと撫でして、机の上に置く。
「『アシゲノセカイ(もちろん全年齢対象)』、しめて五十ページです!!」
渾身のドヤ顔を決めるジャスタウェイ。
「うっひょ〜〜!!ありがとうございます!!ありがとうございます!!これで体調不良で抜けてしまわれた作家さんの穴は補填出来そうです〜!!」
嬉々として、宝物を扱うが如くゆっくりとそれを手に取るデジタル。
「いやぁ〜、助かりましたけど…少し意外ですねぇ…」
「?何がですか?」
小首をかしげるジャスタウェイに、アグネスデジタルはおずおずと言った様子で答える。
「いえ、普段こういったものは読み専だと伺っていたので…」
そもそもこの相談自体、書けそうな人材を求めてのことだったのを珍しく、(というかはじめて)ジャスタウェイが自分で書く、と言うので任せたのだ。
「…ああ、そのことですか。いえね、わたしも前々から興味はありまして…」
「そうなんですか〜…それじゃあ、これも全部独学で?」
封筒の中身を確認しつつ、デジタルが質問を投げかけるとジャスタウェイは頷く。
なお、ぺらりぺらりとページを捲る際、度々昇天しそうになっているものの、ジャスタウェイに迷惑をかけまいと気合いで耐えている様子だ。
「フフッ…芦毛ちゃん達のため、わたしにできることはただ、この身を粉にすることくらいですので…」
手を顔にかざし、変なポーズ(ジョセ○風ジ○ジョ立ち)をとりつつそんなことを言うジャスタウェイ。
若干テンションがおかしいが、恐らくはいわゆる徹夜ハイというやつだろう。
「そうですか…それでは、完売目指して頑張りましょう!!」
「ええ、お手伝いしますよ」
早速デジタルの父が経営する印刷所に持って行き、許諾をもらうことに成功。
とは言え、少なくない額が飛んでいったが。
イベントの準備等夜を徹しての作業は、しかし楽しさの方が勝った。
時折、ふとした推しウマ娘ちゃんの話題で盛り上がり作業の手が止まってしまうこともしばしばあったのはご愛嬌。
しかし、苦労の甲斐あってかそのイベント当日、新たなる芦毛スキーが少なくない人数生まれたのは言うまでもなかった。
そして、イベントからホクホク顔で帰ったジャスタウェイは、案の定寮の相部屋でゴルシに絡まれ、尋問を受けたそうな。
同人イベント、楽しそうだし参加してみたくなったり、やっぱり気が引けたり…。