トレセン学園中庭にて、ひとりのウマ娘がベンチにダウンしていた。
「ど、どうしましたの?ゴールドシップさん?」
驚いたように…というか、驚いてそのウマ娘…ゴルシに声をかけるのはメジロマックイーン。
ジャスタウェイがいない時は大抵ゴルシに絡まれるある意味可哀想なお嬢様だ。
「…あぁん?」
ガラの悪い口調に反し、当のゴルシはかなり気落ちしている様子だ。
「…どうしたんですの?」
それに何か思うところがあったのか、普段の警戒する風とは正反対に心配そうに声をかける。メジロマックイーン。
「なんだ。マックイーンかよ」
「なんだとはなんですの!?」
「まぁいいや!!遊ぼうぜぇ〜!!」
「いや、あの…わたくし、これから外出予定…」
「レッツゴー♪」
「聞いてますの〜!?」
…ゴルシ節は意外といつも通りだった。
小鳥の声と、日差しの差し込む森の川。
そこには釣り糸を垂らして、いつに無く真剣な表情を浮かべるジャスタウェイの姿があった。
「……シップには、悪いことをしたでしょうか?いえ、しかしこればっかりは如何なシップとて譲れません」
本来、盟友といっしょに遊ぶ予定だったのを断ってまでここにいるのにはわけがあった。
それと言うのも、ジャスタウェイはとある魚を釣るために最適の日を数ヶ月かけて模索し、その条件に当てはまる天気、気温、水温全てを満たす日は今日、この日をおいて他に無かったのだ。
理事長やトレーナーに頼めば取り寄せてはくれるだろうがそれではダメだ。
欲しいものは自分の力で手にしなければどこかで甘えが出てしまう。
だからこそ、このためだけにわざわざ地元の漁協の許可を得て、東北にまで出張って来たのだ。
それに…と、ぼーっと空を見上げる。
少し曇りがちな、釣りにうってつけの天気。
ジャスタウェイはこの空が嫌いでは無かった。
「久々にひとりの時間を過ごすのもまぁ…悪くはないので」
賑やかな盟友のことを思い浮かべると、思わず笑みがこぼれてしまうが、しかし彼女は釣り人というより漁師の気質だ。
いっしょに…と誘おうものならば、せっかくの獲物が逃げてしまいかねない。
「ふふふ…早く来てくださいね」
その鮮やかな色の鱗、見事な赤い身は思い出すだけでも食欲を掻き立てられる。
天然物ゆえに脂は少ないが、その分味がしっかりと伝わる。
逆に養殖物は脂こそ多いものの本来の味がぼやけてしまう。
故に、舌の肥えたジャスタウェイは養殖物では決して満たされない。
「シップと鮭を食べるのです…」
シンプルな塩焼きをはじめ、ムニエル、ホイル焼き、フライ…スモークなどなど、鮭はどんな食べ方でも美味しいのだ。
その日の夜、ホクホク顔で学園に帰還したジャスタウェイが、寮の入り口でゴルシにドロップキックされそうになったのは余談である。
ウインディちゃんも、はよ実装されて…どうぞ。
なお、鮭の旬は九月ごろらしいでふ。