ここはいつものトレセン学園。
しかし、いつもとは違う珍しい光景が広がっていた。
「も〜、シップ〜そんなに拗ねないで下さいよ〜…」
「………」
なんと、ゴルシことゴールドシップがガチ凹みしていたのだ。
時は一時間ほど前に遡る。
廊下を歩いていると、ジャスタウェイは通りがかった無二の盟友から提案を受けていた。
「ジャス〜、並走しようぜ〜♪」
「おやシップ。べつに構いませんが…」
で、お喋りしつつ二人で着替えも済ませターフへ。
「そんじゃあ、準備はいいかい?」
そう言うのは審判兼目印として呼ばれた美浦寮の寮長、ヒシアマゾン。
ルールはターフを駆けて、再び彼女の前を通った方が勝者だ。
両者頷き、数秒の間が開く。
「位置について〜…」
ぐっ…と脚に力をこめて、スタートダッシュに備える両者。
「よ〜い…ドン!!」
「よっしゃああああ!!」
ヒシアマゾンが手にした旗を上げると同時に勢いよく走り出したのはゴールドシップ。
「おやシップ。珍しく飛ばしますねぇ」
「ちなみに負けた方は勝った方の一日言いなりだかんなぁ〜!!」
後出しで追加ルールを投下するゴルシ。
「道理でやる気があるわけですねぇ…」
驚きはしたものの、そこは流石ゴルシの盟友。慌てない。
ゴルシはスタミナこそ並外れてはいるが、勢いに任せて逃げ気味に走っている。
中距離そこそこのこの距離で、脚質に合わない走りは却って己の首を絞める。
奇行こそ目立つものの、普段の賢いゴルシらしからぬミスといえよう。
勝利を焦ったのか、それとも盟友との一日遊ぶ…もとい、言いなりになって欲しかったのか、若干掛かり気味になってしまっていた様子。
ここで、ジャスタウェイもムキになってゴルシを追いかけていたなら勝負は分からなかった。
しかし…
「ゴ〜〜〜〜〜ル!!」
最後の最後、差し切ったのはジャスタウェイだった。
「ふぅ…ギリギリでしたねぇ〜」
スッキリした表情で汗を拭うジャスタウェイ。
「ちっくしょ〜〜〜!!」
反面、本気で悔しがるゴルシ。
不貞腐れたのか、単純に慣れない走法で疲れたのか、ターフの上にゴロンと大の字になって倒れている。
「シップ。ちゃんと汗拭かないとカゼひきますよ〜?」
そして、時は現在に。
「ほらほらシップ。いっしょに来てください」
「わぁ〜〜ったよ…」
渋々…と言った風ではあるが、少しばかり時間が経過して頭が冷えたのか約束は約束と言うことを聞くゴルシ。
と言うか、相手がジャスタウェイ以外ならまず間違いなくまだむくれていただろう。
「それじゃあシップ。いっしょにたい焼き、食べにいきましょうか。疲れた時は甘いものです」
「あいよ〜…ってか、そんなんでいいのかよ?」
「ふふっ…シップといっしょだからいいんじゃ無いですか」
はにかむようにそう言うジャスタウェイ。
「よっしゃぁ!!そんじゃあうめぇ店知ってっから腹パンッパンになるまで奢ってやらぁ!!」
「いえ、そこは適度でいいです」
いつもの調子を取り戻したゴルシに、ジャスタウェイはくすりと笑う。
結局、少しだけトラブルこそあったものの、普段とそう変わらない二人なのだった。
日常回みたいな。
一応史実ネタ。