ドゥルダ郷に行って、勇者としてさらに強くなりたい。
そうテオに直談判し、ペルラに叱られ、エマに離れるのは寂しいと泣かれ、村の人々に幼い子の旅は危険だと諭されて都合十日ほどが経った頃。
頑として意見を変えることのなかった俺についにペルラとテオが折れ、俺のドゥルダ行きは叶うことになったのだった。
準備を終えた日の朝、村の出口では村人たちが総出で俺を送り出そうと集まってくれていた。
そこにはエマの姿はない。
どうやら、エマの生家である村長宅の中にいるようだった。
「みんなー! 行ってくる!」
重々しい雰囲気は俺の年単位でいなくなるとは思えないような軽い挨拶でガクッと崩れ、頑張ってこいと気負いすぎない激励をもらう。
ペルラは俺を抱きしめ、「私はあんたのことを愛してる。いつでも帰っておいで」と涙を流した。
まだ子どもとはいえ、ペルラには世話になりっぱなしだった。
今は止まっていられないが、いつか世界を平和にしたら恩を返そうと決意した。
テオに手を引かれ(地上最大のギャグ)村を出る前に、寄りたいところがあるとテオに言う。
指した方向から用件を察したテオは頷き、俺は目的の場所へと駆けていった。
場所は村長宅……というより、俺にとってはエマの家と言った方が馴染み深い。
村から離れないでと泣きながら抱きついてきた彼女に意見を曲げなかった俺は彼女と喧嘩別れのようになってしまっていた。
最後に挨拶だけはしようと、エマの家のドアをノックする。
ほどなくしてトコトコと小さな足音が聞こえ、ガチャリと家のドアが開いた。
エマは俺の顔を見るやいなや嬉しそうに顔を明るくし、しかし、それを取り繕うように顔をしかめた。
「……イレブン」
「エマ、ゴメンな。それでも行かないと」
そういうと、幼いなりに精一杯不機嫌ですと顔に書いたままこちらに目を向けていたエマは、俯いて玄関先から去った後、手に不格好な小袋を持って戻ってきた。
「……あげる、ね」
「これって?」
「おまもり! イレブンがあぶないめにあわないように!」
半ば怒鳴るようにしてエマは俺にお守りを手渡し、ドアを乱暴に閉めた。
だが、その勢いとは裏腹に、去っていくような足音はしなかった。
「大事にするよ。エマと同じくらい」
俺はドアの前でそう言い残す。
がたん、とドアの向こうで音がした。
それにはたぶん気付かないほうが良いのだろうと微笑ましさに顔を綻ばせ、エマの家から踵を返す。
エマのおまもりをテオから貰ったふくろに入れ、俺はテオと一緒にイシの村からドゥルダ郷へと出発したのだった。