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「あれは何なんや……」
パン屋の前で止まったトラックから、二人の異界の民が降りてきた。一人はワニ頭でがっしりとした体形、もう一人は軟体生物のような体で、常に形を変えていた。
「降ろすぞ」
「へいへい」
二人は後ろのドアを開け、何かが真空パックされたような大きな袋をおろし始めた。
袋のサイズは様々で、どのようにしてトラックに入っていたのかわからないような大きさのものや、ほぼ人間と変わらないようなものまで様々であった。
「ここからだと何も見えへん。ユミル、あれ何やわか……大丈夫か?」
「あ、あれ……」
「ん? 大丈夫か? もしかして、異界の住人かいな?」
ユミルは顔を真っ青にして首を縦に振った。今にも吐き出しそうな程、気持ち悪そうにしていた。
ジョンはそんなユミルの背をさすりつつ、目はしっかりと二人の男に向けていた。
「ユミル」
「なに?」
「ユミルはここで隠れててくれへんか?」
「いや!」
ユミルはギュッとジョンの服を掴むと、決して放さないというように皺ができるほど力強く掴んだ。その手はガタガタと震えており、それが恐怖からくるものだとジョンには理解できた。
「大丈夫や。絶対に迎えに来る」
「本当?」
「本当や。ユミルのオカンを見つけて戻ったるから、ちーとばっかし、ここで待っとってくれんか?」
「うー」
「大丈夫や。必ず戻ったる」
ジョンは、ユミルを抱きしめて頭をそっと撫でた。
ユミルは徐々に落ち着いてきたのか、そっと手を緩ますと涙をためた目でジョンを見つめた。
「絶対、約束だよ!」
「ワイは約束は守る男やで」
「じゃ、じゃあ……。ここで隠れてるから、絶対戻ってきてね」
「おう!」
そう言うとユミルを物影に隠し、ジョンはパン屋へと向かっていくのであった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「さーて、もうひと頑張りするかぁ」
「早く終わらして飯食いましょ」
「そうだな」
ジョンがトラックに近づくと、荷物を積み下ろししていた二人は取り敢えず荷物を積み下ろし終えたのか、のんびりと話していた。
そして、その会話を聞くためにジョンは徐々に距離を詰めていったが、話を聞く前に二人はトラックに乗ってしまった。
ここで、二人を捕らえるべきかどうか悩んだジョンであったが、ここでは拘束しないことにした。
それは、敵の人数が不明であることが、一番の問題であった。これがただの人間であれば、問答無用で確保するのだが、ここヘルサレムズ・ロットの異界の住人には常識が通用しないようなものも多い。
そして何より、万が一ここで負傷したら、ユミルを無事元の世界に連れて帰るという目標に支障が生じると考えたのだ。
「ウルフウッドなら問題ないんやろうが、ワイやとな……」
ウルフウッドは元々暗殺集団の腕利きの一人だ。彼自身は潜入や、痕跡の隠し方などを教え込まれているが、戦闘方法の復習を真っ先に選択したジョンの方は、そのようなことを問題なくこなせるか自信がなかった。
トラックが去り、周囲を軽く探すと地下へ通じる道を見つけた。
「さて、なにが出るんやら」
ジョンはハンドガンを握りしめ、いつでもトリガーを引けるようにした。
「扉は開いとるようやな……」
地下へと通じる道は不用心にも、鍵がかけられていなかった。正直ここで魔術的な鍵をされていた場合、取り敢えずいつ戻ってくるかもわからないさっきの二人組みを待つ必要があったが、その必要はなさそうであった。
ジョンは、ウルフウッドの記憶にある訓練をトレースしていった。必ず円を動くように移動し、こちらが先に敵を発見できるようにクリアリングをしていく。
本当ならば二人以上の人間が欲しかったが、そんなわがままは言ってられなかった。
最初の部屋はごく普通の倉庫であった。パン屋が倉庫として使っているのか、小麦が置かれていたり、冷蔵庫が置かれていたりと特に変わったものはなかった。
ジョンは、その部屋にトラップが仕掛けられていないか注意しながら右奥に進んだ。部屋の奥と、部屋に入って左右に扉があった。ジョンはとりあえず、一番使っている様子のある奥の扉に張り付いた。
「ん、何や開かんやんけ」
奥の扉に手をかけると、鍵がかかっているのか扉は開かなかった。鍵穴等は無いため、ピッキングもできないし、そもそも物理的な破壊によって通れるのかも分からなかった。
ジョンはここで時間を無駄に使うべきではないと考え、右手前のドアから入るようにした。というのも、右の扉の横には大きな荷物を運ぶための荷台がおいてあり、さっき男たちが使っていたものだったのだ。
「ふー」
ジョンは息を大きく、ゆっくりと吐くと扉を開け、さっきと同じようにクリアリングをした。そこにあったのは目を疑う景色であった。
「なんやこれは……」
そこにあったのはさっき運ばれた異界の民たちが、パックされたまま精肉工場の様につるされている光景であった。
数は数百体、もしかしたらもっと多いのかもしれなかった。
ヒューマンであったら、これだけの数誘拐されていたら、すぐに分かることであったが、入れ替わりの激しい異界の民では、これほど誘拐されていて初めて噂程度の情報しか流れてきていなかったところに、ジョンは恐怖を感じた。
確かに、白昼堂々人がいなくなるというのは見つかりにくいかもしれない。しかし、これほどの人数ともなると、短くても数か月、長かったら数年単位で計画されていたはずだ。
「下種どもが……」
腹の底から湧いてくるような怒りを感じつつ、ジョンは真空パックされた人々を見て回った。流石にこれ一つ一つを確認していくのは、男たちが戻ってくるまでには完了しそうもないが、さっきいなくなったばかりのユミルの母親を探すぐらいのことはできると思ったのだ。
「これか?」
ユミルの母親らしき女性はすぐに見つかった。長い尻尾に、ユミルと同じ長い髪、それ以外のところはヒューマンと同じような外見。まさしくユミルを女性にして大きくしたような感じであった。
彼女を入れている容器を見てみると、其処には彼女を捕獲した時刻とどんな生活をしているかの記載があった。つまり、これは偶然さらったのではなく、計画的な犯行という事だ。
「くそが」
ユミルの母親を今すぐにでも助けてあげたいが、この容器から解放すれば彼女は助かるのかどうかが分からない現状では、彼女に対してむやみに手が出せなかった。万が一、ここで開放した結果死んでしまったら、ユミルに合わす顔が無かった。
「ひとまず、母親は見つけた。せやけど、ここは一体何なんや」
人間を食べる異界の住人というのは確かにいる。しかし、異界の住人同士でそのようなことがあったという話は、今のところ聞いたことが無かった。つまり、何か違う理由で集めているという事だったが、それが何なのは全く分からなかった。
「もう一つの部屋行ってみよか」
残っているのは、入って左の扉であった。ジョンは素早く扉の横に張り付くと先ほどと同じように部屋の中をクリアリングした。
「なんやここは」
そこは信じたくもない場所であった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「へへへ、今回も大量でしたね。兄貴」
「ぼろいもんよ」
先ほどトラックに乗ってパン屋の前からいなくなった男たちは、再びパン屋の前に向かっていた。灰色しかない世界で、色のあるところを巡回して回っていたのだ。今回も無事、異界の民の捕獲を成功し上機嫌でトラックを運転していたのだ。
「ん? 何だあいつは」
3番通り、それはパン屋がある通りだ。その通りの真ん中で、一人のスーツ姿の男が煙草を吸っていた。隣には身の丈よりも大きい布に包まれた十字架がおいてあった。
「おい、武器を用意しろ」
「へい」
男たちは車内にある、緊急用の銃器を持つとトラックを降りた。二人が銃を構えながら近づいているというのに、スーツ姿の男は意にも介さず、たばこを吸い続けていた。
「おい、どうしてヒューマンがここにいるんだ。組織の者か?」
スーツの男はたばこの煙を吐いただけで、何も答えなかった。
「おい、どうなんだ!」
「一つ」
スーツの男は、吸い終えた煙草の吸殻を地面に落とすと、足の裏で踏みつけた。
「俺は組織の人間やない」
男は、十字架についているバンドを持った。
「二つ」
男は、十字架のついているバンドを外し、其処には白い紋章の書かれた巨大な金属製の十字架をさらけ出した。
「ワイは、お前らに慈悲をかけるつもりはあらへん」
男は、十字架の中心に手を入れギアをまわした。十字架の長い方が開き、其処から巨大な銃身が姿を現した。
「三つ」
スーツの男の鋭い瞳は、二人の男を貫いき、殺気とも呼べる何かが彼らの身体を貫いた。
「死んで詫びろ」
スーツの男は、パニッシャーのトリガーを引き、重厚な射射撃音を響かせ彼らに突撃していったのであった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「それで、どうだったんだ」
誘拐事件から数日たったある日、ジョンはスティーブンに呼び止められていた。胸糞悪い事件から数日、ヘルサレムズ・ロットを騒がした、異界の民の誘拐事件はひとまずの終結を迎えたのだ。
「あれ以上は分かりませんでしたよ」
「そうか……」
異界の住人の誘拐事件、それは異界の住人から抽出した特別なエネルギーを凝集させ、人間たちに高値で売りつけるという非人道的な事件であった。
なぜ、善良な異界の民が狙われたかというと、ブランディングのためだったそうだ。健康で、薬物をやっていない善良な異界の住人から抽出したエネルギーというのはそれだけで高値で売れるらしかった。顧客リストには、人間界の大物などが乗っており、世間を騒がせる一大事件となった。
しかし、それ以上のことは何も分からなかった。ジョンが捕まえた男二人以外は、誰も逮捕することが出来なかったのだ。大きな権力が動いたとかではなく、本当に何も分からない。それが非常に後味を悪くさせる事件であった。
「そう言えば、パン屋はどうなった?」
「全くの白。パン自体は元々美味しかったらしくて、別に問題にはなっていないらしいですよ」
「それは良かった」
なぜ、3番通りのパン屋が美味しかったのかというと、異界の住人から抽出したエネルギーが漏れて、保管していた小麦に影響を与えたことが原因らしかった。
最初パン屋も組織とグルという事を疑われたようであったが、まじめに営業していたパン屋にはアリバイが存在していたため、無関係として簡単に事情聴取されて解放されたのだった。
「あ、そうだ。事件現場を見に行くついでに、其処のパン屋で昼食をと思ったんだがどうだ?」
「いいですね、行きましょうか」
ジョンに了承を取ったスティーブンは、にこりと笑みを浮かべ上着をとって外へと出ていった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「それで、どうやってあの世界から出たんだ? あの世界から出るには、一定の手順が必要だったのだろう」
スティーブンとウルフウッドに化けたジョンは、ライブラを離れパン屋へと道を歩いていた。
「簡単やった。犯人たちを半殺しにして、こっちの世界に通じる扉を解除させたんや」
「はは、ザップだったら殺してしまって、二度とこちらの世界に戻ってこれなくなるところだ」
結局、ジョンはあの二人を殺さなかった。頭に血が上りそうになったが、ウルフウッドの冷徹な精神に影響され、何とか半殺し程度で済んだのだ。
正直、ジョンだけの精神状態であったら問答無用で殺していただろう。だが、ウルフウッドとヴァッシュの記憶はどんな状況でも冷静に判断させるだけのものを、ジョンに与えていた。
「ん、あれ」
スティーブンは何かに気が付いたように、前を指さした。
「おにーちゃん」
そこには、元気いっぱいといったようなユミルが走ってきていた。当然後ろには、彼の母親がついてきていた。
「おにいちゃん、この前はありがとう!」
「おう、元気そうやな」
ジョンは飛びついてきたユミルを受け止めると、ゆっくりと頭をなでた。あの後、ユミルも無事元の世界に戻れたし、つかまっていた人々も無事解放することが出来たのだった。
「先日はありがとうございました」
「いや、こいつが頑張って母親を探しとったからや、ワイはそれをちーとばっかし手伝っただけや」
「いえ、そんなこと……」
「そんなことはないよ!」
母親がお礼の言葉を重ねようすると、それを上回る大きな声でユミルは言った。その目は輝いていて、まっすぐとジョンに向いていた。
「ジョンがいたから、僕はお母さんと会えたんだよ」
「ははは、厚意はありがたく受けとっておけ」
「はぁ」
スティーブンは、ユミルの勢いに押されているジョンを見て笑った後、彼に助言をした。ジョンの方はというと戸惑ったような表情をしていた。
「僕、大きくなったらジョンのお嫁さんになる」
「え、お前男やあらへんの?」
「僕は男にも、女の子にもなれるんだよ」
ユミルは更に目を輝かせてジョンに言った。その横でスティーブンはおなかを抱えて爆笑していた。
「い、いいじゃないか。ジョン」
「やっかましいわ!」
笑いまくるスティーブンに、困ったようなジョン、そしてそんなジョンを困らせるユミルを見ていたユミルの母親は、時計をちらりと見た。そして、その時刻を見てはっとしたような表情をして、ユミルに声をかけた。
「ユミル、そろそろ行きますよ」
「はーい。じゃあねジョンおにいちゃん」
元気よく去っていった、ユミルは何度もジョンの方を向いては手を振ってジョンの方を確認していた。
「いい子じゃないか、ジョンおにいちゃん」
「はぁ、スティーブンまでそないなこと言うなや」
その後、二人は噂の3番通りのパン屋でパンを買ったのだが、ジョンは食べるたびにため息をつくのであった。
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