オリジナル考えるの非常に面倒くさいですので、早く原作に突入したいですことよ!
ちなみに今回のお話で出てくる世界暗黒遺産登録品は、世界崩壊幇助器具は違う分類と考えていますわよ!
皆様、感想、評価、お気に入り、誤字脱字報告、大大大募集中ですわ〜!
オタク、世界暗黒遺産登録品を知る
雲一つない快晴の空では、朝日が燦々と輝いていた。
心地よい温度の乾いた風が、ヘルサレムズ・ロットの雑然とした街並みを吹き抜けていく。
まさに、絶好のバイク日和。
そんな清々しい朝の街を、ヴァッシュの姿をしたジョンは、軽快にバイクを走らせていた。
「んーっ、本当に気持ちのいい朝だなぁ」
今日は、朝からすこぶる調子がよかった。
目覚ましが鳴ると同時に起床し、二度寝の誘惑にも打ち勝った。
部屋に置かれたトレッドミルで軽く汗を流し、シャワーを浴びる。
そして、久しぶりに上手く淹れることのできたコーヒーを片手に、バターをたっぷり塗ったトーストを食べた。
傍から見れば、いわゆる意識の高い朝に見えるかもしれない。
だが、ジョンの記憶にあるヴァッシュやウルフウッドの朝も、意外なほど規則正しかった。
体が資本の彼らは、夜になれば可能な限り眠り、朝になれば起きる。
軽く体を動かし、汚れと汗を洗い流し、食べられるときに食事を取る。
いつ命を落としても不思議ではない生活を送っていたからこそ、日々の習慣によって自分の体を整えることを大切にしていたのだろう。
「いやぁ、今日は本当に穏やかな――」
「死ねぇぇぇぇっ‼」
満面の笑みを浮かべた直後。
あまりにも物騒な叫び声とともに、ジョンの背後で爆発が起きた。
「――朝じゃなかったぁっ!」
凄まじい爆風が道路を駆け抜ける。
バイクの後輪が大きく揺れ、ジョンは慌ててハンドルを切った。
周囲を走っていた車が次々と進路を変え、空を飛んでいた異界生物が悲鳴を上げながら逃げていく。
「な、何だぁ⁉」
ジョンは道路脇へバイクを寄せ、急ブレーキをかけた。
振り返った先では、数台の黒い車から降りた武装集団が、建物の入り口へ向けて銃を乱射している。
それに対し、施設を警備していたガードマンたちも、柱や車両の陰から応戦していた。
激しい銃声。
弾丸によって砕け散る窓ガラス。
爆発によって舞い上がる瓦礫と黒煙。
つい数秒前まで穏やかだった朝の通りは、すでに立派な戦場へ変わっていた。
「押し込め! 金庫を開けさせろ!」
「正面を突破されるぞ!」
「増援はまだか!」
ガードマンたちは明らかに劣勢だった。
数でも火力でも武装集団が上回っており、入り口の防衛線は今にも破られそうになっている。
「はぁ……」
ジョンは深々とため息をついた。
「本当に、穏やかな朝だったのになぁ」
見なかったことにして、そのまま立ち去るという選択肢もある。
少なくとも、ヴァッシュの記憶が自分の中になければ、そうしていたかもしれない。
しかし、逃げ惑う市民や、必死に入り口を守っているガードマンの姿を目にしてしまった。
もはや、素通りすることなどできなかった。
ジョンはバイクのエンジンを切ると、道路脇へ停車させ、丁寧に鍵をかけた。
「鍵よし。傷も……今のところなし」
腰のホルスターからリボルバーを抜き、シリンダーを開く。
弾丸が装填されていることを確認すると、乾いた音を立てて元へ戻した。
「さてと」
銃撃戦の真っただ中へ向かって歩きながら、ジョンは困ったように笑った。
「朝飯前の運動にしちゃ、ちょっと激しすぎるかな」
武装集団の一人が、接近してくるジョンに気づいた。
「何だ、あいつは!」
「一般人だ! 構うな!」
「いや、銃を持ってるぞ!」
「なら撃て!」
三つの銃口が、一斉にジョンへ向けられる。
引き金が引かれる、その寸前。
ジョンの右腕が霞んだ。
銃声が三発、ほぼ同時に響き渡る。
「なっ――」
男たちが手にしていた銃の引き金部分が正確に撃ち抜かれ、金属片を散らしながら路上へ転がった。
「銃が!」
「撃てねえぞ!」
「おはよう」
ジョンは白い歯を見せて笑う。
「朝から元気だね、君たち」
「こ、この野郎!」
一人が腰から短剣を抜き、ジョンへ突進する。
振り下ろされた刃を半身になってかわし、ジョンは相手の手首をつかんだ。
勢いを殺さず、そのまま体を回転させる。
「よっと」
「ぐあっ!」
男の体が宙を舞い、仲間二人を巻き込みながら地面を転がった。
別の男が背後から銃を構える。
だが、ジョンが振り返るよりも早く、後ろ手に放った一発が銃口の中へ飛び込んだ。
内部で弾丸が弾け、銃が男の手から吹き飛ぶ。
「ば、化け物だ!」
「失礼だなぁ」
ジョンはリボルバーをくるりと回し、次の標的へ銃口を向けた。
「人を見た目で判断するものじゃないよ」
それから数分後。
現場へ到着したHLPDが目にしたのは、武器だけを破壊され、道路へ折り重なるように倒れた武装集団と、瓦礫の中央で頭をかいている金髪の男だった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「また、お前か……」
「もう、そんな顔しないでってば。ダニエル・ロウ警部補」
ジョンの目の前で、露骨に嫌そうな顔をしていたのは、HLPD――ヘルサレムズ・ロット市警に所属するダニエル・ロウ警部補だった。
ダニエルとジョンは、すでに顔見知りの間柄である。
というのも、ジョンはヴァッシュの記憶に影響されているためか、街中で起きた騒ぎに遭遇すると、放っておくことができない。
争いへ首を突っ込み。
市民を助け。
犯人を制圧し。
なぜか当初よりもはるかに規模の大きな騒動へ発展する。
そして最後に、後始末へやってきたダニエルから説教を受ける。
その一連の流れを、ジョンはすでに何度も経験していた。
必然的に、二人は事件現場でたびたび顔を合わせることになったのである。
「お前、この前も、その前も、さらにその前にも言ったよな!」
ダニエルは、ジョンの胸元を指さした。
「騒ぎに首を突っ込むなら、せめて被害を最小限にしろって!」
「いやぁ、僕って、ほら……」
ジョンは頭の後ろで手を組み、困ったように笑った。
「映画の主人公体質っていうわけじゃないんだけど、なぜか気づいたときには大事になってるんだよねぇ」
「そんな体質が実在するなら、頼むから家から出るな‼」
「あはははは!」
「笑い事じゃねえ!」
ダニエルは笑ってごまかそうとするジョンを、鋭い目でにらみつけた。
しかし、しばらくすると怒りを吐き出すように息をつき、その表情をわずかに緩める。
「まったく……」
ジョンが介入しなければ、警備員や一般市民に大勢の死傷者が出ていた可能性は高い。
それをダニエルも理解していた。
「弱い市民を守ろうとする意志があることも、それを実行できる腕があることも認める」
「おや、お褒めの言葉?」
「調子に乗るな」
ダニエルは即座に言い返した。
「だが、お前が強いからって、周囲の人間まで頑丈なわけじゃない。次からは、もう少し気をつけてくれ」
「……すまないね」
ジョンは先ほどまでのふざけた笑みを収め、素直に頭を下げた。
ダニエルは髪を乱暴にかき回すと、大きなため息をついた。
手にしていた紙コップのコーヒーを一息に飲み干し、空になった容器をパトカーのごみ袋へ放り込む。
「まあ、今度はお互い頑張ろうや」
「今度?」
ジョンが首をかしげる。
「何の話?」
「なんだ。まだ聞かされてないのか?」
ダニエルは、きょとんとするジョンの顔を見て、意外そうに眉を上げた。
やがて、何かを思いついたように口元を歪める。
「まあ、お前の上司が説明してくれるだろうよ」
「ねえ、気になるんだけど」
「せいぜい、今のうちに平和を楽しんどけ」
「どういう意味⁉」
「じゃあな」
ダニエルはそれ以上答えることなく、背を向けた。
事件現場には、すでに大量の野次馬と報道関係者が集まり始めている。
部下から呼ばれたダニエルは、片手を上げると、そのまま人混みの中へ消えていった。
「今度って、何だろう……」
ジョンは遠ざかる背中を眺めながら、嫌な予感に頬を引きつらせた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「今回、世界暗黒遺産登録品の一つが、ここヘルサレムズ・ロットで発見された」
ライブラ本部の大会議室。
普段の主要メンバーに加え、戦闘部隊や情報部門に所属する構成員たちが、大勢集められていた。
部屋の正面に立つスティーブンがそう告げた瞬間、会議室の至るところから驚きの声が漏れる。
「世界暗黒遺産だと……?」
「本物なのか?」
「どうして、この街に……」
普段なら多少の事件では動じないライブラの構成員たちが、互いに顔を見合わせていた。
それほどまでに、スティーブンが口にした言葉は衝撃的だったのだ。
しかし、その一方で。
世界暗黒遺産登録品について、ほとんど知識を持っていないジョンだけは、周囲の反応についていけていなかった。
ジョンは隣に座っていたザップへ、声を潜めて尋ねる。
「なあ、ザップ」
「あん?」
「世界暗黒遺産登録品って、そんなにやばいのか?」
「やばいっつうか……」
ザップは腕を組んだまま、珍しく真面目な表情を浮かべた。
「物によっちゃ、一個を巡って国が傾くくらいには貴重だ」
「マジか‼」
「声がでけえよ」
ザップ自身も驚いているのか、普段のようにジョンを馬鹿にすることなく、素直に質問へ答えていた。
「知っている者も多いと思うが、改めて説明しておこう」
スティーブンは手元の端末を操作した。
「世界暗黒遺産登録品とは、人界と異界、双方の歴史に重大な影響を与えた物品や、極めて希少な文化的価値を持つ品々の総称だ」
スクリーンに、過去に確認された品の画像が次々と表示される。
血のような液体を流し続ける石板。
見る角度によって形状が変わる彫像。
巨大な生物の骨から作られた楽器。
「一口に世界暗黒遺産と言っても、その性質はさまざまだ。都市一つを消滅させるほど危険な物もあれば、歴史的な価値があるだけで、まったく無害な物も存在する」
画面が切り替わった。
「今回発見されたのは、後者だ」
スクリーンの中央に、一つの宝石が映し出される。
「その名は――エンケビの雫」
そこに映っているのは、宝石であるはずだった。
だが、あまりにも透明度が高く、一見しただけでは何も存在していないように見える。
宝石を取り囲む金色の枠がなければ、輪郭を捉えることすら困難だった。
光を反射して輝くのではない。
光を一切邪魔せず、そのまま通過させている。
まるで空間そのものを切り取り、宝石の形へ固めたような品だった。
「こいつは、推定五億年前に製作されたと考えられている宝石――らしきものだ」
「らしきもの?」
「現在の技術では、材質すら特定できていない」
スティーブンは画像を拡大した。
「以前は中東の富豪が所有していたことが確認されている。しかし、彼の死後、遺産の整理中に行方不明となり、それ以降、所在が分からなくなっていた」
「ねえねえ、ザップ」
「今度は何だ」
「五億年前って、人間は存在してたっけ?」
「してるわけねえだろ、ボケが」
ザップは呆れたように吐き捨てる。
「どうせ異界の連中か、今は滅んじまった何かが作ったんだろ」
「ふーん……」
「そこ!」
スティーブンの鋭い声が飛んできた。
ジョンとザップは同時に姿勢を正す。
「二人とも、話をきちんと聞く!」
「はい」
「ちっ」
「ザップ、返事」
「……へーい」
スティーブンは二人をにらみつけたあと、咳払いをして説明を再開した。
「今回、このエンケビの雫をヘルサレムズ・ロットから安全に搬出するため、HLPDと共同作戦を実施することになった」
「はぁ?」
ザップが露骨に顔をしかめた。
「何で市警の連中と組まなきゃならねえんだよ。あいつら、俺たちのことをそれほど好意的に思ってねえだろ」
「ザップ。それには、いくつか理由がある」
スティーブンが端末を操作すると、スクリーンの画像が切り替わった。
新たに表示されたのは、一人の男の顔写真だった。
年齢は四十代ほど。
高級そうなスーツを身にまとい、宝石を散りばめた指輪をいくつもはめている。
笑みを浮かべてはいるものの、その目には妙に冷たい光が宿っていた。
「こいつは……」
ザップの表情が変わる。
「ああ」
スティーブンは男の写真を指し示した。
「グディヴォ・ジュニア・デイビス。長年、我々が動向を追っている人物だ」
次の言葉を口にする前に、スティーブンは短く間を置いた。
「そして、ブラッドブリードである可能性が極めて高い」
その言葉が発せられた瞬間。
会議室の空気が、一変した。
先ほどまで小声で言葉を交わしていた構成員たちが、一斉に口を閉ざす。
誰もがスクリーンに映る男を、鋭い目で見つめていた。
空調設備の低い駆動音さえ、はっきりと聞こえるほどの静寂。
ブラッドブリード。
血界の眷属。
人間や通常の異界人とは一線を画す、極めて強大な存在。
肉体を破壊しても死なず、完全に消滅させることもできない。
ライブラが血闘術を用いて対抗し続けている、最大級の脅威の一つだった。
「グディヴォは、異常なまでの宝石収集癖を持っている」
スティーブンの説明が続く。
「今回、エンケビの雫を狙っているという情報が、複数の経路からもたらされた」
スクリーンには、過去にグディヴォが関与したと思われる事件の資料が表示される。
厳重な警備の中から消失した宝石。
内側から破壊された巨大金庫。
警備員全員が、記憶を失った状態で発見された事件。
「まだ、こいつがブラッドブリードであると確定したわけではない。だが、万が一を想定し、我々ライブラが輸送作戦へ参加することになった」
「はい、質問です」
ジョンが手を上げた。
「どうぞ」
「この人が、ブラッドブリードじゃない可能性はあるんですか?」
「ある、としか答えられない」
スティーブンは腕を組んだ。
「以前、グディヴォが関与したと考えられる事件には、人間には到底不可能な犯行が多い」
強化ガラスを破壊せず、密室から宝石だけが消えた。
数十トンある金庫が、建物の外まで移動していた。
警備員が抵抗した痕跡もなく、一瞬で全員が無力化されていた。
「だが、現場には既存の魔術や科学技術を使用した痕跡が、ほとんど残されていない」
「つまり、何かしらの化け物ではあるけど、正体までは分からない?」
「そのとおりだ」
スティーブンはうなずいた。
「さまざまな可能性を検討した結果、最も該当する可能性が高かったのがブラッドブリードだった、という段階だ」
「そういえば……」
会議室の後方から、一人の構成員が声を上げた。
「ブラッドブリードが関わっている可能性があるということは、あの方も参加するんですか?」
その言葉をきっかけに。
先ほどまで張り詰めていた空気が、なぜか別の意味でざわつき始めた。
「あの人が来るのか……?」
「今度は何が降ってくるんだ」
「遺書、書き直しておいたほうがいいかな」
「俺、作戦参加を辞退しようかな……」
ブラッドブリードという言葉を聞いたときとは、明らかに異なる種類の動揺だった。
「あの方って、誰だ?」
ジョンが疑問を口にすると、スティーブンは何とも言えない表情を浮かべた。
「ああ、そうか。ジョンは、まだ会ったことがなかったな」
「そんなに有名な人なんですか?」
「有名というか……」
スティーブンは答えに困ったように視線をそらした。
周囲の構成員たちは、なぜか一様に遠い目をしている。
「対吸血鬼の専門家だ」
「へえ」
「そして、常人には到底及ばないほどの豪運を持つ男でもある」
「豪運?」
ジョンは首をかしげた。
「それって、ものすごく運がいいってことですか?」
「まあ……本人に限って言えば、そうだな」
「本人に限って?」
意味深な答えに、ジョンはさらに首をひねる。
その隣では、ザップが見るからに嫌そうな顔をしていた。
「何や、その反応」
「死体野郎」
「何?」
「今のうちに、身辺整理しとけ」
「何で⁉」
ジョンの声が、会議室に大きく響き渡った。
お気に入りや、評価くれたら、飽きずに続けられるかも(/ω・\)チラッ
注意:万が一感想を書いていただける場合、今後の展開を予想するのだけはやめていただけるとありがたいです。続きを書く気がまじで無くなるので……(´・ω・`)
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