本当は誤字報告なんてないほうがいい文章なのでしょうけど、私にはとても難しいですわ!
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その日、ヘルサレムズ・ロットは不気味なほど静かだった。いつもはどこかしらで起こる自動車事故や発砲事件、魔術的事件なんかが全く起こらなかったのだ。
ある一人の男の周囲を除いて。
「お久し振りです! 師匠!」
「おー、クラウス! またデカくなったんじゃないか!」
クラウスがかしこまって挨拶する先にいたのは、ヒューマンにしてはガタイの良い男であった。少々よれたコートとスーツ、よく手入れされた革靴、そしてビジネスで使っていそうな革の鞄。これだけ見ると、普通のビジネスマンだが、その立ち居振る舞いは、一瞬で武道を習っているものだと分かるほどだった。そして、その眼光は何者も逃さないと言う、強い意志を感じられた。
久々の再開を祝う二人の後ろでは、迎えに行ったはずのザップが、体中を包帯でぐるぐる巻きにされていた。
「大丈夫? ザップ?」
「もう、本当にエイブラムスさんの出迎えを任されるのイヤ!」
ジョンが声をかけると、半泣きになりながらザップは返した。
彼の体に巻かれているのは、最近開発された包帯であり、体に巻きつけとけば人間の回復力を高めてくれるというものなのだが、如何せん体に巻きすぎてミイラみたいになっていた。
「あの人って……」
「お前の思っているとおりだ。豪運のエイブラムス。旦那の師匠筋に当たる方だよ」
ブリッツ・T・エイブラムス、その名は裏に通じるものなら絶対に知っている名前だった。世界屈指の吸血鬼の専門家であり、クラウスの師匠に当たる人だった。
彼はその職業柄非常に恨みを買っており、その恨みは吸血鬼で彼の死を願ってないものはいないとまで言われるほどである。そのため、吸血鬼から多種多様な呪いを掛けられていた。しかし、彼の持ち前の豪運で、彼自身は全く被害を受けなかった。その代わり周囲にその被害が及ぶという、はた迷惑な人でもあった。
「あの人も、ザップやクラウスさんみたいなことできるの?」
「いや、頭脳と性格と運勢以外は一般人だ。まあ、一般人にしては十分上位に入るくらいの、格闘戦や銃撃戦はこなせるけどな」
「ふーん」
ジョンはエイブラムスの姿を見た。ザップの言うとおりなのだろう。いざというときに動けるように体を鍛えているようだが、彼の雰囲気からは化け物と肉弾戦をするような、クラエスやスティーブン、ザップといった半分化け物に片足を突っ込んだようなものは嗅ぎ取れなかった。
「君が新入りか」
「あ、はい! ジョンって言います」
「エイブラムスだ。よろしく頼む。所で君はサングラスをかけると別の人間に変化できると聞いたのだが、本当かね?」
「ええ、まあ」
ジョンは胸ポケットからサングラスを取り出し、かけて姿を変えた。
「ほう、これはすごいな」
今回はウルフウッドの姿になった。分かりやすいように、背中にはパニッシャーを携えていた。
「一瞬で切り替わるのだな。分かったありがとう。あと、聞いたのだが君は血闘術の才能があると聞いたのだが本当かね」
「ああ、扱えるようになるって言っとったな」
「なぜ君は訓練をしないのだ?」
エイブラムスの言っていることは当たり前であった。ライブラはヘルサレムズ・ロットで世界の均衡を保つという目的で動いているものの、それ以上に大事なこととしてブラッドブリード、吸血鬼に対応するために組織されている事実があるのだ。
そんな秘密組織に入りながら、吸血鬼に対抗するために人間の叡智を結集させてできた血闘術を学ばないとうのは非常に奇妙に映るはずだ。
「それは……」
「師匠、彼には彼の目的がありライブラに入っています」
「目的? 」
「彼は神降臨の儀式に巻き込まれ今のような体質になり、自分の名前を対価に奪われました。血闘術を手に入れるということは、体を変質させることも意味します。これ以上、オリジナルの自分を失いたくないという彼の感情、どうぞご理解下さい」
「オリジナルの自分か……」
エイブラムスはその言葉が心に響いたのか、ジョンの肩をがっしりとつかんだ。
「君の気持ちは分かった。血闘術を扱う才能は惜しいがしょうがない。でも、何かあってからでは遅いという事も重々承知しておくことだ。ライブラに入っているという事は、吸血鬼といずれ戦わねばならない時が来るという事だ。そして人はいずれ、変わりたくなくとも変わらなくてはならない時というものが、早かれ遅かれ来る。そのことを心に留めておいてくれ」
「せやな」
エイブラムスのまっすぐな瞳はジョンを貫いた。彼の言っていることは純粋な善意であり、100%正しい事だった。死に直面する可能性の高いブラッドブリードとの戦闘において、甘えというものは存在しない。彼らがお遊びだったとしても、人間にとってそれは死に直結する出来事なのだ。
ヴァッシュやウルフウッドの記憶を受け継いだ、ジョンにとってそれは痛いほどわかっていた。GUN HO GUNSの先鋭達やナイブスとの戦闘、そのどれにおいても強者との闘いは、一瞬でも気を抜けば死というのは同じである。ましてや、それらが不死になったとしたら今のままではかなわないという事も重々承知していた。
だが、平穏な暮らしを謳歌していたジョンの心は、これ以上自分の中の何かを変えるのを猛烈に拒否していた。もしかしたら、自分が戦えないために誰かが死ぬかもしれないそんなことは認識しつつも、心が歩みを止めていたのだ。
「で、クラウス。エンケビの雫の護送方法はどうするんだ」
「それは……」
エイブラムスを交えた会議は続いていくのであった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「今回はよろしく頼むぞ、二人とも」
「お任せください」
「けっ」
護衛車に乗り込んだのはクラウスとジョン、エイブラムス、そしてダニエル・ロウ警部補の4人であった。
今回の任務ではチェイン、それとスティーブンとK.Kの乗った護衛車が先導し、その後ろをジョン達の車と警察の護衛車両、そして後ろからザップがバイクでついてくるといった感じになっている。
各々の戦闘力を考えると過剰戦力の様に思われるが、それだけブラッドブリードというものは理不尽なものなのだ。
まだ弱いブラッドブリードならまだしも、エルダークラス、もしくはそれに準ずるクラスになったら、ライブラの全戦力をもってしてもまず間違いなく倒せない。相手が油断、もしくは全力で手加減してくれるという条件下で、ライブラ構成員が全力戦闘をしたとして精々数分持たせるのがやっとであろう。それほどブラッドブリードは理不尽に強いのだ。
「それで、今回現れると言われている化け物はどれぐらい強いんだ?」
「グディヴォ・ジュニア・デイビスは恐らくエルダークラスではないと考えられている」
「理由は?」
「簡単なことだ。エルダークラスなら、他に犯してきた犯行で出ている死者の数が少なすぎる」
「少ないか……。それでも少なくとも50人は犠牲になっているんだがな」
「エルダークラスなら、少なくとも桁が一つか二つ足りん」
「くそが、理不尽なほど強いな」
ダニエル警部補が悪態をつくというのも分かるほどだ。
吸血鬼の専門家としてのエイブラムスの見解は自信に満ちており、確信を持っているようであった。現代社会において、自然災害でも三桁以上の死者が出ることは少ない。つまりエルダークラスの吸血鬼は、歴史に残るような未曾有の大災害と同じレベルだという事だ。
「まあ、化け物たちが出てきたら頼むぞ」
「了解した」
ダニエル警部補は以前ブラッドブリードと戦ったライブラの戦闘を見ている。何人もの警官たちが、誰一人戻ってこなかった吸血鬼との戦闘で、彼らは怪我はしていたものの生還したのだ。
彼は吸血鬼に対して、ヘルサレムズ・ロットでライブラが唯一戦える存在だという事を確信していたのであった。
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