血界戦線ーLOVE & PEACEー   作:麦のホップ

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二日酔いと、寝不足で週末はぐったりでしたわ。
急いで書き上げたので、不備が少々あるかもしれませんが、申し訳ありませんわ!
皆様、感想、評価、お気に入り、誤字脱字報告、大大大募集中ですわ〜!
ちょっと更新お休み中(忙しい)ですわ〜!更新再開までしばしお待ちを!


オタク、銃を撃つ

 お昼の食事をするため、一休みするために街を歩く人が増えるお昼どき、二人の女性がクタクタになった体を休ませるべく喫茶店へと入っていった。

 

「はぁーーーー。つっかれましたわーーーー!」

 

「本当ですね。先輩……」

 

 テーブルにつくないなや、テーブルに打つ伏すメリルとミリィ。二人はとても疲れていた。

 

「お客様。ご注文は?」

 

「アイスカフェオレで」

 

「私も同じので……」

 

「承りました」

 

 ウェイトレスに注文を言うと、二人は思い思いの体勢で疲れをどうにか取り除こうとした。

 

「それにしても、大変でしたは、まさかあんなことになるなんて」

 

「本当ですね〜。私もしばらくは働かなくていいかなって思います〜」

 

「アイスカフェオレでございます」

 

「ありがとうござい……」

 

 メリルは何となく、本当になにか理由があったわけでもなく窓の外の景色を見た。

 そして、その光景に目を疑った。

 

「な、なんなんですのあれ!」

 

 なにかに取り憑かれたように暴走するトラックと、大量のパトカーが行列をなして道路を爆走していた。そして、そのトラックの上にはメリルの見間違いでなければ赤いコートの男が何かと戦っていた。

 

「ミリィ! 行きますよ、特ダネですわよ!」

 

「あー、待ってーー! 先輩!」

 

 メリルは一息で届いたばかりのアイスカフェオレを飲み切ると手早く会計を済ませ店を飛び出していった。ミリィはそれに追いつくべく、どうにか飲み切るとバタバタと店を出ていったのだ。

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

「美しい宝石は私にこそ相応しい、死ねガンマン!」

 

「また、癖が強いなぁこの吸血鬼!」

 

 なぜトラックの上でクラウスやスティーブン、K.Kにザップといった対吸血鬼の専門家ではなく。吸血鬼に関しては全くの素人であるションが吸血鬼と一対一で戦っているのかということを説明するには、少々時をさかのぼらなくてはならない。

 

 

 それは突然やってきた。

 

「とう!」

 

 チェインの索敵を逃れ、先行するスティーブンとK.Kに見つかることなく宝石が収められている車両の中にやって来たのだ。

 

「ふむ、これか……」

 

 そいつは、トラックの中にはいると、お目当ての厳重に梱包されている宝石の箱に手を伸ばした。

 

「ブレングリード流血闘術、111式 十字型殲滅槍(クロイツヴェルニクトランツェ)」

 

「くっ」

 

 今回も楽々ものを盗み出せると高をくくっていたそいつこと、グディヴォは突然トラックの荷台の壁を貫いて入ってきた巨大な十字架に対処するために、迎撃体制に移らなくてはならなかった。

 なんとか攻撃を受け止めた後、トラックに空いた大穴から外を見た。そこにいたのは装甲車の上でグディヴォを油断なく見つめる赤髪の男であった。

 

「グディヴォ・ジュニア・デイビスだな」

 

「如何にも、牙狩り。人間らにはそう呼ばれているな」

 

「貴公にエンビケの雫を渡すわけにはいかない。どうか、諦めてくれはしないだろうか」

 

「それは無理な話だ。俺は美しく、人間どもは醜い。エンビケの雫を人間が管理するなどといった愚行を見逃すわけにはいかぬ。美しいものは、美しい俺にこそ管理されるべきなのだ!」

 

「交渉決裂か……。ジョン、スティーブンやザップと何故だか連絡が取れない。彼らがくるまで、援護を頼めるか」

 

「分かった」

 

 先行していたスティーブン達、最後尾にいたザップとは連絡が取れなくなっていた。本来一瞬で来れるぐらいの距離で彼らはエンビケの雫を護衛していたはずなのだが、どうにも姿が見えなかった。

 そのため、クラウスを援護できるのは一緒の車に乗っていたジョンしかいなかったのだ。

 

「スティーブン達を引き離すような行動、あいつは頭は回るようだがそこまで強くないはずだ。全力で攻撃しろ!」

 

「はい! エイブラムスさん!」

 

 装甲車の窓から身を乗り出したエイブラムスは、声を張り上げてクラウスとジョンに向けて叫んだ。

 

「では、戦おうか!」

 

 グディヴォはそう言うと、目にも留まらぬ速さでクラウスに向かって近づいた。しかし、時代が生み出した対吸血鬼専門家には効かなかった。

 

「ぐっ!」

 

 グディヴォとクラウスとの間には、小さな赤い十字架がびっしりと敷き詰められグディヴォの攻撃を受け止めていた。

 そして、グディヴォが止まった瞬間にジョンは弾丸を彼の頭に叩き込んだ。ジョンは不殺の枷をつけているが、頭に打ち込もうが、心臓に打ち込もうが死ぬことのない吸血鬼相手に遠慮をするほど、目の前の化け物を侮ってはいなかった。

 

「ただの銃弾などきかん!」

 

 グディヴォは、何発も銃弾を撃ち込まれているはずにも関わらず、まったく攻撃の勢いが衰えた様子は無かった。しかし、クラウスの防御を崩すほどの攻撃は与えられないのか、クラウスとグディヴォは拮抗状態になっていた。そして、クラウスは全力で攻撃に移れるだけ余裕はないといった感じであった。

 

「全く、いやになるね」

 

 ジョンは全く自分の攻撃が通用しないところを見ると、今までとは違う弾丸を装填した。その弾丸には、紋章のような物と複雑な文字列が記載されていた。

 

「食らいやがれ!」

 

 ジョンの放った弾丸は正確にグディヴォの肩を貫いた。

 

「あああああ、何だこれは⁉」

 

「いまだ、クラウス‼」

 

 銃弾が当たった場所は、今までとは違い超高速再生することなく血をだらだらと流し続けていた。苦悶の表情を浮かべるグディヴォは、いったん距離をとるためにトラックの荷台へと戻った。そのタイミングを逃さず、クラウスとジョンもトラックの荷台へと飛び移ったのだ。

 

「ブレングリード流血闘術、32式 電速刺尖撃(ブリッツウィンディヒカイトドゥシュテェヒェン)」

 

 飛び移ったクラウスはどうにかして傷を治そうとしているグディヴォに高速で近づき、十字架の形をした細剣でさらなる攻撃を与えようとした。

 

「あーー、もう面倒くさい‼」

 

 クラウスの攻撃が届く直前であった。グディヴォは自分の肩から先を自ら切り落とした。そして瞬く間に動かなかった肩の修復を終え、クラウスの細剣を難なく受け止めた。

 

「さっきの攻撃、実に見事だったが……。あっちの男が連射しないところを見るに、そんなに弾丸は無いのか?」

 

「ぐっ‼」

 

 グディヴォの言っていることは半分正解であった。まだ対ブラッドブリード用の特殊加工が施された弾丸は1発残っていたが、次撃つときによけられてはたまらないので温存しているのだ。

 対ブラッドブリード用特殊加工弾。それはジョンの弾丸の表面に魔術を刻み込み、ブラッドブリードの回復を阻害するという効果のあるものだった。まだ試作段階な上、制作時間や施した魔術が霧散するまでの時間を考慮すると、今回2発も持ち込めたのは開発陣の努力あってのことだった。

 

「まずはお前だ」

 

 グディヴォはクラウスをにらみつけると、つかんでいた血の十字架を握りしめクラウスが逃げられないようにしてから思い切りお腹を蹴った。

 

「クラウスさん‼」

 

 ジョンは勢いよく吹き飛んだクラウスに手を伸ばしたが、その手がクラウスに届くことは無かった。しかし、ジョンはクラウスの目を見ることが出来た、トラックから弾き飛ばされたクラウスの瞳には熱き炎が揺らめいていた。

 

「おい、お前も吹き飛べ」

 

 グディヴォは続いてジョンも車から追い出すべく、すさまじい速度で近づいてきた。ほとんど瞬間移動のような速度で近づいてくるグディヴォを見てジョンは、冷静に弾丸を発射しグディヴォをひるませると、トラックの荷台の屋根へと逃げた。

 

「どうしたガンマン。逃げの一手か?」

 

「ははは、僕は弱いからね」

 

 ジョンを追って荷台の屋根に来たグディヴォは、赤いコートをたなびかせながら自分をにらむジョンを見つけた。

 ジョンは逃げることはしなかった。ここで逃げても、誰も彼を責めるようなことはしないだろう。ブラッドブリードはブラッドブリード専門家が相手をするべき相手であり、いくら戦闘技術が超一流の領域に達し始めているジョンだとしても勝てる相手じゃないのだ。しかし、ジョンは逃げなかった。最後に見たクラウスの瞳がどうにも忘れられないのだ。彼は絶対に戻ってくる、そう信じられるほどの熱き心のこもった瞳を。

 

「さて、時間を稼がせてもらうよ」

 

「ほざけ!」

 

 ジョンは真正面から向かってくるグディヴォの脚を執拗に狙った。グディヴォは先ほどの弾丸を未だ警戒しているのか、弾丸を受けるようなことはせずに弾丸を躱していた。

 

 グディヴォはそこまで強い吸血鬼ではなかった。確かに常識外れの再生能力も筋力も持っていたが、エルダークラスとは天と地の差があった。エルダークラスの吸血鬼だったらジョンの弾丸を受けたとしても、何も問題は無かっただろう。そもそも、彼らの再生能力を一時的にでも弱めることが出来たら歴史的な出来事になるほどだ。

 

「死ね!」

 

 グディヴォがほぼゼロ距離まで近づいたその瞬間、ジョンは秘めていた弾丸を放った。

 ジョンの放った弾丸はグディヴォの股関節を撃ち抜いた。通常の人間であれば行動不能になる上に、太い血管を傷つけられたために起こる出血で数分と持たずに倒れる傷だ。

 

「まだ、あったのか‼」

 

 グディヴォはある程度覚悟していたのだろう。ジョンに撃たれ、顔をゆがめながらも攻撃を止めることは無かった。グディヴォが放ったこぶしはジョンの左腕を破壊した。しかし、血が出ることは無かった。ヴァッシュ・ザ・スタンピードの左腕はマシンガンを内蔵したオーバーテクノロジーで作られた義手であったからだ。

 

「次で……決める」

 

 ジョンは吹き飛ばされながらも距離をとることに成功した。そして起き上がってみると、尋常ではない出血をしているグディヴォが立っていた。普通の人間であるならば死んでいてもおかしくないほどの出血だった。自演には血の池のような物が出来ており、そのあまりにどす黒い血は彼が尋常ならざる生物という事を示していた。

 

「死ね、ガンマン!」

 

 グディヴォは若干ふらつきながらも、圧倒的なスピードでジョンを殺そうと襲い掛かってきた。

 その時であった。二人の耳に大きなガラスが割れるような音が響いた。

 

「なんだ!」

 

 あたりを見回しても何ら変わったところは見当たらなかったが、すぐに変化が訪れた。音が戻ってきたのだ。人々の生活する音が。

 

「まさか、結界を破ったのか」

 

 グディヴォは念には念を入れて、トラックの周囲だけ結界を張っていた。外部からの侵入を遮断する結界だ。これによってスティーブンやザップなんかは助けにくることが出来なかったのだ。

 

「ブレングリード流血闘術……」

 

「エスメラルダ式血凍道……」

 

「斗流血法……」

 

「954血弾格闘技……」

 

 そして、彼らは戻ってきた。

 

「十字型殲滅槍(クロイツヴェルニクトランツェ)」

 

「絶対零度の槍(ランサデルセロアブソルート)」

 

「刃身ノ壱・焔丸」

 

「Electrigger 1.25GW」

 

 結界が解除されたと同時に、クラウス、スティーブン、ザップ、K.Kの4人は全力でジョンにとどめを刺そうとしているグディヴォをに向けて技を放った。血の十字架が、氷の槍が、血の刀が、血の弾丸が刺さり、貫き、刻んだ。彼の身体は分解できる限界まで分解され燃やし尽くされようとしていた。

 

「くそがぁああああああああああ」

 

 彼らの血でできた武器は、グディヴォの身体を焼き再生を鈍らせ、グディヴォを燃やし尽くしていく。その最中であっても、彼らは自分たちが出せる最高の火力を油断なく叩き込んでいく。一瞬でも気を緩んで攻撃を止めたら元に戻ってしまう、その恐怖を彼らは持っていた。

 

 だが、そんな恐怖も終わりが来る。再生能力を限界まで落とされたグディヴォは白い灰になっていく。そしてその灰をクラウスが十字架の中に封印したのだった。

 

「はぁーーー、まじで死ぬかと思ったーーーーー」

 

 ジョンは空を仰いだ。いつもの空が広がっており、さっきまでの戦闘が嘘であったかのように穏やかであった。

 

「大丈夫だったかね?」

 

 クラウスは、血の十字架を回収するとジョンの方へと歩いてきた。

 ジョンはそちらに顔を向けると、戦闘の後だとは思わせないほどしっかりとした足取りであった。

 

「義手の左腕もっていかれましたよ」

 

「大丈夫なのか?」

 

「分かりません。ただ、変化した時に銃弾なんかは補充されるから、この左手も戻るんじゃないですかね」

 

「そうだといいな」

 

 ジョンがもぎ取れた左手を見せると、クラウスは目を丸くした。一応、彼にはヴァッシュの姿の時には義手になっているという事は言ってあったが、実際左手がもぎ取れた仲間を見る彼の気持ちはあわただしいものになっていた。

 

「グディヴォはどうなったんですか?」

 

「灰にして、封印した。今できるのはこれで精いっぱいだ」

 

「そうなんですね」

 

「彼はこの中で永遠に封印され続ける。むごいかもしれんが、我々にはこうするしか方法がない」

 

 現在ブラッドブリードに対抗する手段は、灰になるまで攻撃して封印するという方法しかないのだ。つまり、灰にできる程度の吸血鬼にしか対抗策が存在せず、エルダークラスの吸血鬼にはなにも対応策が無いのが現状である。

 

「はぁ、いい天気だなぁ」

 

「そうだな」

 

 再び見た空はどこまでも明るく二人を照らしていた。

 

「ヴァッシュさーん」

 

「ん?」

 

 どこからか、聞いたことのある声で名前を呼ぶのが聞こえた。ジョンはその方向へと顔を向けてみると、メリルとミリィがカメラを構えて近づいてきていた。

 

「あ、やべ」

 

 一応秘密結社という名目上、あまり衆目にさらされるのは良くないのだ。それに、二人をこっちの世界に巻き込みたくないと考えたジョンはここからの逃走を瞬時に決定した。

 

「クラウスさん、また後で」

 

 ジョンはそう言うと、痛む体に鞭を入れ全力でヘルサレムズ・ロットの町中を逃げるのであった。

 




お気に入りや、評価くれたら、飽きずに続けられるかも(/ω・\)チラッ
注意:万が一感想を書いていただける場合、今後の展開を予想するのだけはやめていただけるとありがたいです。続きを書く気がまじで無くなるので……(´・ω・`)

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