主人公の名前はジョン・ドゥとなりますわよ(名無しの男ってかくのに飽きたのですわ)
皆様、感想、評価、お気に入り、誤字脱字報告、大大大募集中ですわ〜!
名無しの男ことジョン・ドゥは、ライブラから与えられた一室で、大きく伸びをしていた。
ライブラに入って三日が経ったが、クラウスとスティーブン以外の構成員とは、まだ顔を合わせていなかった。
というのも、ほかのメンバーは別の案件に当たっており、本拠地を留守にしていたからだ。それに加え、ジョン・ドゥ自身も、スティーブンから渡されたライブラとヘルサレムズ・ロットに関する資料を読み込んでいる最中だった。
「それにしても、肩が凝るなぁ」
首を横へ倒すと、こきりという音が鳴った。凝り固まっていた筋肉が、わずかにほぐれたような気がする。
ヘルサレムズ・ロットについて何の知識もない彼は、この魑魅魍魎が跋扈する奇天烈な街を、危険な出来事に巻き込まれず歩くための知識すら持ち合わせていなかった。
ヒューマンが立ち入ってはいけない場所。
乗ってはいけないバスや電車。
関わってはいけない合法組織と、反対に関わっても構わない非合法組織。
そのすべてを、頭に叩き込むよう指示されていた。
日本で暮らしていると忘れてしまいがちだが、日本の治安は世界でもトップクラスに良い。アメリカでさえ、誘拐、強盗、殺人、強姦といった犯罪が、日本とは比較にならないほど発生している。
そして、このヘルサレムズ・ロットは、そのアメリカすら比較にならないほど、さまざまな意味で危険な街だった。
「そろそろ、本部に向かうかぁ」
朝の復習がてら資料を読み返していた彼は、もう一度大きく伸びをすると、資料をバッグへしまい、サングラスをかけた。
六百億の男。
それが今の彼を示す呼び名の一つとなっている以上、素顔をさらして街中を歩くなど、自殺志願者のすることにしか思えない。
そのため、外出する際にはヴァッシュかウルフウッドのサングラスをかけ、姿を変える必要があった。
「それにしても、ビビアンには申し訳ないなぁ」
今日はヴァッシュの気分だったらしく、赤いコート姿へ変身したジョン・ドゥは、ライブラから支給されたオートバイにまたがった。
ビビアンのダイナーには、ライブラの人間から、彼が退職する旨を伝えてもらっていた。
さすがに、あのまま働き続けていれば面倒なことになるのは間違いない。というより、毎日のようにダイナーが瓦礫の山へ変わりかねないため、やむを得ず退職することにしたのだ。
ビビアンは、その話を聞いてたいそうご立腹だったらしい。
もっとも、その事実を、ジョン・ドゥはまだ知らなかった。
「本当に、この街は毎日がお祭り騒ぎだなぁ」
毎日どこかで不思議な事件や物騒な出来事が起きている。それでも、この街で暮らす住人たちはたくましかった。
二年半前、この街は異界と融合し、ニューヨークという街から、ヘルサレムズ・ロットという街へと変貌した。
しかし、もともと街に住んでいた者たちは、そのときの出来事を正確には覚えていない。それどころか、異界の住人に対しても、ほとんど嫌悪感を示さなかった。
まるで、昔からそうであったかのように。
一方、街の外側からその変化を観察していた人々の中には、異界の住人を嫌悪し、排除しようとする者も多かった。
その影響で、ヒューマンしか立ち入れない区域が生まれたかと思えば、逆に異界の者しか入れない場所も生まれた。
そうして、さらに混沌とした空間が形成されていったのである。
「おっと、ここだ、ここだ」
ジョンはバイクを操作し、何とか駐車場へ入っていった。
ヴァッシュの身体になると、なぜかバイクの運転が非常に下手になる。
一応、ジョン・ドゥ自身はバイクの運転免許を持っていたため、どうにか運転できる程度の下手さで済んでいる。しかし、ヴァッシュ由来の運転下手というデバフは、想像以上に強力だった。
「スタンドよし。鍵よし。怪我なし。さて、行くか」
バイクがきちんと停車していることを確認すると、彼はライブラへ通じる、いくつもある扉の一つへ向かっていった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「こいつが新入りですかぁ?」
ジョン・ドゥは、目の前で自分を指さす男を、ぽかんと見つめていた。
ライブラの本拠地へ到着した後、ジョンはクラウスに仕える執事、ギルベルトとともに、資料の確認を行っていた。
ジョンは、そこまで物覚えが良いほうではない。
しかし、ギルベルトの教え方がよほど優れていたのか、ほとんど完璧といっていいほど、この街に関する基礎知識を身につけていた。
そうして、優秀な家庭教師のようなギルベルトと穏やかな時間を過ごしていた昼下がり。
ジョンにとって初対面となる男が、部屋へ姿を現した。
「どう見ても、ライブラに入れるような男には見えないんですがねぇ、ギルベルトさん」
「ほほ。坊ちゃまが入隊を認められたのです。今はまだ、この街についての知識が不足しているようですが、いずれ欠かせない人材となるでしょう」
「旦那がねぇ……」
ジョン・ドゥは、目の前の青年を観察した。
身長はジョンとほぼ同じか、わずかにジョンのほうが高い程度だ。
服の下には、よく鍛え上げられた肉体が収まっているのだろう。しかし、それを感じさせないほど均整の取れた体つきと、整った顔立ちをしている。
その一方で、粗野な言動と鋭い目つきからは、一筋縄ではいかない男であることが容易に察せられた。
「ジョン・ドゥです。よろしくお願いします」
「ジョン・ドゥ? 名無しの権兵衛だぁ?」
「彼には、自分の名前がないのですよ」
「名前がない?」
ジョンが名乗ると、白髪の男は怪訝そうな顔をした。
それも無理はない。
ジョン・ドゥとは、身元不明の男性や男性の遺体を指す仮称だ。その名を自ら名乗る者が、何の事情もないまっとうな人間であるとは考えにくい。
「彼は、上位存在に名前と、記憶の一部を奪われているのです」
「ほう。新しく名前をつけることはできないんですか、ギルベルトさん」
「それが、仮の名前をつけようとしたところ、その名前を名乗った途端、名前に関する記憶が消えてしまうという事態になりまして」
「はぁ。意地でも、そのクソ野郎はこいつに名前を持たせたくないってわけですか」
「そのようです。それでさまざまな名前を試した結果、どうにかジョン・ドゥという仮名だけは問題なく使えると分かりまして」
「それで、ジョン・ドゥか」
白髪の男は、値踏みするようにジョンを眺めた。
「まあ、旦那がいいと言っているなら、大丈夫なんだろうさ。俺はザップ・レンフロだ、死体野郎。せいぜい、ライブラに迷惑をかけ――のわっ!」
ザップが自己紹介を終えようとした、その瞬間だった。
何者かが、突然、彼の頭上へ現れた。
「あー、何でこんなところにいるのよ。靴が汚れるでしょ、クソ猿」
「んだと、雌犬!」
ザップの頭上に現れたのは、非常にスタイルの良い黒髪の女性だった。
黒いスーツに身を包んだ彼女は、突如としてザップの頭の上へ現れたうえ、悪びれる様子もなく、その髪に靴底をこすりつけている。
突然現れた美女を、ジョン・ドゥは呆然と見つめていた。
その視線に気づいたのか、女性はザップの頭に乗ったまま、にこやかに笑いかけてくる。
「こんにちは。私はチェイン・皇。あなたは……」
「あ、私はジョン・ドゥといいます」
「ジョン・ドゥ?」
「どけやぁ――!」
ジョンの答えを聞き、チェインが可愛らしく小首をかしげる。
その足元では、踏みつけられていたザップの忍耐が、ついに限界を迎えていた。
全身に力を込め、チェインを吹き飛ばすように立ち上がる。
しかし、チェインは慌てることもなく、ひらりと床へ降り立った。
ザップは、そのまま彼女へ詰め寄った。
「おい、雌犬! 俺の頭は、ヘリポートでも何でもねぇんだよ! 分かってんのか!」
「あら、ごめんなさい。ちょうどいい位置に頭があったものだから、つい踏みつけたくなって」
「んだと、ゴラァ!」
まるで子供の喧嘩のような低レベルの罵倒が、二人の口から次々と飛び交い、部屋を騒がしくしていく。
そんな二人を前に、彼らのノリについていけないジョンは、ただ固まることしかできなかった。
「ふふふ。本当に、お二人は仲がよろしい」
「「仲良くなんかない!」」
ギルベルトの言葉へ二人同時に反応する姿は、実にコミカルで、妙に息の合ったものだった。
「それで、どうして彼の名前がジョン・ドゥなのよ」
「けっ。上位存在に名前と記憶を奪われたんだとよ」
「それで……」
チェインは、ザップの説明を聞くと、すぐに納得したようだった。
上位存在に名前を奪われる。
普通ならば、映画や小説の中でしか耳にしないような話だ。
しかし、そんな言葉を誰もが即座に受け入れてしまう環境が、この街にはあった。
「じゃあ、ジョン。これからよろしく」
「ええ、よろしくお願いします」
チェインは手を差し出し、握手を求めた。
しかし、まだ日本人としての癖が抜けていないジョンは、反射的にぺこぺこと腰を折ろうとしてしまう。
途中で差し出された手に気づいた彼は、へっぴり腰のまま、どうにかチェインと握手を交わした。
「みんな、そろっているな」
ひととおりの挨拶が終わり、ようやく穏やかな空気に戻るかと思われた。
しかし、どうやら新たな祭り騒ぎがやってきたようだった。
お気に入りや、評価くれたら、飽きずに続けられるかも(/ω・\)チラッ
注意:万が一感想を書いていただける場合、今後の展開を予想するのはやめていただけるとありがたいです。続きを書く気が無くなるので……。
トライガンを……
-
漫画なら読んだことがある
-
アニメなら見たことがある
-
漫画、アニメどちらも見たことがある
-
見たことがない