完結してる作品は2件!
とりあえず頑張りますわ〜!
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渋滞のせいか、ドロドロとした車の排気音が鳴り響いている。そんなヘルサレムズ・ロットの夕暮れを、ヴァッシュの姿をしたジョンはのんびりと歩いていた。
作戦会議から数日が経ち、作戦決行の日はいよいよ明日に迫っていた。
作戦内容を伝えられてから今日まで、ライブラの構成員たちとの戦闘訓練や、射撃場での鍛錬、自らの肉体を使った筋力トレーニングなど、多種多様な準備を重ねてきた。
銃を握り、引き金を引くたびに、肉体へ記憶と経験が溶け込み、動きが最適化されていく。その感覚は、心地よいものだった。
しかし、その一方で厄介なことも起きていた。
「相当、ヴァッシュとウルフウッドに汚染されてきているなぁ」
訓練を重ねるたびに、ヴァッシュ・ザ・スタンピードという男と、ニコラス・D・ウルフウッドという男が歩んできた人生の記憶が、ジョンの身体へ入り込んできていた。
ジョン自身は、平穏な日本で暮らしていたはずだった。それにもかかわらず、荒事に対する嗅覚とでもいうのだろうか、危険を察知する能力は非常に高いものになっていた。
この身体になって、まだ数日しか経っていない。それでも、そのわずかな間に、ジョンは平穏な暮らしというものをひどく遠い存在に感じるようになっていた。
「ふうぅ……」
大きく息を吐くと、白い息がわずかに宙へ漂った。
今日は久しぶりに、凍えるような北風が吹いていた。吐くたびに生まれる白い息は、徐々に天へと昇っていき、やがて消えていく。
それが、まるで自分自身のように思えた。
二人の記憶を追体験するたびに、平穏に暮らしていた頃の自分の輪郭が薄れ、消えていく。
自分を取り戻したい。そのために戦っているはずなのに、戦えば戦うほど、自分という存在が失われていく。
なんとも矛盾した状態だった。
「もしかしたら、俺はもう、漫画のキャラクターなのかもしれない」
彼は『血界戦線』という物語を少しだけ知っていた。
『TRIGUN』の作者が描いている作品ということもあり、軽く読んだことはあったものの、学生時代にあったはずの暇な時間はどこへやら。社会人の忙しさに飲み込まれ、深く読み込むことはできなかった。
神々の義眼を持つ少年が主人公の物語――彼が知っているのは、その程度だった。
そんな世界に来てしまった彼は、自分が、かつて現実だと思っていた世界の人間ではなくなりつつあるという自覚を持っていた。
もしかすると、すでにこの新しい世界を動かす歯車の一つになっているのかもしれない。
「はぁ……あっ」
「きゃっ!」
物思いにふけりながら歩いていたせいだろう。ジョンは路地の角から出てきた人物にまったく気づかないまま、正面からぶつかってしまった。
相手が小柄だったためか、その身体を弾き飛ばし、地面に尻もちをつかせてしまう。
「あ、だ、大丈夫!?」
「せんぱーい、大丈夫ですか?」
「痛たたたた……。もう、どこを見て歩いているんですの!」
「いや、ご……め……」
ジョンは言葉を失っていた。
弾き飛ばしてしまった相手が、あまりにも――あまりにも、似ていたからだ。
「メリル?」
「どこかでお会いしたことがありましたか?」
「い、いや……」
そう。
ぶつかった女性は、あまりにもメリル・ストライフに似ていた。
メリル・ストライフ。
彼女は『ベルナルデリ保険協会』の災害調査員として、ヴァッシュ・ザ・スタンピードが引き起こす「災害」を査定するために派遣された保険外交員であり、『TRIGUN』の作中では、いわゆるヒロイン……枠の女性だ。
丁寧で上品な口調だが、正義感が強く、ヴァッシュが引き起こすトラブルに真正面から立ち向かっていく。その心の強さは、多くの読者を魅了していた。
そんな彼女が、目の前にいた。
「だ、大丈夫ですの?」
「はっ……」
その瞬間、ジョンの中でヴァッシュの記憶が、制御できないほどの勢いであふれ出した。
彼女と交わした会話。
彼女とともに過ごした旅。
そして、彼女へ向けられていた、あたたかな思い。
ジョン自身は彼女に会ったことなどない。それなのに、どうしようもなく懐かしかった。
彼女の顔を見つめていると、ジョンの頬を一筋の涙が伝った。
「だ、大丈夫ですの!? ミ、ミリィ! わ、私は悪くありませんわよね?」
「どうなんでしょうね、先輩」
「笑っていないで、あなたも手伝って!」
「ハハハハハ!」
メリルの後ろにいたのは、大きなカメラを抱えたミリィ・トンプソンだった。
長い金髪に、非常に大柄な身体。彼女もまた、記憶の中にいるミリィそのものだった。
メリルとミリィのやり取りを見ているうちに、ジョンは感情を抑えられなくなった。
彼女たちと会ったことなどないはずなのに。
ここは、まったく異なる世界であるはずなのに。
ヴァッシュたちが馬鹿騒ぎをしていた、あの日々が思い出されてしまったのだ。
「ひぃっ! 泣いたと思ったら、今度は笑い始めましたわ!」
「えーと……本当に大丈夫ですか?」
「あ、ああ。ごめん、ごめん。ぶつかって悪かったね。大丈夫だった?」
「そ、そうですわ! あなたがよそ見をしていたから、尻もちをついたじゃありませんの!」
「先輩もよそ見をしていましたけどね」
「そこ、だまらっしゃい!」
「いや、本当にごめん。懐かしい友人の顔にそっくりでさ……」
「そ、そうですの?」
ジョンが笑うのをやめて謝り始めると、彼のことを心配していたメリルはどこへやら。先ほどまでの勢いを取り戻し、ジョンを責め立ててきた。
そんなメリルへ、ミリィが横から容赦なく突っ込みを入れる。
なんともいいコンビだった。
「んんっ。私はメリル・ストライフ。ヘルサレムズ・ロットで活動しているフリーのアナウンサーですわ。こちらはミリィ・トンプソン。一緒に活動しているカメラマンよ」
「どーも」
二人の名が、まさしく『TRIGUN』に登場する彼女たちと同じであることに、ジョンは驚いた。
だが、深く考えても仕方がないという結論に、すぐに至った。
なぜなら、この世界と『TRIGUN』の世界は、同じ作者が生み出した世界なのだ。
もしかすると、ファンサービスで彼女たちが輸入されているのかもしれない。あるいは、自分が知らないだけで、本編のどこかに登場していたのかもしれない。
「それで、あなたの名前は?」
「へ?」
「あなたの名前ですわ」
「あー……うん。僕はヴァッシュ・ザ・スタンピードっていうんだ。よろしく」
「ヴァッシュさんですわね。よろしくお願いしますわ」
なぜヴァッシュと名乗ってしまったのか、ジョン自身にも分からなかった。
ジョン・ドゥと名乗れば、不審がられると思ったからなのか。
ヴァッシュの姿をしているせいで、反射的にその名前が口をついて出たのか。
いくつか理由は思い浮かぶものの、これだと断言できるものは何もなかった。
「それで、ヴァッシュさん。お詫び代わりに、何か面白い話題はありませんこと?」
「面白い話題?」
「そう。私たちは、ヘルサレムズ・ロットの面白い話題を探しているんですの。異界人のおかしな特性や、この街ならではの風物詩のようなものですわね」
「へえ、そういうものを探しているんだ。ということは、二人は最近この街に来たの?」
「そうなんです」
「へえー」
二人は最近、この街へやってきたらしい。
成人男性でさえ、当たり前のように危険な事件へ巻き込まれる街である。そんな場所へ、女性二人でわざわざやってくるとは。
命知らずなのか、怖いもの見たさなのかは分からないが、非常に危険なことだけは間違いなかった。
「それで、何か面白いネタはありませんの?」
メリルは目をドルマークにして、ジョンへ詰め寄ってきた。
「ははは。いやぁ、僕も最近来たばかりだから、そこまで詳しいわけじゃないんだよ」
「はぁ……。それならそうと、先に言ってくださいまし」
ジョンが頭をかきながら答えると、メリルはため息をついた。
そして、鞄の中をごそごそと探り、一枚の紙を取り出してジョンへ差し出した。
「これは?」
「私たちの連絡先ですわ。ぶつかったお詫びは、面白いネタ一つで我慢してあげます。何かネタを仕入れたら、ここへ連絡してくださいまし」
「はぁ……」
「行きますわよ、ミリィ」
「ああ、待ってくださいよ。せんぱーい」
メリルとミリィは、嵐のように去っていった。
あまりの勢いにあっけに取られたジョンをその場に残し、二人はヘルサレムズ・ロットの雑踏の中へと消えていく。
「いやぁ、すごい勢いだったなぁ」
二人は『TRIGUN』の最終巻で、テレビ局員になっていた。
おそらく、彼女たちはその設定を引き継いでいるのだろうと、ジョンは考えた。
そして、面白いネタを見つけたら、連絡してみようとも思った。
別に、彼女たちとの縁を深めたいわけではない。
ただ、ヴァッシュたちの記憶が、彼女たちにもう一度会いたいと訴えているような気がしたのだ。
そんなことを考えていたジョンは、ふと思い出し、手にしていた袋の中をのぞき込んだ。
「あ……卵、割れてるし……」
先ほどメリルと衝突した際に、買ってきたばかりの卵が割れてしまったらしい。
運悪く、卵のパックを小袋へ分けて入れていなかったため、レジ袋の中は流れ出した卵でぐちゃぐちゃになっていた。
見るも無残なありさまだった。
「はぁ……最悪だぁ」
ジョンはがっくりと肩を落とし、家路につくのであった。
お気に入りや、評価くれたら、飽きずに続けられるかも(/ω・\)チラッ
注意:万が一感想を書いていただける場合、今後の展開を予想するのだけはやめていただけるとありがたいです。続きを書く気が無くなるので……(´・ω・`)
トライガンを……
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漫画なら読んだことがある
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アニメなら見たことがある
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漫画、アニメどちらも見たことがある
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見たことがない