男でも、自由に生きて何が悪い! 作:フルーツポンチ侍
「今日からここで働くことになりました、どうぞよろしくー」
そんなことを言いながら目の前の光景に目を向ける。
女共の冷たい視線が突き刺さる。人によっちゃご褒美になり得るが……バイト、やめよっかな。
「アタシの孫だよ。今日からこの一番組で管理人として働いてもらうからよろしく頼むよ」
ババアの言葉にはぁーいと返事する隊員たち。
一番前に座るこのちゃんの笑顔で向けられた視線だけが癒しです。
「(よろしくお願いします!りく兄!)」
そんな気持ちが伝わる。このちゃんみたいな妹分を持ててりく兄、感激の涙が出てくるァ。
「さて、紹介は終わったよ。各自持ち場に戻りな」
「「「はい!」」」
うーん、こう見るとうちのババアもちゃんと組長してるんだなと感心する。
歳もだいぶ食ってんのにまだまだ若い。
「アンタは……木乃実!」
「は、はい!」
「このバカ、案内してやりな」
親指で指すな。へし折るぞ。
「はい!さ、りく兄、行きましょう!」
「おう、デートだな」
このちゃんとお家デート。……もう響きからして最高だな。
「……へ?で、デート…?」
「さ、行こかー」
「あ、ま、待ってくださいー!」
「━━それでここがりく兄の部屋ですね」
「なるほど、大体分かった」
あれから数時間。寮内を案内し終わり一段落がついた。
まあ広い。広すぎる。これからこの建物の掃除なり、隊員たちの隊服とかの洗濯もしたりと考えただけでもかなりの仕事量になる。
……うーん、このバイト不正解だったかもしれん。
「最初は色々困ることあると思いますけど頑張りましょう!私も多少は手伝えるので!」
前言撤回。
「それじゃ、早速━━」
と、その時だった。
━━……ズズゥゥゥゥン…!
「おん?」
建物が揺れた。地震か?魔都に地震なんてあんのか?
「醜鬼ですね。寮の近くに出たんだと思います」
「ほえー、なるほど」
「私は一応出てくるのでりく兄は待っててください!」
「あーい、気をつけるのよー」
走り去るこのちゃんの背に声をかける。
元気があってよろし。
さて、俺は窓の外からでも見てみるか。……と、
「はー……デケェな」
人の数十倍はある体格。あんなでかい個体もいるんだな。
おっと、玄関からこのちゃんが飛び出して行った。ババアもいる。と言っても他の隊員たちが連携して醜鬼をもう追い詰めてるから出番は無さそうだな。
うーん、これは早い連携。素晴らしい。
お、このちゃんがこっちに気づいた。手を振ってきた。可愛い。手を振り返しておこう。
さて、どちらにせよ問題なく片付きそうだな。こんな生活が今後待っているとは。ま、俺は寮の管理してればいいだけだし気楽に行こう、気楽にな。
▼
「洗濯よろしくー」
「ご飯は〜?」
「ここほこり残ってるんだけど?」
「これ、アイロン掛けといて」
3日が経った。結論を言おう。クソだ。
我儘が多すぎる。いやまあ確かに?魔防隊という危険なお仕事をしてる訳ですから?多少は労ってやろうと、優しくしてやろうと思ってましたけど?それでも限度はあるやろがい!
昔の俺だったら、即、拳飛ばしてたぞコノヤロウ。
このちゃん?あの娘はいい子だよ。自分のことは自分でして暇になったら俺の手伝いしてくれるもん。天使超えて聖女やで。……ランクダウンしてね?
「りく兄!お疲れ様です!」
「ん?おぉ、このちゃん。おつかれー」
タオルを持って駆け寄ってきてくれる妹分。
ほんとに、ほんとにありがとう。このちゃんだけがモチベだよ。
「ふぃー」
「……あ」
持ってきてくれたタオルで汗を拭いているとこのちゃんがこっちを見ていた。
「どした?」
「え?あ、いやー、そのー……」
言いにくそうにモジモジとするこのちゃん。
まさか!この雰囲気は!
「えーと……疲れてるところに悪いと思ってるんですけど……お願いがあって…」
「OKいいよなんだ?ばっちこい」
「そ、即答ですか!?……いや、あのー……久しぶりに特訓してくれません…?」
「……」
特訓かーい。ちょっと期待してたのになー。
いや、でももう答えは決まってるさ。
「あ、無理にとは言いませんよ!?おつかれだと思いますし、気が乗った時で大丈夫なので━━」
「よし、いつ始める?今か?今なのか?」
「うぇえ!?じ、じゃああの、今からお願いします…?」
「よし!行くぞ!着いてこい!」
可愛い可愛い妹分との大切な時間だ。ありがたく申し出を受けさせてもらうぜ。
「つ、着いて来いって、訓練所の場所わかるんですかー!」
……分からねぇぜ。
かっこよく決めたつもりがかなりダサくなった。とぼとぼとこのちゃんの後を俺はついて行った。
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