ダンまちの世界で生きてみた。   作:排他的経済水域

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長い方がよさそうなので今回はちょっと頑張って6000文字です。
なるべく書き込むつもりですが、話はキリのいい所で終われるよう頑張ります。


第11話 出会い

畜生、畜生、畜生っ!

 

ベルは走る。歪められた眦から水滴が浮かんでは、背後へと流れていく。

頭の中を過ぎるのは先程の出来事。

惨めな自分が恥ずかしくて恥ずかしくて恥ずかしくて、笑い種に使われ侮辱され失笑され挙句の果てには庇われるこんな自分を、初めて消し去ってしまいたいと思った。

(馬鹿かよ、僕は、馬鹿がよっ!!)

青年の放った全ての言葉がむねをえぐる。

惰弱、貧弱、虚弱、軟弱、怯弱、小弱、暗弱、柔弱、劣弱、脆弱。

彼女と親密になるために「何をすればいいか分からない」では無い。

「何もかもしなければ」、自分は一人の少女の前に現れることさえ許されない。

殺意を覚えるのは蔑んだ青年でも馬鹿にしていた他人でもない。

何もしてないくせに無償で何かを期待していた、愚かな自分に対してだ。

(悔しい、悔しい、悔しいっっ!!)

青年の言葉を肯定してしまう弱い自分が悔しい。

何も言い返すことの出来ない無力な自分が悔しい。

彼女にとって路傍の石に過ぎない滑稽な自分が悔しい。

彼女の隣に立つ資格を、欠片も所持してない自分が、堪らなく悔しい。

 

深紅の双眸が遥か前方を睨みつける。

迷宮の上に築き上げられた摩天楼施設が、地下に口を開けてベルを待っていた。

目指すはダンジョン。目指すは高み。

吊り上げた瞳が涙を溜め、ベルは闇に屹立する塔に向かってひた走った。

 

 

 

豊穣の女主人を後にし、レイは今後の方針を考えながら歩いていた。

 

先程ロキファミリア(ベート)に喧嘩を売った。まぁ後悔はないし印象をつけれたと思う。

これを経てフィンが多少変わるかもしれないが、まぁそれはそれだ。悪化するようなことはないだろうし。

今後俺はどこに向かうべきだろう…

 

ロキファミリアに参加し、高みを目指す?

 

高みを目指すつもりはあるが、それはロキファミリアでなくてもいい。それこそベルとともに進めばいい、俺にはそれが出来るスキル(英雄追想)がある。

 

ならばヘスティアファミリアに入るか?

 

いや、今俺が入れば、ベルの成長の機会を潰してしまう可能性もある。入るにしてもそれはまだ先でいいだろう。

 

闇派閥にでも入るか?いや顔バレして都市の敵になるのはやだな、殺したいやつもいないし…いや?

あれなら可能だ。

いいかも知れない、今の俺なら可能だ。よしそうと決まれば…

 

そう今後の方針を考えていたが頭を切り替える。

 

「まぁ今は一応ベルのところに向かうか、死にはしないだろうけど」

 

そう未来の英雄を心配4割、ワクワク6割の心情で見に行くことを決め、

レイはベル・クラネルの戦いを見るためダンジョンへと向かった。

 

 

 

 

「はっ!せや!」

 

ダンジョンに入りかなりの時間がたった気がする。

ここは5階層?いや6階層か…頭に昇った血が段々と落ち着き初めてようやく自分の現在地を把握する。

目の前の壁が割れ始め、ウォーシャドウが2体でてきた。新米殺しの異名を持つ奴らは160c程で僕と同じぐらいの体躯をしている。

僕は唯一の武器であるナイフを手に構えを取りウォーシャードを相手に疾走する。

前の方のウォーシャードを切りつけ魔石をごと体を裂く。

その後ろから向かってくるウォーシャードには蹴りをお見舞し、全力疾走の速力を乗せた拳で顔をなぐりどちらも灰に帰る。

 

(ぼろぼろだ…)

 

どうして僕は生きてるんだ?

強くなってる?

以前の僕なら勝てなかったはずだ…

でもまだ足りない…もっと早く、強く、あの人と同じ高みに!

自分の力の上昇を感じつつ足りないと嘆く。そうしていると

周りの壁がいっせいに割れだす。

まるで逃がさないとでも告げるかのように…

 

「5階層と6階層ではモンスターの出生頻度が格段に上がる。」

 

自分のアドバイザーであるハーフエルフの女性のことはを思い出しつつ、先程屠ったウォーシャドウの死骸へ腰を折る。

灰に変わった肉体とその中に埋もれているドロップアイテム「ウォーシャドウの指刃」へ手を伸ばし即席の武器を左に手に装備する。

 

━━━━━やってやる。

 

辿り着きたい高みがある。

こんな場所で躓いている暇はない。

自分を包囲し始めているモンスター達から威嚇の声が上がる中、想いを新たにする。

そうして僕はモンスター達と激突する。

 

 

 

 

 

ダンジョンの入口まで来た。

2回の昇華を果たしたことによって俺の身体能力は大幅に以前と違う。

キメラとの戦闘でLv2時点のズレは修正することができた。

だがLv3にランクアップしたことによってまたズレが生じてしまった。

まぁそれは仕方ない、ランクアップすること自体は喜ばしいことなのでまぁいい。

ダンジョンの前の守衛に会釈をしつつ、摩天楼の地下に入る。

守衛には少し変な顔をされたが特に何も干渉されなかった、恐らくこの時間帯にダンジョンにはいる人間が珍しいのだろう。

 

1階層へと向かう螺旋階段を下りながら自分の戦闘面での課題を探すためステイタスを確認することを決める。

大賢者に記憶させておいた自分のステイタスを現在のLv3のステイタスを合計させる。

 

力2001

耐久1994

器用1944

敏捷2204

魔力1900

 

これが今の俺の合計値だ。

こうしてみるとなかなかにいいペースだと思う。本来その人がいちばん得意とすることでA、つまり800弱いけばいいほうというのが前世で色々なステイタスを見た俺の考えだ。

その考え方に基づけばこのステイタスはかなり高い数値となる。多分原作のLv2時点のベルを越しているのでは無いだろうか?

このペースでステイタス、Lvをあげることが出来れば、Lv5時点でLv6の敵と相対することも出来るかもしれない。

だがそもそもどれくらい貯金が反映されるかも不明なんだよな〜

ランクアップでどれだけ成長するかは分からないがそれは100.200という数字ではないだろう。

 

仮に計算してみるか

Lv2時点でのベルのステイタスの合計値は?

そう《大賢者》に問うと俺の頭の記憶を調べ、結果を表示する。

はー、便利な力だ。

そう自分のスキルの利便性を改めて認識しつつ計算に戻る。

 

ベル・クラネル

Lv2時点の合計値

力2070

耐久1929

器用2082

敏捷2351

魔力1634

 

という結果になった。耐久と魔力以外負けてるだと…?おいおいまじで?ベル君えぐ過ぎない?超えてるなんておこがましい。

まだまだ負けているってことか…これからはランクアップできるようになっても限界までステイタスを鍛えよう。

今の俺が唯一勝ってるのは時間だけ、ならばそれを最大限利用させてもらう。

まぁ+スキルもあるから単純には比較できないよな〜

 

俺には《闇の権能》による身体能力上昇、武器作成

《大賢者》による操作補助や思考補助

サンダー・ボルト》による火力

 

ベルには現時点ではないが

《英雄願望》によるチャージ

《ファイヤ・ボルト》という速攻魔法などがある。

 

さらに技や駆け引きも絡んでくるのでどちらが勝つとかはまだ判断できない。

ならば努力するしかないだろう、隣にたつのが目標とはいえ、足でまといなんてまっぴらだ、どうせならベルを助けられるぐらいになりたい!

まぁまずはベルに強くなってもらうのと俺も負けないくらい強くならなくちゃいけない。

 

1変化したスキルの性質を理解する。

2新しい武器の調達

3俺自身のステイタス以外の能力の上昇

 

俺が今後やらなければ行けないことはこんなとこか?

そう考えを改めているとようやく1層の入口の階段まで着く。

 

「ベルが死んでてもやばいし、さっさと行くか!」

 

そう頭を切りかえ1層へ足を踏み入れ走る。

 

加速、加速、どんどん自分が早くなってることがわかる。

これでもまだ全速力では無いのだから本当にすごい。

Lv1では5階層まで行くのに2時間ほど要していたが、今なら1時間を切るかも知れない。

 

これがランクアップ、器の昇華による効果か。

Lvがひとつ変わるだけでもかなりの差がある、それこそ肉体と精神がズレるくらいの差が、Lv5の状態では勝てない敵でもLv6になれば圧倒できるようになったりする。

そう考えると戦闘中やダンジョン内でステイタス更新をすることの出来る《神の偽能》はかなり有能な能力なんだろう、それこそ戦況をひっくり返せるくらいのレベルの。

神を探すのが面倒でこの能力を作ったがそれがここまで便利とは思わなかった。冷静に考えて戦闘中強くなり続けるやつなんて敵からしたら恐怖以外の何物でもないだろうしな〜

 

自分の力の飛躍、そして能力の有能性を感じながらベルの現在地を予測する。

 

俺とベルの速度はかなり違う、一応軽めに走ってダンジョンに向かったとはいえそれはベルの全力疾走と変わらないだろう。そしてこのまだ残っているモンスターの灰と魔石からしてベルがここを通ったのはわかる。てか魔石もったいないし危ないな、回収しておこう。

だがベルの今現在の細かい位置は分からないな。ならば…

 

《大賢者》使用、地図 ベル・クラネルをマーカーを設置

 

《大賢者》に命令を下し俺より下にいるであろう、ベルに対して位置のわかるマーカーを設置、色を白。マーカーの横にベル・クラネルと書いてある。

 

はーーー、《神の偽能》も大概チートスキルだが、《大賢者》は利便性においては都市最高のスキルだろう、自分の位置、思考、操作全てを補助してくれている。

この地図なんて盗賊(シーフ)からしたら泣いて欲しがるスキルだろう。

それがスキルの中の能力のひとつでしかないと…エグイなほんと。

まぁ便利なので使わないなんて選択肢はないが。

原作内で魔法を封じる呪詛は登場したがスキルを封じる呪詛は登場していない。もしスキルを封じられたら俺は他の冒険者以上に弱体化するだろう、ステイタスはともかく技と駆け引きにおいては、スキルを使用しなければ今のベルにすら劣るだろう。

スキルをしない状態で訓練するのもありだな、今後どんな奴が出てくるかもわからん。

 

さてととりあえずベルは今…6階層か、原作通りの場所だな、よし近くまで行こう。せっかくだから全速力で!

そう自分の体を最大限動かすため、何度か軽く跳ねて助走姿勢を取り、疾走を開始する。

 

 

 

 

はぁはぁ、あれからどれくらい戦い続けただろう?倒した数はとうに10を超え、もうすぐ20に届きそうだ。

 

「せぇやぁー!!」

 

最後のウォーシャドウをナイフで切り裂き、どうにかこの戦いを切り抜けた。

 

そして倒したことで気が抜けたのか、床に背を打ち付ける。

ああっくそ体がもう動かない、身体中に切り傷、そしてウォーシャドウの返り血。手は抜き身を持っていたため血だらけで感覚も少し鈍い。

頭に昇っていた血が完全に落ちたせいか、冷静に思考し始めると自分の行った行動の愚かさを自覚する。

ダンジョンに防具もつけず、準備もせずナイフ1本で未到達の階層に進出か…エイナさんが聞いたら鬼のように怒るだろうな。

 

そういえば豊穣の女主人にお代を払っていない、シルさんには悪いことしたな…謝ったら許してくるかな?

神様にも何も言わずここまで来てしまったし、もしかして心配してるかもな…

怒りに染まり滞っていた思考が、やっと機能し始める。

考えていると自分の頭の悪さに嫌気がさす、問題しか起こしてないでは無いか…

 

「か、帰らなきゃ…帰って神様に謝って、シルさんにも、お店の人達にも…謝らなきゃ」

 

どうにか自分の体を立たせ、深呼吸をする。

そして周りの警戒に戻ろうとすると

 

「おい、貴様」

 

知らない男の人から話しかけられた。

服装は冒険者とは思えないもので白い装束のような格好をしている、その男の人以外にも2人ほど同じ格好をしている

ファミリアで服装を合わせているのかな?

そんな的はずれな考えをしていると男の人から再度声をかけられる。

 

「貴様、最近犬のようなモンスターを狩ったことはあるか?」

 

「犬?ですか?いえ、知らないです。」

 

「そうか、お前でもないか…」

 

素直に答えたあと、男の人から血の匂いがすることに気づく。

よく見るとあの人手が血だらけだ、怪我…かな?

 

「あの?手怪我してるんですか?大丈夫ですか?」

 

「ああ、これは返り血だから平気だ。」

 

返り血?この近くに赤い血を出すモンスターはいないはず、それになぜ拭かないだ?

違和感が募り始め、自然とその男たちから距離をとる。

それに気づいたのか、男が距離をつめ、話しかけられる。

 

「少年」

 

「はい、な、なんですか?」

 

「悪いが、我々のため、尊い犠牲となってくれ」

 

「は?」

 

何を言ってるんだ?この人。

言葉の意味がわからず一瞬思考が停止する、その瞬間白装束の男が間合いを詰め、腰からナイフを取り出し斬りかかってきた。

 

「くっ!」

 

僕はまだ鞘に納めていなかったナイフでどうにかその攻撃を防ぐ。

重い!!

明らかに僕と男では力の差がある、今の一撃でそれを如実に感じる。

しかもその男の仲間が2人もいる、勝ち目はほぼ無いに等しい

 

「い、いきなり何をするんですか!?」

 

「聞こえなかったか?我々のため犠牲となれ、貴様がキメラの存在を知らなくても、我々は貴様に姿を見られた時点で殺すつもりだった。」

 

な、何を言ってるんだ?この人は?

 

「貴様に不備はない。だが、そうだな…強いて言うなら運が悪かった。それだけの事だ」

 

くっ…話が通じる気がしない。

どうする?戦うか、いや勝てるわけが無いただでさえ先程の戦いで消耗している、その上で防具すらまともに付けていない状態で勝てるわけ…

男がまた向かってくる、後ろのふたりは見ているだけだ。

舐められてるのか?一体一なら勝てるか?思考をめぐらせていると男がどんどん近づいてくる。

 

畜生!

そう思い男に向かって刃を向け、斬りかかる。

男はそれを軽く防ぎ、僕に蹴りをお見舞する

 

「ぐはっ!!」

 

蹴られた衝撃で胃の中のものがでてくる、床を転がり男から距離ができる。どうにか勢いを殺し、口を拭い体勢を立て直す。

はぁはぁ、息が切れる。クソ、こんな所で死んでたまるか、まだあの人の隣に立ててない、あの人に認識すらされてない。そんな中死にきれるか!

 

心の中の憧憬を思い出しながら目の前の男を見る。

男はニヤニヤと顔を歪めながら僕を逃がさないよう見てくる。

畜生!!、死んでたまるか!

 

僕は全力で男に疾走を開始する。

今までダンジョンで鍛えた2週間そのすべでを乗せて、思いっきり男をナイフで斬り掛かる!

 

「せぇやーー!!」

 

「ふ…駆け出しにしてはやるが…だが遅いな。」

 

男は僕の渾身の一撃を軽くナイフで弾き、僕の喉元にナイフを向け刺そうとする。

 

くそ…こんな所で…

 

自分が殺されると自覚し後悔が募る。だが遅い…

 

神様ごめんなさい…

 

キィン!!!

 

金属がはじかれるような音がした

音と共に男が僕から距離をとる。

ナイフが弾かれた…?なんで?

男を見ると困惑した様子で僕を見る、僕は自分の喉元を見ると黒い闇のようなものが僕の喉に張り付いている。

なんだ?これ?

自分に起こった異常を確認しようと闇に触れようとすると

後ろから首を叩かれ、意識が飛びそうになる

 

「よく頑張ったな。あとは任せとけ」

 

後ろから知らない男の人の優しい声が聞こえた、僕はその男の声に何故か安心し抱えれながらゆっくりと気絶する。

 

 

 

「き、貴様何者だ!?」

 

「あ?俺か?うーん…名乗るほどの者じゃないけど、こいつのファンかな?」

 

「は?」

 

白装束の男が困惑した様子で俺を見てくる。

だがそんなことはどうでもいい、どうせ殺す。

 

「さて、俺の推しを殺そうとしたんだ、死ぬ覚悟はできてるだろうな?」

 

俺は困惑している修道服の男たちを睨みながら、怒りに任せてそう告げる。

 




一人称
俺 レイ

僕 ベル

このふたりは一緒に書くことが多くなりそうなので、もし誰が喋ってるのかわからなくなったら一人称で判別してください。
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