第34話 白兎と剣姫
塔の前に行くとアイズとエイナさんが話していた。
ん?アイズがこっちを見て…え?こっちに来たんだけど
「あの…怪我…」
「ん?あぁ怪我ですか、お陰様で完全に治りました。剣も持ってきてもらって本当にありがとうございます。」
「…なら…良かった」
「レイくんアイズ・ヴァレンシュタイン氏と知り合いなの?」
これは…どう説明すべきだろう?
たしかに知り合いなのだが、知り合いと言っていいのか?
「少し前に助けてもらったんですよ。ですよね?」
アイズに目線をやりながら返事をする。
「…うん…この前…中層で…」
あーまずい。エイナさんには中層には言ってないことにしていた気が…
「中、中層!?レイくん!!君もうそんなところまで!!」
やっぱり…これはお叱りコースか?
これから
「だめじゃない!ソロで!君はまだオラリオに来て1月も経ってないんだよ!?」
はぁやっぱりお叱りコースかよ…心配はありがたいし、この人の教えてくれるダンジョンの情報は価値があるし、正しいんだが、いかんせん生き急いでる俺とは相性が悪い…
「わかってますよ、だから最近はベルと訓練したりしてますよ?」
アイズの顔が一瞬驚きに染まる…
ベルという名前に反応したらしい
これは…ベルとくっつけるいいチャンスかもしれない
「大体、あいつの方が異常ですよ、あいつもう11階層ですよ?成長しすぎですよ」
「それは…そうだけど…あ!話をそらさないの!」
アイズの興味をそそりながらエイナに対して煙を巻く。
「…どうして?」
そんなことをしていると…アイズが呟く。
「どうして貴方は…貴方たちはそんな速く成長できるの?」
どうしてか…ランクアップの話なら俺は例外だけどな、設定では2年くらいたったことにしてたはずだ。
「俺はそんなに速く成長できてないですよ。ランクアップに結構かかりましたし」
ここははっきりと言っておく。
「…ううん…そういうことじゃない」
アイズは否定する。
「貴方はあの人と戦って生きてた…あの黒衣の人と」
黒衣…あの男のことか…
「…」
「それに…貴方は立っている…こんなに早く」
立っている…か。そりゃあリライフがなければ死んだも同然だったが、そういうことじゃないんだろうな
「その理由を知りたい…貴方は何者なの?」
「…」
ふざけるな、立つに決まっているだろ…
ヘルメス・ファミリアが二人死んだ。
原作通りなら10人以上死んでいた。それが二人になった…
その結果だけ見れば俺の作戦をやる価値はあったのかもしれない。
だが…ふざけるな。
その二人が死んだのは俺のせいだ。
俺がもっとうまく事を運ぶことができたら、二人死ぬこともなかったんだ。
もっと力がいるんだ…だからあんたにかまってる暇はない。
「剣姫…あんたのきもちはわかった。だがわるいが…俺の詮索はするな」
「…!」
強めた語彙。それを聞いた剣姫は目を見開きすぐに俺に謝罪してくる。
俺の気を害したことを悪く思ったんだろう。
「ご…ごめ「ただ…お前の興味の1つ。ベル・クラネルへの紹介。それだけはできる」
そこに割り込むように挟む。
直接こいつにかかわるメリットは殆どない。
だがこの状況を利用しない手もない。
それに俺の個人的な感情でアイズに強くあたってしまった。
これで詫びにはなるだろう。
「理由は本人に聞いてくれ」
あくまで俺は関与しない。
それを含めて伝える。
「どうする?」
アイズは少し考えた後、俺の目を見て言う。
「…会いたいです」
「おっけー、今から呼ぶ」
先程とは一変した軽い返事をしてベルの位置を小声で探す。
「《大賢者》マップ。ベルの位置検索」
マップに表示されたのはこちらの方に向かってくるベルだった。
(おっ。丁度いいタイミング。さすが原作主人公)
「少し待っててくれ」
アイズとエイナに一言伝えてベルの方へと軽く走る。
「ベル!」
メインストリートの端に見つけたベルに声をかける。
「レイさん?」
「時間あるか?あるならちょっと着いてきてくれ」
「え?あっはい。わかりました?」
返事が聞こえたと同時に手を引っ張りながらエイナさんとアイズのもとへと戻る。
「あのなにか用…え!!?あ、あ、あ、アイズさん!?」
アイズが見えた瞬間、オーバーリアクションで逃げようとするベルだがしっかりと手を抑えながら引っ張る。
「ほい、おまたせ。あとは自分で頼むわ。」
アイズにそう声をかけ、エイナさんとこの場を去る。
「ベル君!逃げちゃだめだよ!」
エイナさんも声をかけ俺について来る。
「ところで…レイくん?」
少し離れたところにきた俺とエイナさん。
エイナさんは仕事に戻るだろうと俺は│愚者《フェルズ》の指定した店まで向かおうとしたが声をかけられる。
「はい?」
気の抜けた返事をしながら後ろを向くとそこには美人のエルフには似つかわしくない怒気を感じた。
「ヒィ…。」
悲鳴が周りの冒険者から聞こえた。
「24階層に行った件の話がまだ終わってないよ?」
あー…終わった。
その後のお叱りは1時間ほど続いた。
途中戻ってきたベルも巻き込まれ、(巻き込んだという方が正しい)
ギルドのロビーで二人の冒険者は正座させられ怒られた。
逃げることもできたがしなかった。
不思議とその時間は苦ではなかったから。
自分への不甲斐なさまみれの俺は叱られたかったのかもしれない。
ただ…エイナさんを怒らせるのはもうやめよう。
そう、心に誓う日でもあった。
お叱りが終わった後、ベルからアイズと特訓することになったと伝えられた。
これで原作と同程度には親密になれるだろう。
ベルはダンジョンへ
俺は
「いらっしゃい」
オラリオの中心から少しそれたノームの貸金庫…
その中から予めもらった鍵の金庫を開け、中身を見る。
中身は今回の協力料+ローブだった。
これは…
俺は店を出て裏路地へ
人がいないことを確認後そのローブを着る。
「やっぱり透明になれるローブか」
そのローブは原作でベルたちが借りていた透明になれるローブだった。
これでウラノスのところまで来いってことかな?
そう考えウラノスのもとまで向かう。
途中エイナさんに気づかれそうになってヒヤヒヤしたが、それ以外は問題なくウラノスのもとまでたどり着くことができた。
「よく来たな、レイ…」
中に入ると祭壇の上から話しかけられる。ウラノスだ。
「ご無沙汰です。」
軽くお辞儀しながら返事をする。
「今回の件ご苦労だった。」
ウラノスからそう言われて俺は少し腹がたった。
ウラノスではなく、自分に。
「任務は失敗だけどな」
そう吐き捨てるようにいうと左の暗闇から声が響く。
「そのようなことはないだろう…君の活躍で確実にヘルメス・ファミリアの被害は減った。」
「でも…」
その言葉を聞かされ俺はまた自分の不甲斐なさに嫌気が刺す。
確かに被害は減った。
でも亡くなった人が二人もいる。
あれだけの準備をしながら結末を知っておきながら…俺は失敗したんだ。
「完璧を求めすぎるなレイ、君は多くを望みすぎている。それは君の美点でもあるが…悪癖でもある。」
何百年も生きてきた上での
「ああ…」
気の抜けた返事をしながら、頭を切り替える。
「それで君の話に出てこなかった男…あれは誰だ?」
男…おれの手足を切り飛ばした男か…
わからない。それが俺の答えだろう。
でも…
それがいますべき正解か…
すべてを話すべきことか?
少し考えた後…答えを決める。
「それを話す前に1つ伝えなくちゃいけないことがある。」
「俺は異世界人なんだ。」
この世界に来て初めて俺はその事実を明かした。
主人公の気持ちの出し方がムズい