中学生達がヤンデレになるまでの過程の話   作:佐藤サイトウ

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僕の知り合いの話


二日目

小説原稿十三

 

 

「おはようございます、雄家さん。こんなに朝早くにこんな場所にいるなんて。少し驚きました」

「おはよ、美姫。真面目なのか不真面目なのかの捉え方は君に任せるよ」

 トンネルの入口、黒い鞄を背にした白髪の少女がいた。

 昨日見せたのと同じ無表情で、彼女はそこにいた。

「これを、受け取ってください」

 青い包みを僕に差し出す。

 なんだかわからないけれど、とりあえず受け取ってみることにした。

「お弁当です。お口に合うかどうかわかりませんが」

「え」

「どうやら、雄家さんはお弁当を持ってきていないらしいので。ご迷惑とは思いますが作ってまいりました」

 僕の為にわざわざ作ってきてくれたのか。

「あ、ありがとう」

 謝辞を述べる。

「昼時まで開けないでください。保冷剤が溶けてしまいます」

「分かった」

 では、とそれだけ言って、足早に彼女は去っていった。

 少し冷たい青い包みを抱きかかえて、再び僕は、眠りにつくとした。

 

「お、珍しいな。今日はちゃんと食うもん持ってきてるのか」

 昼のチャイムが鳴る。

 そして、それを聞いて青い包みを空けようとする僕の元へ、惷課が現れる。

 そして、意外そうに僕の手元の弁当箱を眺め、そのまま僕の正面へと座る。

 彼女の手にも、包みがった。

「持ってきたというか、頂いたというか」

「………?まあ、よくわからんが、食うもんがあるってのは良い事だよな」

「うん」

 弁当箱を空ける。

 梅干しが乗ったご飯。卵焼き、ゆで卵、塩が振りかけられたサラダに、ウィンナー、スクランブルエッグ。

 卵の主張激しいな。

 などと、内容物に対して心中で感想を述べている最中。

「実はな、私いじめられてるみたいなんだ」

 唐突に、彼女はそう言った。

 少しはにかみながら、冗談半分といった様子で。

「……それが、昨日言ってた相談したいことってやつ?」

「そうだ。乗ってくれるか?」

「無論ですよ」

 

「実は、なんでいじめられているかの理由はだいたい検討が付くんだ」

「ほう」

「お前のクラスにさ、京畿って男子いるだろ?あのサッカー部のエース」

 誰だ。

 全然分かんない。

「ああ、あいつね」

 でも、ここで話の腰を折るのも嫌なので、とりあえず知ったかぶりをすることにした。

「そいつに告白されてさ」

「おお」

「で、振ったんだけど。」

「あー」

「したら、どうも私が振られたことになってて。それで、なんでか知らないけど皆から距離を取られてさ。下駄箱の中とか、引き出しの中とか、鞄の中とかも荒らされるようになってて」

「つまるところ振られた報復か」

 なんとも、胸糞の悪い話だ。

「友達だと思ってたやつも、頼りになると思ってた先生もみんな優等生の京畿の味方になっちゃって。一躍嫌われもに大変身ってやつ?」

「やな変身だね」

「まったくだ」

 沈黙。

 顔を伏せたまま、惷課は問うた。

「雄家は、私の味方してくれるか?」

「まあ、うん。僕の知っている限りの君は、信頼に足る人物だからね」

 正直に、答える。

 そして、また少しの間の後に。

「ありがと」

と、照れくさそうに惷課は言う。

「んが……ッ……!」

 器用に箸を使って、唐揚げを僕の口に突っ込む。

「これはお礼だぜ」

「……ありがと」

 

 

 

「じゃあな。ちょっとは楽になったぜ」

 そう言って、彼女は校舎に戻っていった。

「そいつはよかったぜ」

 予鈴のチャイムが鳴る。

「さてと、じゃあ僕も少し頑張るかな」

 むくりと立ち上がり、少年も校舎に向けて歩き出した。

 

 

 

 

 夜。

 今日は、誰も来なかった。

 


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