英雄伝説 影の軌跡   作:midora

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1話

 春。ライノの花が白い花弁を存分に咲きほこらせ、誰もがこれから始まる新しい『何か』に期待を膨らませ、胸をときめかせる季節。

 俺――ティーゼ・ユリアノスは列車の窓から、流れていく景色を眺めていた。目指しているのは近郊都市トリスタ。名前の通り、エレボニア帝国の首都ヘイムダルから列車で三十分ほどの場所にある町だ。今日はそこで大切な行事が行われる。俺はそれに参加するためにこの列車に乗っている。

「まもなく、トリスタ、トリスタでございます。お降りの方は――」

「お,到着か」

 俺は荷棚から旅行鞄を降ろし、降車の支度を始める。プシューと列車が停止したと同時に列車の扉が開き、ここまで一緒に乗ってきた客と共に列車から降りて、改札へと向かう。

「おぉ・・・いい景色だなぁ」

 駅から出た俺を迎えてくれたのは、トリスタの空を舞うライノの花たちだった。今日は天気も快晴で、上から降り注ぐ陽光が純白の花吹雪と合わさって、より一層美しさを際立たせていた。今日という門出の日を、空の女神エイドスも祝ってくれているんだろうか。そんなことを考えながら、俺は一つ深呼吸をした。

(さて、さっそく向かうとするか)

 今日はここトリスタでトールズ士官学院の入学式が行われる。トールズ士官学院とは、何百年も前にドライケルス大帝という人物が設立した歴史ある士官学院だ。この学院には帝国各地の貴族の跡取りや、平民の中でも優秀な人材が集まる帝国屈指の名門校である。そんな名門校の生徒の一人になるのだと思うと、少し緊張してくる。

 そんなことを考えながら町の北を目指していると、やがて校門が見えてきた。

「ここが、トールズ士官学院・・・」

 校門の前に立ち、俺は二階建ての学舎を見上げる。本校舎は白を基調としたシンプルな外観をしている。そのシンプルさゆえに、名門校らしい荘厳な雰囲気を漂わせていた。

 ――ここから、俺の新しい生活が始まるのか。

 俺の横を次々と新入生が通り過ぎていくのも気にせずに、校門の前で感慨に耽っていると、横から声をかけられた。

「おはようございます! 新入生の子だよね?」

「え?」

 声のする方に顔を向けると、緑の制服を着たかなり小柄な少女と、少し太ったツナギ姿の青年がこちらに近づいてきた。新入生には見えないし、二年生だろうか。

「突然でごめんね。お名前教えてもらってもいいかな?」

「えっと、ティーゼです。ティーゼ・ユリアノス」

 俺の名前を聞いた少女は持っていた紙に視線を移し、何を納得したのか一つ頷いてから俺の方へ向き直った。

「ティーゼ君だね! どうもありがとう!」

「は、はぁ」

 満面の笑みを浮かべる少女に、俺は戸惑いながら返事を返した。

「それ、君の荷物だよね。じゃあ、いったんこちらで預からせてもらうよ」

「え? 荷物って預けるんですか? 」

 ツナギ姿の青年の言葉に俺は首を傾げる。周りの生徒たちは荷物を預けたりはしていないみたいだが。

「ああ、そうなんだ。赤い制服の生徒はここで荷物を預かることになっていてね」

 俺の言わんとすることを察したのか、彼はすぐに疑問に答えてくれた。

「あ、もちろんちゃんと後で返却されるから」

「そう・・・ですか。じゃあお願いします」

 赤い制服の生徒だけというのが気にはなるが、俺は素直に持ってきた旅行鞄と、二振りの愛刀をツナギの青年に手渡した。

「確かに預かった。じゃあトワ、僕はこれをクロウに渡してくるから、一瞬外れるね」

「うん! よろしくねジョルジュ君!」

 少女からジョルジュと呼ばれた青年は、受けとった俺の荷物を抱えると、俺に会釈をしてその場を去っていった。

「あ、そうそう! 入学式はあちらにある講堂で行われるから、このまままっすぐ行ってね」

「そうなんですね。教えてくれてありがとうございます」

それじゃ、と講堂に向かおうとして、ふと頭の中に疑問が浮かんだので俺はトワというらしい小柄な少女に質問した。

「そういえば、なんで赤い制服を着ている人はこんなに見当たらないんですか? 緑とか白の制服はこんなにいるのに」

 確かトールズ士官学院は身分ごとに色を分けていて、貴族生徒の白色と、平民生徒の緑色の計二色しかなかったはずだ。しかし、俺のところに送られてきた制服の色はどちらでもない赤色だった。その時はデザインが変わったのかなと気にはしなかったが、列車や町の中、そして学院の近くに来ても赤色の制服を着ている生徒は見かけなかったのだ。これはどういうことなんだろう。

「ああ~気になるよねぇ」

 彼女は俺の質問に困ったように頬を掻く。

「今はあんまり気にしないで。あとでちゃんと説明がされるから」

「はぁ、そうですか」

 またも気になる言い方をされて少しモヤモヤするが、今はどうしようもないか。そう納得して、今度こそ講堂へ向かおうとすると今度は彼女に呼び止められた。

「あっ、ちょっと待って! 伝え忘れてた!」

 彼女はコホンと咳ばらいをしてから、

「入学おめでとうございます! 貴方にとって実りのある学院生活を送ってね!」

「・・・! ありがとうございます!」

 彼女の屈託のない笑顔に笑顔に見送られながら、俺は講堂へ向かった。

 




この度は作品を読んでいただきありがとうございます。今回が初投稿ということでかなり緊張していますが、ゆっくり執筆していきます。
拙い文ではありますが、少しでも楽しんでいただければ幸いです。
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