英雄伝説 影の軌跡   作:midora

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前回の投稿からだいぶ時間がたってしまいました・・・。
次回からはもう少し投稿頻度を高められるように努力します・・・。


3話

「痛てて・・・」

 まんまと落とし穴に落ちた俺は、うつ伏せで地面に叩きつけられた。幸いなことに、高さはそこまでではなかったので、大怪我はしなかった。

「い、一体何が起こったんだ・・・?」

「はぁ、びっくりした~」

 俺の周りからも、ちらほらと声が上がった。どうやら一緒に落ちたクラスメートたちも無事のようだ。俺は少し痛む体を起こして、辺りの様子を確認する。

「えっ」

 そして、俺の視界に映ったのは予想外の光景だった。俺の視線の先には、黒髪の青年と金髪の女の子が倒れていた。それがただ倒れているのなら良かったのだが、問題はその倒れ方だ。恐らく青年は落下する時に、女の子を庇おうとしたのだろう。青年は仰向けになっていて、女の子は彼に覆いかぶさるように倒れていた。――自らの胸を、彼の顔に押し付けるように。

「なんなのよ、もう・・・」

 金髪の女の子はまだ自分の状況に気付いていないようだ。そんな彼女の下敷きになっている黒髪の青年が、申し訳なさそうな声色で彼女に声をかける。

「えっと・・・なんと言ったらいいか・・・」

「え・・・」

 声をかけられた女の子は、そこでようやく自分の現状を理解したのか、一瞬硬直した後に、驚くほどの早さで起き上がり、彼から距離をとった。彼女は顔を赤くして、全身が少し震わせていた。

「そ、その、本当にもうしわけな――」

 続けて起き上がった青年は即座に謝罪の言葉を口にしようとしたところで、

「――――――――っ!!」

「うわぁ・・・」

 パァンッ! と澄んだ音が辺りに響いたのだった。

 ちょっとした(?)一悶着があった後、俺は状況の把握をしていた。先ほどの建物の地下なのだろうか、俺たちが落とされた場所は、中世の地下道を彷彿とさせる造りの大広間だった。壁にいくつかの灯りがついていて、広間には十個の台座のようなものが設置されていた。なぜ、こんな場所が学院の敷地内にあるのだろうか。 

「ねえ、あそこにあるのって僕たちの荷物じゃない?」

 小柄で気弱そうな少年が台座の方向を指をさした。そちらに目を向けてみると、確かにそれぞれの台座の上に荷物が置かれていた。その中の一つには、俺の二振りの愛刀の姿もあった。校門で荷物を預けさせていたのは、これが理由だったのか。

「とりあえず、まずは自分の荷物を確認しないか?」

 俺がみんなに提案すると、全員異論はないのか各々自分の荷物が置かれた台座の前に移動していく。そして俺も、自分の荷物が置かれている台座の前に立つ。

「これは・・・?」

 台座の上には俺の愛刀はあったが、一緒に持ってきた旅行鞄は見当たらなかった。その代わり、見覚えのない導力器が一つ置かれていた。ひとまず愛刀を腰に装備して、謎の導力器を手に取る。市場には出回っていないものなのか、見たこともない型式だった。

 ――プルルル、プルルル。

「うおっ、びっくりしたぁ」

 唐突に、導力器から音が鳴りだした。同様の音が周りからも聴こえてくる。

『はぁい、全員荷物は確認できたかしら』

 どうしたものかと考えあぐねていると、手元の導力器からサラ教官の声が聞こえてきた。どうやらこの導力器、通信機能を内蔵しているようだ。

『この導力器は特注の〈戦術オーブメント〉でね。エプスタイン財団とラインフォルト社が共同で開発した次世代オーブメントの一つ』

『第五世代戦術オーブメント〈ARCUS〉よ』

「ARCUS・・・」

 サラ教官から説明のあったそれを、俺は見つめる。エプスタイン財団とラインフォルト社はどちらも大手企業で、その二社が共同で作ったともなればさぞ高性能なものなのは間違いないだろう。

『マスタークォーツはもうセットしてあるから、あとは各自で使いやすいように調整しなさい』

 俺は導力器の中を開いてみると、確かに黒いクォーツが一つ真ん中に嵌められていた。

『それじゃ、オリエンテーリングの説明を始めるわね』

 遂に来たか、と俺は気を引き締める。一体この場所で何をさせられるのかと身構える俺たちに、サラ教官は口を開く。

『そこに広間の奥に続く道があると思うんだけど、その道を進んでいくとさっき君たちが居た場所に繋がっているわ。君たちはその道を進んで、旧校舎一階に戻ってくる。これがオリエンテーリングの内容よ』

「・・・・・・え? それだけですか?」

 想定していたよりも簡単な内容に俺は思わず聞き返した。てっきり、全員で戦いあうとかそういうことを想像していただけに、かなり拍子抜けだった。

『あら、説明はまだ終わってないわよ?』

 安心するのはまだ早いとでも言うように、サラ教官はさらに説明を付け加えた。 

『そこはちょっとしたダンジョンになっていてね。魔獣なんかも徘徊しているから、怪我をしないように気を付けてね~』

「ええっ!? 魔獣!?」

 魔獣、という単語に小柄な青年が怯えたように反応した。なるほど、つまり魔獣がうろついているダンジョンを攻略しろってことか。それは確かに大変そうだな・・・・・・、ってちょっと待て。

「なんでそんなダンジョンがあるんですか! ここ士官学院ですよね!?」

 俺は手元の導力器に向かって叫んだ。

『さっきも言ったけど、文句なら後で受け付けてあげるわ』

『なんだったらご褒美に、ほっぺにチューしてあげるわよ♡』

 俺の指摘をスルーしたサラ教官は最後にふざけたことだけ言い残して、一方的に通信を切った。そして、広間に静寂が訪れる。

「えっと・・・どうする?」

「どうするって言ってもな・・・」

「冗談、というわけでもなさそうね・・・」

「フン・・・」

 突然に言い渡されたダンジョン攻略に誰もが困惑している中、ユーシスが一人、ダンジョンの方へスタスタと歩き始めた。

「ま、待ちたまえ!」

 それに気づいたマキアスが大声で彼の背中に呼びかけた。

「いきなりどこへ・・・一人で勝手に行くつもりか?」

「ああ、お前たちと馴れ合うつもりはない」

 とりつく島もないとはこのことか。マキアスの問いに、ユーシスはきっぱりと言い切った。

「貴様、全員で協力しようとは思わないのか!?」

「あの女は全員一緒に戻ってこいとは言わなかった。つまり、一人であっても複数人であっても戻ってくればそれでいいということ・・・違うか?」

「ぐっ・・・・・・」

 ユーシスの返答に返す言葉もないのか、マキアスは口をつぐんでしまった。まあ確かに、サラ教官は一人で攻略するなとは言っていなかった。でも、普通は集団行動する方がいいと思うんだけどなぁ。その方が安全だし。とはいえ、大貴族様に目を付けられるのも嫌なので、俺は何も言わずに二人を見守る。

「まあ、魔獣が怖いと言うのであれば同行を認めなくもないがな。貴族の義務《ノブレス=オブリージュ》として、力なき民草を保護してやろう」

「だ、誰が貴族の力など借りるものか!」

 黙ってしまったマキアスにユーシスは煽るようにそう言い放った。そして当然、マキアスはその提案を拒否した。

「もういい! だったら僕も一人で行くまでだ!」

 ――いやなんでだよ!? 全員で協力するんじゃなかったのか!?  

 よほどユーシスに負けたくないのか、マキアスまで一人で行くと言い出した。流石にこれはマズイのではと、俺はマキアスを制止すべく声をかけようとする。

「お前たち貴族よりも上であることを証明してやる!!」

 だが時すでに遅かった。マキアスはユーシスに宣戦布告するように怒鳴りつけ、一人でダンジョンへと進んで行ってしまった。

「フン・・・」

 そしてユーシスもマキアスに続いて、ダンジョンの中へと消えていった。去っていった二人に残された全員が呆気にとられる中、青い髪の女の子が動き出した。

「とにかく、我々も進むしかあるまい。そなたとそなた、私と一緒に来る気はないか?」

 武人のような口調の彼女はまず、隣にいた金髪の女の子と眼鏡を掛けた女の子に声をかけた。

「え、ええ。別に構わないけれど」

「私も・・・正直助かります」

 声を掛けられた二人も彼女の提案に二つ返事で承諾した。

「それから、そなたも――――ふむ?」

 それから彼女は銀髪の少女にも声を掛けようとして、しかしそれは叶わなかった。いつの間にか銀髪の少女の姿はどこにも見当たらなかったからだ。どうもこのクラスには、集団行動ができない奴が多いらしい。

「まあ良い、あとで声をかけておくとしよう。そちらは男子ゆえ、心配は無用だろうが道中気を付けるがよい」

「し、失礼しますね」

「・・・・・・フンっ」

 青い髪の女の子は特に気にする様子もなく、声をかけた二人を連れて先に行ってしまった。最終的に残ったのは、俺と、頬を赤く腫らした黒髪の青年と、気弱そうな青年、長身の青年の四人だけとなった。

「うーん、だいぶ根にもたれちゃったみたいだね」

「ああ、後で謝らないとな・・・」

 気遣うように話す小柄な少年の言葉に、金髪の女の子にビンタされていた青年は落ち込んだように肩を落とす。

「それでどうする? 折角だし、良かったら一緒に行動しないか?」

「もちろんだよ! 僕一人じゃ心細いもん」

 頬を赤く腫らした黒髪の青年の提案に、小柄な青年が真っ先に賛同した。

「俺も異論はない、同行させてもらおう」

 穏やかな雰囲気を漂わせる長身の青年も、その提案を受け入れた。

「君も、良かったらどうかな?」

 黒髪の青年の誘いに俺は一瞬躊躇して、内心で首を横に振った。この誘いを断る理由はどう考えてもない。それに、クラスメートと早く仲良くなるのに越したことはないだろう。

「ああ、俺も一緒に行くよ」

 俺の返答を聞いて、彼は頷いた。

「よし、なら決まりだな」

 こうして、出会ったばかりの俺たち四人は、ダンジョン攻略を開始するのであった。

 

 

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