問題児たちとチートが異世界で会うそうですよ? 作:しろい凛キチ
早々と黒ウサギに捕まってしまった俺と耀は"サウザンドアイズ"の支店でお茶を啜っていた。
『ふふ。なるほどの。おんし達らしい悪戯だ。しかし"脱退"とは穏やかではない。ちょいと悪質だとは思わんか?』
『それは………うん。少しだけ私も思った。だ、だけど、黒ウサギだって悪い。お金が無いことを説明してくれれば、私達だってこんな強硬手段に出たりしないもの』
耀は少し拗ねたように頬を膨らませていた。
『ところで白ちゃん。ここで大きなギフトゲームがある言ってたけどホントなの?』
『本当だとも。特に耀、おんしに出場して欲しいゲームがある』
そういうと、白ちゃんはチラシを着物の袖から取り出して見せた。
「ギフトゲーム名 "造物主達の決闘"
・参加資格、及び概要
*参加者は創作系のギフトを所持。
*サポートとして、一名までの同伴を許可。
*決闘内容はその都度変化。
*ギフト保持者は創作系のギフト以外の使用を一部禁ず。
・授与される恩恵について
*"
宣誓 上記を尊重し、誇りと御旗の下、両コミュニティはギフトゲームを開催します。
"サウザンドアイズ" 印
"サラマンドラ" 印」
『………?創作系のギフト?』
『人造・神造・霊造・星造を問わず、製作者が存在するギフトのことだね。』
『うむ。北では、過酷な環境に耐え忍ぶために恒久的に使える創作系のギフトが重宝されておってな。その技術や美術を競い合う為のギフトがしばしば行われるのだ。
そこでおんしが父から譲り受けたギフト───"
熟考すること数秒、耀は少し懇願するような顔で白ちゃんに質問をする。
『ね、白夜叉。その恩恵で………黒ウサギと仲直りできるかな?』
『出来るとも。おんしにそのつもりがあるのならの』
『そっか。それなら出場してみる』
耀はコクりと頷いて縁側から立ち上がる。それに続き俺も立ち、
『ねぇ耀、良かったら俺もサポートとして出場してもいいかな?』
『うん。頼りにしてるよ』
そう言ってお互いにどちらからともなく握手した。
* * *
───所変わって、境界壁・舞台区画。
ここでは現在、白夜叉の持っていたチラシのギフトゲームが開催されていて、今はその最後の決勝枠をめぐる戦いが繰り広げられていた。
今戦っているのは、耀と"ロックイーター"の
『これで、終わり………!』
耀は
『耀、おつかれ。よく頑張ったね』
『うん、ありがとう』
俺が耀に向けて祝いの言葉をかけていると、バルコニーから白ちゃんが出てきて、耀と一般参加者に声をかけた。
『最後の勝者は"ノーネーム"の春日部 耀に決定した。これにて最後の決勝枠が用意されたかの。決勝のゲームは明日以降の日取りとなっておる。明日以降のゲームルールは………ふむ。ルールはもう一人の"
その言葉で辺りがより一層静寂に包まれた。
深紅の髪を頭上で結い、色彩鮮やかな衣装を幾重にも纏った少女。
───龍の純血種。星海龍王の龍角を継承した、新たな"階層支配者"。炎の龍紋を掲げる"サラマンドラ"の幼き頭首 サンドラが玉座から立ち上がる。
『ご紹介に与りました、北のマスター・サンドラ=ドルトレイクです。東と北の共同祭典 火龍誕生祭の日程も、今日で中日を迎えることが出来ました。然したる事故もなく、進行に協力してくださった東のコミュニティと北のコミュニティの皆様にはこの場を借りて御礼の言葉を申し上げます。以降のゲームにつきましては御手持ちの招待状をご覧ください』
そう言われ皆が手元の招待状を見ると、書き記されたインクが直線と曲線に分解され、別の文章を紡ぎ始めた。
「ギフトゲーム名 "造物主達の決闘"
・決勝参加コミュニティ
*ゲームマスター "サラマンドラ"
*プレイヤー "ウィル・オ・ウィスプ"
*プレイヤー "ラッテンフェンガー"
*プレイヤー "ノーネーム"
・決勝ゲームルール
*お互いのコミュニティが創造したギフトを比べ合う。
*ギフトを十全に扱うため、一人まで補佐が許される。
*ゲームのクリアは登録されたギフト保持者の手で行う事。
*総当たり戦を行い、勝ち星が多いコミュニティが優勝。
*優勝者はゲームマスターと対峙。
・授与される恩恵について
*"階層支配者"の火龍がプレイヤーが希望する恩恵を進言できる。
宣誓 上記を尊重し、誇りと御旗の下、両コミュニティはギフトゲームに参加します。
"サウザンドアイズ" 印
"サラマンドラ" 印」
その後俺と耀は白ちゃんに連れられ、運営本陣営の謁見の間に来ていた。どうやら、十六夜と黒ウサギが何かやらかしたらしい。
『ふん!"ノーネーム"の分際で我々のゲームに騒ぎを持ち込むとはな!相応の厳罰は覚悟しているか!?』
『これマンドラ。それを決めるのはおんしらの頭首、サンドラであろう?』
マンドラとかいう男が白ちゃんに窘められ、同時にサンドラが謁見の間の上座にある豪奢な玉座から立ち上がる。
『"箱庭の貴族"とその盟友の方。此度は"火龍誕生祭"に足を運んでいただきありがとうございます。貴方達が破壊した建造物の一件ですが、白夜叉様のご厚意で修繕してくださいました。負傷者は奇跡的に無かったようなので、この件に関して私からは不問とさせて頂きます』
『白ちゃん、ありがとね』
そう言って俺は白ちゃんの頭を撫でてやる。俯いててよく分からなかったけど、白ちゃんの頬が少し赤かったような……
『………ふむ。いい機会だから、昼の続きを話しておこうかの』
そう言って白ちゃんは連れの者に目配せする。サンドラも側近を下がらせ、残るは俺・黒ウサギ・十六夜・耀・サンドラ・マンドラだけとなった。
サンドラは人が居なくなると硬い表情と口調を崩し、ジン君にかりよって少女っぽい愛らしい笑顔を向けた。
『ジン、久しぶり!コミュニティが襲われたと聞いて随分と心配してた!』
『ありがとう。サンドラも元気そうでよかった』
サンドラと同じくらい明るい笑顔で対応するジン君。どうやら、ジン君とサンドラは幼なじみ的な関係なのだろう。
『ふふ、当然。魔王に襲われたと聞いて、本当はすぐに会いに行きたかったんだ。けどお父様の急病や継承式のことでずっと会いに行けなくて』
『それは仕方ないよ。だけどあのサンドラが"
『その様に気安く呼ぶな、名無しの小僧!!!』
ジン君とサンドラが親しく話していると、そこに割って入るようにマンドラが獰猛な牙を剥き出しにして、帯刀していた刀をジン君に向かって抜く。俺はとっさにジン君の前に出て振り下ろそうとした刀を白刃取りした。
『ねぇ。今誰に向かって刀を切り降ろそうとしたのかな?』
『ふん!決まっている。そこでサンドラと親しく話していた名無しの小僧だ!!』
『へぇ、切りたいならなら御自由に。でももし本当に切ったとしたら………』
俺は殺気をダダ漏れにして次の言葉を放った。殺気はその場の全員を包み、驚愕に目を見開かせる。
『このコミュニティごとオマエを潰す。もう二度と復興できないよう
最初に反応したのは白ちゃんだった。白ちゃんは慌てた様子で俺を説得しに来た。
『ま、待ってくれ主殿。それだけは止めてくれ。頼む、この通りじゃ』
俺はしばらく考え込むようなフリをして皆を見回し、殺気を収めて言った。
『白ちゃんがここまで言ってくれたから今回は許してあげる。ただし、次やったら本当に潰すから』
白ちゃん、サンドラを含めた全員がホッと息をなでおろす。
『話がそれちゃったね。それで白ちゃん、昼の続きって?』
『そうじゃの、この封書におんしらを呼びつけた目的が書いてある。………己の目で確かめるといい』
俺は白ちゃんから一枚の封書をもらい内容を確認した。内容はこうだ。
「火龍誕生祭にて、"魔王襲来"の兆しあり」
『白ちゃん、これまさか………。それにこの封書は?』
『そう、そのまさかじゃ。そしてその封書は"サウザンドアイズ"の幹部の一人が未来を予知した代物での。
知っての通り、我々"サウザンドアイズ"は特殊な瞳を持つギフト保持者が多い。様々な観測者の中には、未来の情報をギフトとして与えておる者もおる。そやつから誕生祭のプレゼントとして贈られたのが、この"魔王襲来"という予言だったわけだ』
『なるほど。予言という名の
『上に投げれば下に落ちる、という程度だな』
皆はその例えを聞き、顔をしかめる。少しの間の沈黙を破ったのは耀だった。
『えっと…それって予言なの?上に投げれば下に落ちるって当然のことじゃ………』
『予言だとも。何故ならそやつは"
その言葉を聞き、皆の顔が驚愕に染まる。
『ふ、ふざけるな!!それだけ分かっていながら魔王の襲撃しか教えぬだと?!戯言で我々を翻弄しようという狂言だ!!今すぐにでも住み処に帰れッ!!』
俺は白ちゃんの情報を頭の中で整理し、確認するように問う。
『………なるほど、事件の発端に一石投じた主犯は既にわかっている。けど、その人物の名前を出すことは出来ないってことだね』
『うむ………』
歯切れの悪い返事を返す白ちゃん。十六夜は俺の言った言葉をニュアンスを変えてもう一度強く問いなおす。
『つまり今回の一件で、魔王が火龍誕生祭に現れる為、策を弄した人物が他にいる───その人物は
ハッとジン君が声を漏らし、サンドラを見る。
北側に来る際、白ちゃんとの会話にはこうあった。
「幼い権力者をよく思わない組織が在る」と。
もしもその人物が「口に出す事も憚られる人物」だというのなら、それは───
『まさか………他のフロアマスターが、魔王と結託して"火龍誕生祭"を襲撃すると!?』
『まだわからん。この一件はボスから直接の命令でな。内容は予言者の胸のうち一つに留めておくように厳命が下っておる。故に私自身まだ確信には至っていない。………しかし、サンドラの誕生祭に北のマスター達が非協力的だった事は認めねばなるまいよ。なにせ共同主催の候補が東のマスターである私に御鉢が回ってきたほどだ。北のマスターが非協力だった理由が、"魔王襲来"に深く関与しているのであれば………これは大事件だ』
その言葉を聞き皆が絶句する中、俺は一つの考えに至った。
『つまりは、俺達に魔王のゲーム攻略に協力して欲しい、そういうことだね?』
俺の言葉に合点がいったという顔で一同は頷く。
魔王襲来の予言があった以上、これは新生"ノーネーム"の初仕事だ。ジン君は事の重さを受け止めるように重々しく承諾した。
『分かりました。"魔王襲来"に備え、"ノーネーム"は両コミュニティに協力します』
『うむ、すまんな。協力する側のおんしらにすれば、敵の詳細も分からぬまま戦うことは不本意であろう。………だが分かって欲しい。今回の一件は、魔王を退ければよいというだけのものではない。これは箱庭の秩序を守るために必要な、一時の秘匿。主犯にはいずれ相応の制裁を加えると、我らの双女神の紋に誓おう』
『"サラマンドラ"も同じく。───ジン、頑張って。期待してる』
『う、うん』
ジン君は緊張したように顔の表情を強ばらせ頷く。それに対し白ちゃんは硬い表情を一変させ、哄笑を上げた。
『そう緊張せんでもよいよい!魔王はこの最強の"
『ねぇ白ちゃん、魔王って別に
『呵々、よかろう。隙あらば魔王の首を狙え。私が許す』
その後、俺達は謁見の間で魔王が現れた際の段取りを決めて過ごした。
十六夜の発言を不謹慎だと告げるマンドラは"ノーネーム"をゲームから追放するように訴えたが、白ちゃんとサンドラに説き伏せられ、俺達は渋々協力を受け入れられた。