問題児たちとチートが異世界で会うそうですよ? 作:しろい凛キチ
最初の変化は本陣営のバルコニーから始まった。
突如として白ちゃんの全身を黒い風が包み込み、彼女の周囲を球体に包み込んだ。
俺はとっさに白ちゃんに手を伸ばすが黒い風に阻まれ、更には勢いを増し白夜叉を除く全ての人間を一斉にバルコニーから押し出した。
『いよいよ、来たね』
俺が境界壁の突起を見上げると、そこには四つの人影があった。
『白夜叉の"
『はい。黒ウサギがジャッジマスターを務めている以上、誤魔化しは利きません』
『ならルールに則った上で、ここに現れたってことだね』
それからは"ウィル・オ・ウィスプ"の二人も加わり、黒ウサギ、ジャック、アーシャはサンドラを探しに行くことになった。
『見ろ!魔王が降りてくるぞ!』
『十六夜はあの軍服男に、レティシアはあのデカイのをお願い。白いのと小さいのは俺がやる』
『『了解(した)』』
それを聞くと俺は降りてくる人影に向かって全力跳躍し、小さい敵と白い服の敵の顔面を殴りつけた。横目で十六夜達を見ると十六夜も軍服男に奇襲をかけ、レティシアもデカイの相手に上手くやれているようだった。
『ねぇヴェーザー!そっち早く片付けてこっちに来て』
『あぁ?ならお前の笛の音で捕まえりゃいいだろうが。そっちのが早ぇよ、ラッテン』
『ヴェーザーにラッテン、なるほど。さしずめ君達は"ハーメルンの笛吹き"の伝承に基づく仮定から生まれた悪魔。そして一三○人の子供達を生贄に、
ハーメルンの伝承には様々な説がある。人攫いのような人為的なものから神隠し、黒魔術の儀式、中には子供達が自ら土地を開拓するために出て行ったという説まである。その中で"ヴェーザー河"が含まれるのは───自然災害などの天災によるとされる説。ならば残る相手も自然災害やそれに纒わる類だと推測できる。
『へぇ?貴方意外と賢いのね。ここで生かしておく訳にはいかないわね』
そう言って小さな敵は黒い風を放ってきた。
『黒い風、なるほど。君が白ちゃんを閉じ込めた張本人、そしてこのゲームのマスターってとこかな?そして俺の推測が正しければ、天災の中で黒い風を操っていたとされるのは………"
───"黒死病"
十四世紀から始まる寒冷期に大流行した、人類史上最悪の疫病である。この病は感染方法によって症状も変わってくるが、黒死病の由来は敗血症を引き起こし全身に黒い斑点が浮かんで死亡するというところから取られている。
そして、グリム童話の"ハーメルンの笛吹き"に現れる道化が斑模様だったこと、黒死病の流行源であるネズミを操る道化だったことから、"一三○人の子供達は黒死病で亡くなった"という考察が存在する。
『そう、私が"
『断る。と言ったら?』
『この街ごと貴方を殺してあげる!』
そう言うとペストはまた黒い風を放ってきた。
ちなみに余談だが、もう一人の女性・ラッテンは別次元に飛ばしておいた。
『遅いよ。ふっ!』
俺は攻撃をかわすとすぐにペストの背後に回り込み、拳を入れる。
『カハッ』
『まだまだ、"強きこと烈火の如し"!』
俺は自分の体に限界以上の力をかけ、一時的に身体能力を強化する。
俺は獲物を剣に変え、
『砕け散れ!紫電滅天翔!!
悪しきは滅せよ!幻魔衝裂破!!
舞い散れ、封殺!封神雀華!!
刹那で沈め!邪霊一閃!!
これで終わらせてやr…』
不意に雷が鳴り、そちらに意識を奪われる。雷が鳴った方向を見ると、黒ウサギが輝く三又の金剛杵を掲げ、高らかに宣言した。
『"
『ホント空気読めないウサギさんだね。黒ウサギとは後でO☆SHI☆O☆KI♪しなきゃね。っと、立てるかい?』
俺は黒ウサギへの若干の怒りを覚えつつ、ペストに聞いてみた。
『そうね。さっきの貴方の攻撃で立てないわね………きゃっ』
皮肉混じりに言うペストに俺は苦笑いで返し、ペストをお姫様抱っこの状態で抱える。
『本陣営に向かうから、しっかり捕まっててね』
『え、ええ』
なんだろう。頬が少し赤くなってたのは気のせいかな?
* * *
他の参加者たちに聞き、皆が貴賓室にいることを知った俺は足早に向かった。
『っと、ここだな』
中からは黒ウサギの声が聞こえてきた。どうやらまだ始まったばかりのようだね。
俺は息を吸い込み、
『黒ウサギイイイィィィィ!!!』
思いっきり叫びながらドアを蹴破る勢いで入っていった。
『『マ、マスター!』』
最初に駆け寄ってきたのは、ペストと共に現れた。ラッテンとヴェーザーだった。もっとも、近付いてきたのは彼らのマスターであるペストのところにだが………
『大丈夫でしたか、マスター』
『ええ。なんとかね』
そこへ黒ウサギもおずおずと訪ねてくる。
『えと、神凪さん?なぜ相手のマスターをお姫様抱っこの状態で入っていらしたんですか?』
『それはね、どっかの黒ウサギのせいで倒しそこねたからだよ』
『『『『『『『?!?!』』』』』』』
俺とペストを除くみんなが驚愕していた。
『それと黒ウサギ、後でじっくりO☆HA☆NA☆SHIしようね♪』
『それで神凪、倒し損ねたってことは倒す寸前だったのか?』
十六夜が皆の疑問を代表して聞いてくる。
『そうだよ。それに、このゲームの攻略法ももう分かったしね』
その話に、この場の俺以外のみんなに更なる驚愕が走る。
『まずは白ちゃんを封印したルールについて。これはとある実史がもとになってる。───それは、黒死病が大流行した寒冷の原因………
そして、このことは"
そして肝心のゲームの攻略法は、"
違う?と俺は素振りだけでペストに問いかける。するとペストはフッと自嘲気味に笑い、俺に話しかけてくる。
『あなたの言う通りよ。ここまで解かれたのなら仕方ないわ。ゲームを放棄するわよ。ただし、ひとつ条件があるわ』
『条件?』
『えぇ。………わ、私と、その、付き合って欲しいの!』
『『『『『『ええぇぇぇぇぇ?!』』』』』』
こればっかりは流石に俺も驚いた。十六夜はなぜかニヤニヤしてるけど…
『えっと、なんで俺と付き合いたいのか聞いてもいいかな?』
『う、うん。さっき貴方にお姫様抱っこされた時、すごく安心感をもてたの。そして同時に、この人から離れたくないとも思った。………その答えはすぐに分かったわ。私は貴方に───神凪 紅覇に恋をしたんだって』
『そっか…』
幸いというか何と言うか、ゼウスの爺さんに神は一夫多妻制だと聞いたことがあり、俺の返事は決まっていた。それに、こんなに可愛い娘が彼女なら嬉しいしね。
『こんな俺でよければ、ね』
『ありがとう。それじゃ、ゲームを放棄する………ことができないわ』
『何かしらの力が働いてるとか?』
『分からない』
なら、と思い俺はある提案をする。
『ちょっと"
『これよ』
渡されたのは、つい数刻前頭上でばら撒かれた黒い羊皮紙だった。
『我、顕現するは破壊の神の力なり。万物を破壊し生命に死を与うる破壊の力よ、其の力を持って此れを破壊せん』
俺が破壊神の力を使うと、手に持っていた"契約書類"はギフトゲームごと完全に消え去った。
『これでよし、と』
『貴方ってホント何者なの?』
『この場合は人間だった名前がいいのかな?それとも神の名前?』
その言葉を聞きペストは暫し目をパチパチしていたが、やがて観念するように、
『どちらもお願い』
『俺は普通の男子高校生だった神凪 紅覇。神としての名は破壊神シヴァと創造神ブラフマーだよ』
『ホントに規格外よね』
俺は苦笑いしか出せなかった。
と、そんなとこに白ちゃんが現れた。
『主殿、此度は本当にありがとう。偉そうにふんぞり返っておきながら、私は終始封印されたままだった。いや、全く持って申し訳なかったのぅ』
その後、俺たちは白ちゃんの意向によって表彰式のようなことをやってもらい、残り少ない今日を楽しんだ。
ようやく2巻最後までたどり着けました。
さて、次回は予告していたように番外編をやりますのでどうかお楽しみに♪