問題児たちとチートが異世界で会うそうですよ? 作:しろい凛キチ
いよいよ箱庭へ
転生してからはや1年が経とうとしてる頃…
俺は知りたいと思った事象を知る能力であらかたの情報を転生後一日で知り尽くしてしまったので、今は暇を持て余してる。
『あ〜、暇だ。早く原作始まらないかな……』
『そうだ、今日はミズキとデートでもしようかな』
そう言いながら俺は女神ちゃんといつでも会える能力を発動し、ミズキを呼び出すと
『紅覇〜♪』
空間から現れたミズキがいきなり抱きついてきた。
『一日といえど、君と会えないのがこんなに辛いなんて思わなかったよ』
『私もです。それで今日はどんな用ですか?』
『いや、暇になっちゃったし、ミズキとデートでもしようかなって思ってね』
『ほ、ホントですか?!』
ミズキはまるで子供のように飛び跳ねて嬉しさを体現していた。やっぱりミズキは可愛いな〜
* * *
ミズキと紅覇がイチャラブしている一方で、とある三人には封書が舞い降りてきた。
── 一つは初夏の川辺に立ちつくす少年の元に…
── 一つは真夏の屋敷の自室にいるお嬢様の元に…
── 一つは秋の自室で着物を着込んでいた少女の元に…
封書を貰って思ったことは三者三様に違えど、取った行動は同じだった。
そしてその封書は紅覇の元へも届いていた。
「悩み多し異才を持つ少年少女に告げる。
その才能を試すことを望むのならば、
己の家族を、友人を、財産を、世界の全てを捨て、
我らの"箱庭"に来られたし」
四人+一匹の視界は間を置かずに開けた。
急転直下、俺たちは上空4000mほどの位置に投げ出された。
『そこのお嬢ちゃん二人、こっちに来て俺に捕まれ!』
俺はとっさに"無限創造"で"空翔術"を作り二人に声をかけたが、自分の事で手一杯なのか全く聞こえていないようだった。
しょうがないので俺は"無限創造"で"
『し、信じられないわ!まさか問答無用で引き摺りこんだ挙句、空に放り出すなんて!』
『右に同じだクソッタレ。場合によっちゃその場でゲームオーバーだぜコレ。石の中に呼び出された方がまだ親切だ』
『…………。いえ、石の中に呼び出されては動けないでしょう?』
『俺は問題ない』
『そう。身勝手ね』
相変わらず十六夜はとんでもなく不思議な思考をしてるね、まぁ、俺もなんだけどね。
『此処………どこだろう?』
『さあな。まあ、世界の果てっぽいものが見えたし、どこぞの大亀の背中なんじゃねぇか?』
十六夜って本当にどんな頭と視力してるんだろうってくらいによく見てるよね…
それにしてもこの三人を間近で見ると、いかにも問題児って感がするよね……。「天上天下唯我独尊」って感じと「超お嬢様」って感じと「無関心」って感じかな?
『何にしても、取っ付きにくそうだな〜』
その声は小さく、ほかの三人には聞こえていないようだった。
『まず間違いないだろうけど、一応確認しとくぞ?もしかしてお前達にも変な手紙が?』
『そうだけど、まず"オマエ"って呼び方を訂正して。───私は久遠 飛鳥よ。以後は気を付けて。それで、そこの猫を抱きかかえている貴方は?』
『………春日部 耀。以下同文』
『そう、よろしく春日部さん。それで、野蛮で凶暴そうなそこの貴方は?』
十六夜はすごい言われようだね。俺だったら今の言われようでキレてたかも……
『高圧的な自己紹介をありがとよ。見たまんま野蛮で凶暴な逆廻 十六夜です。粗野で凶悪で快楽主義と三拍子そろった駄目人間なので、用法と容量を守った上で適切な態度で接してくれお嬢様』
『そう。取扱説明書をくれたら考えてあげるわ、十六夜君』
『ハハ、マジかよ。今度作っとくから覚悟しとけ、お嬢様』
心からケラケラと笑う逆廻 十六夜。
傲慢そうに顔を背ける久遠 飛鳥。
我関せず無関心を装う春日部 耀。
───うん、皆、超問題児だね。
そんなことを思っていると飛鳥から声がかかった。
『それで、さっきから私達の会話を聞いてる貴方は?』
『俺か?俺は神凪 紅覇だよ』
『そう。それで神凪君、あなたさっき上空で何か言ってなかったかしら?』
『ああ、あれは春日部さんと久遠さんを助けようと思って言ったんだけど、聞こえてないようだったし別に流してもらって構わないよ』
そう、と口にする飛鳥と少し関心を示した耀、明らかに不満そうな十六夜がいた。
『ちょっと待て、なんで俺が入っていない』
『さっきは仕方なく助けたけど、君は男でしょ。男なら自分でなんとかしなきゃ』
『ヤハハハ、ごもっともな意見ありがとよ』
そんな彼らを物陰から見ていた黒ウサギは思う。
(うわぁ………なんか、御一方を除いて問題児ばっかりみたいですねぇ…………)
召喚しておいてアレだが………彼らが協力する姿は、客観的に想像できそうにない。黒ウサギは陰鬱そうに重くため息を吐くのだった。
* * *
しばらくして十六夜は苛立たしげに言う。
『で、呼び出されたのはいいけどなんで誰もいねぇんだよ。この状況だと、招待状に書かれていた箱庭とかいうものの説明をする人間が現れるもんじゃねぇのか?』
『────仕方がねぇな。こうなったらそこに隠れている奴にでも聞くか?』
物陰に隠れていた黒ウサギは心臓を掴まれたように飛び跳ねた。
四人の視線が黒ウサギに集まる。
『なんだ、貴方も気づいていたの?』
『当然。かくれんぼじゃ負けなしだぜ?そっちの春日部と神凪も気づいていたんだろ?』
『風上に立たれたら嫌でもわかる』
『まぁ、ね』
三人は理不尽な招集を受けた腹いせに殺気の籠もった冷ややかな視線を黒ウサギに向ける。黒ウサギはやや怯んだ。黒ウサギ大丈夫かな…?
『や、やだなぁ御三人様。そんな狼みたいに怖い顔で見られると黒ウサギは死んじゃいますよ?ええ、ええ、古来より孤独と狼はウサギの天敵でございます。
そんな黒ウサギの脆弱な心臓に免じてここは一つ穏便に御話を聞いていただけたら嬉しいでございますョ?』
『断る』
『却下』
『お断りします』
『黒ウサギ、頑張ってね?』
『あっは、取りつくシマもないですね♪』
バンザーイ、と降参のポーズをとる黒ウサギ。
しかしその眼は冷静に四人を値踏みしていた。
(肝っ玉は及第点。この状況でNOと言える勝ち気は買いです。まぁ、扱いにくいのは難題ですけども)
黒ウサギはおどけつつも、四人にどう接するべきか考えを張り巡らせている───と、耀が不思議そうに黒ウサギの隣に立ち、黒いウサ耳を根っこから鷲掴み、
『えい』
『フギャ!』
力いっぱい引っ張った。
『ちょ、ちょっとお待ちを!
触るまでなら黙って受け入れますが、まさか初対面で遠慮無用に黒ウサギの素敵耳を引き抜きに掛かるとは、どういう了見ですか!?』
『好奇心の為せる業』
『自由にも程があります!』
『へぇ?このうさm…『ちょっといいかな』何だよ、神凪』
『そろそろ本題に入らないかな?』
俺は笑顔で少しだけ殺気を漏らしてそう伝えると、3人はおろか、黒ウサギまでも首を縦に激しく振っていた。
* * *
『それではいいですか、御四人様。定例文で言いますよ?言いますよ?さぁ、言います!
ようこそ"箱庭の世界"へ!我々は御四人様にギフトを与えられた者達だけが参加できる「ギフトゲーム」への参加資格をプレゼンさせていただこうかと召喚いたしました!』
『ギフトゲーム?』
『そうです!既に気づいていらっしゃるでしょうが、御四人様は皆、普通の人間ではございません!その特異な力は様々な修羅神仏から、悪魔から、精霊から、星から与えられた恩恵でございます。
「ギフトゲーム」はその"
両手を広げて箱庭をアピールする黒ウサギ。飛鳥は質問するために挙手した。
『まず、初歩的な質問からしていい?貴方の言う"我々"とは貴方を含めた誰かなの?』
『YES!異世界から呼び出されたギフト保持者は箱庭で生活するにあたって、数多とある"コミュニティ"に必ず属していただきます♪』
『嫌だね』
『属していただきます!』
さすが十六夜、こんな時でも唯我独尊を貫いてるね…
『………"
『様々ですね。暇を持て余した修羅神仏が人を試すための試練と称して開催されるゲームもあれば、コミュニティの力を誇示するために独自開発するグループもございます。特徴として、前者は自由参加が多いですが"主催者"が修羅神仏なだけあって凶悪かつ難解なものが多く、命の危険もあるでしょう。しかし、見返りは大きいです。"主催者"次第ですが、新たな"恩恵"を手にすることも夢ではありません。
後者は参加のためにチップを用意する必要があります。参加者が敗退すればそれらはすべて"主催者"のコミュニティに寄贈されるシステムです』
『後者は結構俗物ね………チップには何を?』
『それも様々ですね。金品・土地・権利・名誉・人間…………そしてギフトを賭けあうことも可能です。新たな才能を他人から奪えばより高度なギフトゲームに挑む事も可能でしょう。ただひ、ギフトを賭けた戦いに負ければ当然───ご自身の才能も失われるのであしからず』
黒ウサギは愛嬌たっぷりの笑顔に黒い影を見せる。
なんて分かり易い挑発なんだろうね…
そしてその挑発的な笑顔に、同じく挑発的な声音で飛鳥が問う。
『そう。なら最後にもう一つだけ、ゲームそのものはどうやったら始められるの?』
『コミュニティ同士のゲームを除けば、それぞれの期日内に登録していただければOK!商店街でも商店が小規模のゲームを開催しているのでよかったら参加していってくださいな』
飛鳥は黒ウサギの発言に片眉をピクリとあげる。
『つまり「ギフトゲーム」とはこの世界の法そのもの、と考えてもいいかしら?』
お? と驚く黒ウサギ。
『ふふん?中々鋭いですね。しかしそれは八割正解の二割間違いです。我々の世界でも強盗や窃盗は禁止ですし、金品による物々交換も存在します。ギフトを用いた犯罪などもってのほか!そんな不逞な輩は悉く処罰します───が、しかし!
「ギフトゲーム」の本質は全く逆!一方の勝者だけが全てを手にするシステムです。商店に置かれている商品も、店側が提示したゲームをクリアすればタダで手にすることも可能だということですね』
『そう。中々野蛮ね』
『ごもっとも。しかし"主催者"は全て自己責任でゲームを開催しております。つまり奪われるのが嫌な腰ぬけは初めからゲームに参加しなければいいだけの話でございます』
黒ウサギは一通りの説明を終えたのか、一枚の封書を取り出した。
『さて。皆さんの召喚を依頼した黒ウサギには、箱庭の世界における全ての質問に答える義務があります。
が、それら全てを語るには少々お時間がかかるでしょう。新たな同士候補である皆さんを何時までも野外に出しておくのは忍びない。ここから先は我らのコミュニティでお話させていただきたいのですが………よろしいです?』
『待てよ。まだ俺が質問してないだろ』
静聴していた十六夜が威圧的な声を上げて立つ。
というか、俺のことは気にしないんだね…
『…………どういった質問です?ルールですか?ゲームそのものですか?』
『そんなものはどうでもいい。腹の底からどうでもいいぜ、黒ウサギ。ここでオマエに向かってルールを問いただしたところで何かが変わるわけじゃねぇんだ。
世界のルールを変えようとするのは革命家の仕事であって、プレーヤーの仕事じゃねぇ。俺が聞きたいのは………たった一つ、手紙に書いてあったことだけだ』
十六夜は視線を黒ウサギから外し、他の三人を見まわし、巨大な天幕によって覆われた都市に向ける。
彼は何もかもを見下すような視線で一言、
『この世界は…………面白いか?』
『───────』
俺同様、他の二人も無言で返事を待つ。
俺らを呼んだ手紙にはこう書かれていた。
「家族を、友人を、財産を、世界の全てを捨てて箱庭へ来い」と。
それに見合うだけの催し物があるのかどうかこそ、四人にとって一番重要な事だった。
『────YES。「ギフトゲーム」は人を超えた者たちだけが参加できる神魔の遊戯。箱庭の世界は外界より格段に面白いと、黒ウサギは保証いたします♪』
黒ウサギは自信たっぷりとそう答えた。
───俺達はこれからの出来事に期待で胸を膨らませていた。