問題児たちとチートが異世界で会うそうですよ? 作:しろい凛キチ
今回のは短編ですが、気に入っていただけると嬉しいです。
この話を読むにあたり、東方の「願いを呼ぶ季節」という曲を用意していただければより楽しんでいただけると思います。
感想・ご指摘等お待ちしています。
- Side黒ウサギ -
『うぅ〜、なんで黒ウサギが神凪さんのお部屋の掃除をしなきゃならないのですか…』
この日、黒ウサギは十六夜さんの策謀によって、神凪さんのお部屋の掃除をすることになったのです。
どうやら十六夜さんは私が神凪さんのことを好きなのを知っていたようにも見えたのはきっと気のせいではないでしょう。
『まぁ、こんな機会でもないと神凪さんのお部屋に入ったことありませんし、ちょうどいいのかもしれませんね。頑張りましょう♪』
ムンッと両手を胸の前で握り、気合を込める。
『ふんふんふ〜ん♪』
鼻歌を歌いながら黒ウサギが掃除をしていると、不注意で棚の上にあった花瓶を割ってしまった。
『あわ、あわわわ…どうしましょう。よりにもよって神凪さんが一番大事そうにしてた花瓶を割ってしまうなんて……』
どうしようか考えていると、玄関の方から神凪さんの声が聞こえてきた。
『ただいま〜』
『ひゃうッ!!』
黒ウサギは驚きすぎて心臓が飛び出るかと思いました。
- Side神凪 -
『ただいま〜』
十六夜によって買い物に追い出された俺は、仕方なくメモ通りの物を買い集め、やっと家に帰ってこられた。
『あ〜疲れた。十六夜もなんで俺に頼んだんだろう?』
十六夜の真意は読めないにしても俺はとりあえずシャワーを浴びるため、一旦リビングに出てみた。
すると、そこにはあわあわした黒ウサギと割れた花瓶が転がっていた。
『ど、どうしたの黒ウサギ?!怪我はない?』
俺はすぐに黒ウサギに駆け寄ると、あたりをの気配を探る。どうやら敵襲ではないようだ。
『すいません。黒ウサギの不注意で神凪さんの大事にしてた花瓶を割ってしまいました』
黒ウサギはほんとに申し訳なさそうに謝ってくる。
俺はそれに対し首を振る。
『良いんだ黒ウサギ。形あるものなんて、いつかは壊れる定めなんだから。俺はそれよりも黒ウサギに怪我が無かった事の方が大事だよ』
『でも…あんなに大事になさってた物を壊してしまって……』
『ならこうしよう。これを壊してしまったお詫びに黒ウサギは今日一日俺の言うことを聞く、これならいいよね』
黒ウサギはか弱い小動物のような目でこちらを見つめ、
『一日神凪さんのいうことを聞くだけでよろしいのですか?』
確認するように聞いてくる。
それに対し俺は、黒ウサギの頭を優しくなでながら、
『うん。だから元気出して、ね?』
笑顔でこう答えた。
『はい、神凪さんの期待に答えられるよう精一杯頑張るのですよ♪』
ようやく普段の調子に戻った黒ウサギ。
『それで、何をするのです?』
『実はまだ何も考えてなかったり……そうだ、ねぇ黒ウサギ』
『はい?何ですか神凪さん?』
俺は黒ウサギの方に向き直る。
『今日一日だけでいいから俺と付き合ってくれないかな?もちろん買い物とかじゃなくて、恋人として』
その言葉を聞いて黒ウサギは戸惑ってるように思えた。しかし黒ウサギは少しの間の後、笑顔で答えてくれた。
『はいなのです♪』
こうして俺たちは一日だけの恋人となった。
* * *
付き合うことになった数分後、俺と黒ウサギはいつものカフェテラスに来ていた。
『さて、付き合うとは言ったもののどうする?』
普段の鍵尻尾の猫又店員に注文を頼むと俺はそう切り出した。
『そうですね……神凪さんは箱庭に来てまだ数ヶ月ですし、ここらの観光などはいかがでしょう?』
『そうしようかな。あ、それと俺のことは紅覇って呼んでいいよ』
そんな話をして注文したお茶を楽しんだ俺達は早速見て回ることにした。
* * *
『ふぅ、まさかこの世界にもプリクラみたいな機械があったなんてね。まぁこれはこれで可愛い黒ウサギが拝めていいけど』
斯く言う黒ウサギはとても上機嫌そうだった。
『あれ?あそこで何か賑わってるけど何があるの?』
『あれですか?あぁ簡易なギフトゲームのようですね』
そう言って黒ウサギは俺に
「ギフトゲーム名 "音楽の祭典"
・参加資格 なし
・勝利条件 観衆に一番多く歌声を認められたもの
宣誓 上記を尊重し、誇りと御旗の下、ギフトゲームを開催します。
"周辺コミュニティ一同" 印」
『へぇ、盛り上がってるみたいだね』
『そうみたいですね。ちょっと見ていきましょう♪』
『そうだね』
ギフトゲームを見ていくことにした俺と黒ウサギはとりあえず観衆の最後列に立ちゲームを見物し始めた。
『さぁ、後は挑戦者はいないのか?お、そこの黒ウサギのお嬢ちゃんの隣にいる君、どうだい?』
『え?お、俺?』
司会者らしき人にいきなり指名された俺は戸惑いつつも黒ウサギを見る。
『黒ウサギも紅覇さんの歌声を聞いてみたいのですよ♪』
『よしやろう』
まさに即答だった。黒ウサギに笑顔で言われたら断れるわけがない。
『それじゃこっち来て名前と曲名を伝えてから歌ってください』
『えっと、神凪紅覇です。曲は願いを呼ぶ季節』
〜〜♪
歌が終わるとすぐに拍手喝采が沸き起こった。
『凄かった。言うまでもなく君が優勝だね』
『あ、ありがとうございます』
会場となった場所はまだなお拍手で埋め尽くされ、それは止むことを知らなかった。
『それじゃ優勝賞品授与といこうかな。これは"サウザンドアイズ"に特注で作ってもらった指輪でね。この指輪には嵌めたものの願いを何でも1つ叶えられるギフトが込められているんだ。これを君に贈呈しy…『ちょっといいですか』』
俺は司会者の話を一旦打ち切り、提案をだす。
『俺はもともとこのギフトゲームには出ないつもりでした。あの時黒ウサギが後押ししてくれなかったらこの優勝も有り得なかったでしょう。なのでこの指輪は彼女にあげてもいいですか?』
司会者は一瞬考え込んだ後、言葉を口にする。
『もともと、これは優勝者にあげるものだったからね。優勝者である君がそれでいいなら構わないよ』
『ありがとうございます』
俺は司会者から優勝賞品を受け取ると、黒ウサギのもとへ向かった。
『黒ウサギ、今日はほんとにありがとう。おかげでこんな素敵な指輪がもらえたよ。これはそのお礼として受け取って欲しいんだけどどうかな?』
『紅覇さんからのプレゼントを断るわけないじゃないですか』
それを聞き、俺は黒ウサギの右手の薬指に指輪を嵌めてあげた。
その後俺たちはいろんな場所を見て回ったり、簡単なギフトゲームに参加したりして時間を潰した。
『今日は楽しかったのです♪』
『それは良かった』
夕方、朝あった黒ウサギの沈鬱そうな表情はすっかり消え、笑顔が戻っていた。
『神凪さんには何度も助けられたのです』
『え?俺が?』
半ば聞き落としそうになったが黒ウサギの言葉を聞き、問い返す。
『はいなのです♪コミュニティのこともレティシア様のことも、そして今回のことも…このお返しはいつか必ずいたs…『黒ウサギ』』
俺は黒ウサギの言葉を止め自分の言葉を続ける。
『別に俺は何かをして欲しくて助けたわけじゃないよ。だって、困ってる仲間を助けるのは当然でしょ?』
『そうでしたね………そしてそんな神凪さんが私は大好きです』
『え?何か言った?』
『なんでもないのですよ♪』
俺が黒ウサギの俺に対する思いを知ったのはまだ先のことだった。