問題児たちとチートが異世界で会うそうですよ?   作:しろい凛キチ

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サウザンドアイズへ

日が暮れた頃に噴水広場で合流し、話を聞いていた黒ウサギは案の定ウサ耳を逆立てて怒っていた。

 

『な、なんであの短時間に"フォレス・ガロ"のリーダーと接触してしかも喧嘩を売る状況になったのですか!?』『しかもゲームの日取りは明日?!』『それも敵のテリトリー内で戦うなんて!』『準備している時間もお金もありません!』『一体どういう心算があってのことです!』『聞いているのですか三人とも!!』

 

『『『ムシャクシャしてやった。今は反省しています』』』

 

『黙らっしゃい』

 

この三人、こういう時だけはまるで口裏合わせたように言い訳するんだね…。

俺は三人の姿を見て、苦笑いしか出てこなかった。

 

『はぁ〜………。仕方がない人たちです。まあいいデス。腹立たしいのは黒ウサギも同じですし、"フォレス・ガロ"程度なら十六夜さん一人d…『何言ってんだよ。俺は参加しねぇよ?』』

 

『当たり前よ。貴方なんて参加させないわ』

 

『だ、駄目ですよ!御二人はコミュニティの仲間なんですからちゃんと協力しないと』

 

『そう言う事じゃないよ、黒ウサギ。この喧嘩は彼女たちが売ってアイツらが買った。なのに十六夜や俺が手を出すのは無粋ってものだよ』

 

『………ああもう、好きにしてください』

 

* * *

 

『ところで皆さん、一旦寄りたいとこがあるのですが構わないでしょうか?』

 

そう聞かれ、俺たちはそれぞれ頷いた。

 

『それで、どこに行くの?』

 

『サウザンドアイズという超大手商業コミュニティです』

 

そんなことを話しながら歩いていくと、

 

『桜の木………ではないわよね?花弁の形が違うし、真夏になっても咲き続けているはずがないもの』

 

『いや、まだ初夏になったばかりだぞ。気合の入った桜が残っていてもおかしくないだろ』

 

『………?今は秋だったと思うけど』

 

ん?と話が噛み合わない三人は顔を見合わせて首を傾げる。

 

『皆さんはそれぞれ違う世界から召喚されているのデス。元にいた時間軸以外にも歴史や文化、生態系など所々違う箇所があるはずですよ』

 

『へぇ?パラレルワールドってやつか?』

 

『それに近しいものだよ、十六夜。正しくは立体交差並行世界論って言うんだけど、この話は長くなるからまた後で時間がある時にね』

 

そんなやりとりをしてると、どうやら店に着いたらしい。商店の旗には蒼い生地に互が向かい合う二人の女神像が記されている。あれが"サウザンドアイズ"の旗なのだろう。

 

日が暮れて看板を下げる割烹着の女性店員に、黒ウサギは滑り込みでストップを、

 

『まっ』

 

『待った無しです御客様。うちは時間外営業はやっていません』

 

………ストップをかける事も出来なかった。さすがは超大手商業コミュニティ、押し入る客の拒み方にも隙がない。

 

黒ウサギと女性店員が話していると、

 

『では中で入店許可を伺いますので、コミュニティの名前をよろしいでしょうか?』

 

『………う』

 

黒ウサギが言うのを躊躇っていると、十六夜がサラッと名乗る。

 

『俺達は"ノーネーム"ってコミュニティなんだが』

 

『ほほう。ではどこの"ノーネーム"様でしょう。よかったら旗印を確認させていただいてもよろしいでしょうか?』

 

『その………あの………私達に、旗はありまs…『黒ウサギ、ちょっと変わってもらえないかな?』神凪さん』

 

黒ウサギは俺を見るとその場を譲ってくれた。俺は口調こそ穏やかだったものの、内心怒っていた。

 

『入れろ』

 

『駄目です』

 

『入れろ』

 

『だ、駄目なものは駄目です』

 

俺は殺気を少し漏らしながら言った。が、それでも女性店員は負けじと言い返してくる。

 

さすがは超大手商業コミュニティの女性店員なだけはある、その心意気はよし。

 

『すまんが、殺気を収めてもらえんかの。女性店員の非礼は私がこの通り詫びるでの』

 

唐突にそんな声が聞こえ振り向くと、そこには和装ロリがいた。

 

『で、ですがこの人達は"ノーネーm…『"ノーネーム"と分かっていながらの嫌がらせ。これを非礼と言わずして何と言う』』

 

『しかしやっぱりウサギは触り心地が違うのう!ほれ、ここが良いかここが良いか!』

 

スリスリスリスリ。

 

黒ウサギは和装ロリの頭を掴むと店に向かって投げつける。くるくると縦回転した少女を俺は優しく受け止める。

 

『大丈夫だった?』

 

『う、うむ。すまんの』

 

ところで、少女の顔が少し赤かったのは夕日のせいだろう。

 

『まぁ、話があるなら店内で聞こう』

 

『よろしいのですか?彼らは"ノーネーム"のはず。規定では』

 

『よいよい、身元は私が保証するし、ボスに睨まれても私が責任を取る。いいから入れてやれ』

 

* * *

 

所変わって白夜叉の部屋

 

『私は四桁の門、三三四五外門に本拠を構えている"サウザンドアイズ"幹部の白夜叉だ。この黒ウサギとは少々縁があってな。コミュニティが崩壊してからもちょくちょく手を貸してやってる器の大きな美少女と認識しておいてくれ』

 

『はいはい、お世話になっております本当に』

 

黒ウサギ、随分投げやりな言葉で受け流したね

 

『ところで白ちゃん、その外門ってなんなの?』

 

『箱庭の階層を示す外壁にある門のことじゃの。数字が若いほど都市の中心に近く、同時に強大な力を持つ者達が住んでおる』

 

説明によると、ここ箱庭の都市は上層から下層まで七つの支配層に分かれていて、それに伴ってそれぞれを区切る門には数字が与えられているらしい。

 

外門から数えて、七桁の外門、六桁の外門、と内側に行くほど数字は若くなり同時に強大な力を持つ。箱庭で四桁の外門となると、名のある修羅神仏が割拠する完全な人外魔境だそうだ。

 

『して、その水樹の苗は一体誰が、どのようなゲームで勝ったのだ?』

 

『この水樹は十六夜さんがここに来る前に、蛇伸様を素手で叩きのめしてきたのですよ』

 

『なんと!?クリアではなく直接的に倒したとな!?ではその童は神格持ちの神童か?』

 

『いえ、黒ウサギはそうは思いません。神格なら一目見れば分かるはずですし』

 

『む、それもそうか。しかし神格を倒すには同じ神格を持つか、互の種族によほど崩れたパワーバランスがある時だけのはず。種族の力でいうなら蛇と人ではどんぐりの背比べだぞ』

 

神格とは生来の神様そのものではなく、種の最高ランクに体を変幻させるギフトを指す。

 

───蛇に神格を与えれば巨軀の蛇神に。

 

───人に神格を与えれば現人神や神童に。

 

───鬼に神格を与えれば天地を揺るがす鬼神と化す。

 

更に神格を持つことで他のギフトも強化される。箱庭にあるコミュニティの多くは各々の目的のため神格を手に入れることを第一目標とし、彼らは上層を目指して力を付けているのだ。

 

『白夜叉様はあの蛇神様とお知り合いだったのですか?』

 

『知り合いも何も、アレに神格を与えたのはこの私だぞ。もう何百年も前の話だがの』

 

小さな胸を張り、呵々と豪快に笑う白夜叉。

だがそれを聞いた十六夜は物騒に瞳を光らせて問いただす。

 

『へぇ?じゃあオマエはあのヘビより強いのか』

 

───なんかもの凄ーく嫌な予感がするんだけど…

俺がそんなことを思っていると、白夜叉は着物の裾から"サウザンドアイズ"の旗印───向かい合う双女神の紋が入ったカードを取り出し、壮絶な笑みで一言、

 

『おんしらが望むのは"挑戦"か───もしくは"決闘"か?』

 

刹那、四人の視界に爆発的な変化が起きた。

四人の視界は意味を無くし、様々な情報が脳裏で回転し始める。脳裏を掠めたのは、黄金色の穂波が揺れる草原。白い地平線を覗く丘。森林の湖畔。

四人が投げ出されたのは、白い雪原と凍る湖畔───そして、水平に太陽が廻る世界だった。

 

『今一度名乗り直し、問おうかの。私は"白き夜の魔王"───太陽と白夜の星霊・白夜叉。

おんしらが望むのは、試練への"挑戦"か?それとも対等な"決闘"か?』

 

"星霊"とは、惑星級以上の星に存在する主精霊を指す。妖精や鬼・悪魔などの概念の最上級種であり、同時にギフトを"与える側"の存在でもある。

 

『ふむ、"白夜"とはフィンランドやノルウェーといった特定の経緯に位置する北欧諸国などで見られる、太陽が沈まない現象を指している。そして"夜叉"とは水と大地の心霊を示すと同時に、悪心としての側面を持つ鬼神のこと。

つまりこのゲーム盤は白ちゃんを表現してるってことだね』

 

『如何にも。して、おんしらの返答は?"挑戦"であるならば、手慰み程度に遊んでやる。───だがしかし"決闘"を望むなら話は別。魔王として、命と誇りの限り闘おうではないか』

 

『参った。やられたよ。今回は黙って試されてやるよ、魔王様』

 

苦笑と共に吐き捨てるような物言いをした十六夜を、白夜叉は堪え切れず高らかに笑い飛ばした。プライドの高い十六夜にしては最大限の譲歩なのだろうが、「試されてやる」とは随分可愛らしい意地の張り方があったものだと、白夜叉は腹を抱えて哄笑をあげた。

 

『して、他の童達も同じか?』

 

『………ええ。私も、試されてあげていいわ』

 

『右に同じ』

 

『は?何言ってんの白ちゃん。俺は全力全開の決闘を申し込むよ?』

 

『は?』

 

白夜叉、黒ウサギ、飛鳥、耀、十六夜、ここにいる俺以外の声が綺麗に揃った。

 

『お、おんし、分かっているのか?決闘じゃぞ?』

 

『だからそれで構わないって言ったよね?』

 

『………よかろう。その決闘の申し出、しかと受け取った』

 

『さて、まずは三人の試練の方からじゃの。肝心の試練だがの、おんしら三人とこのグリフォンとで"力" "知恵" "勇気"の何れかを比べ合い、背に跨って湖畔を舞う事が出来ればクリア、という事にしようか』

 

白夜叉が双女神の紋が入ったカードを取り出す。すると虚空から"主催者権限(ホストマスター)"にのみ許された輝く羊皮紙が現れる。白夜叉は白い指を奔らせて羊皮紙に記述する

 

「ギフトゲーム名 "鷲獅子の手綱"

 

・プレイヤー一覧 逆廻 十六夜

久遠 飛鳥

春日部 耀

 

・クリア条件 グリフォンの背に跨り、湖畔を舞う

 

・クリア方法 "力" "知恵" "勇気"の何れかでグリフォンに認められる

 

・敗北条件 降参か、プレイヤーが上記の勝利条件を満たせなくなった場合

 

宣誓 上記を尊重し、誇りと御旗とホストマスターの名の下、ギフトゲームを開催します。

"サウザンドアイズ" 印」

 

* * *

 

ゲームは耀の勝利に終わった。そしてどうやら、新しい能力も発見できたらしい。

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