問題児たちとチートが異世界で会うそうですよ? 作:しろい凛キチ
目を開けると、そこは見慣れない荒廃した土地だった。
『ここがノーネームの本拠かな?』
話には聞いていたものの、そこはどう見ても廃れた土地にしか見えなかった。
そんなことを思いながら歩いているとバッタリと黒ウサギと出くわした。そして、背中には重傷を負った耀を抱えていた。
『え?あ、神凪さん!今まで一体どこに行ってらしたんですか?!』
『ずっと神界にいたんだよ』
『あぁ、そうでしたか。ってそういう場合じゃないんですよ!耀さんが重傷を負ってしまって…』
黒ウサギの慌て様を見るとよほど傷が深いことが伺える。
『黒ウサギ、今すぐ彼女を清潔なシートのベッドに乗せてもらえるかな?』
『そ、そんなことよりもまず工房へ行って治療が先です!』
『いいから早く!!』
『は、はい!』
黒ウサギは俺の怒気を孕んだ声に怖気づいたのか、素直に従ってくれた。
『それじゃ、治療するよ。"
俺が耀の傷の部分に手を当てると、そこから淡い光が漏れ、次第に傷が癒えていった。
『す、すごいのです神凪さん!まさか、そんな事まで出来るなんて!』
『この分なら、少し安静にすれば春日部さんは起きると思うよ』
『それで黒ウサギ、この本拠はノーネームのものなの?』
俺は先程から気になっていた質問を口にだす。
『えと……はい。3年前に魔王に襲来されてからそのままですが、間違いなく私達のコミュニティの本拠です』
『ねぇ黒ウサギ、仮にこの本拠を元に戻せると言ったら?』
『ほ、ほんとですか?!出来るのであれば是非元に戻して欲しいです♪』
うおっ
いくら本拠が戻る喜びが大きいからって、近づきすぎでしょ…
『そ、それじゃあ、一旦建物の外に出よう』
『はいな♪』
そうして外に出てきた俺たちは早速、始めることにした。俺はついさっき貰った創造神の力を使い、この本拠の再構築を始めた。
すると、数秒後辺りが光に包まれ、目を開くと元のノーネーム本来の本拠の姿に戻っていた。
『凄いのですヨ♪耀さんを治していただいただけでなく、本拠まで元に戻してもらえるなんて……』
『そりゃ、俺もこのコミュニティの仲間だからね。仲間を助けるのは当たり前でしょ?』
その言葉を聞くと、黒ウサギは俺に抱きついたまま泣き始めてしまった。
しばらくして黒ウサギが泣き止んだ頃、
『く、黒ウサギ、これは一体どうなっているの?!街が元通りじゃないか』
『そのことでしたら、神凪さんが元通りにしてくれました♪そして、神凪さんのおかげで耀さんの傷ももう完治しています♪』
『お前ってやっぱすごかったんだな。』
ヤハハと笑いながら賞賛の言葉を送ってくる十六夜。でもなぜだろう?あまり嬉しい気持ちになれないのは…
『そうだ。ねぇ黒ウサギ、一つほど聞いていい?』
『はいな♪一つと言わず、いくらでも聞いてくださいな♪』
『ありがとう。それじゃ一つ目、俺の住むところなんだけどさ、あそこら辺に造ってもいいかな?』
俺があそこと言ってさしたのは小さな池の近くの比較的広い場所だ。
『そうですね………ジン坊ちゃんはどう思いますか?』
『そうだね。この本拠を元に戻してくれたんだし、それくらいならいいと思うよ』
『ジン君ありがとう。それじゃ、早速造るとしますか』
そう言って俺はさっき指定した場所へ行き、創造神の力で和風な家を作り上げた。
イメージとしては、DOG D○YSの風月庵のような家だ。
『神凪君ってホント何でもアリね』
そんなやりとりをしながら、楽しいひと時を過ごした。
* * *
その後、俺と十六夜と黒ウサギは本拠の三階にある談話室で、仲間が景品に出されるゲームのことを話していた。
『それで、例のゲームはどうなった』
『そ、それが…………』
『ゲームが延期?』
『はい………申請に行った先で知りました。このまま中止の線もあるそうです』
黒ウサギはほんと悔しそうにウサ耳を萎れさせ、顔を歪めて落ち込んでる。十六夜も何か手はないものかと胸の前で手を組んで考えてる。
『それって、白ちゃんに言ってもどうにもならないの?』
『どうにもならないでしょう。どうやら巨額の買い手が付いてしまったそうですから』
俺と十六夜の表情が目に見えて不快そうに変わる。俺は人の売り買いに対する不快感に、十六夜は一度はゲームの景品として出したものを、金を積まれたからといって取り下げたホストに対してといったとこだろう。
『チッ。所詮は売買組織ってことかよ。エンターテイナーとしては五流もいいところだ。"サウザンドアイズ"は巨大な商業コミュニティじゃなかったのか?プライドはねぇのかよ』
『仕方がないのですよ。"サウザンドアイズ"は群体コミュニティです。白夜叉様のように直轄の幹部が半分、傘下のコミュニティの幹部が半分です。今回の主催は"サウザンドアイズ"の傘下コミュニティの幹部、"ペルセウス"。双女神の看板に傷が付く事も気にならないほどの金やギフトを得れば、ゲームの撤回ぐらいやるでしょう』
『ところで黒ウサギ、今回取り戻すはずだった仲間ってどんな人なの?』
正直"ペルセウス"とかいうコミュニティは潰してやりたいが、その気を抑え気になったことを黒ウサギに聞いてみた。
『そうですね………一言で言えば、スーパープラチナブロンドの超美人さんです。指を通すと絹糸みたいに肌触りが良くて、湯浴みの時に濡れた髪が星の光でキラキラするのです』
『へぇ?よく分からんが、見応えはありそうだな』
『それはもう!加えて思慮深く、黒ウサギより先輩でとても可愛がってくれました。近くにいるならせめて一度お話したかったのですけど………』
『おや、嬉しい事を言ってくれるじゃないか』
俺を含めた3人は窓の外を見た。こんこんと叩くガラスの向こうで、にこやかに笑う金髪の少女が浮いていたのだ。跳び上がって驚いた黒ウサギは急いで窓に駆けよる。
『レ、レティシア様!?』
『様はよせ。今の私は他人に所有される身分。"箱庭の貴族"ともあろうものが、モノに敬意を払っていては笑われるぞ』
黒ウサギが錠を開けると、レティシアと呼ばれた金髪の少女は苦笑しながら談話室に入る。
美麗な金の髪を特注のリボンで結び、紅いレザージャケットに拘束具を彷彿とさせるロングスカートを着た彼女は、黒ウサギの先輩と呼ぶには随分と幼く見えた。
『レティシアさん、だっけ?用件はなんなの?こんなとこから入ってくるってことは、さしずめジンに見つからずに会いに来たってことじゃない?』
『用件というほどのものじゃない。新生コミュニティがどの程度の力を持っているのか、それを見に来たんだ。ジンに会いたくないというのは合わせる顔がないからだよ。お前達の仲間を傷つける結果になってしまったからな』
『実は黒ウサギ達が"ノーネーム"としてコミュニティの再建を掲げたと聞いた時、なんと愚かな真似を………と憤っていた。それがどれだけ茨の道か、お前が分かっていないとは思えなかったからな』
『コミュニティを解散するよう説得するため、ようやくお前達と接触するチャンスを得た時………看過出来ぬ話を耳にした。神格級のギフト保持者が黒ウサギの同士としてコミュニティに参加したとな』
おそらく、白ちゃんの本来の目的は、秘密裏にレティシアを此処へ連れてくることだろうね。
『そこで私は一つ試してみたくなった。その新人達がコミュニティを救えるだけの力を秘めているかどうかを』
何だろう、すごく嫌な予感しかしない………
『生憎、ガルドでは当て馬にもならなかったよ。ゲームに参加した彼女達はまだまだ青い果実で判断に困る。………こうして足を運んだはいいが、さて。私はお前達に何と言葉をかければいいのか』
『ほぅ。つまりアンタは"ノーネーム"が魔王を相手に戦えるのか不安で仕方がない。そう言う事だろ?ならその身で、その力で試せばいい───どうだい、元・魔王様?』
言っちゃったよ。やっぱり予想通り、一騒動ありそうだね………
そんなこと等を思っていると、もう既に力試しを始めていたのかレティシアが上空から長柄のランスを投擲した。
怒号とともに放たれた槍は瞬く間に摩擦で熱を帯び、一直線に十六夜に落下していく。だが、十六夜はそれに対し、
『カッ───しゃらくせぇ!』
大気を揺らして舞い落ちる槍の先端を前に十六夜は殴りつけた。
『『『───は………!??』』』
これは比喩にあらず。鋭利に研ぎ澄まされ、大気の壁を易々突破する速度で振り落とされた槍は、鋭い尖端も巧緻に細工された柄も、たった一撃で拉げて只の鉄塊と化し、さながら散弾銃のように無数の凶器となってレティシアに向かって飛んでいく。
『危ない!!』
俺はとっさにそんな言葉を発しながら、"
『どうやら助けられたようだな。………あ、ありがとう』
心做しか、顔が赤くなってるのは気のせいだろうか?
そんなレティシアに不覚にもドキドキしてしまったのはここだけの話だ。
『別にどうってことないよ。それより、話しなら館の中でしようよ』
『それもそうだn…って、あ!黒ウサギ!何を!』
俺とレティシアの元へ駆け寄った黒ウサギがレティシアから掠め取ったギフトカードを眺め、震える声で向き直る。
『ギフトネーム"
そのことを黒ウサギの口から聞き、途端に気まずそうな顔をするレティシア。
『事情は後で聞くにせよ、今は一旦館に戻ろう』
俺は今後起こることに対し、空への警戒をしつつ皆に促した。
今回のはほぼ出来上がってたのでなんとか更新できました
さて、次は原作の一巻最後くらいまで書こうと思っていますが、正直、書き終わるの目処が立っていません。更新は遅くなるかもしれませんが、どうかよろしくお願いします