問題児たちとチートが異世界で会うそうですよ? 作:しろい凛キチ
俺たちが戻ろうとした時、まさに異変が起きた。顔を上げると同時に遠方から褐色の光が差し込む。
『ゴーゴンの威光!?少し遅かったか。皆、早く屋敷の中へ!』
少しの焦燥を交え、俺は早口にまくし立てる。しかし、レティシアは光から俺たちを守るように立ち塞がる。
『だ、ダメですレティシア様、避けてください!』
しかしレティシアは黒ウサギの言う事に耳を貸そうともせず、一歩も動こうとしない。十六夜は咄嗟の判断で回避したが黒ウサギとレティシアは回避が遅れ、光の道筋に立ったままだった。
『くっ、"
俺はすぐに"無限創造"で"空間を操る能力"を作り、レティシアと黒ウサギの立っている空間と何もない空間を入れ替えた。
『バカな、なぜ石化してない?!』
『例の"ノーネーム"もいるようだがどうする!?』
『ノーネームごとき邪魔するようなら構わん、切り捨てろ』
翼の生えた空駆ける靴とゴーゴンの石化の呪い、さしずめコミュニティは"ペルセウス"ってとこか?
『こ、この………!これだけ無遠慮に無礼を働いておきながら、非礼を詫びる一言もないのですか!?それでよく双女神の旗を掲げていられるものですね、貴方達は!!!』
俺が冷静に相手のコミュニティを観察していると黒ウサギが叫んだ。しかし、激高する黒ウサギを"ペルセウス"の男達は鼻で笑った。
『ふん。こんな下層に本拠を構えるコミュニティに礼を尽くしては、それこそ我等の旗に傷が付くわ。身の程を知れ"名無し"が』
コミュニティへの侮辱を聞き、入って間もないながら自分のコミュニティを傷付けたことに、俺は堪忍袋の緒が切れそうだった。そして黒ウサギからはバチン!と、堪忍袋が爆発するような音が聞こえた。
『ふ、ふふ………いい度胸です。多少は名のあるギフトで武装しているようですが、そんなレプリカを手にして強くなった気でいるのですか?』
『何?!』
『愚かな。自旗も守れなかった"名無し"など、我等の敵ではないぞ』
『恥知らず共め。我等が御旗の下に成敗してくれるわ!』
『ありえない………ええ、ありえないのですよ。天真爛漫にして温厚篤実、献身の象ちょu ……神凪さん?』
俺は黒ウサギを手で制し殺気で黙らせ、"ペルセウス"を睨み言葉を紡ぐ。
『ねぇ君たち、精神を破壊され尽くして死ぬのと体をズタボロにされ尽くして死ぬの、どっちがいい?』
俺は殺気を威圧程度に絞り言った。それに反応したのは意外にもレティシアだった。
『ま、待ってくれ。私はどうなってもいい。だからこのコミュニティだけは!』
『レティシア……』
『だったらこうしよう。レティシア、ちょっとこっち来て』
俺はレティシアを呼ぶと耳元である提案を呟いた。
『頼めるかな?』
『それで済むならやってやるさ』
『おい、何ごちゃごちゃ話してやがる!さっさとその吸血姫をこっちによこせ!!』
そう言うとレティシアは数歩前に出た。もちろん黒ウサギは反対しそうになったが俺が黙らせた。
『ふん、最初からそうしてればいいんだよ』
そう言うとペルセウスのメンバーはレティシアを再度石化させ、連れ去って行った。
『神凪さん、なぜ素直にレティシア様を連れて行かせたんですか!』
『落ち着いてって黒ウサギ。大丈夫、レティシアは必ず助けるから。とりあえず"サウザンドアイズ"へ行こう』
ひとまず俺らは"サウザンドアイズ"へ行くことにした。
* * *
『お待ちしておr…『いいから早く通してくれるかな?』はい、こちらです』
サウザンドアイズへ行くと、表に以前会った女性店員が立っていた。俺らは中へ通してもらい、白ちゃんの部屋へ向かった。
『白ちゃん、入るよ?』
『うむ』
俺が白ちゃんに確認を取り、みんなで中へ入る。すると既に中にいた男が声をあげた。さしずめやつが"ペルセウス"のリーダーってとこだろう。
『うわお、ウサギじゃん!うわー実物始めてみた!噂には聞いていたけど、本当に東側にウサギがいるなんて思わなかった!つーかミニスカにガーターソックスって随分エロいn…『そんなことはどうでもいいから本題に入ろうぜ』ちっ、分かったよ』
『───"ペルセウス"が私達に対する無礼を振るったのは以上の内容です。ご理解いただけたでしょうか?』
『う、うむ。"ペルセウス"の所有物・ヴァンパイアが身勝手に"ノーネーム"の敷地に踏み込んで荒らした事。それらを捕獲する際における数々の暴挙と暴言。確かに受け取った。謝罪を望むのであれば後日───』
『 結構です。あれだけの暴挙と無礼の数々、我々の怒りはそれだけでは済みません。"ペルセウス"に受けた屈辱は両コミュニティの決闘をもって決着をつけるべきかと。"サウザンドアイズ"にはその仲介をお願いしたくて参りました。もし"ペルセウス"が拒むようであれば"
それに対し、唐突にルイオスは言った。
『いやだ。決闘なんて冗談じゃない。それにあの吸血鬼が暴れ回ったっていう証拠があるの?』
『それなら彼女の石化を解いてもらえば───』
『駄目だね。アイツは一度逃げ出してんだ。出荷するまで石化は解けない。それに口裏を合わせないとも限らないじゃないか。そうだろ、元お仲間さん?』
『そもそも、あの吸血鬼が逃げ出した原因はお前達だろ?実は盗んだんじゃないの?』
『な、何を言い出すのですかッ!そんな証拠が一体何処に───』
『事実、あの吸血鬼はあんたのところに居たじゃないか』
ぐっと黙り込む黒ウサギ。それを突かれては言い返せない。黒ウサギの主張も、ルイオスの主張も、第三者がいないという点では同じなのだ。
『じゃ、さっさと帰ってあの吸血鬼を外に売り払うか。愛想ない女って嫌いなんだよね、僕。特にアイツは体も殆どガキだs…『ねぇ』今度はなんだ』
今まで黙っていた俺だったがレティシアを侮辱され、ついに堪忍袋の緒が切れた。
『俺とある"ゲーム"をしよう。なに、誰でも出来る一般的なゲームさ。どうだ?』
『ふん、誰が"名無し"風情と戦うかよ』
『だろうね。なんたって今からやるゲームでアンタは俺に絶対に勝てないからね』
『何?』
ルイオスの表情には少しの怒気と殺気が籠っていた。それもそうだろう、さっきまで"名無し"風情と罵っていた相手にゲームを挑まれ、しかも自分は絶対負けるときたら誰でも激高するだろう。
『いいだろう。乗ってやるよ、そのゲーム。僕がそのゲームで勝って絶対的な差というものを見せてやるよ』
『じゃあ場所を移動しよう』
そう言って俺が指をパチンと鳴らすと、
『『『『な?!?!』』』』
みんなが一斉に驚愕した。なにせ、見たことのない世界に連れてこられたのだから。
『なぁ神凪、此処は何処なんだ?』
『此処は"
───十の盟約───
【一つ】この世界におけるあらゆる殺傷、戦争、略奪を禁ずる
【二つ】争いは全てゲームによる勝敗で解決するものとする
【三つ】ゲームには、相互が対等と判断したものを賭けて行われる
【四つ】"三"に反しない限り、ゲーム内容、賭けるものは一切を問わない
【五つ】ゲーム内容は、挑まれた方が決定権を有する
【六つ】"盟約に誓って"行われた賭けは、絶対遵守される
【七つ】集団における争いは、全権代理者をたてるものとする
【八つ】ゲーム中の不正発覚は敗北と見なす
【九つ】以上をもって神の名のもと絶対不変のルールとする
【十】みんななかよくプレイしましょう
『それじゃ、挑まれたのはこっちだからゲームは僕が決めていいのかな?』
ルイオスは不敵に笑い確認をとってくる。
『ああ、それで構わないよ。それと、アンタが勝ったら黒ウサギをあげよう。でも俺が勝ったら、俺が決めたゲームをやるか"サウザンドアイズ"が仲介に入ったゲームをやるか決めさせてあげるよ』
『そうか、ならこれで行こう。これなら遊び方もわかってるだろ?』
そう言って取り出したのはチェスだった。
───チェスは「
十の百二十乗という膨大な局面を把握できた場合の話である。
つまりは、事実上ないに等しい。
『それでいいよ』
『『
* * *
ゲーム開始から数時間後、
『くそっ、なんで一勝もできないんだ!』
ルイオスの戦績は50戦0勝50敗だった。
『この勝負は俺の勝ちだね。それじゃ、元の世界に戻ろう』
そういって指を鳴らすと元いた"サウザンドアイズ"の客間に戻っていた。
『さてそれじゃ、盟約に誓った絶対遵守の賭けの結果。白ちゃん達"サウザンドアイズ"仲介のゲームをやるか俺が決めたゲームをやるか、どっちにする?』
『受けてやるよ。"サウザンドアイズ"仲介のゲームをな』
『分かった。それじゃゲームの日取りは明日ということで俺たちは帰るよ。白ちゃん、よろしくね』
『うむ。しかと任された』
それを聞き、俺たちは一旦本拠に戻った。