強火二宮担の妹   作:瑠威

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一度同じような設定で書いてたのを書き直し、新しく投稿。内容はだいぶ変わってます
時系列は鳩原がいなくなってすぐ、ぐらい


第1話

 

 突然だけれど、私の兄である二宮(にのみや) 匡貴(まさたか)は全人類を救えると思う。急にどうしたとか、何から救うんだとか、じゃあ証明して見せろよと言われると厳しいが、私個人の意見としてはそう思っているし、それぐらい信じているのだ。

 

 私の兄はカッコイイ人だ。背が高くて、もみあげが少し長くて襟足も長い。目も切り長で、思わず造形美!!と叫びたくなるぐらいにはお顔も髪型も整い過ぎていると思う。

 もちろん、私の兄は外見だけの男ではない。性格だって無駄なことはしない主義であるし、ストイックに自分の決めたことは迷わずトコトンとやる人だ。こんな人がかっこ悪いはずがない。

 

 

「…本当にお前、二宮のことが好きだな」

 

 

 「有り得ねぇ」とギョッとした顔で言うのは影浦先輩である。2年と少し前(ほとんど3年前)にほぼ同期として知り合った。そもそも、私がボーダーに入った理由だって、兄のカッコイイ姿を見ていたいがためのほぼ私欲である。これを唯一知っている人間が影浦先輩で、どうやって兄のログを見れるのか困っていた時に助けてくれたのが出会いのきっかけだ。

 

 目をガン開きにして忘れまいと兄のログを記憶する私を見て、「その意欲をもっとマシなことに使え」と先輩は言ってくる。そっくりそのままあなたにお返ししたい。知ってるんだぞ、あなたの成績がそこそこヤバいこと。

 

 

「…はあ、兄さんがカッコよすぎる。結婚したい」

「無理だろ」

「外国とか、それこそネイバーフッドに行けばワンチャン……」

「キメェ」

 

 

 ツンデレ影浦先輩には私に対する優しさが足りないと思う。いや、優しさで言うなら何度かお好み焼きを奢って貰ったことがあるので違うな。…もう少し私を理解して欲しい、かな? あと大人しく私の布教活動を聞き入れて欲しい。あんなにも兄の良さについて語っているのに、それを全て聞き流す上に、最近では語ろうとし始めた瞬間それを察知し脱兎のごとく逃げるのだ。理解ができない。

 

 

「つーかよ、ランク戦しようぜ」

「あ、無理です」

 

 

 私の兄はトリオンというものを人より多く持っている。遺伝なのか何なのかは知らないが、どうやら私もそのトリオンとやらを多く持っているらしく、なんなら少量ではあるがトリオンに関して私は兄に勝っているらしい。それを踏まえ、エンジニアという名の社畜の皆々様方は私に兄と同じシュータートリガーを進めてきた。もとより、私は兄とお揃っちにする気満々だったのでそれを大人しく受け入れた。が、思い出して欲しい。私がボーダーに入った理由を。

 

 そう!! ぶっちゃけると私は三門市がーーとか、友達をーー、なんて大層な大義名分を掲げボーダーにやってきた訳では無い。兄がいるから。兄がカッコよすぎるから。それを観察したいから!!!私はボーダーに入った。

 

 それ故に、私はボーダーに入隊するとボチボチと時間をかけながらB級に上がり、それ以降は一切ランク戦などはせずに兄の観察をしている。これを話した時、影浦先輩は凄い顔をしていた。なんなら時折「おい、ストーカー」と呼ばれることもある。失礼すぎる。誰がストーカーだ! 私はただただ兄の五歩後ろの物陰から兄を観察しているだけだ。言葉のセレクトが悪すぎる。私は、ただのファン!!である。

 

 

「本当に、ランク戦とかいいんで。マジで」

「お前って急に心閉ざすよな…」

「ボーダーで一番仲良いの影浦先輩ですけどね」

「だから!!てめぇを知ってるエンジニアからランク戦に引っ張りだせって言われてんだよ!!」

 

 

 影浦先輩はよく人を吊し上げにしているような顔貌をしているが、意外と面倒見がいい先輩である。それこそ、ログの見方が分からなくて困っている私を見捨てられない程にはいい人なのだ。彼の場合、顔とサイドエフェクトで損しているだけであって話してみれば普通にいい人である。まあ、兄さんには負けるけど。

 

 

「影浦先輩なんだから断れますよね? エンジニアの戯言なんて」

「何度断ってもハイエナの如くやってくんだよ…」

「ほら、ここで影浦先輩お得意の首チョンパ! 出番ですよ」

「エンジニアを敵に回したら俺はトリガー使えなくなんだろーが!!」

「…はあ。わかりました。じゃあ私がエンジニアに話つけてきます。それでいいですよね?」

 

 

 エンジニアの皆々様は忍耐力がある。あと凄く執拗い。屍のような酷い顔色をしているのに、ずっとそれこそストーカーのように付きまとって来るのだ。そろそろ私も彼らが鬱陶しいと思っていたので蹴散らそうと思う。え?蹴散らし方? そんなの影浦先輩が一番身に染みてる蹴散らし方ですよ。

 

 

「兄の布教活動を少々」

 

 

 影浦先輩の表情筋が死んだ。

 

 

 

 * * *

 

 ランク戦に興味が無いと少し前に抜かしていた私だが、実は部隊に入っていたりする。

 

 きっかけはそう、肌がピリピリするぐらい寒い冬の日のことだった。その日も私は兄の神々しいログを見るため、遠路遥々ボーダーへ出向いていた。いつも通り空いてる部屋を貸し切って一人ハスハスとログを見るつもりだったのだが、その前に捕まってしまった。

 

 

「アンタ──」

 

 

 私を見下すような目。なんなら殺意すら籠っていたんじゃなかろうか。私の前からガンとして動かない彼女は腕を組み、私を射殺さんとばかりに睨みつけている。

 

 

「そろそろ世界に何か還元したらどう?」

 

 

 初対面、初会話。凄く偉そう、それが目の前の女に対する印象だった。

 

 

「働け」

 

 

 ニコリとそう告げる彼女を見て私は何かを感じ取った。ここで断ると殺される、身体が脳がそう叫んでいた。

 

 

「アンタには私の作る隊に入ってもらう。異論は認めない。いいわね?」

 

 

 私は頷くしかなかった──。

 

 

 

 *

 

 突然、胸ポケットに入れていたスマホが鳴る。電話の主は正直どうでもいい相手だった。出るかどうか数秒悩みはしたものの、ここで出ないを選択した場合、後々何か言われる未来が見えた。ここは大人しく出おくのが吉か。

 

 

『うおっ、よーやく連絡着いたわ』

「どうしたの、バカ先輩」

『そろそろさー、名前で呼んでくんね??』

「尊敬に値すると思ったら呼ぶって何度も同じこと言わせないでくれる?」

 

 

 私が所属している部隊、自称真木隊。他称冬島隊のA級2位だったりする。電話の相手はスナイパーランク一位のくせにアホでバカでリーゼントな先輩である。割とガチめに卒業試験がヤバいらしいが、私も理佐も完全に無視している。どうせ同じ学校じゃないし、完全なる自業自得。泣くのは本人とボーダーの上層部だけだ。

 

 

「で、要件は」

『あー、アレだ。遠征のヤツ』

「私行かないって言ってるよね? 何度も同じこと言うの嫌いって知ってて喧嘩売ってるの?」

『ほらー、隊長やっぱ無理だってー』

 

 

 電話の向こうでバカ先輩と冬島さんの話し声が聞こえる。若干涙声で『真木ちゃんが説得してくれよー』と冬島さんの情けない声が聞こえる。そして理佐の透き通る声で『隊長なんだからそれぐらいやってくれる?』とバッサリ切り捨てる声が聞こえた。相変わらず理佐の女帝感半端ない。

 

 

「話それだけなら切っていい?」

『え゙、ちょ、隊長──』

 

 

 ブツ切りしてやった。話すだけ無駄だ。

 ハア、とため息をつけば隣で暇そうにしていた影浦先輩の黄色い野獣のような瞳と目が合った。

 

 

「行かねぇのか、遠征」

「兄さんと離れるなんて却下。短期とは言えども遠征に行くなんて私に死ねって言ってるのと同然よ」

「──遠征に行けば見つかんじゃねぇの」

 

 

 「ハトハラ」そう、影浦先輩は言った。

 一瞬、私の呼吸が止まる。

 数秒後、呼吸を忘れた私の身体は息苦しさからまた呼吸を再開し、そうか、と心の中で呟いた。

 

──遠征にいけば探せるのか、鳩原を

 

 

「先輩、バカの癖にそういうのには思考が回るんですね」

「殺すぞ」

「そっか。行って見つければ、うん。確かにそうだ」

 

 

 影浦先輩の言葉を私は噛み締める。私の表情は兄と会話をしている時ぐらいニコニコしているだろう。それぐらい、今の私のテンションは高い。

 

 

「行こうかな遠征」

「お前、単純って言われね?」

「初めて言われました」

 

 

 ニコリ、そう微笑みながら返すと影浦先輩は一言。「お前、真木理佐以外友達いねーもんな」と。失礼な! 理佐以外にも当真(バカ)と冬島さんと影浦先輩がいます!!

 

 

「え、俺も友達枠に入れられてんのか?」

「はい。あ、そんな友達枠の先輩に一つ相談いいですか?」

 

 

 「相談?」と影浦先輩は怪訝そうな顔をした。確かに私が影浦先輩に相談を持ちかけるのは初めてである。理由としては影浦先輩に相談を持ちかけるぐらいなら自分で解決した方が絶対に良かったり、理佐の方が適任だったりと海より深いワケがあるのだが、まあ、今はそれを置いておくとして。

 

 

「実は兄さんに私がボーダーに入隊してること教えてないんですけど、遠征の話どうやって兄さんに話つければいいですかね?」

「お前、実はバカだろ」

「初めて言われました。…あ、影浦先輩の家に泊まることにするとかどうですか!!?」

 

 

 私の出した名案は残念なことに影浦先輩に即却下されてしまった。

 

 

「今回は短期と言えムリがあんだろーが!!」

 

 

 確かに。それに「影浦先輩の家に泊まりに行く」と兄に伝えたとして「影浦? 影浦ってどの影浦だ?」と突っ込まれたらお終いだ。根付さん殴ってB級に降格した影浦先輩としか説明のしようがない。それは困る。だって私のがボーダーに通ってることバレるもん。せっかく、両親にも手伝ってもらって秘密にしているのに、こんなバレ方はやばい。ただのバカだ。

 

 

「…ところで、影浦先輩って怒りっぽいってよく言われません?」

「…もう帰っていいか」

「あー!!待って待って!! 落ち着いて話し合いましょう!!」




 
 二宮(にのみや) 眞貴(まき)
 この小説の主人公。
 二宮匡貴の実の妹。普段はミルクティーの髪色をポニーテールにしている。瓶底メガネをつけているため気づかれないが顔は兄そっくり。しかし、兄にボーダーに入っていることをバレたくないという理由からトリオン体の髪色は黒に髪型はショートカットに設定してある。メガネは瓶底メガネを封印し、真木理佐セレクトのメガネを掛けている。冬島隊メンバーが眞貴のことを「マキマキ」と呼ぶため、ボーダー内では真木理佐の妹説が浮上している。眞貴の苗字が「二宮」だとは知らない模様。
 友達は沢山いるが(・・・・・・・・)、明記してあるのは影浦、当真、冬島、真木の4人。基本的に興味が無い人間の名前は覚えない、喋りかけない、真木理佐の姉妹説等々を理由に、彼女に直接話しかけるのは先程の4人ぐらいである。
 17歳の六頴館高校在学中。強化二宮担で、彼女の世界は二宮が中心に回っている。どうやら鳩原と面識がある模様。
 実はサイドエフェクトがあるとかなんとか…?

 影浦(かげうら) 雅人(まさと)
 眞貴の「助けて!」という心の叫びをサイドエフェクトで察知してからの付き合い。眞貴のことを基本的に「ストーカー」と呼び、一度来馬の前でそれを呼んで大事になりかけた経験がある。それ以降からは眞貴のことを「てめぇ」「おまえ」「コイツ」と人前で呼ぶようになり、影で18歳組は「マキはカゲの奥さん説」を推している。

 当真(とうま) (いさみ)
 ナンバーワンスナイパーのバカ。眞貴が二宮の妹とは知らない。が、二宮と呼ぶと兄と被る、眞貴と呼ぶと真木理佐と被る、などなどの理由から二宮の二でマキ×2にしよーぜと以下にもバカっぽいニックネームを提案。そしてそれが採用された。そろそろ勉強した方がいいと思う。

 冬島(ふゆしま) 慎次(しんじ)
 女子高生に怯えるアラサー。眞貴が二宮の妹だと知っているが、実は真木理佐と双子なのではないかと内心戦慄している。とにかく真木理佐も眞貴も怖い。

 真木(まき) 理佐(りさ)
 誰もが認める女帝。冬島、当真、眞貴を引きずって隊に入れた女。威圧感と物怖じしない性格は数多の男を震え上がらせさせた。女帝。

 二宮(にのみや) 匡貴(まさたか)
 眞貴の実の兄。妹からの重い愛を受け止めている男。天然。実の妹がボーダーに入っていて、ナンバーツーの隊に所属していることを知らない。時折、眞貴から強烈な視線を受けており犬飼から「マキちゃんって二宮さんのこと好きなんですかね〜」と揶揄われる。本質は的を得ているのだが、それに気づかない二宮はそれを否定するし、なんならマキのことは真木理佐の妹だと思っている。天然
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