前回の続きです。
前話で誤字の報告をいただきました。
誤字に気づかれた方は遠慮なくご報告いただけると非常に助かります…
追手の2人を振り切り、3階の理科実験室の前までやって来た。
(彼女らの目的は不明だが、しばらくの間姿を隠しておくのがいいかな…)
僕がそんなことを考えていると、実験室の扉が開かれていることに気づいた。
ここは普段は授業の時間にしか使われておらず、現在は放課後の時間であるため、人の出入りも無いと判断しここに身を隠すことにした。
実験室の中に入り、辺りを見渡すと、窓が黒いカーテンで覆われているため薄暗く、机の上に顕微鏡、スタンドに立てかけられている液体が入っている試験管やフラスコ、棚には標本や人体模型が置かれており少しだけ不気味な雰囲気に感じられた。
「ここならすぐには見つからなそうだな…」
そんな独り言を呟いていると、置き去りにしてしまったすいせいのことを思い出した。
一応すいせいに連絡しておいた方がいいと思い、電話をかけようとしたその時、
「じゃっじゃじゃーん!!」
「!?」
いきなりの陽気な声と実験室の電気がついたことにより僕は驚いてしまった。
声のする実験室の入り口の方へ振り返ると、そこには笑顔を浮かべ、白衣を着た薄桃色の髪色で頭部に耳が生えた女の子がいた。
「君は…さっきの2人の仲間かな?」
「そうでーす!初めまして皇ライ先輩、こよはholoXの頭脳、博衣こよりでーす!」
その子はウインクをしながら自己紹介をしてきた…
先程の2人と比べて好戦的ではないように見えるが油断はできない。
「こよたちの目的は先輩の捕縛なんですー、だから捕まってくれませんか?」
「…僕を捕まえてどうする気かな?」
「さぁ?こよたちはラプちゃんに命令されただけでそこまでは聞いてませんね。」
博衣こよりと名乗った女の子はそう言いながら実験室の扉を閉め、鍵をかけた。
(鍵をかけられた…そうなると脱出手段は一つしかない…)
僕は脱出の経路として考えていた窓を見た。
ここは3階。窓から飛び降りても恐らく問題はない。問題はどのタイミングで実行に移るかだが…
「あ、先輩?窓から逃げようとか考えてます?」
「…その口ぶりからすると何かしらの対策があるみたいだね?」
「はい!窓の外にはルイルイが待機しているので、例え窓から逃げ出したとしても無駄ですよー?」
なるほど、仲間を既に配置していたということか。窓付近で待機しているということは恐らく空を飛べる特性を持っていると思ってていいだろう。
何かここを脱出する手段はないか…
頭をフル回転させていると、先程すいせいに連絡を取ろうとしていたことを思い出した。
僕は机の下に屈み込み、スマホですいせいに理科実験室にいることをメッセージで伝えた。
そしてすぐさま立ち上がり、再び彼女と向き合った。
しかし、そのタイミングで僕はある違和感に気づいた。
(何だ?この甘い匂いは…っ!?)
僕がこの匂いに気づいた瞬間、強烈な眠気に襲われ、床に膝をついた。
「あっ、やっと効いてきましたかー?」
「これは…催眠ガ…ス…」
ぼやける視界に映ったのは試験管とフラスコを手元に持っていた彼女の姿だった。
「この液体同士を合わせると、あら不思議!簡単な催眠ガスの出来上がり〜、ってもう聞こえてませんかね?」
意識を手放すまいと抗いを続けたが、視界がどんどん暗くなっていき、そして…
僕の意識は暗闇に落ちた…
こよりside
「ふぅ、やっと終わったよぉ…」
ラプちゃんから命じられたターゲットの捕縛に成功した。
本来はいろはちゃん達の時点で確保できる想定だったが、思っていたよりもやり手だったようだ。
確かにこよがここまで追い込むことができたが、その間でも脱出の手段を色々考えていたようだったし、ルイルイが窓で待機していなければ、本当に窓から逃げられていたかもしれない。
さて、しばらく起きることはないけど早めに連行しないとねー。
外にいるルイルイにインカムで連絡を取ることにした。
「ルイルイ?ターゲットの捕縛完了したから運ぶの手伝ってー?」
『オッケー。ラプラスに任務完了の連絡入れるから、終わったら運びましょう。』
「はぁい。」
連絡を終えた後、眠っている彼に目を向けた。
「うーん、ラプちゃんの用事が終わればもらっちゃいたいなぁ…モルモットとして優秀そうだし…あっ、助手という手もありかも~。」
そんなことを考えながら眠っている彼の頭を撫でてあげた。
すいせいside
「はぁ…はぁ…」
ライ君が女子生徒に襲われているところに遭遇してしまった。
あの2人には見覚えがある。確かholoXとかいう変な集団のメンバーだったはずだ。
その2人からライ君が上手く逃げ切ったのは目で追っていたが、あっという間に見失ってしまった。
ライ君が逃げた方角を追って探していたがどこにも彼は見つからない。
途方に暮れているとライ君から連絡がきた。
『3階の理科実験室にいる。』
ライ君からのメッセージを確認した瞬間目的地に向かって走り出した。
(待っててライ君…聞いてほしいことがあるんだから…)
そんな思いを抱き、ライ君がいるはずの理科実験室に到着した。
「ライ君!!」
扉を開けながら彼の名前を呼んだ。
いつもであれば、名前を呼ぶと笑顔を向けながら返事をしてくれる彼からの返答があるはずだった。
しかし実際は広くて暗い実験室に私の声が木霊しただけであった…
(いない?どうして…)
彼がいないという事実が私の不安を駆り立てる。
急いで彼の携帯に電話をした。
帰ってきた声は携帯の電源が切られているという音声だけだった。
ライ君が噓の場所を伝えた可能性を考えたが一瞬でその考えを否定した。
ライ君がそんなくだらない嘘をつく筈がない。
走ったお陰で頭に酸素が足りていないことと、私の思考を落ち着かせるために呼吸を整えた。
徐々に思考がクリアになってきて、辺りを見渡した。
ライ君がこの実験室にいたのはおそらく事実。であればここで何かがあったに違いない。
私は実験室で探索を始めると、暗い床に光るものを見つけて拾い上げた。
「これって…ライ君のサングラス?」
間違いない。不知建の正式メンバーになり、ライ君が生徒会に加入したときにフレアが渡したものだ。
これは不知建メンバーの証。不知建を大切にしてくれている彼がこんなところに置き去りにするのはとても考えられない。
(じゃあどうして…もしかして捕まってしまったとか…?)
最初のあの2人は標的と言い、ライ君を狙っていた。
倒すのではなく、捕まえるということも標的と言ってもおかしくない。
「ライ君を探さなきゃ…」
あんな変な集団に捕まったらライ君が何をされてしまうか分からない。
ただ、私だけでは探すのは難しい。そこである人物に電話をかけた。
「もしもし、ちょっと力を貸してほしいことがあって…」
ライside
「うっ…」
目を開くと辺りは薄暗く、窓がない見知らぬ一室にいた。
部屋は暗く、奥までははっきりと見ることができなかった。
(確かさっきまで僕は実験室で眠らされて…)
眠りから意識が徐々に覚醒し始め、自分が置かれている立場に気が付いた。
僕の身体は椅子に座っている状態で、腕と足は肘掛けと脚に縄で四肢が縛られており、身動きが取れない状態になっていた。
試しに身体を動かしてみたが、縄が強く縛られているため動く気配はなかった。
自分がこういった状況になっているのは間違いなく、最初に襲撃してきた2人、実験室で出会ったこよりという少女によるものだろう。
(さて、どうしたものか…)
そのようなことを考えていると、部屋の奥から人の気配を感じた。
「ほぉーん、博士の催眠ガスからもう目が覚めてんのか。」
「やっぱり沙花叉たちを軽くあしらっただけの実力はあるということかしら?」
声と足音が徐々に近づいてきて僕の目の前まで来た。
足音が止まった瞬間、薄暗い部屋が急に明るくなり目がくらんだ。
目が光に慣れて視力が戻り、正面をしっかりと見据えた。
すると僕の目の前には、2人の人物がいた。
1人は高身長で目が鷹のように鋭い女性。
そしてもう1人は対極的に低身長で、大きな角が特徴で拘束具のような服を着ている幼女だった。
その幼女が僕に向かって話しかけてきた。
「お前が皇ライだな?」
「そうだが…君たちは?」
「ふっふっふっ…よくぞ聞いた!!」
幼女は待ってましたと言わんばかりに、高身長の女性と一緒に自己紹介を高らかに始めた。
「刮目せよ!吾輩の名はラプラス・ダークネス!holoXの総帥にして、ラプラスの悪魔だ!!」
「そして私はholoXの女幹部、鷹嶺ルイと申します。以後お見知りおきを~。」
2人の自己紹介を聞いて僕はあることに気づいた。
「悪魔?トワと同じなのかい?」
僕がその質問をすると、ラプラスと名乗った幼女の身体が固まった。
固まったのは一瞬で、幼女が僕に向かって手を翳すと縄が僕の身体をきつく縛り始めた。
「ぐっ…締め付けが…」
「お前があの方の名前を口に出すな。」
彼女の黄金の目の輝きが増している…
おそらく念力のような力を使っているのだろう。
先程まで僕を襲撃してきた3人はラプ、という名前を出していた。
僕を襲う指示を出していたのはおそらく彼女に間違いない。
ただ疑問に思っているのが、なぜ彼女は僕にこのようなことをするのだろうか?
僕の記憶には今までに彼女と出会った記憶がない…
「なぜ自分がこんな目にあっているのか、と考えているようだな。吾輩はそこにも腹が立つ。」
「ラプ、程々にしておきなさいよ?ここのアジトもいつ見つかるかわからないんだから。」
「ああ、こいつに2つ質問をしたらずらかるぞ。」
2人の会話から察するに僕に聞きたいことがあるようだ。
だから僕を捕まえる必要があったのか…?
幼女が僕に真っすぐ目を合わせて来た。
吸い込まれてしまいそうな黄金の瞳に思わず目を逸らしたくなるがそれはできなかった。
「今の話を聞いているからわかると思うが、お前には答えてもらうことがある。黙っていれば縄の縛りをもっと強める。勿論嘘をついても強めるからな?」
「…分かった。」
「では1つ目の質問だ。お前は生徒会に所属しているな?何故生徒会に入った?」
「…生徒会長のあやめにスカウトされたからだ。生徒会に入る前からあやめとは友達で、生徒会の仕事を手伝ってほしいと頼まれた。」
「なるほど、嘘ではないようだな。では次の質問だ…」
僕は次の質問が来るのを待った。…が、なかなか次の質問が来ない。
彼女の様子を見ていると、顔を下に俯いており、わずかだが身体が震えていた。
「あの…」
「勝手に発言するな!」
彼女は再び僕に手を翳し縄の縛りを強めた。
「っ!」
縛られている四肢に痛みが生じ、声が出そうになるが必死に堪えた。
「お前は質問にだけ答えればいい…最後に大事な質問だ。…お前は生徒会風紀委員長の常闇トワと…つ、付き合ってるのか!?」
「………は?」
彼女から予想もしない質問が来たため間抜けな声が出てしまった。
僕とトワが?付き合う、というのは男女間の交際のことか…?
「質問に答えろ!!」
「ぐぁっ!」
締め付けがさらにきつくなる。自身の骨が軋むような感覚だ。
「お前がトワ様と生徒会の活動をしているところを見かけたことがある…お前と話しているときのトワ様のあんな笑顔…吾輩は見たことがない!」
「ちょ、ちょっとラプ、落ち着きなさい!」
鷹嶺ルイと名乗った女性が止めに入ろうにしたとき、部屋のドアが思い切り開かれる音がした。
「誰だ!?」
ラプラスがドアの方に意識を向けて集中が切れたからか、縄の縛りの強さが元に戻った。
痛みが引いたことにより一息つけたので、僕もドアの方に目を向けた。
ドアから2人の人物が入ってくるのが見えて、その2人が誰かが分かった瞬間僕は安堵した。
「ライ君!!」
「助けに来ましたよライ先輩~。」
「…すいせい…トワ…」
僕の学園内での知人の中でも、最も頼りになる2人が現れた。
ごめんなさい次の話まで続きます!
ラプ様を超能力者にしちゃいました。
でも総帥なんだからそれぐらいの能力持っててもいいですよね…?
文章読みづらい?
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