ホロと幻の美形   作:ただのRyo

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かなり久しぶりの投稿です…
お待ちいただいていた皆様大変申し訳ございません…

仕事が多忙であったことと、執筆を試行錯誤を繰り返していたため、遅くなってしまいました…

というわけで久しぶりの番外編。

内容も久しぶりにライ君が星街家の家族だったらのお話。

番外編ということでホロ以外の方も参加させてみてます~。


番外編6

 

「むぅ…」

 

私、星街すいせいには姉兄が2人いる。

1人は姉である姉街。もう1人は兄である星街ライ。

2人とも妹である私に凄く優しいし、困ったときは助けてくれたり、相談に乗ってくれる自慢の姉兄だ。

 

2人には何も不満は無いけれど…いや、無かったというのが正しいのかもしれない。

最近お兄ちゃんのことで1つ不満ができてしまったのだ。

 

今私はその不満ができた原因のお兄ちゃんの部屋のベッドでベッドに飾っていた銀色の狼のぬいぐるみを抱えて座っている。

部屋はしっかりと整理整頓されており、几帳面なお兄ちゃんの性格を表した部屋だ。

 

ベッドに座っていた私はぬいぐるみを抱えたまま、そのまま後ろに倒れこんだ。

ベッドにはお兄ちゃんの残り香がかすかにして少し幸せな気分になった。

でも、部屋の主であるお兄ちゃんはいない。

倒れこんで見えるのは白い天井だけ。

 

「お兄ちゃん…何でアルバイト始めちゃったんだろう…?」

 

静かな部屋に私の独り言が響いた…

 

 

 

 

 

 

 

1か月ほど前からお兄ちゃんはアルバイトを始めた。

お兄ちゃんは私にはアルバイトを始めたことを教えてくれなかったが、お姉ちゃんが昨日お兄ちゃんのアルバイトのことについて口を滑らせたから問い詰めた。

 

何でお兄ちゃんがアルバイトを始めたのかお姉ちゃんのぬいぐるみを人質にして問いただしてみたが、それだけは言えないと涙ぐみながらお姉ちゃんは口を閉ざした。

 

お姉ちゃんが言うにはお兄ちゃんは駅近くの喫茶店で働いているらしい。

それを聞いた途端その店に突撃をしようと思ったが、流石にお兄ちゃんの邪魔をするのは不味いとお姉ちゃんに止められた。

 

確かに頑張っているお兄ちゃんの邪魔をするのはよくない…

でも、すいちゃんとお兄ちゃんが一緒に過ごす時間が減るのもよくない…

 

というかそもそもお兄ちゃんは何でアルバイトを始めたのだろうか?

お兄ちゃんは別に浪費癖があるわけでもなく、むしろ節約家の方が性に合っていると思う。

お金に困ったなんて話は一度も聞いたことないし、お姉ちゃん曰く、お小遣いはともかくお年玉にもほとんど手を付けていないようだ。

 

(お兄ちゃんがアルバイトをする理由…お金…?社会経験を積むため…?趣味…?)

 

お金はともかく後者の2つはあり得るかも…

お兄ちゃん真面目だし独立するための社会経験としてやっているのも考えられる。

まぁ、お兄ちゃんが私から離れて一人暮らしするのは許さないけど。

 

お兄ちゃんの趣味の中に料理があるから喫茶店で働こうとするのは何となく分かる。

それにお兄ちゃんは大学も今の時点で推薦での合格が決まっているから時間にも余裕があるみたいだし、趣味に費やそうとしているのかもしれない。

 

(有力候補は趣味のためかな…?後は…友達の紹介とか?…ま、まさか!?)

 

私はある考えに思い至り、お兄ちゃんのベッドから飛び起きた。

 

「お兄ちゃん…まさか彼女ができたんじゃ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

「…というわけなんだけど皆どう思う?」

 

翌日、私は不知建の皆を集めて相談をすることにした。

お兄ちゃんは不知建には所属していないが、メンバーが家に来ることもあって姉街同様皆と仲が良い。

 

「なるほどねぇ…あのライ先輩についに…」

 

ふーたんが感慨深そうに呟いた。

 

「ていうか今までライ先輩にそんな噂が立たなかったのが不思議なんだにぇ。」

 

「そりゃそうだよ。そんなことがあったらすいちゃん何しちゃうかわかんないもん。」

 

「すいちゃん目がマジになってて怖いよ…」

 

「団長もライ先輩の彼女の話聞いたことないけど…すいちゃんその後ライ先輩にバイトの話とか聞かなかったの?」

 

「んー、聞いてみたんだけど姉街と同じようなことしか答えてくれなくてさー。バイト先の場所とかは教えてくれたんだけど、バイトする理由だけ『…内緒だ。』って教えてくれなかったんだよね。」

 

「まぁすいちゃんも兄離れするいい機会なんじゃねぇの?いっつもライ先輩にべったりだと彼女の1人や2人もできやしな…痛い痛い!?すいちゃん痛いにぇ!」

 

変なことを言ったみこちの頬を抓った。

大切な家族の心配をして何がいけないんだ。

 

「はいはい、すいちゃんやめてあげてねー…じゃあライ先輩のバイト先の様子を覗いてみる?あたしも気になって来たし。」

 

ふーたんが良い提案をしてくれた。

確かに直接この目で見た方が、お兄ちゃんが何で秘密にしているか手っ取り早く分かるかもしれない。

 

「ポルカも見てみたーい!」

 

「団長もー。」

 

「みこもー、お腹空いたし喫茶店行ってみたいにぇ。」

 

全員の意見が一致した。

 

「よーし、不知火建設出動ー!」

 

「「「「おーっ!!」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

お兄ちゃんとお姉ちゃんから教えてもらった喫茶店の名前は「地獄屋」というちょっと変わった名前の和風の喫茶店だ。

駅近くにあるということだけ聞いていたから探すのに時間がかかるかと思ったけど、不知建皆で探していたこともあり、あっさりと見つかった。

 

店の外観は、The 喫茶店、というくらい普通だ。店の前にはちゃんと営業中と書かれた看板が立てかけており、営業中なのは間違いない。

駅近くであるはずなのに騒音が聞こえない位置であるため立地としては最高かもしれない。

 

「よし…皆、行くよ?」

 

私は店のドアノブに手をかけて皆の反応を伺った。

皆は声を出さず私の目を見て力強く頷いてくれた。

 

ドアを開ける前に一呼吸だけおいて、意を決しドアを開いた。

カランコロン、とドアベルが店内に鳴り響き、店内に足を踏み入れると珈琲の良い匂いが漂ってきた。

 

(凄く静かで落ち着く…お兄ちゃんが好きそうなお店…)

 

そんなことを頭で考えていると、店内のカウンター席を掃除をしている男性が目に入った。

白いシャツに黒いズボン、そして黒いエプロンを身に着けているその男性はたった今私が頭で思い浮かべていた人。

 

「いらっしゃいませ。って…すいせい?」

 

そう、星街ライだった。

 

「…お兄ちゃん!」

 

「す、すいせい!?」

 

私はお兄ちゃんを呼びながら抱き着いた。

お兄ちゃんはいきなりのことで驚いていたがしっかりと受け止めてくれた。

自分でも分からないが何故か抱き着きたくなってしまった。

お兄ちゃんの胸からお兄ちゃんの匂いと珈琲の香りが私の鼻腔いっぱいに広まった。

 

「すいせい、どうしてここに?」

 

お兄ちゃんは不思議そうな表情を浮かべていた。

多分、私がここに来るのは予想してなかったんだと思う。

 

「ライ先輩ご無沙汰してます~。」

 

ふーたんがお兄ちゃんに声を掛けた。

 

「フレアも?…というか不知建の皆?」

 

お兄ちゃんは不知建の皆がいることに驚いていた。

 

「なるほど…すいせいが連れて来たんだね?」

 

流石はお兄ちゃん。理解が早くて助かる。

お兄ちゃんは仕方がない、とため息をつきつつ私の頭を撫でてくれた。

 

「すいちゃんからライ先輩がバイトを始めたって聞いて、気になって皆で来ちゃいました!」

 

「それは構わないんだけど…今は仕事中だから「ライ君お客さん来たん?…ってえらい多く来たなぁ。」あっ、店長。」

 

お兄ちゃんの言葉を遮るように店の奥のテーブルから声がした。

声がする方に振り返ると、そこには片肘をテーブルに付けて頬杖をしながら自身の綺麗な小豆色の髪の毛を弄び、こちらを楽しそうにニコニコと笑顔浮かべている女性がいた。

メイド服のような割烹着を着て、耳は犬や狼を連想させるような耳で、瞳は珍しく左が黄色、右が紅色と所謂オッドアイだった。

 

とりあえず私たちが彼女を見た感想は、

 

「「「「「美人だ…」」」」」

 

「あら、お上手やねぇ。」

 

私たちの感想に気を良くしたのか、お兄ちゃんに店長と呼ばれていた彼女はさらにニコニコと笑っていた。

 

「皆ライ君のお知り合いなん?」

 

「はい、学校の後輩と…僕の妹です。」

 

お兄ちゃんは不知建のメンバーと私を店長さんに紹介をしてくれた。

 

「ほーん、ライ君の妹はんかぁ、どれどれ…」

 

店長さんは耳をぴょこぴょこと動かしながら私のことをじーっと見てきた。

 

「あ、あの…?」

 

「あっ、かんにんな?あたしは戌亥とこ。この地獄屋の店長をやらせてもらっとるよ。それにしても…妹はん、ライ君に似て別嬪さんやなぁ。」

 

「みこ達は店長さんもめちゃくちゃ美人だったことに驚いたにぇ…」

 

「さぁさぁライ君、せっかくのお客様なんやからお席に案内してあげて。」

 

「はい店長。」

 

店長さんからの指示にお兄ちゃんは笑顔で答えていた。

 

「もうライ君、いつも通りにとこさんって呼んでくれていいんよ?」

 

「今は仕事中なので…」

 

「相変わらず真面目さんやなぁ。」

 

「じゃあ皆、お冷とメニュー表を持ってくるから、奥のテーブル席に座っててくれるかい?」

 

「「「「はぁい。」」」」「…」

 

 

 

 

 

 

 

 

お兄ちゃんに席を誘導された私たちは指定の席に移動した。注文を一通り終えると、お兄ちゃんはすぐさままた厨房へ姿を消した。

皆はお兄ちゃんのことを待っている間雑談を始めたが、私は別で考え事を始めてしまった。

 

(お兄ちゃんは至って普通な様子だけど…結局バイトを始めた理由ってなんだろ…?)

 

特にお兄ちゃんに変わった様子はない。いつも通りのお兄ちゃん。

店長さんと仲は良いみたいだけど、別に付き合っている様子とかは見受けられない。

ずっとお兄ちゃんと店長さんの様子を見ていると、それに気づいた店長さんが首を傾げながらこちらに近づいてきた。

 

「ん?どうしたんライ君の妹はん、あたしの顔に何か付いとる?」

 

「あ、いえ…」

 

「すいちゃん、店長さんならあのことを知ってるんじゃない?」

 

隣に座っていたふーたんから提案があった。

確かに、ここでの面接を店長さんがやっているなら知っているかもしれない。

 

「あのこと?」

 

「はい、実は…」

 

私は店長さんにここにやって来た理由を説明した。

店長さんはオッドアイの瞳を輝かせながら、私の隣に座って終始興味深そうに頷きながら聞いてくれた。

 

「なるほどなぁ、ライ君がアルバイトを始めた理由…確かに面接をした時にあたしは聞かせてもらったよ。」

 

「ほんとですか!?何でお兄ちゃんは…」

 

「そやねぇ…あたしが教えてもいいんやけど、ライ君に直接聞いてみたらいいんやない?」

 

「でも、この前聞いた時は教えてくれなくて…」

 

「ふふ、安心してええよ?ライ君と仕事の合間によくお喋りするんやけど、よく家族のこと…つまり妹はんのことを話したりしとるんよ。」

 

「お兄ちゃんが?」

 

何を話してるんだろ…?

自分がいないところでそんな話をされていると思うと少し恥ずかしい…

 

「優しいお姉さん、可愛い妹はんのこと、まぁほとんどライ君の自慢話みたいになっとるけど、家族のことを話しているライ君は本当に楽しそうにしてるんよ…そんなライ君やったら可愛い妹はんのお願いにちゃーんと答えてくれると思うけどな?」

 

ケルベロスは嘘をつかへん、と店長さんは話の最後にウィンクをした。

ってか店長さんケルベロスだったんだ…てっきり犬か狼かと…

 

「やっぱ兄妹だけあって話すことも似てくるんじゃねぇ。」

 

「すいちゃんもライ先輩だけじゃなくて何だかんだ姉街のこともよく話すもんねー。」

 

「みこも姉街と話してる時、すいちゃんとライ先輩の話をよくしてるの思い出したにぇ。」

 

…続々とノエル達不知建メンバーからも暴露が行われた。

 

(まじで恥ずかしい…!)

 

家族で同じことをしているのを知られて、皆がニヤニヤした顔でこっちを覗いてくるのを見て私の顔が赤くなってくるのを感じた。

 

「でも、兄妹でそこまで仲が良いのも羨ましいよね。多分学園内でもすいちゃんの兄妹ってトップレベルで仲が良いと思うし。」

 

ふーたんが先程の店長さんみたいに肘をテーブルに付けて頬杖をしながら言った。

 

「確かに…兄弟がいてもいっつも喧嘩するって話もよく聞くし…すいちゃん達って喧嘩はしないの?」

 

「喧嘩か…姉街とたまにするけど、お兄ちゃんとはないかも…注意とかされる時はあるけど怒られたことはないし…」

 

「ライ先輩が怒ってる姿とか想像できないにぇ。…でも一番怒らせてはいけない人だと思うにぇ…」

 

自分の今までの人生の記憶を辿ったがお兄ちゃんと喧嘩した記憶は全くない。多分お兄ちゃんとお姉ちゃんがしてるのも見かけたこともない。

私が我儘を言ったとしても笑って許してくれるし、お姉ちゃんが買い出しに行く時にお兄ちゃんが家にいる場合はお姉ちゃんの荷物を持つために一緒に出掛けている。

お姉ちゃんと喧嘩した時だっていつも仲裁に入ってくれて、すぐ仲直りをしやすい場を作ってくれる。

何事においても私たちのことを優先してくれる、多分それは私達兄妹…いや家族を、

 

「それだけ大事に想ってくれてるってことやね…」

 

「…うん。」

 

改めてお兄ちゃんの愛情を実感して先程まで感じていた恥ずかしさは消えて、胸が暖かくなった。

 

「店長さん…いや、とこちゃん、やっぱりお兄ちゃんが自分から話してくれるのを待ってみるね。」

 

「そっかそっか、まぁライ君は隠しっぱなし、みたいなことはしないやろうけど…あたしからもライ君に促してみるな?」

 

「うん!」

 

そんなこんなで話をしていると、お兄ちゃんが注文した品を運んできてくれた。

 

「皆お待たせ、注文のクリームソーダと珈琲、あとクッキーとプリンにたい焼きだよ。」

 

「たい焼き!みこの!!」

 

「うわぁ、どれも美味しそう…」

 

「ノエちゃん後でちょっとプリンちょーだい?」

 

「いいよー、ってこれ全部ライ先輩が作ったんですか?」

 

「ああ、口に合えばいいが…店長?何だか楽しそうですね?」

 

「そうやろー?早速すいちゃんと仲良くなれたんよ!」

 

とこちゃんはそう言って私に優しく抱き着いて頭を撫でてくれた。

 

「へへー、いいでしょお兄ちゃん?」

 

「もうそこまで仲良くなったのか…何かあったのかい?」

 

お兄ちゃんは私たちが仲良くなったことに不思議に思ったのか首を傾げながら聞いてきた。

そんなお兄ちゃんの様子を見て私ととこちゃんは顔を見合わせた。言いたいことをとこちゃんは察してくれたようで、そのままお兄ちゃんに応えてあげた。

 

「「…内緒!」」

 

「?」

 

またお兄ちゃんは更に首を傾げていた。

 

 

 

 

 

 

皆とお茶会を楽しんだ後、私以外の不知建のメンバーはそれぞれ帰宅した。

皆が帰る時間と店の営業が終わる時間が近かったので、私はそのままお兄ちゃんを待って一緒に帰ることにした。

間もなくしてお兄ちゃんの帰宅が準備ができたので、私たちも店を後にした。

帰る前にとこちゃんは、いつでも遊びにおいで、と店の前で手をヒラヒラと振りながら私たちを送ってくれた。

とこちゃんと話していると結構音楽の趣味も合ったので、個人的にまた来ることを約束した。

 

そしてお兄ちゃんと道を並んで家まで歩きながら帰宅をした。

 

「それにしてもお兄ちゃんのバイト先いいところだね?私も皆もすっかり気に入っちゃったよ。」

 

「それはよかった。でも皆で来るなら事前に言ってほしかった気がするけどね。」

 

「あはは、急に決まっちゃったから…でもごめんね…?」

 

「ううん、とこさんもすいせいのこと気に入っていたみたいだし、また皆でおいで。」

 

「うん!不知建のメンバーも勿論だけど、あくたんとかトワも誘ってみるね!」

 

そう言うとお兄ちゃんは笑ってくれた。

久しぶりにお兄ちゃんと一緒に帰ることができるのが嬉しくもあり、私はお兄ちゃんの左腕に抱き着いてみた。

 

「おっと、すいせい?」

 

「えへへ、家着くまでこうして帰ろうよ!」

 

「ちょっと恥ずかしいな…」

 

お兄ちゃんは恥ずかしそうな顔をしていたけれど、決して嫌がったりはしなかった。

そのまましばらく家に向かって歩いていると、お兄ちゃんから話しかけられた。

 

「すいせい。」

 

「うん?」

 

「僕がバイトを始めた理由…気になるかい?」

 

「!!…どうして?」

 

「さっきとこさんと話をしているのが少し聞こえてね…店を出る前にもとこさんから、すいせいに話してあげたらって言われたんだ。」

 

とこちゃん早速言ってくれたんだ…

仕事が早すぎるケルベロスに関心をしているとお兄ちゃんが話の続きを始めた。

 

「すいせいは僕がもう大学の合格が決まっているのは知っているだろ?それで大学での生活を考えると1人暮らしをした方がいいかな、って思って今から少しずつお金を貯めているんだ。」

 

「ええっ!?お、お兄ちゃん…1人暮らししちゃうの…?」

 

「今の予定ではね。来年はすいせいも受験があるし、集中できる環境を作る為にもちょうどいいかなって思って「やだ!!」…すいせい?」

 

思わずお兄ちゃんの言葉を遮ってしまった。

お兄ちゃんが私から離れてしまう?毎日一緒にいられなくなる?…そんなの嫌だ…

 

「私いい子にしてるから!勉強も頑張るし…お兄ちゃん達の家の手伝いももっとするし…嫌いな野菜も頑張って食べるし…それから…だから…傍にいてよ…!」

 

抱きしめているお兄ちゃんの腕を更に強く抱きしめた。むしろ縋りついていると言った方が正しいかもしれない。

まるで駄々っ子のようになってしまったけど…それでもお兄ちゃんがいなくなるのは嫌だ…

 

しばらく顔を俯かせているとお兄ちゃんが右手で頭を撫でてきた。

 

「やれやれ…母さんの言ったとおりになったね…」

 

「お母さん…?」

 

何で今お母さんのことが出てきたの…?

 

「実は1人暮らしを大学生になったら始めてみるつもりだって母さんと父さんに電話で話していたんだ。父さんはすんなり了承をしてくれたんだけど、母さんは姉さんとすいせいが絶対反発するから止めておいた方がいい、って言ってたんだ。」

 

「お母さん…ちなみにお姉ちゃんは何て言ってたの?」

 

「…家の床で大の字になりながら泣きながら反対されたよ…まぁそれでもすいせいが了承したら認めるって言ってた。」

 

「うわぁ…お姉ちゃん子供じゃん…」

 

「姉さんには僕が話したとは言わないでくれ…姉さんの名誉のためにも…」

 

こう言ったけど私も家だったら子供みたいに駄々をこねたかもしれない。あと家に帰ったらお父さんに電話で説教しておこう。

 

「まぁバイトを始めた理由は1人暮らしのこともそうだけど、とこさんの喫茶店は前からお客として通っていたんだ。そこでバイトの募集をしていたからちょうどいい機会と思って働き始めたんだ。」

 

「そうだったんだ。いつ頃から通ってたの?」

 

「確か僕が高校受験の頃からだから…3年くらいかな?とこさんともそれくらいの付き合いだね。」

 

「そんなに!?めちゃくちゃ常連じゃん!」

 

あれ、もしかしてお兄ちゃんとこちゃんのこと…

 

「お兄ちゃん…もしかしてとこちゃんのこと好き?」

 

「ん?ああ、好きだよ?」

 

「ええっ!?」

 

やっぱり…確かにお兄ちゃんの女の子の友達ってそらちゃんやAZKiちゃんみたいに大人っぽい人が多いから、年上が好きなのかな…

 

「とこさんが淹れる珈琲は美味しいし、仕事も熱心で尊敬できるところも多いから人として凄い好きだな。」

 

「…えっ?」

 

「ん?」

 

「…私はお兄ちゃんがいつも通りで安心したよ…」

 

「???」

 

お兄ちゃんは不思議そうに首を傾げていた。

多分しばらくお兄ちゃんに彼女はできないだろうことを確信して何となく安心した。

そして、お兄ちゃんの腕を手放し、正面からお兄ちゃんに抱き着いた。

 

「…それでお兄ちゃん1人暮らししないんだよね?」

 

「…すいせいが僕の1人暮らしを望まないなら、しばらくはね。」

 

「約束だよ…?」

 

「もちろん。」

 

お兄ちゃんは私をあやすように背中を撫でてくれた。お兄ちゃんの胸、凄く安心する…

 

「さて、姉さんも家で待ってるだろうから早く帰ろうか?」

 

「うん!よーし、お兄ちゃん!家まで競争しよ!よーい…ドン!」

 

「あっ!ずるいぞすいせい!」

 

私とお兄ちゃんは同時に駆け出した。

 

 

 

いつかはお兄ちゃんは家を出ちゃうかもしれない…

でも今の間だけはもう少しだけ一緒に…

 

 

 

 

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