テイルズ オブ ワンピース   作:チリラーメン

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目覚め

 ベルベットの記憶が戻ってから8年の歳月が過ぎた。この間にさまざまなことが起こった。

一番大きいのはシグレが1人で海に出たことだろう。2年ほど前に体が大きくなったことから今世で初めての真剣勝負でロクロウに負けたことがきっかけだった。大きくなったロクロウは前世で身につけた技術をある程度使えるようになった。大太刀二刀から放たれる嵐月流・白鷺は会場になった山を半壊させる結果になった。

その後、筋肉痛で動けなくなったが。まだまだ体ができていないようだが、完成したら恐ろしいことになるだろう。

すっきりした表情で一人小舟で旅に出たシグレは元気にやっているみたいだ。この前の新聞で世界最強の剣豪とやらと3日3晩の決闘を行い勝敗が付かなかったそうだ。

 

キッドとキラーとの友好も続いている。好意を持たれているのは分かっていたので早々に振ったのだが、それでも友人関係に落ち着いた。海賊王になるといういささか物騒な夢を笑顔で語るキッドをいさめることはしなかった。男の子にはよくわからないこだわりがあるのは知っているからだ。

そうしてついに運命の日がやってくる。別に月は赤くならない。フィーとラフィーの記憶が戻るときがやってきたのだ。

 

 

 

 

高熱にうなされる二人の手を握りしめながら、不安と期待でよくわからない胸中のベルベット。初めに見るのはベルベットがいいだろうと、少し離れたところにいるアルトリウスとセリカ。

 

(おはよう。それともごめんなさい?なんていえばいいのかしら?絶対怒っているわよね)

 

 さんざんベルベットが悩んでいると二人の瞼が少しずつ開かれてきた。

 

「お姉ちゃん?」

「ベルベット?」

「っ!!」

 

 二人の言葉に感極まって抱きしめようとするベルベット。何を言おうか考えていたのは全て吹き飛び抱きしめようとする。ただこの場では不正解であった。

 

「お姉ちゃん!」

「ベルベット!」

 

 病人とは思えない俊敏さで上体を起こした二人にベルベットは頭突きされた。きれいに脳を揺らされたベルベットは意識を手放し後ろに倒れるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 ベルベットが目を覚ますとアルトリウスから一通りの説明を二人は受けていた。

そんな二人に近づこうとするとフィーが勢いよく振り返った。それにつられてラフィーも振り向く。その顔はうれしいような、怒っているような複雑な顔をしている。

 

「おはよう二人とも」

 

 できるだけいつも通りに、震える声を抑えているつもりであったがベルベットの声は震えていた。

無言でフィーはベルベットに駆けてきた。そのままの勢いで握りしめた拳でぶん殴る。それを無抵抗で受け入れる。

 

(まあ、当たり前ね。それだけのことをしたんだから)

「ベルベット!ベルベット!!」

 

 言葉が出てこないフィーはベルベットに顔を押し付けてただ名を叫ぶ。

 

「まったく。泣き虫になったわね。もうどこにもいかないわよ」

 

 優しい顔でフィーの頭をなでるベルベットは、もう一人に顔を向ける。

 

「あなたは来ないの?ラフィー」

 

 声をかけられたラフィーは泣きそうな顔を一層ゆがませた。

 

「でも僕、お姉ちゃんにあんなことを」

 

 カノヌシと融合した時の記憶を共有しているラフィーは素直になれなかった。

 

「いいのよ。前のことなんて。いまあなたが元気にいるだけで」

「お姉ちゃん!」

 

 ラフィーもベルベットに飛び込んできた。

 優しく受け止めたベルベットは力いっぱい二人を抱きしめる。決して今の幸せが逃げないように。

 

「大好きよ、二人とも」

 

 

 

 

 

 

 

 

 後日二人を連れて広場に向かう。事前に呼べる人はベルベットが呼んでおいた。

「ロクロウ!エレノア!マギルゥ!」

 フィーが顔見知りを見つけて駆け寄っていく。

「お!ついにこっちの仲間になったか」

「元気そうで何よりです」

「まったく。待ちぼうけをくらったわい」

「えへへへ。お待たせみんな」

 

 仲よく話す三人にベルベットとラフィーが近づく。

 

「ちゃんとぶん殴ったか?ライフィセット」

「もちろんだよロクロウ」

「なんの話をしているのよ」

 

 ロクロウたちの会話を聞くと聞き捨てならない話が聞こえてきたのでベルベットは問う。

 

「いやー。前世でまだ死んでいないであろうベルベットにもう一度会えたらなんて会話をしたことがあってな」

「ランゲツ流の基礎を教えてくれたんだよ」

 

 元気よく答える二人に一同はあきれる。

 

「何をしているのよ」

「業魔が聖主に何を教えているんですか」

「ちなみにメーヴィンとしてしっかり語り継いだぞ。それはそれとして儂としては後ろの坊が気になるのう」

 

 全員の視線がラフィーに集まる。

 

「お姉ちゃんの弟のライフィセットです。皆さんにひどいことをして御免なさい」

 

 素直に謝った弟を見て満足げにうなずくベルベット。しかし、他の面々はそうはいかなかった。

 

「おいおい!カノヌシってこんな性格だったか?」

「多分カノヌシと融合したせいですね。しかし、ここまで変わるものですか」

「いやいや。この坊もしっかりとした目をしておる。おねいちゃんに似て頑固そうじゃわい」

 

 好き勝手に言う仲間たちにベルベットが文句を言う。

 

「ラフィーはもともといい子なのよ」

「こういうのなんと言うんじゃったかのう?そうそう、ブラコンじゃ!」

「なんとでも言いなさい。あたしはこの子たちのことも大好きなんだから」

 

 そう言いながらベルベットはフィーとラフィーを抱きしめる。まんざらではなさそうな二人であったが、フィーの顔には不満が出ている。それにベルベットは気が付いていない。

 

「ほうほう」

「なるほどのう」

「あらあら」

「なによ?その意味深な発言は?」

「「「いやー何にも」」」

 

 息ぴったりな発言にベルベットは疑問を抱くも、腕の中の二人が剣呑な雰囲気になっていることに気づき、いさめる。

 

「あんた達、またやっているの?」

「「だって!!」」

 

 声を上げて不満を言う二人。そのまま少し離れたところで言い合いを始める。ただしその理由をベルベットに語ってくれることはない。

 

「お!?なんだ、仲悪いのか」

「そうなのよ。初めは素直に話していたのにどんどん雰囲気が悪くなって。でも理由は教えてくれないのよね」

 

 そう言って、二人に近寄るロクロウ。男同士のほうがいいのかもしれないとベルベットは任せる。

 

「面白いことになっておるのう」

「なるほど、こういう問題は当人たちで解決させた方がいいものですよ」

「へえー、アドバイスありがと、お母さん」

「な!!」

「失礼な物言いをするでないベルベットよ。愛しのものを見つけられず、弟子に追い越された哀れな聖女様に何たる言いぐさか。かわいそうのエレノアや、儂の胸でない手もいいのじゃぞ」

「あなたも十分失礼ですよ。だいたいあの男たちは……」

 

 何やらぶつぶつ言いながら自分の世界に入ってしまったエレノア。前世で伴侶を得ることができず、ついにモアナに先を越されたことを気にしているようだ。ただ、偉大なる聖女にアタックできる人がいるのかは疑問である。

 

「そういえばエレノア。モアナにはあったの」

「ぶつぶつ…、え、あ、はい。ここに来る前に話してきました。今はメディサのところですね。すこし大人っぽくなっていました」

「へえ、あたしは大人なモアナを知らないのよね。今度会ってみるわ」

「ええ。それがいいでしょう。モアナも言いたいことがいっぱいあるでしょうし」

 

 ベルベットをジト目で見つめるエレノア。心当たりがありすぎる視線から逃れ、いつの間にか盛り上がっている男三人衆に声をかける。

 

「何盛り上がっているのよ」

「おお!ベルベット。この海について話していたんだよ。いやーやっぱりロマンだろ、ワンピースは」

「「うんうん」」

 

 熱弁するロクロウに追従するラフィーとフィー。ベルベットにはよくわからないロマンであるが、男どもの妙なロマンは前世で体験している。適当に相槌を打つ。

 

 

 

 

 

 

 雑談をしていると日が落ちてきた。そろそろ解散の頃合いになるとフィーが真剣な面持ちでみんなに問う。

 

「ねえみんな、この世界でも僕は旅がしたいんだ。前の世界よりも危険かもしれない。共通の目的なんてないかもしれない。それでもみんなと一緒にまた旅をしたいんだ。付き合ってくれる?」

 

 不安そうにこちらを見つめてくるフィー。ただその返答はすでに決まっている。

 

「もちろんよ。ただもっと大きくなってからね」

「いやいや、わからんぞ。この世界も何が起こるかわからんからのう。何せ災禍の顕主ご一行じゃよ」

「そうですね。悪さしないように私も一緒に行きますから」

「退屈はしないだろうさ」

「僕も一緒に行かせてよね。世界を見るのは僕の夢でもあるんだから」

 

 考えることなく帰ってきた返答にみんなで笑うのであった。

 

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