サウスブルーの海上を十隻の海軍軍艦が航海している。その先頭の軍艦にコートを羽織った黄色いストライプスーツの男が報告を受けていた。
「ボルサリーノ大将、もうすぐ目的地に到着します」
「はあ、もうそんな時間かい。天竜人の様子はどうだい?」
「はっ!CP0の護衛に囲まれながら軍艦の貴賓窒にいらっしゃいます」
「できるだけ部屋の外に出さないようにね。それで先遣隊からの報告はあるかい?」
「先ほど島に到着したとの報告が。ただ、すでに一般人の避難は完了していたとのことです。現状マフィアのみが街に残っているとのことです。これで被害を最小限にできますね」
先遣隊の目的は一般人の避難にこそあった。それが到着した段階で完了していることにボルサリーノは疑問を覚える。
「はあー。嫌な予感がするね」
「?」
一抹の不安を抱えながら目的の島に到着したため港を中心としながら半円に軍艦を配備する。
展開が終了した段階で天竜人が出てきた。その目はただ、派手な祭りを楽しむ子供のようだった。
「お祭りの始まりだえ。全艦撃つだえ!」
「砲撃開始!」
十隻の艦隊から一斉に砲撃が始まる。本来であれば、そこからは悲惨な惨状が広がるはずであった。海軍にとって予想外なのは、彼らがいたことだろう。
突然現れた白銀の炎でできた銀幕にすべての砲撃が防がれる。
多数の海兵たちが慌てふためく中、ボルサリーノは突然の事態に見聞色の覇気で周りを観察する。すると甲板に大きな気配が降り立った。女性の服装としては破廉恥な、しかしその気配は強者のものであった。
お互いに戦闘態勢を整える。
「勧告なしに一斉砲撃とは随分な対応ね。海軍大将ボルサリーノ」
「んー。一体誰だいお嬢さん?」
「ベルベット・クラウ。あんたを喰らう者の名よ」
「おー怖いねー!」
不意打ちでボルサリーノの指からビームが放たれる。しかし、ベルベットも変化させた業魔手ではじくことで防ぐ。
「覚悟しなさい!」
「天叢雲剣」
ボルサリーノの光剣とベルベットの業魔手がぶつかり合う。
別の軍艦では海兵が走り回っていた。
「慌てるな!確実に軍艦を動けるようにするんだ。天竜人を護衛するぞ」
「「「はい、モモンガ中将」」」
大きな刀を携えた海軍中将モモンガは周りに指示を出している。一時停止した軍艦をもう一度動かすにはわずかに時間がかかる。すぐに動けるように指示を出すモモンガは優秀だった。しかし、今回はその優秀さが仇となった。
「千の毒晶」
空から無数の剣が降ってき、海兵たちを傷つけていく。幸い致命傷は避けられているようであった。周りを確認したモモンガは空から現れた侵入者を確認する。若く好青年な容姿であったが、その気配は歴戦の猛者であった。
「何者か」
「僕はオスカー・ドラゴニア。指揮官をお見受けします。死傷者を減らすために先にあなたを討たせてもらいます。僕の正義のために」
正義と言う言葉にモモンガは顔をしかめる。自身が行っている行為に不満を持っているため、青年の姿がまぶしく思える。
「いい闘志だ、オスカー君。私が言う権利がないが、君の正義を見せてくれ」
「お覚悟」
空中から強襲するオスカーをモモンガは向かい打つ。
白銀の銀幕が無くなった海岸には強者たちが集っていた。
「ベルベットもオスカーも速いの。あっという間に攻め入ったわ」
月歩を駆使して侵入した二人に呆れたようにマギルゥが嘆息する。今回のマギルゥの役割は住民の避難や味方を軍艦に運んだり、海に落ちるのを防いだり、苦し紛れに打たれた砲撃を防ぐ役割を持っている。つまり裏方でありため、かなり暇なのだ。
「よし、俺も行くか!」
「ああ、マギルゥ送ってくれ」
「ぬしらは自力で行かんのかい」
ロクロウとアイゼンに突っ込みつつも、二人を別々の軍艦に送る。
「さて俺も行くとするか」
続いてアイフリードがマギルゥに頼む。
「本当にいいのかの。天竜人の船に強襲なんぞ」
今回の作戦でアイフリードが最も今後に響く役割を担っている。天竜人を襲撃し、さらに殺害まですれば、今後の海賊人生はさらに過酷になるだろう。
「構わねえよ。俺は悪名高きアイフリード海賊団船長でお前らの船長になる男だぞ」
こんな大事件を起こしたベルベットたちはもうまともには過ごせない。結果がどうなろうとアイフリード海賊団に世話になることが決まっている。
「CP0はみな強いと聞く。頑張るのじゃぞ船長様」
「おう!護衛船を指揮しているベンウィック達に聞こえるように派手にな」
「距離があり過ぎる。それは無理じゃろ」
冷静に突っ込みしつつアイフリードを送る。
「僕たちもそろそろ行くよ」
フィーとラフィーがそろって出撃準備を整えていた。能力の持続時間が短い二人にエレノアとテレサが付く形で補佐する。
「もう大丈夫なのかえ。かなり消耗しておったが」
十隻の軍艦の砲撃を実質一人で防いだフィーは先ほどまで疲労が見えてはずだった。
「フィーはともかく僕は大丈夫ですよ」
「僕も大丈夫だよ」
フィーとラフィーはメンチを切り合っている。二人ともどれだけ凄んだとしても、年齢的にも容姿的にもかわいらしいとしか言えないが。
「なら勝負しようか、どっちが軍艦を沈められるか」
「いいよい。行くよエレノア!」
「ちょっと!」
いきなりドラゴン化したフィーはエレノアをのせて突撃する。
「僕たちも行こうか、テレサ」
「はい。カノヌシ様」
「ラフィーでいいよ」
ラフィーもテレサも能力を発動させ飛んで行った。
「体力温存のために儂が送るんじゃないのか……さて、モアナたちも」
最後にモアナたちを送るために振り返ると一つの立て札が立っていた。
『ダイルとクロガネ連れて行ってきます。防衛一人で頑張ってね』
一人になったマギルゥに風が吹いた気がした。
「自由かー!!!」
むなしい叫び声が響くのだった。
海軍の別動隊は街から少し離れた場所で予定外のことに慌てていた。
「大将クザン!どうなさいますか!」
「まあまあ落ち着きなさいよ。楽できてよかったじゃない」
「大将!!」
落ち着いたクザンは、しかし今までの行動から部下からせっつかれるのであった。
ただ、クザンの目は鋭く、何もない空間を睨む。
「まあ、こっちも楽はできそうにねえか」
「気づいておったか。成長したのクザン」
「先生の幻術には何度もやられましたからねえ」
クザンの前に現れたのはすでに神威状態のメルキオルであった。
「「「元大将メルキオル殿!!」」」
その姿に海兵たちが恐れおののく。ロックス、ロジャー時代の英雄が目の前に現れる。ゴットバレー戦で、若かったとは言え、白ひげとビックマムの二人を足止めできた実力者だ。
直接その逸話を知らない若い海兵も、噂は耳に入っている。いわく戦場を支配する識者にして、センゴク、ガープと肩を並べた英雄だと。
「なんで先生がでてきますかねえ」
「故郷が近くにあるからの。話が通じる海兵がいてよかったわい」
メルキオルの覇気にクザンは両手を上げて戦闘を放棄する。クザンの持つヒエヒエの実の力は、メルキオルの指導を受けてきた。退役して長いとはいえ、部下を守りながらメルキオルに勝つ自信はクザンにはなかった。
「全員手え出すんじゃえよ」
「賢い選択だ。このまま何もしなければ、今後報復でバスターコールなんぞ御免だからの。話のすり合わせと行こうかの。五老星に繋いでくれ」
無理難題の予感にクザンは肩を落とすのだった。