作戦を再度行おうと戦闘準備を急がせる船がいた。
オニグモ中将が率いる軍艦である。
「海軍の任務は絶対である!再度砲撃の準備を」
海兵たちは急ぎ砲弾の準備を行う。一斉砲撃が天竜人の希望であったため次弾の準備ができていなかった。
砲撃の準備を進める中、他の軍艦から真っ二つになり、沈没する。
「すでに乗り込まれている船もあるのか。正義を邪魔するものは断罪だ」
「ほう、できるのか?他人に舵を任せたやつが」
独り言を呟くオニグモに空から返答が帰ってくる。そのまま空から金髪の男がオニグモに殴りかかった。不意を突かれそのまま殴り飛ばされ、船室まで飛ばされる。
「「「中将殿!!」」」
「あれは“死神”アイゼン。このサウスブルーで2000万ベリーの賞金首」
突然現れたアイゼンに驚く海兵たち。突然オニグモが飛ばされたこともあり動くことができなかった。
「ふん!弱小海賊か。さっさと叩き潰してやる」
壊れた船室からオニグモが姿を現した。その姿は髪を操り8本の刀を持っている。
「弱小かどうか体感してみるといい」
拳を固めて構えるアイゼン。
オニグモとアイゼンが同時に走り出す。先手を取ったのは手数の多いオニグモだ。8本の刀が様々な方向からアイゼンに襲い掛かる。
対してアイゼンは丁寧に刀を躱していく。躱しきれないものは刀の側面を打ち、さばいていく。
「どうした?さっさと叩き潰すんじゃなかったのか」
「黙れ!」
時間をかけても傷一つつかないアイゼンに、しびれを切らしたオニグモは刀に覇気を纏いだす。
「ほう。驚いたな」
「辺境でくすぶっている海賊風情には理解できない力だ」
アイゼンが驚いているのは中将クラスが色が変わるほどの覇気を早々使ったことに対してだ。それに対し、オニグモは覇気を知らないであろう弱小海賊に対して攻めに入る。
「で、色が黒くなっただけか」
「貴様をたたき切ってやる」
勘違いを早々に把握したアイゼンは挑発する。格下と侮っているオニグモは早々に挑発に乗った。
勢いを増した剣圧に、それでも涼しい顔で避けるアイゼン。
手数で押せないと判断したオニグモは8本の刀を同時に振り下ろす。これで躱せないであろうと、オニグモの顔には笑みが浮かんでいる。
「ふ、それを待っていた」
アイゼンは隠し持っていたコインを指ではじき空に放つ。コインに気を取られたオニグモは完全にアイゼンから意識を外してしまった。
アイゼンは自身に等間隔で迫ってくる刀に覇気を纏った蹴りで一閃する。横からの衝撃に比較的に弱い刀は8本同時に切って落とされた。
「な!!」
オニグモの顔が固まる。その一瞬をアイゼンは見逃さなかった。蹴りを放った勢いを殺さずに拳を構える。その拳は黒く染まっていた。
「終わりだ」
「っ正義のために!!」
オニグモが叫ぶが何か変わることはなかった。
全身をひねりながらオニグモの顔に拳を叩き込む。そのまま甲板に叩きつけた。
甲板を粉々にし、たたきつけられたオニグモは気絶していた。
「ふん。戦う理由を他人に預ける奴が戦場に立つんじゃねえ」
落ちてきたコインをキャッチしながらアイゼンは周りを確認する。海兵たちは一撃で中将を倒したアイゼンに腰が引けていた。戦意の無い海兵は無視する。
「っち。また裏か」
拳の中に握ったコインはまたしても裏だった。
「なんだえ!あの炎は!わちしの作品を邪魔しおって」
その軍艦では最も尊き一族の一人が喚き散らしていた。
周りのCP0が落ち着かせようとする。
「ギデオン聖!再度砲撃させますので落ち着いてください」
「さっさとしろだえ」
天竜人は軍艦のひときわ高い客室から今回の行く末を見ていた。それが今回は功を奏し、奇襲前に発見することが出来た。
「お!あれは何だえ」
一人の男が空の上で紙に乗ってこちらの軍艦に向かってきていた。
「あれは……アイフリード海賊団船長アイフリードです!」
遠目であったがこの海域の海賊は把握していたCP0が答える。
「空飛ぶ紙!あれが欲しいだえ」
「は!」
天竜人の要望を聞いたCP0は護衛を数人残して甲板に出る。その数は10人を超えている。
ちょうどそのタイミングでアイフリードが空から降りてきた。
「たいそうなお出迎えじゃねえの」
「ギデオン聖が空飛ぶ紙をご所望だ。渡してもらおう」
気軽に話しかけてくるアイフリードに対してCP0は取り合わない。所詮は海賊であるため奪えばいいと判断する。
「会話はする気がねえってか」
「「「剃」」」
CP0は高速でアイフリードに迫る。それをにやけた笑顔で悠然と見つめるアイフリード。
「「「指弾」」」「「「嵐脚」」」
CP0は各々アイフリードに技を叩き込んでいく。土煙が上がり姿が見えなくなっても見聞色で把握し、攻撃を続ける。大した実力のない海賊であったのならすぐに決着がついていただろう。しかし、ここにいるのは実力の持った海賊だ。
ドゴン!!
鈍い音を立てながら一人が殴り飛ばされた。連撃が止まり、土煙が晴れるとアイフリードが姿を現す。しかし、その姿はさっきまでとは異なっている。大きな角の生えた異形の姿をしていた。その体に傷はなく先ほどの連撃をまるで意に介していない。
「これで終わりか」
首を鳴らしながらアイフリードがつぶやく。確かな理性のもった瞳は力に飲み込まれていないことを示している。
「総員。生きて返すな!確実に仕留めろ」
「いいな、その覚悟。どこまでついてこられるか」
圧倒的な人数差をもろともせずアイフリードはCP0に向かっていった。