海軍軍艦の中でもひときわ大きな軍艦に突入する者たちがいた。
「ウオオオオ!!」
二メートルを超える鎧姿の大男が身の丈に迫る太刀を振り下ろしながら甲板に降り立った。
「俺の名はクロガネ!覚悟のできたやつからかかってこい」
肩に太刀を担いで見渡すクロガネ。甲板にマスケット銃を構えた海兵がクロガネを囲む。
「敵は一人!打「させねえよ」」
集中放火しようと固まっていた海兵にトカゲ男が切りかかった。
「おい、ダイル。邪魔すんじゃねえ」
「打たれそうだったじゃねえか!」
「俺の体に豆鉄砲なんて聞くかよ」
「そう、かい!」
お互いに死角をフォローしながら海兵を次々に打ち取っていく。
大きく振るわれるクロガネの太刀を躱せたとしても、カットラスを持つダイルが確実に切っていく。即興のコンビネーションにしては十分だ。
「オオオオ!」
「「うああああ」」
横に振られた太刀が海兵を吹き飛ばす。たとえ覇気が使えなくともその威力は脅威だ。
振りきった太刀はダイルの足元に残痕を残す。
「って。あぶねえじゃねえか」
「わりい、わりい」
「それが謝っている態度か!」
喧嘩しながらも周りの立っている海兵はどんどん数がいなくなっていく。
「そこまでにしてもらおうか」
「「ラクロワ中将!!」」
現れたのは巨人族の海兵。さらに中将のようだ。
「で、でけえ」
「ビビってんのか」
「誰が!」
言い合う二人の前にラクロワ中将が立つ。
「今回の任務は気に入らねえが。来るってんなら容赦しねえぞ」
「「上等だ!」」
中将が振るう大太刀に二人は己の武器をぶつける。しかし、ただでさえ巨人族の力で放たれているのにさらに覇気まで乗っている。ダイルもクロガネも吹き飛ばされる。巨人族が戦う前提であるためか軍艦は大きかったため、海まで飛ばされることはなかったが大きなダメージを受ける。
「つええ」
「全くだ」
「苦しませはしない。勇敢な戦士たちに手向けを」
中将はとどめを刺そうと近づいてくる。ダイルもクロガネも直ぐには動けなさそうだ。
「全く!二人ともモアナがいないとダメなんだから!」
突然甲板に響く幼い声。すると甲板を突き破って無数のツタが生えて海兵たちを拘束していく。
倒れる二人の前に半業魔化したモアナが降り立つ。
「そこで休んでいて二人とも」
大きな棍棒を携えてモアナが立つ。
「何者だ。嬢ちゃん」
ツタの拘束を引きちぎりながら、中将が問う。歴戦の経験がこの幼女がただ物ではないと知らせていた。
「槍の聖女の一番弟子、モアナ!押してまいる」
棍棒を回しながら名乗りを上げるモアナ。その堂々とした振る舞いに、中将も幼い姿に惑わされない。全力で行く。
「怪我じゃすまされないぞ」
「上等!ツタよ」
モアナが甲板に手を突くとまた無数のツタが中将に襲い掛かる。しかし相手も百戦錬磨の中将。自身の大太刀で切り払う。
その隙にモアナはツタを棍棒を回しながら駆け上がる。それに気が付いた中将はそのツタを切り払うが、すでにモアナは中将よりもはるかに高い位置まで登っていた。
「素早いな。しかし上を取ったぐらいで」
「これで十分だよ」
ツタを蹴り加速したモアナは中将に振り回した棍棒のエネルギーをそのままに振り下ろす。
「夢と根性の流れ星・活伸棍神楽」
「っ!!(体がしびれて覇気も練れん。さっきのツタに毒が)うおおお」
棍棒と大太刀がぶつかり合う。拮抗は一瞬で棍棒が押し勝った。そのままモアナは中将の頭を打ちぬき、脳を揺らす。脳を揺らされた中将は気絶し甲板に倒れる。
「「中将!!」」
まさかの中将が幼女に敗れ慌てふためく海兵たち。
ダイルとクロガネの前に降り立ったモアナが声高らかに宣言する。
「中将打ち取ったり!見た見た二人とも」
「…ああ」
「…もちろんだぜ」
妹分であったはずのモアナの成長に、震えを隠して称賛するダイルとクロガネであった。