光剣と黒き左腕の衝突はすでに数十回に及んでいた。
ボルサリーノとベルベットにとってはいまだ牽制程度の戦いであったが、その余波はすさまじく海兵たちは避難している。傷だらけの甲板で二人は絶えず戦っていた。
「んー、おっそろしいねー。あっしとその若さで打ちあえるなんて」
「世界は意外と広いのよ。覚えておきなさい」
ボルサリーノはところどころケガを負っており、ベルベットも服の所々が焦げている。現状は互角である。
「その左腕はロギアであっても傷つけられるなんてポテンシャル高いねえ」
「ならさっさと食われなさい」
大きく振るわれた業魔手をボルサリーノは飛びのいて躱す。初めはロギアの体に過信しダメージを追っていたが、すでに左腕の脅威は認識しており簡単に当たることはない。
ベルベットも決定打を与えるため策を練っている。互いに覇気は使っていないが、業魔手がロギアを傷つけられる点で覇気を隠す意味はあまりない。刺突刃もいまだ隠している。
一方ボルサリーノも天叢雲剣しか技を使っていない。ベルベットの不気味さに積極的な攻勢を封じられている。
互いに守勢の戦闘を行っていたが、周りの軍艦が次々と破壊されてきたため、ボルサリーノから攻めなくてはいけなくなってきた。
「まいったねー。お仲間さんは強いね。あっしが全部ひっくり返さんといけなくなったよ」
「無理ね。あたしにここで負けるのだから」
「光の速さで蹴られたことはあるかい」
その言葉通りボルサリーノは自身を光に変えてベルベットの背後を取る。それに気付いたベルベットは振り向くがそこに光の蹴りが放たれる。
ここでボルサリーノは勝負を確信してしまった。自身の蹴りにもし耐えたとしても、吹きとばされ海水に落ちるだろうと。
ただベルベットは耐えるだけでなく、その場にとどまった。ダメージは受けている。しかし、この程度の傷など問題ないとボルサリーノの肩に覇気を纏った刺突刃を刺し、動きを止める。ここでボルサリーノは、目の前の人物が覇気を使えることを理解する。自身も覇気を纏おうとするが、あまりに遅い。温存していたことが裏目に出る。
「おっと?!」
「この程度のダメージなんて大したことないわよ。喰らいなさい。絶破滅衝撃」
お返しとばかりに覇気を込めた業魔手をたたきつける。前世で傷つきながらも戦い続けたベルベットを一つの技で倒すことはできない。
吹き飛ばされることでボルサリーノとの距離が空いたため、追撃しようとするベルベットに光のレーザーが飛んでくる。これを業魔手で防ぐが、追撃は止められてしまった。
「はー。覇気まで使えるとはねえ。厄介だねー」
大きなダメージを受けたボルサリーノはまだ戦闘できそうだ。ベルベットは刺突刃を構える。
「時間がねえでさ。ここで終わらせるよ」
ボルサリーノは天叢雲剣を上段に構えて大きく振り下ろしてくる。ベルベットは大きな隙に覇気を纏った刺突刃でボルサリーノを貫こうとする。これはただの牽制だ。ボルサリーノの大ぶりな攻撃は陽動と考えたベルベットは、次の動きに意識を割くがボルサリーノはあえて刺突を受けた。
「な!」
避けると思っていたベルベットは、予想外の事態に一瞬の間が生まれる。その隙に光になり背後に回るボルサリーノは天叢雲剣を振り下ろす。首を落とそうとするボルサリーノだが顎に衝撃を受けのけぞってしまう。
ベルベットは業魔手を甲板に突き刺すことで支えとし、後ろ蹴りを放ってきた。
たまらず光になって距離を取るボルサリーノは、顔を上げるとそこにはすでにベルベットがいた。
「っ!!」
「体は光になれても、思考までは光速になれないみたいね」
「!この島は地獄かなにかかい?」
回避は不可能と判断し、ボルサリーノは愚痴をこぼす。
「ここが地獄なら 私たちは 越えていく!」
ベルベットは叫びながら何度も連続で業魔手で切り裂く。そのまま空に飛びあがる。
「泥まで喰らえ!」
業魔手の放出する力を球状にし、下にいるボルサリーノに向けて放つ。
「インパルス・ディザイア!!!………本当の地獄はこんなものじゃないわよ」
ボルサリーノは完全にダウンする。動けないことを確認したベルベットは最終目的のために後にしようとする。すると後ろから声がかけられる。
「殺さないのかい」
「驚いた。まだしゃべれるのね」
「これでも大将だからねー。動けないけど」
「殺さないわよ。海軍の戦力を削りたいわけじゃないから。殺すのは天竜人だけ」
「覚悟はあるのかい」
「ええ、もちろん」
ベルベットは月歩で天竜人の船に向かう。それを動けないボルサリーノは見送るしかない。
「まいったねー。ほんとに」
天竜人の乗っている船はアイフリードによりほぼ壊滅状態であった。
「ひい。無礼者!あちしを誰だと」
「ただのゴミだな」
天竜人を冷たく見下ろすアイフリード。殺されることを理解した天竜人は慌てて駆けだす。
駆けだした先にベルベットがいた。
「た、助けれ」
「フン」
業魔手の一振りで天竜人は、その命が絶たれた。
追いついたアイフリードが文句を言う。
「おいおい。それは俺の仕事だろ」
「別に誰がやっても同じでしょ」
「ここは船長としてだな」
「それよりも次のステップに」
「たく」
文句もそこそこにアイフリードは、シルフモドキを使って連絡するのであった。