アルトリウスと始めた修行は毎日行うわけではなかった。休閑日を設け、心に余裕を持たせていた。
ベルベットは空いた日は、村を散策している。かつての仲間たちに会うために。
その日はとある兄弟の家に向かっていた。
家に向かう途中、激しい剣劇が聞こえる。ベルベットは二人の剣劇を眺める。
一人はベルベットとほとんど年の近い二本の木刀を操る少年。その動きは流水のように滑らかであった。
もう一人はベルベットよりも少し年上の一本の木刀を操る少年。その動きは荒々しく激しい嵐のようだった。
ロクロウとシグレだ
木刀で戦っているはずなのに金属のような音が鳴り響く。二人の木刀は黒く染まっていた。見事に武装色の覇気を使いこなしている。この二人は本当に戦闘が好きなようだ。
二人の剣劇は激しさを増すが体格の劣るロクロウの木刀が弾かれ、決着を見せる。
いかに前世で最強クラスの剣豪といえども、まだ年若い少年ではお互い、十全に力を発揮できないのだろう。
ベルベットに気が付いた二人は声をかける。
「おう、ベルベット!無様なところを見せたな」
「顕主様じゃねえか!こんなところにどうした」
「シグレ、顕主様は止めなさい。クロガネに武器を頼んだ武器をもらうついでに二人を見に来たのよ。それにしてもあなたたちなら、修行にも征嵐も號嵐も使いそうだけど」
ベルベットに問われた二人は笑いながら理由を話す。
「こんなちっこい体で大太刀は使えねえよ。サイズが自分に合ったものになるとはいえ、力が足りん。まあ、見たいって気持ちもわかるぜ。ベルベットと別れてから完成させた大太刀二刀をな!それにしぐれは太刀を持っていないからな」
「俺はロクロウに負けたからな。あの戦いに悔いはねぇ。その代わり號嵐を出せねぇがな。てか、どうなってるんだ?何もないところから剣が現れるなんてよぉ」
「俺も知らん!」
「だろうな!」
「「ははははは」」
「バカね」
あるがままを受け入れる二人にベルベットは頭が痛くなった気がした。聞けば聞くほど悪魔の実の能力を理解することは、困難に思えるが、それでも思考を停止することは違うだろうと。
「じゃあ、おれは用があるからいくぜ。顕主様のもてなし頼んだぜ、ロクロウ」
そう言って、村のほうに歩いていくシグレ。その姿にシグレの複雑な心情が垣間見えた気がした。
ロクロウは、ベルベットを伴ってクロガネのいる小屋まで歩く。
「相変わらずね、あんたたちは」
「それがランゲツだからな。…なあ、ベルベット、俺はお前がいなくなってから修行してきた。長い期間な。強くはなったが、目的もなくただ振るわれるだけの刃になっていった。俺には担い手が必要だ。聞くところによると、海に出るんだろ?俺も連れて行ってくれ!頼む!」
頭を下げるロクロウにベルベットは軽く驚く。自分の知るロクロウは一人でも海に出ていくと思っていた。
「意外ね。シグレは一人で海に出るらしいじゃない。世界最強の剣士になるんだって」
「たとえ業魔であっても数百年は長すぎた。結局自害したからな。最後に思い浮かべたのはあの旅だった。まあ…自我を忘れなかったのは、おまえのおかげだと思う!だからこれは前世の恩返しだ!」
「恩返しって言いたいだけでしょ、それ」
その言葉の掛け合いに懐かしさを感じるベルベットであった。
「人の家の前でいちゃつくんじゃね!!あと俺もついていくからな、ベルベット。世界の刀を見てみたい。おめについていけば、波乱万丈間違いなしだ!ガハハハ」
いつの間にかクロガネの家についていたみたいだ。ドアから30代ほどの大柄でいかついおじさんが怒鳴りながら出てくる。筋肉の付いた体は、やけどや切り傷が残っており、職人を感じさせる。
「好き勝手言って…頼んだ武器はできている?クロガネ」
「おうよ!刺突刃だな!もっといい素材があればいいんだがな」
「これで十分よ。自分の体を素材になんてしないでよ」
「それは前世でやったからな!次は別の方法で號嵐を超えてやる」
「おお、なら俺の小太刀も頼むぜ!」
声を上げるロクロウにベルベットはジト目になる。
「あんたには征嵐も號嵐もあるでしょ。まだ小太刀がいるの?」
「応!!大太刀二刀を使う必要のない敵用だな!いずれは四刀流すらものにしてやるさ」
ベルベットは四本の刀を帯刀するロクロウを思い浮かべる。
ごちゃごちゃするはずなのに、妙に様になる姿を想像したベルベットは、ため息をつくのだった。