ベルセリアが記憶を取り戻してから2年ほどたった。ラフィもフィーも立って遊べるようになった。
このころになると、子供たちは活発になる。泥まみれになる二人を世話するベルベットは、姉を通り越して母のようになってきた。その姿をマギルゥにからかわれて制裁を加えることもあったが、おおむね平和に過ごしていた。
その日は、近所の友達と遊ぶらしく、ベルベットは付き添っていた。その友達はモアナらしい。
「(いつの間に知り合ったんだか)あんまり遠くに行っちゃだめよ」
「「「はーい!」」」
広場で仲よく遊ぶ3人を、ベンチに座りながら眺めるベルセリアの目には幸せが宿っていた。特にラフィは前世で体が弱く、外で遊ぶこともままならなかったのだ。
「仲のいい3人ですね。とてもなごみます」
声をかけながら隣に座る少女は、エレノアであった。ベルベットの記憶よりも姿は若いが、ずっと落ち着いているのは、前世の影響だろうか。
「なに、ババ臭いわね」
「な!!!何を言うんですか!」
落ち着いている雰囲気は、出しているだけらしい。簡単に化けの皮がはがれる。
「ふん!これでもベルベットよりも長生きしたんですからね。いろいろ経験しました。落ち着きがないのは、姿に引っ張られているからです。ええ、そうです。そうに違いありません」
「えー、ほんと?」
エレノアは記憶持ちでベルベットと近い年齢でもある。必然、一緒に料理したり、刺繍したりと良い友達関係を築いている。前世での経験は圧倒的にエレノアのほうが大きいはずなのに、同レベルの会話が続くのは、ベルベットが大人っぽいからなのか、エレノアが子供っぽいからなのか。
「そういえばエレノア、あなたまた能力の調整をしているの?いいじゃない今の姿にフィットした大きさになるんだから」
「む…胸が余るんですよー!!前世でよく着ていた服は聖寮の制服なのですが、成長に伴って何度か仕立て直しましたから。皆さんと旅をした時よりも大きくなったんです。着ていた期間は、仕立て直した方が長く使っていましたから、その影響で…。それよりもベルベットは服を変えないのですか?能力を使うとあの頃の服装になるのはわかりますが、その…あの頃の服装は…」
「いいのよ、もう慣れちゃったから」
この村の転生者たちは、能力を使おうとすると前世でよく着ていた服装になるのである。
どういうわけか、サイズはある程度勝手に調整されるが、細やかなところまではされないのである。
「よくありません!!女の子なのですからもっとオシャレを!!」
「戦闘中にまでオシャレって…」
憤慨するエレノアにベルベットは冷静に突っ込む。
その後も不毛なじゃれ合いを続けた二人であったが、それも自然に収縮していく。
「ベルベットがいなくなった後もいろいろありました。世間から槍の聖女と言われたり、モアナも大きくなったら、私と一緒に業魔と戦ってくれたり、モアナの武器が私と同じ槍なのは、恥ずかしかったですが」
「よかったじゃない。おねいちゃん?」
「///」
照れるエレノアをからかうベルベット。その後も、エレノアの昔話に付きあうベルベット。ベルベットは、自分がいなくなった後の世界を、エレノアを通して見つめる。
決して正しい旅路ではなかったが、それでも意味のある旅ではあった。
日が傾いてきたため、仲よく遊んでいた3人にベルベットは声をかける。
「そろそろ暗くなってきたし、帰るわよ」
「また遊ぼうね」
「うん」
仲のいい3人はまた遊ぶ約束をしながらそれぞれ帰路に就く。
ベンチから立つベルベットにエレノアは声をかける。
「また、旅をするそうですね。私もついていきますから。あなた達だけに旅をさせたら、世界が大混乱に陥りますから。いいですね。災禍の顕主さま」
「好きにしなさい。一等対魔士様」