ある晴れた日のこと、穏やかな日差しが村を包む。ベルベットも家でのんびりとしていた。
しかしそんな中、凶報が村に響く。
「海賊だー!!海賊船が向かってきているぞー」
慌てた村人の声を聴き、ベルベットはアルトリウスとうなずき合うと、武装を整え、浜辺に向かった。
そこには村の戦力が集まる。ベルベットやアルトリウスだけでなくロクロウやシグレ、マギルゥ、エレノア、オスカー、テレサ、これだけの戦力、生半可な海賊では太刀打ちできないであろう。
海賊船がぼんやりと見えてきた。赤い帆を張り、マストにドクロマークを掲げる、まごうことなき海賊船だ。しかしベルベットには、すごく見覚えのある船だった。具体的に、一時的にも自分が乗ったことのある船、バンエルティア号であった。
それを確認した全員は肩の荷を下ろすのであった。
近くの船着き場にバンエルティア号が停泊する。
「ガハハハ、出迎えごくろう!」
ちょび髭を生やし大きな帽子をかぶる、顔に傷のある船長が笑い声をあげながら船から降りてくる。
アイフリード海賊団船長
“業魔”バン・アイフリード
懸賞金:4000万ベリー
「少しは落ち着け、アイフリード」
続いて金髪のやくざのような男が船長をいさめながら下りてくる。
アイフリード海賊団副船長
“死神”アイゼン
懸賞金:2000万ベリー
「ヤッホー!陸だー!」
巻き毛の金髪に大きな帽子に小鳥をのせた、歯抜けの青年が下りてくる。
アイフリード海賊団船員
“小鳥使い”ベンウィック
懸賞金:500万ベリー
「故郷に到着だぜー!」
昔の仲間に本来の姿であったとき、だれにもわかってもらえなかったことを気にしているのか、常にトカゲ姿の男が下りてくる。
アイフリード海賊団操舵手
“トカゲ男”ダイル
懸賞金:200万ベリー
その他懸賞金は付かなくても、歴戦の雰囲気を感じさせる馴染みの船員が船から降りてくる。
唐突な訪問に村を代表してアルトリウスが文句を言う。
「来るなら連絡入れろといつも言っているだろ、アイフリード」
「ガハハハ!サプライズの方が驚くだろう!」
一切詫びる様子もなくアイフリードが笑う。
少し離れたところでたたずむベルベットたちに、アイゼンが声をかける。
「悪かったな。船長はああ言っているが実際は、昨日突然の嵐に見舞われて食料が海に流されてな。一般人に迷惑かけるわけにもいかず、ここに来たというわけだ。もともと前回の宴で食料も少なかったしな」
「食糧管理は基本でしょ。よくそんなので海賊やっていけるわね」
「死神の呪いは健在じゃのー」
「楽しそうな航海じゃねえか!」
「まったく。人騒がせなんですから」
かつての仲間たちとの会話にアイゼンの口元が吊り上がる。
そこにアイフリードの号令が響く。
「よし!おめーら、村に向かうぞ!無事生還できた!宴だ!!」
「「アイアイサー!!」」
話が付いたのだろう、愉快な仲間たちを連れ村に向かうアイフリード海賊団に、苦笑いしながらついて行くベルベットたちであった。
その日の晩は村全体での宴となった。
誰もが笑顔で酒を交わし、笑い合う。
子供たちはベンウィックの航海話に夢中だ。子供たちの中にはラフィやフィー、モアナの姿もある。ときどき笑い声が上がっているのは、航海話が面白いだけでなくベンウィックの話術もあるのだろう。
このような宴は眺めるのが好きなのか、会話には入らず眺めているアイゼンにベルベットは声をかける。
「相変わらず、楽しそうね。死神の呪いも含めて」
「ああ、この呪いとも付き合いが長いからな。向こうの世界よりも奇想天外な海だなここは。毎日が刺激的だ」
そう語るアイゼンの顔は笑顔が浮かんでいる。失われた航海の続きを楽しんでいるのだろう。
「そう、よかったわね。それで、妹さんは見つかったの?」
「いいや、まだだ。メルキオルの話では、ここと似たような村はいくつかあるらしいが、この世界は広い。それでも必ず見つけるがな」
二人の間にわずかな沈黙が流れる。
夜の冷たい風が二人に吹く。風はアイゼンの心情を表しているかのようだった。
「俺もアイフリードもお前には感謝している。海に出るときは力になろう」
「海賊になるのはいやよ。海軍に追われるでしょ」
「ッフ、お前が追われないはずがないだろう。…うちは料理人が不足している。もし乗るなら料理長だな。これで、食料の心配もいらないだろう」
「捕らぬ狸の皮算用って言葉知ってる?」
「災禍の顕主が平和に冒険を終えるか?」
「うるさい!…もしもの時は頼むわ」
「任せておけ」