沈んだら 帰って来れた 我が故郷 作:∩(´∀`∩) ワッショーイ
「そういえばなんだけど」
とりあえず全員分の皿洗いを済ませ乾燥棚に置いてからソファーに座ると、お母さんがゆっくりと近づいて来た。
「どうしたの?」
なんか大切な話でもするのかな?と思いお母さんを見ると、お母さんは少し首を傾げながら何かを考え込むような仕草をしてあー、うーんっと唸っている。
そして何かを決めたように頷くと、そのまま口を開いた。
「さっき出て行く時にお父さんが言ってたのよね。その見た目で秋一ってどうかって」
「はぇ?」
切り出された話題は、要するにこの瑞鶴の見た目で秋一ってどうなの?っていう内容だった。
正直なところ、私自身は今まで瑞鶴としか呼ばれていなかったから秋一でもいいとは思うのだが、お父さんはそうでもないらしい。
「私は別に秋一でもいいと思うんだけど、やっぱりお父さん娘が欲しかったみたいだから」
「あぁ……」
それは確かに。私がまだ俺だった時にはお父さん散々「こんなムサい男どもなんかよりも娘が欲しかった」って言ってたものね。
「せっかくべっぴんになって帰って来たんだって言われたら反論出来ないし……それにね、これから働くならって考えると私も同意しちゃったのよね……秋一の意見も聞かないで勝手に決めちゃってごめんなさい……」
「ううん、大丈夫。それに改めて考えたらそうだし気にしてないよ」
私も確かに秋一って言われる瑞鶴を想像してみるとなんか絶妙に微妙な感じがしたので特に咎めようとも思わなかった。
「えーと、そういえば今までは瑞鶴って呼ばれてたのよね?」
「え、あー、うん。それがこの体の名前だからね」
私に確認を取ってきたお母さんは、そのままポケットからスマホを取り出した。
「だからなのかお父さん━━から聞いたのか冬馬からこんなのならいいんじゃないかって案が出てるんだけど……どう?」
そしてL〇NEを開き冬馬とのトーク画面を見せてくると、そこには『智瑞千鶴』の四文字が読み仮名付きで表示されており、その下にはこん中に瑞鶴も入ってるしいいと思うんだけど、どう?とも書かれていた。
それにしても……
「智瑞、千鶴ね……」
「秋一が嫌なら大丈夫だと思うけどね、あの子も怒らないでしょうし」
「うーん……気に入ったし、採用で」
ほんの少しだけ悩んで決めると、お母さんは心配そうな表情をしていたが、気に入ったのは本当だしこれからは智瑞千鶴と名乗ることにする。
「まぁ、千鶴がそれでいいのなら私も文句はないしいいけどね」
なんのかんの言ってこれは本当だと思う。早速千鶴呼びしてるし、そもそも私を千鶴って呼ぶのことに関して満更でも無さそうだし。
……でも、それじゃ家のグループに送っとくわねと言われても今手元にスマホなんか無いし、もしあった所でそもそもL〇NE自体入ってないから困るな……まぁ今回のは別に問題ないけど。
「あ、そういえばだけど千鶴、携帯持ってる?」
「ううん」
あまりにもタイミングが良くてつい顔に出ちゃったかな?って疑うほどに的確な質問に私が首を振って答えると、お母さんは一度天井を見た後またスマホの電源を入れ何かを確認した。
「えと、どうしたの?」
「千鶴、アンタの携帯買いに行くわよ」
「━━へ?」
あまりに唐突なお母さんからの提案に一瞬フリーズしてしまった私は悪くないと思う。
「え、え……へぇぁ?」
「携帯を、買いに行くわよ」
いや、そこは二度も言わなくてもわかってるの。そこじゃないの、そこじゃなくて……
「唐突過ぎない?」
「何言ってんのよ、見た目はともかく中身はいい歳なんだから自己管理くらい出来るようにならないとダメでしょ?」
「答えになってない!?」
言葉通りに何言ってんの?って顔をしているがそれはこっちのセリフなんですけど……
「いいからさっさと支度しなさい。化粧は私の貸してあげるから」
「う、うん?」
有無を言わさず私にセット一式が入った袋を渡しお母さん自身も化粧を始めたので、納得はしきれてないがとりあえず化粧をすることにした。
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「にしても、ここは前から変わってないのね」
お母さんに連れられて来たショッピングモールの中で小さく呟く。所々変わっている店もあるが、だいたいは前世に見た通りの姿でそのままある。
ちなみにだが何故私が今一人でこうしてモール内をぶらついているのかと言うと、十数分くらい前に私とお母さんはケータイショップを訪れ私のスマホを選んでいた。
『本当にこれでいいのね?』
『うん、向こうでもこれ使ってたし』
『ならこれで決まりね』
という感じに俺だった時から愛用していたXp〇ria端末を選ぶと、不意にお母さんは後は私がやっておくからモール内でも見てきたら?と提案してきたのだ。
流石にそこまでお世話になっていいのかとも思ったが、かなり久しぶりに来たからか見たことがない店が転々とあったこともあり、せっかく言ってくれてるしいいかと二つ返事で了承、そして今に至るという訳だ。
「万が一何かがあった時の為にってiP〇d渡されたのはいいけど、ぶっちゃけかさばるだけなのよね……」
連絡とかってどうするんだろうと少し疑問に思った私だが、スっとカバンごとiP〇dを手渡して来たお母さんを見てあぁ……と思った。
一度確認してみたが、特に連絡もなかったところを見るに多分まだ終わってないんだろう。
「にしてもこれ本当に美味しい」
冬馬から貰ったお金で買ったスムージー片手に店内を歩くと、やけに視線が集まるのを感じる。主に男性から、理由は分からない。
そんなにこのスムージーが気になるのかな?確かにめっちゃ行列出来てたし実際かなり美味しいけど……
首を傾げながらまたスムージーを口に含み、イチゴのほのかな酸味と甘みに口元を緩ませたその時、誰かに勢いよく肩を捕まれた。
「んー?翔鶴姉なn……」
私は気が緩んでいたこともあってついそう口にしてしまい、自分が何を口走ったのかを理解した次の瞬間にはしまったと顔を青ざめさせた。
マズイ……これじゃこんな衆人環境の中でキャラの名前を口走る痛い子になってしまう……
「す、すみませんつい……っ!?」
とりあえず要件は何か聞こうと謝ってから肩を掴んで来た人を見ると、そこには見知った顔がいた。
というか……
「なんか用?宗次朗」
「え、なんで俺の名前……」
「なんでって親友なんだし当たりま……」
そこまで言ってまた頭を抱える。そういえば今の私って瑞鶴じゃん……もう俺とはまるっきり違うんだしわかる訳ないのに……とりあえず謝ろ……
「ご、ごめんなさい。私また変なこと言っ「まさかだとは思ってたが……本当に秋一なのか?」……え」
ストックが少なくなって来たのでこれからは少し更新ペースを下げようと思います。
ではまた次回で!