二重人格系TS娘が征く、ダンジョン×学園都市モノ   作:ずっと病んでる。

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慢心TS娘ならチート持ちでも許される。

 

 

 

 

七ヶ堂 紅白(シチガドウ クレハ)さん、ようこそ『学園都市アヴァロニア』へ。学園都市は貴方を歓迎します。」

 

 

 

 

 

『学園都市アヴァロニア』と呼ばれる、大洋に浮かぶ人工島の一角。この島の出入り口となるゲートにて、潮風に吹かれる美少女が一人。

 

 

 

 そう、()だ。

 

 今日()は、転入生という扱いを受けて『学園都市アヴァロニア』へと手厚い招待をされている。なーんにも分からず来たわけだけど、ここでなら、ようやく自分の真価を発揮できそうだという予感はある。

 

 

「案内係を務めさせて頂きます、ニノ前(ニノマエ)です。貴方のこれからの活躍を期待していますよ。それでは、行きましょうか」

 

 

 案内係だという女生徒の後ろを着いて行く。割と好みの顔をしている。()の恋愛対象は女の子だった。今は、こんなナリをしているけどね。女が好きというのは"前"と変わらない。

 

 

「ゲートから左に行けば商業区、右に行けば居住区で……」

 

 

 コチラが興味を示していない話題を精一杯説明してくれるニノ前ちゃん。彼女も案内係を任されたモンだから頑張ってるんだろうな、と暖かい眼差しで見守る。

 

 

「……えっと、アレが研究区域で、———聞いていますか、七ヶ堂さん?」

 

「あぁ、悪い悪い。ちょっと気疲れしちゃってさ」

 

 

 テキトーに誤魔化しておけばいいだろうと思って気疲れしたという設定にしておいた。()ってば天才かもな。

 

 

「確かに、私も初めて来た時は気疲れしてしまいましたね。ここって何でもありますもんね」

 

「———ん?今な………いや、やめとくわ。あの奥の何?」

 

 

 内なる魂が叫んでいたが、どうでもいいことだったので言うのをやめた。話を合わせるために、適当な建物を指差して質問する。

 

 適当に指差しては見たが、あの建物割と気になってきた。アレはなんだろうか。途轍もなくデカい。

 

 

「あー、アレが校舎ですよ!パンフレットの表紙にもなっていた筈です!そしてそんな校舎の奥には……………」

 

「———()()()()が!!風紀委員が今戻って来たぞ!!」

 

 

 とある男子生徒が、そのように大きく叫んだ。その声を聞き付けた辺りの生徒達が、一斉に響めきだす。

 

 はて、風紀委員とな???

 

 

「ふ、風紀委員ですよ、七ヶ堂さん!!風紀委員が戻って来たって!!………あぁ、皆無事に帰って来れたんでしょうか……」

 

 

 なんだか知っていて当然のことらしい。何とも言えない疎外感を感じる。我、転入初日ぞ?

 

 一般的に風紀委員といえば、学園の風紀を守る役割を持つ委員会のことだ。学園都市ともなれば、その委員会にも大きな役割が与えられているということなのだろうか?

 

 黙っていても望んだ答えが出ないので、ニノ前ちゃんに聞くことにしよう。うん、そうしよう。

 

 

「風紀委員って〜のはなんなんだい?ニノ前ちゃん」

 

「えぇと、そうですよね!説明しますね。ここでの風紀委員というのは普通の学園と同じ、風紀や治安を正す役割の他に、""ダンジョン""の攻略を目指す役割も熟しているんです!」

 

 

———ダンジョン!?ダンジョンだって?そんなモンが、此処に有んのかよ。

 

 

 通りで、この『学園都市アヴァロニア』には国や研究機関といった胡散臭いモンが関わってるなと思っていた。

 

 

 ()()()()()()1()5()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()にとっては知り得ない情報だった。

 

 

「……ダンジョンっていうのは、どういうものなんですか?」

 

「…………七ヶ堂さん、何だか口調が……?」

「いえ、それよりもダンジョンのことも知らずに学園都市までやって来たんですか!?というよりも、生きていればダンジョンくらい……」

 

 

 ダンジョンというのはですね!という言葉に続いて彼女は説明していく。これまで通りに、ニノ前さんは優秀な説明役を努めてくれそうですね。

 

 

 話によれば、この世界にはダンジョンというモノが突如として出現し、その周りに学園都市が設立。この学園都市というのが『学園都市アヴァロニア』。

 

 

・『学園都市アヴァロニア』は、世界各国から支援を受けており、商業区、研究区域などが伴っているのも、そのおかげ……らしい。

 

・さて、ダンジョン。ダンジョンという名前をしているだけあって、その中には従来のRPGのようにモンスターがいる……らしい。

 

・そのモンスターが死んだ時に落とす、謂わばドロップアイテムが新たなエネルギー資源として注目されている………らしい。

 

・そんな新たなエネルギー資源に世界中が躍起となり、ダンジョンの攻略を目指している……らしい。

 

 

 

「どうして、学園都市なんですか?当の大人達がダンジョンまで赴けばいい話では?」

 

 

 そう、それだ。ここがダンジョン攻略のために設けられた土地だというのなら、学園都市とする必要はない。研究区域があったとしても、商業区なんてモンも必要ではない筈だ。

 

 

「…………ダンジョン適正があるのは、学生のみなんですよ。モンスターを倒せるのは学生だけなんです。———だから、大人達は支援に回っている」

「戦う理由は様々ですが、お金だったり、将来保証だったりを売りにして学生達を集めているんです」

「でも、私のように戦えなかった人々もいます。そんな人達も、戦える人々をサポートしたりして、生き延びている。……私はダンジョンなんかには二度と行きたくないですよ」

 

 

 成程、ね。ダンジョンと『学園都市アヴァロニア』。学生と大人。だんだん闇が見えて来たような気がするわ。

 此処に居る連中は、甘い蜜に釣られてやって来たような輩もいるわけだ。

 

 

「———そんなダンジョンを一早く攻略するための組織が"風紀委員"、か」

 

「………はい、お察しの通りです。だから、彼等は私達のようなリタイアした人々にとっては、希望なんです」

 

 

 リタイアした人間にとっての希望とすら言わしめる彼等の存在が気になって来た。ニノ前ちゃんと見に行くことにするか。

 

 

「それなら、希望とやらを拝みに行かないとな。行こうぜ、ニノ前ちゃん」

 

「———!?は、はい!!」

 

 

 

 

 

 

 目的地に近づくにつれて、人混みが激しくなってきた。それだけ風紀委員というのは期待されているのだろう。

 隣のニノ前ちゃんを見れば、瞳をキラキラさせてヒーローを待ち望む子供のような顔をしていた。

 

 

 ダンジョンから帰って来たって話だし、そうなると近くにダンジョンがあるわけで………。

 

 

 目当てのモノはすぐに見つかった。大きな塔に紐付くようにして、コレまた大きな洞穴。

 おそらくアレがそうであろう。知らない人間がパッと見てわかる程には存在感がある。地下へと続く階段は、宛ら冥獄への階段だろうか。

 

 そんな階段を登って来た集団がいた。彼らが顔を現した時、周りの群衆がドッと湧く。

 

 

「(そうか、アレが風紀委員なんですね。予想していたよりも強者だ。学生の飯事遊びじゃない。彼らは覚悟を決めている)」

 

「「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」」」」

 

 

 風紀委員の先頭集団を歩く女子生徒の姿がハッキリとすると、今まで以上に場が盛り上がる。

 

 

「………彼女は?」

 

「風紀委員長の戦石 刀子(センゴク トウコ)先輩です。それに伴って現在、彼女が攻略隊のトップに立っているんです。」

「その人気は然る事乍ら、実力も高い。」

 

 

 そうでなくては風紀委員長なんて役職任されないんですけどね、とニノ前ちゃんが笑う。

 

 ダンジョンのことを話していた時は暗い顔をしていたというのに、もう顔が晴れたのか。

………それも戦石刀子(センゴクトウコ)、彼女のおかげか?

 

 キリッとしている瞳がいいと思いますよ、先輩。

 

 彼女の後に続いて、風紀委員の猛者達が隊列を成している。

 

 

 そんな風紀委員達であるが、どうやら雲色が怪しい。

 

 

「保健委員、保健委員を呼んできてくれ!!遠征による怪我人、死者多数!!保健委員を直ちに!!」

 

 

 風紀委員の誰かが切実に叫んだ。先頭の風紀委員長、戦石先輩も苦しげな表情を浮かべ歯噛みしている。

 

 そうか、ダンジョンの攻略を目指すということは犠牲も付き物。だから、ニノ前ちゃんもダンジョンから逃げたのだ。

 

 保健委員が学園都市の救護だということを知る。どうやら、この学園都市での委員会の役割というのは生半可なモノではないらしい。

 

 皆、覚悟を持ってダンジョンへと挑んで儚く散る。戦闘から退いたモノ達も、挑み続ける彼らの助けとなるために支援の道へと進んでいくらしい。

 

 ずいぶんと美しき精神で成り立ってるモンじゃないですか、学園都市。

 

 

 それなら()()の道は一つだな。

 

 

()もダンジョンに行けるんですか?」

 

「………はい、生徒であれば誰でも。で、でもあんな光景を目の当たりにして行こうと思えるんですか!?」

 

 

 転入初日でもダンジョンには入れるらしい。これはチャンスだ。自分の実力を試すことが出来るらしい。

 

 ニノ前ちゃんは必死に止めてくれるが、お手並拝見と行きたいモンだよ

 

 

『学園都市アヴァロニア』。なかなかに面白い所かもしれない。ここでなら、退屈凌ぎくらいにはなりそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 ニノ前ちゃんによると、ダンジョンに入るにも学園都市で何をするにも『学生証』というモノが必須らしい。

 

 これに日々の活躍が記されたりするんだとかなんとか。()は、そういう類の創作なんかには疎いが、『学生証』が所謂冒険書の役割を担っているんだってよ。

 

 そんな『学生証』を渡しそびれていたと言って、ニノ前ちゃんが渡してくれた。自分の顔写真が貼り付けてある。普通の学生証と変わらないが、特別なんだってさ。

 

 

「まだ、クラスのことすら説明していないのに本当に行ってしまわれるんですか?」

 

「あぁ、どうやら風紀委員とかいうのに充てられたらしい。我ながら馬鹿だと思うよ」

 

 

 本当はウズウズが止まらないだけなんだ。早く暴れたくて仕方がない。ここでなら許されるのだ。15年間、碌に使って来なかった"チート"が。

 

 

「………あの、死なないで下さいね。ダンジョンは危険な場所ですから、ダメだと思ったら帰って来てください。私、待ってますから!帰って来なかったら恨みますよ!」

 

 

 そんな彼女の痛切な想いを背に受けて、ダンジョンの入口へと歩き出す。

 

 ダンジョンに入るには受付を通る必要があるらしく、そこを管理するという生活委員にギョッとした顔で驚かれた。

 

 

「キ、キミ!丸腰でダンジョンに潜る気かい!?何か武器がないと………」

 

「———()には拳がありますから」

 

 

 その時私は言い訳して無理矢理にダンジョンへと入れてもらえたが、本来であれば戦う為の手段を持って臨むらしいということを知った。

 

 

 

 

 

 

 

…………これが、ダンジョン。

 

 

 空気が湿っていて、薄暗い。開け放たれた空がないせいか、圧迫感に押し潰されそうになる。

 この空気感にやられたら、ニノ前ちゃんのように恐怖で何も出来なくなるはずだなと納得する。

 

 

 

 じゃあ、いっちょやってやりますか。

 

 

 

 

 ()は転生者だった。それも俗に言う、チート持ちのTS転生者。

 

 残念だったのは、ある程度成長していた少女の身体を乗っ取るようにして後から意識が芽生えたこと。まぁ、幸いにも少女の意識は死んでなくて、今はこうして()()()()()()()()()()()()

 

 それでも、どちらもコレが自分の身体だと思ってるわけで、二人格で一つの身体を巡って喧嘩しあってたら不気味がられて親に捨てられたりもした。

 

 俺達を拾い上げた道場のジジイは、俺達の絶大な力を恐れた。それ故に、下界との情報を完全に遮断することで、精神の成長を促し力の抑え込みを図ろうとしていた。

 

 

 だから、知らなかった。『学園都市アヴァロニア』の存在もダンジョンの存在も。

 

 

現実寄りだと思っていた世界で自分の力を発揮できる場があるなんて、許される場所があるなんて。

 

 

「(学園長だとかいう、あの女には感謝だ。何処から聞きつけたのかは知らないが、あの人の御蔭で此処へと至れた)」

 

 

 俺と私、主人格であるのは転生者である俺。それに引っ張られるようにして私も恋愛対象を女の子としている。

 

二重人格TS転生者である紅白は、その一つの身体を二人で使い分けている。だからこそ、口調も変われば一人称もバラバラとなる時があった。

 

 

 それが七ヶ堂紅白の正体。

 

 

 そんな彼女達が、一人一つ許された絶対的な力。人格によって分けられた力が猛威を振るう時がやって来たのだ。

 

 

 

 

 

 

 初めに餌食となったのは、緑色の体表をした人型のソレ。記憶によると、どうやらコレがゴブリンであるらしい。

 道場の裏山で見かけた、猿や猪とは違うモンだと一目でわかる。どう考えても異質だ。この世の生物とは言えないほど凶悪で醜い。

 

そして、コイツが最初の実験台。俺達の前に現れたのだから仕方ない。相手は群れとなって行動するモンスターらしいが、10匹程度だ。

 

 

 それなら余裕でやれる筈だ。

 

 

 物語の中なんかだと、ゴブリンは人間の女を

孕み袋として活用するらしい。だからだろうか、目の前のヤツらも下卑た笑みを浮かべている。

 

 良かったなお前ら、幸せモンだよ。最後に見る光景がこんな美少女だなんてなぁ?

 

 向かって来たゴブリンを素手で往なしていく。俺が触れた箇所からゴブリン達の身体が砂塵を散らすように崩壊していく。

 

 次に向かって来た奴に拳を打つ。そうして触れられた部分に大穴が開き、朽ち果てた。

 

 

これが俺の与えられたチート【破壊】。

 

 

何物をも破壊し、風化させていく。それは散り征く花の如く儚く、錆び征く鉄のように脆くさせる力。

 

 

 仲間達が原因不明の死を遂げて逝くことに、露骨に焦りを見せ始めたゴブリン達。弓を持っていたモノ達が遠距離からの攻撃を図り、矢を放った。

 

 そんな弓矢を私は避けないで受けた。少女の柔い肌が切り裂かれ、血が溢れる。だがしかし、そんな傷もすぐに再生していく。

 舐めプというものだ。

 

 

これが私に分けられたチート【創造】。

 

 

何物をも創り出し、それは傷さえも回復させる力を持つ。万物の法則を無視した力。

 

 

  これこそが彼等のみに許された絶対無敵のイカサマ能力だったのだ。

 

 

 この力は人類の敵にこそ映える。此処がとんでも世界でよかった。こんな力、現実世界じゃ使い道ないだろう、と独りごちる。

 

 ゴブリン達がいた場所に光り輝く石を発見した。拾い上げて見てみると、紫色に輝くソレは宝石のようではあるが、どこか不気味な印象を与えられる。どうやら、これが魔石らしい。

 弱いモンスターだったということもあり、大きさはかなり小さい。

 

 魔石は新たなエネルギー資源。これこそがダンジョンに生きるモノ達の稼ぎとなっているらしい。

 

 リスクはあるが、大量に仕留めることが出来たならば、学生の内に油田を掘り当てたくらいの額にはなるんだとか。それが目当てでダンジョンに潜ってる奴も少なくはないらしい。

 

 別に金が欲しいわけではないが、学園都市で生きていくなら必須だろうと思い、魔石をポケットに詰めた。

 

 

 それよりも、だ。もっと強い奴と戦いたい。俺達のチートが通用しないような相手もいるんじゃないだろうか。より深くに潜ろうと決めた。

 

 

 

 

 

 

 道を阻む、小物のモンスター達の相手をしているうちに開け放たれた場所へとやって来ていた。

 

 血の匂いがする。それも人間の血だ。

 

 此処で何かがあったのは間違いないと踏んで、辺りを捜索する。

 

 

「おーい、誰か居ませんかね〜?っと」

 

 

 誰かがこの声に反応してくれれば良いと思って危険を顧みずに声を上げてみた。

 

 すると、どうだろうか。暗がりの辺りから少女の呻き声が聞こえて来た。咄嗟に足に力を入れ、すぐさまに近寄る。

 

 

 その光景は、酷いモンだった。

 

 

 一人の男は頭部を潰され、どんな顔をしていたかも窺えない。もう一人の男は心臓を一突きにされている。この男は、こんな事をしたモンスターと応戦したのだろう。何箇所も骨折して、紫色に腫れ上がっている。

 

 呻き声がしたんだ、生存者が居るはずだと死体を退かしていく。見つけてあげなければならない。其れが強者の定め。

 

 

 結論から言えば、生存者はいた。

 

 

 死んでいった彼らによって護られるようにして、覆われていた少女。それが唯一の生存者。生きてはいるが、それでも状況は芳しくない。

 

 彼女の四股は辛うじて繋がってはいるものの、引きちぎり損ねたという印象を与えられる。目は濁り切っており、その目は只々死を見つめている。綺麗な顔の持ち主だったことが一目でわかるというのに、今は恐怖で顔が歪んでいた。

 

 

「大丈夫ですよ、私達が来ましたから。貴女のことは、絶対に生きて帰します」

 

 

 言ったでしょ?私達は絶対無敵のイカサマチート持ちだって。生きているなら治してあげられる。それが私の【創造】の絶対力。

 

 これで、傷は癒えたけれど彼女の心は壊れてしまったのかもしれない。流石に、心を癒すような事は出来ない。———もしかしたら、此処で死んでいたほうが………。

 

 そんな馬鹿なことを考えている時だった、背後から大きな足音が聞こえて来たのは。

 

 

「(これが、彼等を殺った存在!?)」

 

 

 ソイツは引き締まった肉体と赤黒い体を持ち合わせた存在。宛ら、鬼のようだった。

 彼らの返り血を受けたのだろう。ポタポタと滴り落ちる鮮血が印象を強める。

 

 今までのソレとは明らかに違う脅威。

 

 ダンジョンが弱肉強食たらしめんとするように、強者は其処に存在する。

 

 

「(コイツはビギナー殺しって感じの野郎だな)」

 

 

 今はお互い睨み合うようにしてジリジリと間を詰めている状態だ。相手も窺っているのだ、俺の力量ってやつを。モンスターの癖に生意気にもね。

 

 一発入れてやれば俺の勝ちなのだ、相手は図体もデカい。それならば先手必勝とばかりに一閃する。———が、しかし、目の前の奴は俺の力を分かっているが如く避けて見せる。

 

 こんなナリだというのに、案外動きもぬらりとしていた。これがモンスター。如何にも、一筋縄とは行かないらしい。

 

 チッと舌打ちをし、構えを取る。育て親である道場のジジイに仕込まれた、武道による其れを。

化け物相手には通用しないかもしれない。それでも、一撃入れてやるなら此の構えでなくてはならない。

 

 

「ウオオオオオオオオオオオオオオオ!!!」

 

 

 鬼の咆哮が、嘶きが、脳を震わせ行動を遅れさせた。これが狙いであったのだろう。奴も一撃で終わらせる気でいたのだ。

 

 一気に此方との間合いを詰め、その馬鹿みたいに太い腕で俺の土手っ腹を貫いて見せた。

 

————見事。………だがしかし、俺達の勝ちは揺るがない。

 

 其れはもう決定事項だったのだ。予定調和だったのだ。七ヶ堂紅白は、身体に穴を開けられたくらいでは死にはしない。

 

 寧ろ、此れを待っていた。相手が間合いを詰めてくるのを待っていたのだ。ぬらりと動く相手の懐に潜り込むために、態と打たせた。ただ、それだけだったのだ。それだけの事だったのだ。

 

 

「———じゃあ、さようなら。」

 

 

 彼等を嬲った鬼は、紅白によって受けた引っ掻き傷から体の【破壊】が始まっていく。灰が宙を舞うように腕から崩壊を始め、やがて核で有る魔石だけを遺して姿を消した。

 

 もう、其処にはハナから何も居なかったと言わんばかりに静寂だけが残された。

 

 

 ま、こんなモンか。幾ら強者と言えど、このくらいなら風紀委員長様も難なく倒して見せただろう。

 

 ゴブリンのモノよりも大きな魔石を拾い上げた。此れが、彼等の心臓なのかは定かではないが、あまり気分の良いモンでもないなと思う。

 

 

 じゃ、生き残りの彼女を連れて帰還するとしますか。勿論、お姫様抱っこで抱えてね?

 

 

 

 

 

 

 

 弱り切った彼女の事は、生活委員を経由して保健委員とやらに任せる事にした。

 

 受付の生活委員の連中は、無傷で帰って来た俺の事を信じられないという風に目を剥いていたが、モンスターに遭遇しないで帰って来ただけだろう。なんて暢気な事を考えてたよ。

 

 まぁ、初日だし此のくらいでいいでしょう。

 

 今日は疲れてしまったので『学生証』を見せて、自分の部屋まで案内してもらった。

 

 此処は、全寮制なのだ。金が掛かりまくってるだけあって、1人一部屋。なんて贅沢な事なんでしょうか。

 

 ようやく着いた自分の部屋。備え付けのベッドくらいしかなくて閑散としている。

 

 

———もう寝てしまおう。明日また、ニノ前ちゃんにでも説明して貰えばいい。

 

 

 そうしてベッドに倒れ込んだのだが、部屋の戸をノックする音で起こされた。此の学園都市で、俺の部屋に訪れるような知り合いはニノ前ちゃんくらいのはずだが…………。

 

 

「あ、あの………夜分遅くにごめんなさい。」

 

 

 俺の部屋に訪れたのは、ダンジョンで助けた少女だった。まだ心細いのか、身を小さく小さくして胸を手で押さえ込んでいる。

 

 彼女の『学生証』を漁ったのだが、確か名前は…………那賀川 勇気(ナカガワ ユウキ)ちゃん。

 

 あの時は死んだような目をしていたが、今は視点がキョロキョロして、ビクビクとしていて可愛いと思う。

 

 

「……あの、一言御礼が言いたくて、保健委員の人に救けてくれた人のことを聞いて来たんです」

「…………ダンジョンでは、救けて頂いてありがとうございました」

 

 

 ふーん、いい娘じゃん。勇気ちゃんは態々俺に礼を言いに来てくれたというわけらしい。

 

 

「………そ、それでお願いがあるんです。ワタシまだ、あの時の事がフラッシュバックしちゃって

———だから、今晩ワタシと一緒に寝てくれませんか!?」

 

 

………………………………!?だ、大胆な女!?女子同士と言っても、こちとら恋愛対象女の子なんですけど!!

 

 今の勇気ちゃんは弱り切っている。付け入るなら今しかない。———で、でも俺は初対面の女と一緒に寝るような軽い女じゃ…………。

 

 

「はい、そうしましょう!!そうですよね、心細いですよね!!女の子同士だから大丈夫です!!合法ですよ!———私に、任せてください♡」

 

 

 

 

 

 ……………どうやら俺の中に居る、もう一人の私は、俺以上に女好きだったらしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




てか、自分で思いつくような設定なんで設定被ってたら教えてください。すぐに消します。
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