二重人格系TS娘が征く、ダンジョン×学園都市モノ 作:ずっと病んでる。
出せるのは、まだまだ先なんだけどね…………。
朝起きた時、隣に儚げな美少女が眠っているモンだからギョッとした。昨晩は全て私の方に任せていたので、俺は知らん!
『童貞だっただけでは?』
…………ど、童貞ちゃうわ!
てな具合に私と一悶着ありまして、勇気ちゃんの様子を覗き見る。彼女は昨晩も魘されていたようで、汗をぐっしょり掻いている。
それでも、私による献身的な寝かし付けは効いたのだろう。幾分かマシな顔になっている。昨日のことはトラウマになっているだろう。もしかしたら、悪夢に苛まれた可能性もある。彼女が一刻も早く、乗り越えられる日が来る事を祈るばかりだ。
そのためなら、俺も助力する気でいる。だ、だって俺たち二人で寝ちゃったわけで………。こんな状態の子を放って置くのも良心が痛む。
「………………んっ。ん〜?……あれ?」
勇気ちゃんが目覚めたようだ。寝起きも悪くない。心理学なんかに精通しているわけでもないが、正気に戻ってからの状況を診て置くべきだろう。
取り乱すのか、現実を直視して絶望に泣き喚くか、もう乗り越えられた、なんてことは無いと思う。仲間を失ったんだ、それに本人だって酷い目に遭った。
………そんな彼女に、今俺がしてやれる事とは。
「———抱き締めてあげることですね!」
私は、寝起きでポヤポヤとしている勇気ちゃんを抱き止める。彼女の頭を自身の胸に持っていって、後頭部を撫でてあげる。昨晩彼女にしてあげたように、眠れない夜に母親がしてくれるような事の真似事を、高校生の歳になる彼女にしてあげる。
「…………いい子ですね、勇気ちゃん。今後、貴女に幸あらんことを祈るばかりです。———そのためなら、私達は貴女のために…。」
「…えっと、あの、紅白さん?ワタシはもう………。———っ!?」
何かを言い掛けた途端に、雰囲気が暗くなる。如何やら、嫌なことを思い出したらしい。きっと大丈夫だとか何とか言おうとしたのだろう。そのせいで、要らない事を思い出すことになったのか。
「俺のことが、名前がわかるか?昨日のことは?昨晩のことは?全部、思い出せるか?」
「……………
え、何その反応。昨晩なんかあったの?俺の意識は閉ざしてたから記憶が無い。私と記憶の共有を行えば良い事ではあるのだが、怖いのでやめとこう。
其れよりも、彼女は全部覚えているらしかった。不都合な記憶は忘れる事も大切だが、覚えていなければ話が進まない。勇気ちゃんには悪いが、これからは戒めとして生きるしか無いのだ。
「勇気ちゃんは、これから如何したい?」
「……………………ワタシは。………紅白さん、貴女と一緒に生きて行きたい、よ。」
ん"ん"っ〜〜〜〜!?
卑しか女ばい、
「…足手纏いになるのも、わかってる。貴女は、ワタシ達が勝てなかったモンスターにも勝てるような強い人だって事も知ってる。」
「———それでも、どうかワタシを死に損ないのワタシと一緒に居てください。」
此れが、彼女の誠心誠意。本心。精一杯搾り出した答え。それを彼女が望むというのなら、烏滸がましくも与える側に回ってみよう。
「———あぁ、此方こそ頼んだよ勇気ちゃん。なんなら、もう俺達がキミのことを離さない。離してやらない。」
彼女は、顔をグシャグシャにして泣き出した。童が漏らすような、心の底からの感涙。
あ〜あ、これでは彼女の目元が腫れていくではないか。彼女の顔を拭ってやって、背中を摩る。
彼女と共に生きて行くというのなら、学園都市での身の振り方を考えねばならないな。これ以上の不幸を味合わせるわけには、いかないわけで。
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備え付け時計を見ると、丁度7時だった。というか、俺まだこの学園都市の事何にも知らないな。
だいぶ落ち着いて来た勇気ちゃんから聞き出す手もあるのだが、負担は掛けさせたくたい。
…………こんな時ニノ前ちゃんが来てくれれば———おっと、朝っぱらから部屋をノックする音だ。勇気ちゃんは隣に居るし、となると…。
「……あの、七ヶ堂さん!居るんですよね!?帰って来てますよね!?………お願い。」
お、この声はニノ前ちゃん!グッドタイミングだ。扉を開けてやると、不安そうな顔で俯いたニノ前ちゃんが立っていた。
「………七ヶ堂、さん?———良かったです!」
俺を視認したニノ前ちゃんの顔がパーッと明るくなって、抱きついて来た。
………………抱きついて来た?抱きついて来た!?えー!?この子も、こんな大胆な子だったのか!?嘘だろ!?…………あ、いい匂いする。
「……………良かった、よかったよぉ……。
不安だったんですよ?……帰って来てないんじゃないかって。自分の力を過信してダンジョンで其の儘ってケースもあるんですからね?私、ずっと怖かったんです。顔も見せに来てくれなかったから心配で心配で…………。」
「帰ってから何も言いに行かなかったのは悪かったけど、俺、ニノ前ちゃんの部屋知らないし……。」
「あっ。……………………………ごめんなさい。」
ニノ前ちゃんが、そっと胸元から離れて行く。少し名残惜しいが、取り乱していた末の行為であったのだろう。女子同士のハグなんて普通だって言うし。———うん、たぶんそうだな!
ニノ前ちゃんと遣り取りしていると、不意に俺のシャツをグイグイと引っ張られていることに気づいた。
振り返って見れば、勇気ちゃんがシャツの端を持っている。不安気な表情を浮かべて、捨てられた子犬みたいな顔を向けられたモンだから構ってやりたくなった。
「———大丈夫ですよ、勇気ちゃん。貴女の紅白は何処にも消えたりしませんから!」
ふんすふんす、と自信一杯に鼻を鳴らした。この子が必要としてくれるのなら、負けるわけにはいかない。
———たとえ此処が、前人未到の弱肉強食であるダンジョンを兼ねた『学園都市アヴァロニア』だったとしても。
それならば、まずは学園都市の事を知らなければならないわけです。
「ニノ前ちゃん、丁度良い所に来ましたね。貴女を必要としていたんですよ?」
「………ふぇっ?私、ですか?——はい!私に出来ることなら尽力致しますよ!それが我々サポーターの役目ですから!」
「そうと決まれば、まずは朝食に行きましょうか。私の後ろの彼女についても紹介したいんです。———友人であるニノ前ちゃんに、ね?」
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俺達は、腹拵えと状況を説明する為に、食堂へと場所を移した。
此処、『学園都市アヴァロニア』では商業区へと足を運べばレストランやファストフード店といったサービスも受けられる。
まぁソレは、ダンジョンで稼いでる奴やサポートでそれなりの実績を出してる奴等が対象であるらしい。
それでも、中には日銭を稼ぐことすら精一杯の人間もいるわけで。日銭を稼ぐ事すら出来ない奴でも、人間は食わなければ生きてはいけないわけで。
そんな人間向けに寮に併設されているのが、今来ている『学生食堂』であった。これは何とも学生らしいモンだね。
学食でなら、低額でお腹を満たすことが出来るらしい。だからだろう、想像以上に人々で溢れている。救済目的でもある学食に頼らざるを得ない人々を、こんなにも抱え込んでいるようだ。それでも、此処に世話になっている人物は一握りだって言うんだから不思議なモンだね。
学園都市には、学食にいる人数の何百倍もの学生が居るんだとか。
俺も注文してみた『鮭の塩焼き定食』を口に運んでみる。見掛けは普通の鮭の塩焼き。鮭の身だって固くなく、箸を入れれば直ぐに解れた。味も悪くはない。ボリュームだって、それなりにある。この値段であれば、安いくらいだろう。
「(成程、これなら育ち盛りの人間が飢え死にするようなことはない。………まぁ、ダンジョン以外で死なれちゃ困るってわけか。)」
「此処は、自給自足ですからね。自分で稼がなきゃ碌なサービスも受けられません。だけど、学食だけは別です。此れがあるから、私のような人もお腹を空かしたりはしない。」
「———それでも、学食にすら来れないような人々もいるんです。………落ちこぼれは此処じゃ死を待つしかない。」
学食を救いとするニノ前ちゃんと、そんな言葉を痛烈な表情で否定する勇気ちゃん。
彼女達は見て来たのだろう。味わって来たのだろう。此の学園都市の闇を。だからこそ言えるのだ。此処では弱者に救済はないのだと。低額でサービスを受けれると言ったって稼げないような人間は対象外なのだと言うことを。
自分の考えを打ち破られたようだ。此処じゃあ、ダンジョン以外で死ぬような事が無いとも言い切れないらしい。
———いや、即ちダンジョンが全てなのだろう。結果を残せなければ生きて行けないということなのだろう。
「……ニノ前ちゃんに紹介するのが遅れましたね。此方は那賀川勇気ちゃん。ダンジョンの中で知り合ったんです」
私がニノ前ちゃんに紹介すると、勇気ちゃんはペコリと一礼するだけだった。
先程の一件のせいか、敵視している節があるらしい。私は友人である二人にも仲良くして欲しくはあるが、馬が合わないなら仕方ない。この対応を見るに、勇気ちゃんは日銭を稼ぐのにも苦労していたのかもしれない。
「あの、
「———はいはい、もう暗い話は無しで!折角ご飯食べてるんだから不味くなるような話は終わりにしよう」
というか、ニノ前ちゃんの下の名前は駒奈というらしい。案内係の時は教えては貰えなかったが今朝知ることが出来たので良しとしよう。
いつか駒奈ちゃんって呼ぶことにする。
暗い話は中断させて、知りたいことを聞くことにしよう。例えばそう———魔石の換金とか、ね?
「ニノ前ちゃん、魔石を換金したいんだが、どうすればいいんだい?」
「———七ヶ堂さん、昨日モンスターを倒したんですか!?」
物凄く驚かせてしまったようだ。
するってぇとなんだ、ニノ前ちゃんは俺が倒せるとすら思って居なかったってこと〜???
「初日は大抵ダンジョンの空気に怖気付いて、腰を抜かせて帰って来るんですよ。だから、パーティーを組んだり対策を組んだりするんです。」
「……だから、すぐ帰って来るだろうと思って昨日も待ってたんですけど帰って来なかったから。……死んだんじゃないかって。見殺しにしてしまったんじゃないかって。」
「……………そうなんだ。七ヶ堂さんは強い人、だったんですね」
滅茶苦茶悪い事してしまった気分になる。罪悪感とか、あーいうやつがする。しかし、ダンジョンを進んだから勇気ちゃんを救けられたわけだし仕方無し。
「魔石の換金ですね!換金所に案内しますよ」
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食事を済ませた俺達が、次に向かったのは生活委員が運営するという換金所。
この学園都市、大抵のことは『生活委員会』が裏方の運営に関わっているらしい。生活委員に所属していれば、仕事が回されて来て生活出来るくらいの賃金も貰えるらしいのだが、俺には縁の無い話かもね。
換金所の受付で、生活委員の担当者に昨日集めた魔石と、学生証を提示した。魔石で得たお金や実績が、学生証に記録されていくんだとか。本当とんでもなく便利だね。
そして、昨日の魔石が幾らになったかと言うと、なんと"3万円"。
昨日ので3万円って凄くね?これ本当に学生の内に油田掘り当てるくらいの額に成りかねないな。
転入初日で、オーガを倒したとかで騒がれもしたが、栄光だとか名声だとかに興味が無かったモンだから適当に流して置く。
ニノ前ちゃんも、勇気ちゃんも凄いことなんだと言ってくれたが、俺ってただチート使ってるだけの下衆だしなぁ……。
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そんなこんなで今は換金所を出て、商業区をぶらりとしている。
勇気ちゃんは、心細いのか俺と手を繋ぎたがっていたので手を繋いで並んでいる。側から見たらカップルみたいだね、なんて。
「七ヶ堂さんなら学年トップも狙えますよ!」
ニノ前ちゃんが囃し立ててくれるのだが、学年トップとかいう肩書き、凄い面倒くさそう。今はただ、勇気ちゃんと生きて行ければいいのだが……。
思索に耽っていると、前の人混みが割れて、自分に続く道が出来た。さながら、モーセの海割りのように。そんな道を歩いて、此方にやって来た人物。帯刀しており、スカートから伸びるタイツに包まれた脚がすらりと伸びている。
俺は、私は、この人物を知っている。
「(———風紀委員長、
自惚れでも無ければ、自分の元へと真っ直ぐに向かって来ている。何の用があって?其れよりも、彼女が纏う闘気は商業区で放って良いモンじゃない。
周りの生徒が露骨に騒めき出す。手を繋いでいる勇気ちゃんが、より強く握り締めた。ニノ前ちゃんだって唖然としている。異様な光景。
「漸く見つけたぞ、期待のルーキー七ヶ堂紅白。———貴様の実力、本物かどうか見せてもらう!!」
どうやら風紀委員長様の、お目当ての人物とは俺だったらしい。
感想、評価等いただけると筆が進みそうです。
無理矢理の決闘は、学園都市あるあるです。
次は勇気ちゃんの視点になりそうなので、先輩と相見えるのは次の次になりそう……。独自の設定ばっかりで説明回が続きそうですが、何処かの作品で見たようなツギハギ設定なんで入りやすいかと。要望があれば、設定集として纏めて出します
引き続き、大きな設定被りありましたら報告お願いします。即刻削除いたしますので。