HELL TAXI   作:RPM

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ミスファイア

 

 

 

「ありがとうございました~、またご利用下さい。」

 

 

客を降ろして一息つくタクシードライバーの男。

 

その名は武六賢人(むろけんと)、しかしこれは偽名である。

 

 

彼は中東のある国で産まれ幼少の頃から、

パリ・ダカールラリーを間近に見て育った。

 

そして自らもレーシングドライバーに憧れを抱くが、

国の情勢が不安定でありテロ行為に手を染めていた。

 

 

そんな中戦場で出会った、

日本人の傭兵の伝手で日本へと渡る。

 

仕事でもハンドルを握っていたいという思いと、

ターマック(舗装路)の練習を兼ねて個人タクシーをやっている。

 

 

日本語に関しては元々独学で勉強しており、

難しい漢字の読み書き以外なら問題ない程度には習得していた。

 

というのも彼は元々日本への憧れが強かった。

 

優秀なクルマを数多く輩出している日本、

ラリー界でもその活躍は有名である。

 

 

 

と、そこへ無線が入った。

 

 

『ハロー、賢ちゃん。今暇?』

 

 

無線の相手は彼を日本に連れて来た傭兵の男。

日本に来てからは私立探偵をやっている。

 

 

『ちょうど一人運んだ所だ、何かあった?』

 

『んじゃ仕事締めて事務所に来てくれ、新しい以来だ。』

 

『了解。』

 

 

フロントウインドウの表示を「回送」にし、

今日の売り上げなどをまとめて締める。

 

 

個人タクシーに改造されたスポーツワゴン、

トヨタカルディナGT-FOUR。

 

見た目は普通のカルディナだが、

WRCで活躍したセリカと同じエンジン、

駆動系を持つ限定グレードである。

 

 

傭兵の男の知り合いの店でチューニングされ、

パワーは約400馬力。

 

さらにアンチラグシステムも作動出来る。

 

タクシーであるため快適装備が多く重量はかさむが、

緊急時に街をかっ飛ぶには充分なスペックだろう。

 

 

(急ぎとは言われてないけど一応な)

 

 

タクシーの仕事の際はパワーリミッターをONにし、

マフラーの音を抑えて快適性を重視している。

 

抑えていたパワー解放し、

アンチラグシステムもONにする。

 

 

パァン! パンパン!

 

(作動確認OK、行くぞ)

 

 

見た目とは似つかわしくない重低音と、

アンチラグ特有の銃声のようなバックファイヤーを轟かせながら探偵事務所に向かう。

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

倉池探偵事務所。

 

 

「よう、飛ばして来たな。」

 

事務所に到着すると、

元傭兵の探偵倉池瀬南(くらちせな)とツナギの男が居た。

 

 

「あれ?もしかして依頼主って?」

 

「そう、俺だ。」

 

 

カルディナの手配、及びチューニングをしてくれた、

ツナギの男稀井豪(まれいごう)からの依頼だった。

 

 

豪はチューナーでもあるが車の解体工場を営んでいる。

 

廃車から生きている部分同士を組み合わせることで、

安価に高性能なマシンを作る狙いがある。

 

 

しかし最近、近所で怪しい外国人集団がうろついているとの事だった。

 

 

「まぁまだ実害は出てないけど、

もし窃盗団だったらと思ってな。」

 

「アンタには世話になっているからな、

とりあえず周辺の見回りでもしておくか?」

 

「そうだな、それで頼む。」

 

「外国人窃盗団は密輸した武器を持ってるって噂もあるし、俺達が適任だろう。」

 

 

武器は瀬南が傭兵時代の伝手で手配し、

賢人はタクシーの仕事の合間に見回りに来る。

 

という話にまとまった。

 

 





名前の元ネタ、

武六賢人→ケン・ブロック

倉池瀬南→クラッチ、アイルトン・セナ

稀井豪→ゴードン・マーレイ

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