水無月空は夢から醒めない 作:ゲーミング
精霊システム起動、次弾着弾距離12000(なにが?)今!
何だか無性にイライラする。伊達眼鏡のレンズには風先輩や友奈達の名前。その下に花のアイコンと0と100の数字。
爆発を受けたダメージは何も無かった。勇者を守るシステムって言うなら、これは防御用の何かって事なんだろう。
俺バフとかそう言うの撒くの苦手なんだけど。基本レベルを上げて物理でごり押す人だから、繊細なバッファーは出来ないんだぞ。
「……空!あんた勝手に」
「やって見なきゃ分かんない事あったでしょ!俺無傷ですよ!精霊システムの使用方法は分かったんで次何したら良いですか!今頭真っ白なんでちょっと冷静な思考出来そうに無いです!」
「〜〜〜!取り敢えず樹達は逃げて!私とあのバカで対処するから!」
「で、でもお姉ちゃん!」
この状況で俺怒られるってなんだよ。いや独断でやったからなんだろうけど。
でも何とかなったし、なんとかなるって確信があったからやったんだけど……あ、また爆弾飛ばされてね?
乙女座の身体からまた爆弾が発射される。ポコポコ爆弾産んでる姿見させられるって中々反応に困る。
「風先輩風先輩!」
「今度はなに!」
「爆弾来てます!助けてくださいっ!」
「なんで変身した!?あーもう!私も変身するからちょい待って!」
ノリと勢いで変身しました。どうも水無月空です。お母さんが何事もノリと勢いで解決出来るって言ってたから……。
風先輩の居た場所から眩い光が俺の眼球を焼くが、取り敢えず迫る爆弾を体当たりでどうにかしていく。
このシールド凄い。半透明な球体に包まれてるのは分かるし、シールド硬いから何も痛くは無いけど目の前で爆発されるとやっぱ怖いのよ。あ、また爆弾来るっ。
「オラァ!空お待たせ!待った?」
爆弾を風先輩が両断した。真っ二つにされた爆弾は時間差で俺を巻き込んで爆発したとさ。背中打って痛い、なんでさ。
後風先輩さ、自分の身長以上にデカい大剣振り回してるのヤバくない?俺より力あるよ絶対。
「いや全然待ちましたけど?なにデート気分で来てるんですか。神樹守る為の戦いなのにそう言う浮かれ気分で来られるの困るんですよね」
「1回ボケたら100ツッコミ入れるのどうにかしなさい!私にもそのシールド貼れるでしょ?行くわよ!」
ボケにはツッコミ必須だよ。と言うか俺はボケてたい人なのにツッコミに回らないといけないのどうにかなんねぇかな。
「うおなんか出た!?」
「ソレが精霊システムの要、精霊よ。私の場合……犬神ね。可愛い」
「俺の精霊何処?シールドしか出てないけど」
「……さぁ?精霊一体につき貼れる精霊バリアは1つまでって聞いてるし。耐久値とかは……無いと思うけど。大赦からの説明もヤケに回りくどくて分かり辛かったから説明は無しで行くわよ!」
「なんったるアバウト!だからモテないんですよ!」
「あぁ!?も、もももモテてるし!」
風先輩がモテてるのは解釈違いなんで。でも耐久値が無いならなんで数字が付いてんだ?これもしかして本当にバフだったりするのか?俺の数字0になってるけど、風先輩のは100になってる……良く分かんないな。
「……風先輩風先輩」
「今度はなに。はっ……空アンタ助けてくれた歳上の女の子に心をうばわ」
「いや、ボケても良いですけど、爆弾来てますよ。たっくさん」
「え?……うわぁ」
俺が指差す方を見た風先輩は黙った。
頼りになる時とならない時の差が激しくて風邪引いちゃいそうです風先輩。
精霊バリアとやらに耐久値は無いらしいからぶっちゃけ爆弾当たってもメンタル的ダメージしかないのは、良いのか悪いのか。
目の前に3個以上の爆弾が迫る。3以上は全部沢山だからね。冷静に数えてる時間なんてねぇよ。
「……空」
「なんです?ちょっと話してる暇無さそうですけど」
「アレに体当たりして来てくれる?」
「何考えてんだよお前はよぉ!?俺助けを求めたのになんでバンザイ特攻させられそうになってんだ!?」
「流石にあの数斬るのはムリでしょ!私勇者だから!守って!」
「守って貰おうとする判断が早いっ!!」
精霊バリアの耐久値無限なんでしょ!?俺精霊とか出てないからワンチャン耐久値ある気がするけど、そこら辺は度外視なんですか!?やってらんねぇよこの仕事。友奈助けて。
とは思いつつ、風先輩は大剣構えて守ろうとはしてくれてるし、俺も体当たりして爆弾をどうにかして此処で食い止めるしか無い。
1人で3個以上体当たりして爆発させれば行けるか……?
頭の中の王子様が囁いてくれた所で、何処からか伸びて来た糸が爆弾を斬り裂いて行った。爆弾処理班来たわ。
「お姉ちゃん!」
「いつ、樹!?何で変身して……」
「ついて行くから!絶対、ぜっったいについて行くから!」
「……取り敢えず精霊バリア起動させるわ。樹ちゃんに怪我させらんねぇよ」
「あ、ありがとうございます空先輩……」
「危なくなったら何時でも盾にしていいからな?初めての変身で緊張してないか?大丈夫?こう言うの初めてでしょ?」
「え、あ、え?えっと、はい!私頑張ります!」
癒し。樹ちゃんは癒しだ。この子の為なら俺はあの爆弾が例え海の様に押し寄せて来ても守り通してみせる。
「私は!?空私は!?守ってくれないの?」
「風先輩のはもう精霊バリア起動させたでしょ!?戦闘中なのに空気がさっきから勇者部での日常会話なんだよ!もうちょっと真面目にやろうぜ!?」
「あ、ははは……なんだか緊張してたのバカみたいだ私……」
変身ヒーローとかに憧れは無かったけど、実際自分が変身ヒーローみたいになってると思ったらちょっと楽しいんだよ。
もっと背中預け合う仲間的な会話したいのにしてる会話が日常会話なのバグか何かだろ。
この状況で日常会話ぶっ込んでこれるの本当に凄いな風先輩。
「……讃州中学勇者部!行くわよっ!」
「精一杯のキメ顔してまとめに入っても俺のモチベは上がりませんからね」
「頑張りましょうね空先輩!」
「やる気出て来たぁ!!!」
「空ぁぁあ!!!」
コレが姉妹の差……って奴か。なんて我ながら良く分からない事を考えていながら、この場にいない友奈と東郷に思考を寄せる。
爆弾を1つでも通したら此処に居ない友奈達に向かって行くかもしれないから。
それはダメだ。絶対に、絶対に俺が守らないと。強迫観念にも似た想いが喉を引き裂いて飛び出しそうになるが、それを飲み込み頭に過った嫌な想像を吹き飛ばし、俺達は乙女座の元へ走って行った。
◆❖◇◇❖◆
風先輩と樹ちゃんの後ろを着いて行く形で樹海を走り抜ける。二人の後ろより前に居たいんだけど、既に背中を追い掛けてるのが定位置になりつつある。
と言うかぜんっぜん追い付けないんですけど。
精霊システムって勇者の劣化版なのでは?攻撃手段は武器とか見えないから、体当たりしかないし、変身系だから衣服が変わって身体能力向上すると思ったら、俺の変身はいつもの学生服に変な着物羽織らされてるだけだし。
身体能力向上はしてるんだろうけど、倍率は勇者と全然違う感覚がしてる。
目の前に迫る爆弾を樹ちゃんと風先輩が的確に処理して行く。俺の体当たりの出番は無さそうだ。
ひたすら真っ直ぐ歪んだ地面と言うか、木の根っこを足場に乙女座に近付いていると、途中で1番前を走っていた風先輩が立ち止まった。
「一応補足だけど、乙女座と言うか、バーテックス本体を倒すには弱点を潰さないといけないの。その弱点はアイツの身体の中にあって、名前は御霊。それを引きずり出す為の儀式があるの」
「……で、どうすれば良いんですか」
「アプリに書いてあると思う」
「説明放棄するの辞めろよな!」
「べ、別に放棄したい訳じゃないわよ!?」
「け、喧嘩しないで!?」
神妙な顔して話し始めたから大事な話だと思って聞いてたら最後の最後でアプリに書いてありますってハシゴの外し方えぐすんぎ。
後樹ちゃん、別に喧嘩してないから大丈夫だよ。
一先ず乙女座の爆撃が落ち着いたタイミングで精霊アプリを確認すると、確かに【封印の義】と書かれたモノは見付けた。
これ読めば良いの?って事は俺が読んで樹ちゃんと風先輩の2人でその弱点部位殴れば終わりって事か。
「じゃあ行きますか!」
「因みにコレ空1人が読んでも御霊出て来ないわよ」
「はぁ!?」
非戦闘員立ち位置になってる俺が儀式やってその間に相手潰すんじゃないの!?何考えてんだ神樹ゥ!
「樹と2人で読みなさい。それで何とか御霊は引きずり出せる筈だから」
「……色々言いたいし聞きたい事有るけど、全部終わってからっすね」
「ごめんね空。そうしてくれると助かるわ」
俺の見た悪夢の続きがどうなってたかは知らないけれど、この現実だけは何としてでも間違えない。
風先輩が樹ちゃんと一言だけ言葉を交わして樹海の影から俺達は身体を出した。
その瞬間、俺達の目の前は真っ白になった。
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知らない内に評価8点入っててびっくりしたけど。
次回予告のネタと書くカロリー無いんでおやすみです。