やめろラモーヌ……!! トレーナーを狂わせるな……!!(勝手に狂ってる
(ああ、彼女はレースを辞めるのか……)
レースが終わり、彼女(レモーヌ)が地下バ道に戻ってきた顔で、付き合いの長い僕にはそれがわかった。
彼女はレースの勝敗にあまり拘らない。レースを愛しぬく。ただそれのために彼女はターフを駆け続けた。史上初のトリプルティアラを達成し、シンボリルドルフ、ミスターシービーの二人にも勝った『魔性の青鹿毛』はレースで走ることに拘った。
年下のメジロ家のウマ娘も引退して結婚しているにも関わらず、彼女はターフを愛し続けた。ピークは過去に過ぎ去り、過去のラモーヌであれば圧勝できた相手にも負け始め、メディアだけならずURAからも引退を薦められても彼女はあくまでターフで駆けることに拘った。
僕のところにもラモーヌを引退させ、後進を育てるべきだという意見、時には暴言も吐かれたことがある。
だけど僕は一度もラモーヌに引退を薦めたことがない。
当然だ。ラモーヌがターフを愛しているように僕もまたレースで走る彼女を愛していた。
しかし、老いたとはいえ彼女ほどの実績を持つウマ娘を出させてくれるレースは少ない。なんだかんだ言われても選ばれる有馬記念を除けば、一年に2レース出れればいいほうだ。
しかし、今回のレースはそんな重賞なレースじゃない。どちらかと言えばこれから重賞に出るのを目指すウマ娘が出るようなレースだ。
ラモーヌが最初にこのレースに出たいと言った時は彼女なりの冗談だと思った。だが、彼女の顔をみてすぐに考えを改めた。
その表情はシンボリルドルフとミスターシービーとのレースの時の表情だったからだ。
それから僕は即座にそのレースにラモーヌの出走登録をした。レースの係員から冗談だと笑われ、本気だと言ったらやめてくださいと懇願された。だが、ラモーヌのあの本気の目をみた僕は引き下がれなかった。
URAの重役のところに乗り込み、ラモーヌをそのレースに出させて欲しいと土下座をしていた。
URAの中では僕のトレーナーとしての評判はそれなりに高い。ラモーヌを史上初のトリプルティアラに導いたのもそうだし、受け持ったチームのウマ娘達もそれなりに成績を残している。
そんな僕の土下座にURAの重役達も重かった首を縦に振った。
レース前の準備室。そこでG1レースじゃないために勝負服ではなく体操服にブルマ姿とラモーヌは上機嫌に笑っていた。「昔を思い出すわね」と言った軽口まで飛んできたのだ。
そしてラモーヌをパドックに送り出すのと一緒にパドックに出て他のウマ娘を見た。
その中にいたのだ。ラモーヌがこのレースに出たいと言った理由のウマ娘が。
他のウマ娘がラモーヌに気圧される中、そのウマ娘だけはまっすぐにラモーヌを見つめていた。
そして始まるレース。最後の直線はラモーヌとそのウマ娘の一騎打ち状態になった。
ラモーヌがピークを過ぎている? いや、このレースの彼女はピークの時の彼女をこえていた。
だが、勝ったのはそんな『魔性の青鹿毛』を振り切ったそのウマ娘であった。
大歓声を受けて呆然とするそのウマ娘を見て微笑んでいるラモーヌをみて、僕は一足先に地下バ道へと戻った。
そしてターフから戻ってきたラモーヌをみて確信したのだ。
「あら、何故貴方が泣いているの?」
ラモーヌの言葉に僕は自分が泣いていることに気づく。
「私がトリプルティアラを達成したときも、ルドルフとシービーに勝ったときも笑いはしても泣かなかった貴方が……何故泣くの?」
ラモーヌの言葉に僕は涙を袖で拭うと真剣な顔で彼女に告げる。
「君のレースがもう見れないと思って」
僕の言葉にラモーヌは少し驚いた表情になったが、すぐに笑った。
「貴方にはお見通しね」
「もう何年の付き合いだと思っているんだ」
最初に彼女のトレーナーになったのは彼女の思い付き。彼女にとってレースに出れれば良かったから最初に声をかけてきたトレーナーを選んだだけ。
だが、そこから僕は彼女に認められ、一緒にここまでやってきた。
ラモーヌは愛するレースのために。僕はラモーヌが走るレースをみたいために。
ラモーヌは郷愁に浸るようにターフのほうを見る。
「私はまだターフを愛している。でもターフは次の恋人を見つけたみたいだわ」
「でもまだ縋り付くことはできる」
僕の言葉にラモーヌは美しく笑った。
「それ駄目よ。それはもう愛とは呼べないわ」
他にも彼女を説得するための言葉は浮かんだ。
だが僕はその全てを飲み込んだ。
それを言っても彼女を翻意させることはできないし、何より彼女の覚悟を汚してしまうような気がして。
「さ、行きましょうトレーナー」
「ら、ラモーヌさん!!」
僕を連れて去ろうとしらラモーヌを呼び止めたのは、まさしく今日の勝利者であるウマ娘。
デアリングタクト。
それがラモーヌを破った彼女の名前。
デアリングタクトのほうをみて微笑むラモーヌ。その表情をみて色々と口にしようとしていたが、言葉にならないデアリングタクト。そしてデアリングタクトは勢いよく頭を下げた。
「ありがとうございました!!」
デアリングタクトの言葉にラモーヌは満足そうに笑った。
「貴女、よくってよ」
それだけ言い残すとラモーヌは立ち去っていく。その後ろ姿をみることなくデアリングタクトは頭を下げ続けるのであった。
ウマ娘新聞号外『初代トリプルティアラ・メジロラモーヌ。ついに引退!!』
(これはどういうことだ?)
僕は混乱している脳みそを必死に働かせる。
隣には優雅に紅茶を飲んでいるつい先日引退したばかりのメジロラモーヌ。僕とラモーヌの向かい側にはメジロ家のおばあさま。扉の少し空いた隙間から除いている子供ウマ娘はたしかラモーヌの妹のアルダンの娘だったはずだ。
ラモーヌの引退会見などが一段落つき、トレセン学園で仕事をしていた僕は突如現れたラモーヌによってメジロ家へ連れてこられていた。
僕をみていたメジロ家のおばあさまは優雅に紅茶を飲んでいるラモーヌに話しかける。
「ラモーヌ、私は結婚相手がいるなら連れてきなさいと言ったはずですが」
「ぶふぅ!!」
おばあさまの言葉に思わず僕は吹き出してしまった。メジロのおばあさまの言いたいことはわかる。メジロ家にとってラモーヌは特別だ。次世代のメジロのためにはやく引退して子供をなせと言っていたのはこのおばあさまだ。
その言葉をフルシカトしてレースに出続けていたのが僕の隣に座っているラモーヌだ。
引退したから結婚しなさい。おばあさまの言葉だろう。そしてもし相手がいるなら連れてきなさい。これもきっとこのおばあさまならいうはずだ。
そして連れてきたのが自分の担当トレーナーだった。
「やっぱりラモーヌがおかしいよね!!」
思わず立ち上がってしまったが、まぁ誤差だ。何の前触れもなく担当バに結婚相手として実家に連れていかれたらこんな反応になる。
「あら、おかしいかしら?」
「いや、おかしいでしょ。メジロのおばあさまは結婚相手を連れて来いって言ったんだから」
「だって貴方、私を愛しているでしょう」
「もちろん、君を愛している」
ラモーヌの言葉に僕は全力で頷く。彼女のことを愛しているのは間違いない。
僕の言葉にラモーヌは満足そうに頷く。
「なら問題ないでしょう。結婚しましょう」
「いや、そんな女性の一生を左右するようなことを軽く……おばあさまも何かおっしゃってください」
「ふむ……」
そう言っておばあさまは何やら資料のようなものに目を通す。そして僕をみて頷いた。
「メジロ家の婿として文句ないですね」
「いや!! そうじゃなくてですね!!」
「落ち着きなさいトレーナー」
ラモーヌに言われてしまったので僕はとりあえずソファーに座って紅茶を一口飲む。
「私とトレーナーは長い付き合いだから色々わかっているわ。貴方のレースにかける情熱。私に向けたひたむきな愛。それらは全て好ましいもの」
ラモーヌに直接言われたことないので少し照れる。
「そして彼女いない歴=年齢だし童貞だということもわかっているわ」
「ど! どどどどど童貞ちゃうわ!!!」
「安心なさい。私も処女だから釣り合いがとれているわ」
そういう問題だろうか。
「じゃあ逆に聞くのだけれど」
そう言ってラモーヌは微笑みながら首を傾げる。
「私以上に貴方のレースの情熱を受け入れてくれる女性いるかしら?」
ラモーヌの言葉に僕の動きはぴたりと止まる。
「平日休日関係なくレース場に足を運び、つきっきりでウマ娘の指導をする」
そこまで言ってラモーヌは美しく微笑んだ。
「私以外にそれを許しくれる人がいると思って? なんだったら私は一緒に指導もするわよ」
「きみ、そっちが本命だろ」
僕の傍にいて新しいレースに賭けるウマ娘を育成する。それが狙いだ。
「安心しなさい、私はきちんと貴方も愛するわ」
そこまで言われて僕は腕を組んでラモーヌと結婚することを考える。
仕事(レース)問題なし。趣味(レース)問題なしetc……
「あれ!? ラモーヌと結婚しても問題ないな!?」
「じゃあおばあさま。そういうことで」
「わかりました」
「あ!? 何か話が勝手に進んでる!?」
ウマ娘新聞号外『初代トリプルティアラ・メジロラモーヌ電撃結婚!! お相手は長年彼女を支え続けた担当トレーナー!?』
ラモトレ
ラモーヌのために尽くしていたらメジロ家入りしたトレーナー。アラサー童貞。
メジロラモーヌ
ターフを愛し、レースを愛するウマ娘。
デアリングタクト
きっと温泉に入りながらインタビューに答える取材がある。
そんな感じでメジロラモーヌ編です。
デザインでたときから一目惚れして絶対にひくために普段は滅多にしないガチャ禁して天井まで石を貯めたメジロラモーヌ。
そして20連でやってきたラモーヌに素で唖然としました。
本当にめっちゃ好きなメジロラモーヌ。ストーリーの最後にデアリングタクトちゃん出してくれたのもポイント高かったです(デアリングタクトも好き
ラモーヌの話としては前半だけで終わっても良かったんですが、トレーナーとラモーヌを結婚させたかったので後半書きました(開き直り