四宮天羽の喜劇観賞 作:緋色
無理だった
「四宮天羽。呼び出しに応じて参上しました。顔は見せたので帰ります」
「帰るな。茶飲み話ぐらい付き合え」
四宮雁庵
四宮グループ総帥を務める祖父。強引な経営手腕と人間に利益と恐怖で支配する昭和を代表する海千山千の怪物である。
「将棋でも打ちながらなら付き合いますよ」
「ふむ。用意しろ。一局と言わず十局はやるか?」
「流石にそこまでは頭が疲れすぎるので嫌です」
「そうか」
数分もしないうちに整えられた将棋盤を挟みながら雑談を連ねる。
「最近調子がいいと聞くぞ」
カチッ
「どの調子ですかね?いくつか関わってるプロジェクトの話ですかね?それとも部活の話ですか?」
カチッ
「それは結果次第だな」
カチッ
「ではどのことで?」
カチッ
「四条家の娘と仲だ」
カチッ
「振られ続きで調子がいいわけじゃないのですが」
カチッ
「俺の世代では割れたばかりで険悪。黄光の世代である程度風化すると睨んでたが結局は睨み合っての潰し合い間際だ」
カチッ
「……」
カチッ
「かぐやとは少々仲悪いみたいだが。全体的に見れば無駄に睨み合った状況を改善するいい機会だろ」
カチッ
「そう思うなら雲鷹おじさんどうにかして下さいよ。あの人あっちこっちで鼠呼ばわりして四宮VS四条の空気づくりの一環になってるんですから」
カチッ
「黄光に任せてたんだがなあ。あいつはちょっと優しすぎる。強引さが足りねえ。兄弟ぐらいちゃんと従えろっての」
カチッ
「今はもう令和だぞジジイ。昭和の価値観で大丈夫なのですか?」
カチッ
「青龍は責任感0で遊び惚けるし、雲鷹は拗らせてるし」
カチッ
「ジジイの育成失敗してるじゃねえか。というか聞いてる?」
カチッ
「適度に距離取ってた孫が一番マシなんじゃねえかと思ってな」
カチッ
「記憶だとほぼ毎日遊びに来てたアレが適度?」
カチッ
「まあそこは置いとけ。で、どうだ?さっさと総帥にならんか?」
カチッ
「お小遣い感覚で渡されても困るんだけど?」
カチッ
「いらねえのか?」
カチッ
「欲しくなったら自分で奪うからいらねえ」
カチッ
「そうか。王手」
カチッ
「え?いつの間にかどうあがいても詰む……」
「まだまだ若い。その気になっても奪えなさそうだな」
「どういうことだよジジイ」
「若いだけの万能感では何もなせんという事だ」
「え?若い頃暴れ回ってたジジイにだけは言われたくない説教なんだけど?バラバラになりかけた四宮どころかいろんな分野に手を出して傘下増やしていったヤクザにだけは言われたくないんですけど」
あ、ジジイがずっこけた。
「どこでそれを―」
「酒に酔ったジジイが自慢ループしてたから」
「俺かー」
軽く頭を抱えているジジイだが、あの時代だからこそ出来た事であり今の時代じゃ無理そうなことも多々ある。というか現代の情報拡散力が洒落にならん。
「天羽も言ったが今じゃ時代も違う。参考にはしてもマネはするなよ」
「あんなんマネしなくても直系の後継者だからそんなリスク背負う必要ないですがね」
必要もないのでマネする意味もないが。
「わかってるならいい。四条の娘とは好きにやれ。若者の色恋程度に四宮からは文句は言わせん」
「四条は自分でどうにかしろって事ですか。最初からそのつもりですよ」
最悪両方が敵になる可能背もあったためこれは朗報かもしれない。
もっとも最難関は四条の説得ではなくマキちゃんを惚れさせることかもしれないが。
「それじゃ。そろそろ失礼します。明日も学校なのでそろそろ東京に戻らないとまずいでしょうし」
「もう一局ぐらいしたかったが仕方ない。遅刻するなよ」
「わかってますよ」
後日、人員整理とかで左遷させられた人間が全員戦争強硬派なのはつまりそういう事だろう。
あのジジイ人をダシに使ったな?
意外とフランクな印象ある