四宮天羽の喜劇観賞 作:緋色
「お、おはよう」
「おはよう」
そう言って気まずそうに挨拶だけで別れる田沼と柏木ちゃん。
最近、いつもこんな感じだ。
だんだん疎遠になっていくのをそれとなく見る羽目になるこっちの気持ちにもなって欲しい。
「というわけで柏木ちゃんに詳しそうなお前らに話を聞こうと思ってな」
「親友の私たちに何でも聞いて」
巨瀬エリカ
大手味噌メーカー社長の娘。
重度のかぐやファンらしくかぐやを見るだけで倒れる。
「お似合いよあの二人は!」
「傾くぐらい無理しなくても……」
四条眞妃
四宮から分離独立し海外展開で四宮に迫る事業規模まで成長した四条グループの娘。
今回に関しては別に呼んでない。
「……ごめんなさい」
妃かれん
出版社社長の娘。
妄想力がたくましいらしく、よくわからない事を時々口走る。
「なんの謝罪?」
「……何でもありませんわ」
それで何でもないは無理があると思うが。
気にしないでおこう。
「で?あんたが口挟むことじゃないと思うけど?」
「マキちゃんの言う通りかもしれないが個人的には上手くいって欲しいからな。身近なサンプルとして」
「あんたら実は仲良くないんじゃ?」
「俺ちゃん個人としては普通に仲いいと思うが。俺ちゃん特例側の上澄みだから一般的な普通とはかけ離れてるのは否定できないな……」
一年の時は自活すると言って高校卒業まで一人暮らしするつもりだったが、あまりにもはっちゃけすぎたせいで(例:髪を虹色に染める)したせいでかぐやの住んでいた別邸暮らしになったわけだし、一般的な普通とやらを騙られたら生活価値観が違うから反論しにくいんだよなあ。仕返しに騙した黒野と綾部の髪も三色に染めてやったから恨んではいないが。
「俺ちゃんの事はいいよ。それより田沼とは上手くいってるのか?女子視点で見て」
「渚はいい子だし問題ないと思う」
「……そーよ。渚はいい子だし田沼君もいい子だから」
「無理しなくていいぞ?」
「無理してないわよ!」
「あ、意固地モード入ったな」
この二人は想像以上に当てにならないかもしれん。特にマキちゃんは田沼に惚れてたわけだし。
まあ今回は情報収取能力の高い妃ちゃんに話を聞きに来たわけだし、そっちはいいや。
「(で、実際のところどうなの?)」
「(どうとは?)」
「(この件であの二人が当てになりそうにないから聞いてるんだが?)」
「(天羽さんはどう考えて?)」
「(どっちも受け身気味だから長く続かないんじゃないかと思ってる)」
「(……それは)」
「さっきから何こそこそ話してんのよ」
「かれんまさか!?」
「違いますわよ!?」
なんか面倒な勘違いが発生している気がする。
「傷心中に付け込むのって外道なんじゃないか?って話だよ」
「私はそんなに簡単な女じゃないから!」
「…………………そだね」
「渚と田沼君の話よね?なんでマキちゃんが?」
「この子もしかして鈍感?」
「エリカはピュアですので」
「なんで目を逸らす?」
「っは!天羽様でも仮に別れて傷心中の渚に付け込むようなことしたら許さないからね!渚は私が守る!」
さらに面倒な勘違いが発生している気がする。
「落ち着けよ。別に俺は柏木ちゃん狙いじゃないし」
「渚にあーんとかしようとしてたじゃない!」
「マキちゃんにもしようとしてたけど?」
「渚が付き合ったからマキちゃん狙い!?」
「なんだろう過程が間違ってるのに結論は正解という微妙にやりにくい感じ」
巨瀬ちゃん天敵かもしれない。
「兎も角二人が付き合ってるんだから邪魔しちゃダメ!」
「邪魔する気はさらさらないんだけど……。初っ端がアレだから信用できないというか」
あれは田沼が彼女出来た時の事。
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「彼女ができた?おめでとう?俺の知ってる奴か?」
マキちゃんまさか告白したのか?
これに?
いや、本人の頑張りだし嫉妬するのは良くないな。田沼に根掘り葉掘り深堀するとして祝うのが正解か……。
「天羽君も知ってるよ。柏木さん」
「…………あー。ん?柏木ちゃん?えーっとどういう経緯?」
一瞬、脳の検索に引っかからなかった。
マキちゃんとよく一緒にいる柏木ちゃんか。田沼とそこまで関係近くなかったから無意識に除外してたか?マキちゃんを手伝うムーブはしてたがマキちゃんがマキちゃんだしそうなってもおかしくないのか?
「会長直伝の『壁ダァン』で付き合う事ができたんですよ!」
「『壁ダァン』?なんだそれ?」
「教えて差し上げましょう!」
「なんか調子に乗ってない?」
「ここに女性がいるとするじゃないですか」
「ああ」
再現のようなので推定柏木ちゃんで考える事にする。
「こう!」
――ダァン!
壁際に追い詰められた柏木ちゃん(妄想)付近に叩きつけるように張り手をし
「そして『俺と付き合え』」
怯える柏木ちゃん(妄想)に追い打ちをかけるように言葉をかける。
「って言って付き合う事ができたんですよ!天羽君もきっとうまく行くよ」
「……ああ、うん」
脅迫では?
「とりあえず柏木ちゃんにいくつか確認したいことができたぐらいには斬新な告白だな」
「会長直伝だから効果はお墨付きですよ」
「うん。秘伝っぽいからあまり言いふらすなよ?」
あとで庶民会長〆とくべきか?
それより柏木ちゃんに確認入れる方が先か……。
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あの後、柏木ちゃんに保護と田沼を〆ることは必要か確認したところ、驚いただけで付き合う事は別に構わないらしい。ただ普通に告白して欲しかったらしいが。
「『壁ドン』なんてまるで漫画みたいな告白だったのに……」
「有名なのそれ?」
俺は知らなかったけど有名なのだろうか?あとなんかニュアンスが違う気がする。
「一種の王道すぎて逆に見ないものかもしれませんわね」
「ふーん?シチュエーションがいいなら誰でもいい感じなのか?」
「人によるのでは?会長とかぐや様のように相思相愛ならきっかけとして」
「かれん妄想抑えて天羽様の前だよ」
告白は切っ掛けではない気がするがまあいいとして。
「相思相愛というか一方通行な片思い同士に見えるが。まあそれはいいとして。元から好感度高くないと告白として成功するわけないって事か。女子としてはありなの?」
「かぐやしゃまになら……」
「理想の殿方なら?」
「人によるんじゃない?」
なるほど。わからん。
「試してみるか」
「へ?」
――ダァン!
「きゃぁ!?」
(急に壁ドンとか馬鹿じゃないの!?顔近い!昔から思いついたことを即座に実行するの私じゃなかったら愛想憑かして)
「『俺と付き合え』」
「はうわ!?えっ!?」
(告白された!?私は四条の娘で顔近いしこいつは四宮の嫡男で意外と目が綺麗というか悪い奴じゃないんだけど声がぞくぞくするというか人目を気にしろって話なわけで四宮の正当な血筋として嫁入りとか婿入りとか違うそうじゃない「結婚すれば血統問題解決する」っていや結婚なんてえええええ)
「きゅぅ」
「あ、真っ赤になって気絶した」
「マキさん!?」「マキちゃん!?こういう時は救急車を!?」
「逆上せただけだと思うし保健室で安静にさせとけばいいだろ」
担架とかはないし腕力と体力の面から自分が運んだ方がいいか。
「ナチュラルにお姫様抱っこするとはやりますね」
「何言ってんのか知らんが騒ぐな」
そのまま保健室まで運んでその日はなんとなく解散となった。
――後日
「あ、マキちゃ――」
「にゃあ!?」
しばらく顔話合わせる度に逃げられるようになった。
どうしよこれ?
妃かれん「天羽さん」
巨瀬エリカ「天羽様」
四条眞妃「天羽」