ホワイトルーム出身の山内による綾小路清隆観察日記   作:チームメイト

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こうして観察日記は始まった

 突然の上層部からの呼び出しだった。

 

 俺が所属している教育機関ホワイトルームは、何があったのか、現在ほとんど休止中だ。待機命令が出ているのを良いことに、適当に課題をこなしつつも余暇をブラブラとラノベを読んだり楽しんでいたんだが、切り上げる羽目になってしまった。

 

 やばい。サボってたことがばれたんだろうか。

 いよいよ俺が追放される番が回って来たとかだったら困る。

 いきなり外に放り出されたら、どうやって生きて行けばいいのかいっちょんわからん。

 

 下手な博多弁は、読んでいたライトノベルがバレそうだ。

 

「何ですか、呼び出しって」

「山内君、喜びたまえ。君には新しい任務を与える」

「新しい任務って嫌な予感しかしないんですけど」

「大丈夫だ。君に拒否権はない」

 

 それって全然大丈夫じゃねえだろ。

 

「君には4月からとある高校に通ってもらう。そこで監視任務に就いてもらいたい」

「監視任務?」

 

 過去に教育と称してスパイめいたことをさせられたことがあったが、任務とは大げさな。

 いったい誰を監視しろって言うんだか。

 

「そう。綾小路清隆を監視し、場合によっては退学に追い込む。それが君の任務だ」

「はい?」

 

 綾小路清隆ってあいつのことだよな。

 ホワイトルームの最高傑作。

 何をやっても負けなしの天才児。

 

 ホワイトルームの落第生。追放ギリギリのデッドラインの攻防を生きる俺からしたら、もっとも遠い位置にいる男だ。

 

「あんな化け物の監視役なんて無理っすよ」

「君に拒否権は無い。様子を観察して報告する。誰でもできる任務だ」

「なら誰でもいいじゃないですか。なんで俺なんですか」

「君がホワイトルーム内でもっとも遠い存在だからだ。気づかれるわけにはいかない」

「あいつは人のことその辺のゴミとしか認識してないから大丈夫ですよ」

 

 2年前に、成績が優秀な生徒がいたのを思い出す。

 よせばいいのに綾小路につっかかり、勝負を挑み、負け続けた女子。

 綾小路さえいなければ1位だったのに、何をやってもずっと2位しか取れなかった生徒だ。

 たまたまとあるテストで同点を取った時に「どうだ」と並んだことを綾小路に伝えたら「誰だ?」と返されたという綾小路をホワイトルームで語る上では外すことのできない伝説だ。

 

 ずっと2位だった生徒。自分の名前の下に並んでいた生徒を綾小路は認識していなかった。

 2位だろうが最下位だろうが自分より下の敗者=ゴミでしかなかったのだ。

 

 心の折れたその子は徐々に成績を落としてしまって、ついには俺にすら抜かれて、デッドラインを突破してしまい退学となった。

 結構可愛かったのに、今は何をしているだろうか。

 

「ならば君でも問題あるまい」

「問題しかありませんけど」

 

 ホワイトルームも人材不足なのかもな。

 そうでなければ、俺がサボりまくってのんびりなんかできるわけないし。

 

「君は外の世界に出たいと言っていたじゃないか。外と触れ合えるいい機会だ」

「気の休まらない状況で外に出ても意味がありませんよ」

「とにかくだ。君に拒否権は無い。資料を用意したから読み込んでおくように。4月から君は監視役として任務をスタートする」

「んな、強引な」

 

 大量の資料を押し付けられるように渡された。

 

 資料の1枚目には今後の日程が書いてある。

 

「っていきなり明日が試験かよ」

 

 中学までの経歴はどういうわけかでっちあげられていた。

 ホワイトルームならそれぐらいやれるのだろう。

 

「適当に話して不合格になればいいんじゃね?」

 

 頑張ったけど無理でした。これなら言い訳として十分成り立つ。

 あとが怖いけど、化け物の監視役はもっと怖い。

 俺は試験に落ちることを目指して頑張ることを決めた。

 

 

 

 

 

   ◇◇◇

 

 

 

 

 二ヶ月後。

 

「俺は山内春樹。バレーのエースアタッカーだったけどインハイで怪我して今はリハビリ中だ。よろしくー」

 

 俺は、化け物と同じ教室にいた。

 

 どうしてこうなった。

 

 試験は小学生でも解けそうな奴だけ解いてあとは適当に埋めた。

 面接でも英語が得意です。APEC*1で900点取ったことがあります、と滅茶苦茶なアピールをした。

 面接官が苦笑いしているのを見て、これは落ちたと確信していたのに、しっかり合格していた。

 

 ホワイトルームが裏から手を回したんだろうか。

 いや、だったら最初から試験とか受けさせられたりはしないだろうし、謎過ぎる。

 

 受かったものは仕方ない。化け物の監視に勤しむしかないか。

 こうなってしまった以上、アホキャラなのはむしろ都合が良いのかもしれない。

 化け物もまさかこんなアホキャラがホワイトルーム生だとは思わないだろう。

 

 つかの間のシャバの空気を楽しんでやるぜ。

 お金代わりのポイントをたっぷり貰ったからな。

 

 こうして俺の綾小路清隆観察生活が始まった。

 

 本日の報告(表)

 対象は、無難過ぎる自己紹介をこなしていた。ホワイトルームの特異性は隠すつもりのようだ。

 

 本日の報告(裏)

 綾小路自己紹介に失敗してたわ、だせえ。

*1
アジア太平洋経済協力。正しくは英語能力テストTOEICの言い間違い。




毎日17時 20時30分の2回投稿予定です。
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