ホワイトルーム出身の山内による綾小路清隆観察日記   作:チームメイト

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夏休みの前半回想

 無人島、船上試験を終えて、学校へと帰ってきた。

 

 ポイント少ない勢としては、夏休みを持て余し気味なんだよな。

 

 夏休みは引き籠るのかと思いきや、ちょくちょく移動してるっぽいから観察も大変だしな。

 

 携帯機器の位置情報公開は、池のアホが綾小路にばらしたせいでオフにされちまったから、地道に足を使って観察するしかないってのもめんどくせえ。

 

 ちなみに、綾小路に知られた時点でその機能を隠す必要がなくなったから、櫛田を経由して広めてもらい、今ではオンにしている生徒の方が少数派になったみたいだ。

 櫛田が情報を独占せず、無事流してくれて良かった。

 

 朝晩の登下校をチェックすれば大体わかる平日と違って、夏休みに全てをフォローするのは難しいが、確認できたものだけでも日記に書いておくか。

 

 夜に女子の階層に向かっていた。

 部屋までは追えなかったが、おそらく下りた階から察するに堀北の部屋だと思われる。

 

 何があったのか非常に気になるが、強く警戒されていたため詳細は不明だ。

 大人の階段は登っていないと思いたいぜ。

 

 

 Cクラスの伊吹と休日に会っていた。

 たまたまらしいがたまたま会ったとしても、スパイを働いていた奴と一緒に行動する気がしれない。ああいうのが好みのタイプだったりとかしてな。

 伊吹じゃおっぱいが足らんか。

 

 ケヤキモールは入り口側から人気店が続いているので、奥に行けば行くほど人気は少なくなる。奥側のエレベーターは動いていることの方が少ないぐらいだ。

 

「……いきなり、変なチャンスが来るのかよ」

 

 その奥側のエレベーターに2人だけで乗り込んだ。どうすっかなぁ。

 エレベーターの動作に必要な制御機器はすぐそばの階段を上った先にあったりする。

 そこまでの間に監視カメラなどはついていない。

 

 動くだけ動いてみるか。

 

 急いで階段を駆け上がると制御機器を操作してエレベーターのコマンドを封じる。

 ホワイトルームで身に着けた技能を発揮すれば、こんなもんおちゃのこさいさいよ。

 

 これで中からは操作できなくなったはずだ。

 閉じ込められた密室で男女が2人きりというシチュエーションの完成だ。

 

 綾小路ならどう動くのか。

 

 

 

「……ち」 

 

 舌打ちしてしまった。

 特に面白いことは起きなかったようだ。

 

 いきなり訪れたチャンスに舞い上がってしまったが、よくよく考えてみたら、そりゃそうだ。いつ動き出すか分からないエレベーター内で何かする奴とか居ないか。

 

 こりゃ、大人の階段は登ってないな。

 そんなことが起きるのはエロ本とかAVの世界だよな。

 ファンタジーを現実と一緒にしたらダメじゃん。

 

 綾小路がAクラスの葛城と親しいらしいことが分かったのが収穫だ。

 

 にしても、葛城か。

 葛城といえば、誕生日を祝う予定なんだよな。池たちと一緒にな。

 

 

 

 

  ◇◇◇

 

 

 

 

 話は数日前に遡る。

 

 櫛田ちゃんの提案で、クラスメイトの井の頭心ちゃんの誕生日を祝うことになって、誕生日プレゼントを買いに行った。

 

 三バカ+綾小路でポイントを出し合って一つのプレゼントを買う形だ。

 ポイントの少ないDクラス生徒の苦肉の策って奴よ。

 

 残念なことにというかやっぱりというか、櫛田ちゃんはその場には居なかったが、あれだけ桔梗ちゃん桔梗ちゃんッと言っていた池が「集まった意味ないだろー」って騒ぎながらも、そこまで残念そうにしていなかったのは、心境の変化があったっぽいな。

 

 誕生日プレゼントに、篠原の好きなゆるキャラを選ぼうとするあたり、幸せの青い鳥に気づく日は近いのかもしれない。

 

 綾小路は全く知らなかったっぽいが、篠原の好みも井の頭の好みも、俺は把握している。職業病っつーか、観察する癖があるせいで嫌でも覚えてしまうってやつよ。

 綾小路も、ちょっとでいいからクラスメイトに興味持てよな。

 

「それって篠原の好みだろ。気になってんのか?」

「はあああ!?!? あるわけねーし、あんなブス」

 

 からかった俺も悪いが、そこまで全力で否定するなよ。

 騒ぐせいで、幸せの青い鳥が飛んでいったじゃん。

 

 よりもよって全力で否定するのを篠原に聞かれるあたり、池の幸せはまだまだ遠いのかもしれない。なんつーか、ご愁傷様。

 

 にしても「池なんて死ねばいい」はちょっときつすぎないか、篠原。

 

 

 葛城が出てくるのは、こっからだ。

 篠原が去ったあと、葛城が謎の人物に当てた誕生日プレゼントを選ぶのを見つけたのがきっかけよ。

 

 葛城の行為は、モテないことを誤魔化すために、自分の誕生日に自分へプレゼントを送ろうとしてるんじゃねえかってので、池と2人で変な盛り上がりをみせ、モテない仲間を救うために、葛城の誕生日も祝おうってなったわけだ。

 

 話の中で、葛城の動機に気づいたのは、俺が同じことをやっているからだ、みたいになっちまったが、俺は自分に対してプレゼントを送ったりチョコレートを贈ったことはない。つーか、ホワイトルームはそんなことが出来るような場所じゃねえから。

 周りにいるのは全員蹴落とす相手だから、見栄とか張る必要ねえし。

 

 ただ、まー、普通の学校で生活してたらやったかもな、ぐらいのノリだ。

 実際にやったわけじゃねえから、セーフだよな。

 

 綾小路の憐みの目とかマジねえから、誤解するんじゃねえぞ。

 

 ん? 憐れんでる……よな?

 

 俺の気のせい……うーん。

 

 

 

 なお、葛城の誕生日を祝ったら、なんか盛大に戸惑われたぜ。

 落ち着いて考えたら、そりゃそうだわな。さほど親しくもない他クラスの生徒がいきなり押しかけてきて、おめでとうとかねーよ。

 

 

 本日の報告(表)

 夏休みも相変わらず女子生徒とだけ交流を持っているようだ。こちらから連絡を取って男同士の買い物に引っ張り出したが、自分から連絡する男子生徒は少ないらしい。

 

 本日の報告(裏)

 クラスメイトの好きなものを知らないのは、鈍いからなのか興味がないからなのか。

 綾小路の感情って読みにく過ぎるから困る。

 

 俺は自分にプレゼントなんかやってねーからな、マジだかんな。

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