ホワイトルーム出身の山内による綾小路清隆観察日記   作:チームメイト

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やってはいけないことを知る

 ノルマはさっさと消化するに限る。

 

 いや、ノルマ扱いな時点でひっでー話だけど、告白する流れになっちまった以上は、深追いせずに告白してこの仮初の恋を終わらせてしまおう。

 

 巻き込まれただけの佐倉には申し訳ない。

 引っ張らずに終わらせるから、どうかおっぱいのように大きな心で許して欲しい。

 

 どうせ告白するのなら一石二鳥を狙うしかねーな。

 

 連絡先を教えてもらえなかった貸しがあるし、その消化も兼ねて綾小路を巻き込むことで、綾小路の気持ちに探りを入れてみっか。

 

 

 朝早くから綾小路への部屋に突撃して、強引に巻き込む。

 

『僕と付き合ってくれたら毎月ポイントを全部差し出す覚悟です。貢ぎます』

 

 よし、これで完璧にネタに走ったな。

 手書きじゃなくて印刷にしたあたりネタポイントが高い。

 

 オッケーされることは元からあり得なかったと思うが、これなら完全に失敗に終わってくれるっしょ。

 

 案の定、参考までにと読んでもらった綾小路からダメ出しを食らってしまった。

 

「…………」

 

 なんだ。普通に1学期の綾小路じゃん。

 三バカのやる事に呆れつつも、無愛想なりに付き合う奴。それが俺が1学期に見ていたホワイトルームとは違う観察対象の姿だ。

 無人島での堀北の強制リタイア。船上への軽井沢のマッチポンプ。特別試験中に見せた、まるでクラスメイトを駒のように扱う冷酷さは感じられない。

 

 観察対象に親近感を覚えるのはどうなのよって言われても仕方ねーけど、こっちの綾小路の方がなんか好きっつーか、ホッとするんだよなぁ。

 

 いや、待て、佐倉への告白で綾小路へ好意をもってどうする。

 

 相談するだけで済ませるつもりだったが、この綾小路ならもう少し踏み込んでも大丈夫っぽいな。

 よーし、綾小路経由でラブレターを渡すなんてしてみっか。

 今の綾小路に必要なのは、そういう日常イベントよ日常イベント。

 面白そうだから、なんて気持ちは8割ぐらいしかねえよ。

 

「なあ、校舎裏の伝説って知ってっか?」

「なんだ?」

「あそこで告ったら上手くいくって噂なんだぜ。だから、そこに呼び出すのを協力してくれよ。連絡先知らなかったの、これでチャラにするからよ」

 

 観察者をしていると自然と噂とかも集めるようになるんだよな。

 どうせだから一石二鳥どころか三鳥を狙うか。学園の噂の信ぴょう性ってもんも、知っておくのも悪くないし。

 

 綾小路に相談して書き上げたラブレターを綾小路に渡して貰う、と。

 堀北に殺されかけた恨みをチャラにするんだから、これぐらいやってもらわいなと釣り合わないってもんよ。

 

 巻き込まれる佐倉には本当に申し訳ないけどさ。

 

 

 

 

   ◇◇◇

 

 

 

「佐倉、可愛すぎだろ」

 

 目の前で繰り広げられた甘酸っぱすぎるラブコメに砂糖を吐きたくなったぜ。

 

 綾小路経由でラブレターを渡した結果。綾小路から告白されると勘違いした佐倉が、慌てふためく様子は、仮初の恋も本気の恋になりかねないぐらいの可愛さだった。

 

 うわー、それを目の前にして何も思わないかよ、綾小路。どんびきするぞ。

 

 分かったことは2つ。

 佐倉は綾小路に本気で惚れてるってことと、綾小路は今のところその気はないってことだ。

 佐倉の気持ちに気づいているのかいないのかは怪しいラインだけどな。

 

 が、どっちにしてもその気がないっぽいのならどちらでもいいだろう。

 そもそも、佐倉に対してその気があるのなら、ほいほいと告白のお手伝いなんかしないはずだから、そうだろうなとは思ってたけどさ、目の前で連絡役に徹せられると佐倉に同情したくなるわ。

 

 ま、仕組んだのは俺なんだけどさ。

 

 綾小路に恋人のできる兆しは無し、と。収穫収穫。

 

 あとは告白して振られるだけ、誰にでもできる簡単な仕事ってもんよ。

 

 

 

 

   ◇◇◇

 

 

 

 

 翌日。

 綾小路に見守られる前で、しっかり佐倉に告って玉砕しましたとさ。

 

 いやー、振られた振られた。これでノルマも終わったー。

 

 なんて軽い気持ちになるもんだと思ってたんだが、心が重い。

 

 告白への返事をする佐倉の足は震えていた。

 どれだけの勇気を振り絞ったんだろうか。

 ところどころ小声になったりはしたけど、はっきりと断りの言葉を告げてくれた。

 緊張に追いつめられて逃げ出したいけど、失礼なことはできないっていう佐倉の強さがそこにはあった。

 

『好きです』『ごめんなさい』『振られちゃったかー』

 この程度であっさり終わるもんだと思っていた、俺の予想は全くの的外れだったわけだ。

 

 佐倉の答えはノーだ。返事を何かしなくちゃな。

 

「ありがとな、わざわざ、直接言ってくれて」

 

 何とか言葉を捻りだしたが、はっきりと口に出来ていたのが自信がない。

 それ以上は何もできず、告白を断って、去っていく佐倉を見送ることしかできなかった。

 

「…………」

 

 うー、痛い。痛いな。

 

 無関係の佐倉を一方的に戸惑わせて、傷つけてしまった。

 

 

 佐倉、ごめんな。こんな告白で振り回してさ。

 気楽に考え過ぎてたけどさ、相手のことを考えない告白は、相手にとって負担なだけじゃん。

 

 観察のためとか、三バカの約束とか、理由をひねくりだしても、嘘の告白はやっていいことじゃなかったんだな。

 

 好きになるのは自由だけど、告白には責任が生じる。

 

 こんなことホワイトルームじゃ学ばなかった。

 俺も大人ぶってるけど、まだまだガキってことか。

 

「俺、全然本気じゃなかったんだな。本気の恋を探さないとダメだったんだ」

 

 池にどんな顔して偉ぶってたんだか。猛省するしかない。

 

「綾小路、巻き込んじまって悪かったな。ありがとな、お前が居なかったら何もできなかった」

「いいさ。友達……だからな」

 

 その言葉に俺は、どう返したのか覚えていない。

 まったく、観察者失格だな。

 

 

 

 本日の報告 (表)

 対象と親しい女子の間柄を探ったが恋愛感情ではないことが判明した。

 

 

 本日の報告 (裏)

 なんだよ。お前の言葉がこんなに胸に染みるって何の冗談だよ。

 

 お前は友達とか言いつつ、本当はそうじゃなかったりするんだろ。

 そうなんだろ、綾小路清隆。

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