ホワイトルーム出身の山内による綾小路清隆観察日記 作:チームメイト
俺に与えられた役割は観察だ。
場合によっては退学とか言われたが冗談じゃねえ。化け物を退学に追い込むなんて土台無理な話だろ。
もしそんな状況になったら逆に俺が退学に追い込まれるだけだろうから、そんな指令は下りないことを願いたいもんだぜ。
与えられた役割が観察だが、観察して終わりというわけにはいかない。
当たり前の話だが、観察し結果を報告する必要がある。
しかし、高度育成高等学校は外部との連絡を禁止されている。
インターネットのブログの更新程度は許される……らしいが、内部の情報を外に伝えるのはNGだ。おそらく学校側に監視されており、引っかかったら何らかの処分が下されるだろう。
暗号を使って伝えるという方法もあるが、毎回暗号を仕込んでいたらいつか怪しまれるに違いない。
学校側に怪しまれずに外部との連絡を取る方法を考える必要がある。
そこで、だ。
俺は、とある作戦を実行することにした。
「なあ、一緒にゲーム買いに行こうぜ、毎月10万ポイント貰えるんだし、使わないともったいないじゃん」
観察者の鉄則は周囲に馴染むことだ。
アホなお調子者設定の俺と波長が合いそうな男子生徒の池を見つけて、さっそく友達となっていた。ホワイトルームみたいに競い合う必要が無い友達は中々新鮮で楽しい。
お金にほとんど不自由しないというのがまたいい。
毎月10万円相当のポイントが貰えるとか、天国みたいな環境だぜ。
「まだだいぶ余裕あるし、いっか。行こうぜ。来月にはまた10万入るしな」
学園の敷地の外へと出られないということには変わりがないが、ホワイトルームの頃とは自由度が段違いだ。
放課後に遊びに行けるって素晴らしい。
綾小路の観察をしなくていいのかって?
一応何日か観察してみたが、あいつは友達作りに失敗しているおかげで、寮と学園を往復するだけだ。寮の部屋の中はシャットアウトされるし、放課後は見るべきところが無い。
観察してるのがばれたら終わりだから密着マークをするわけにもいかないし、放課後はたまにチェックしておけば問題ないだろう。
池と連れ立って家電量販店へと向かう。
ゲームを買いに家電量販店というのに引っかかったが、だいたいそういうものらしい。ゲーム機も電子機器の一種という扱いか。
馴染むためにシャバに慣れるのも大変だ。
「久々来たな。今、どんなの流行ってんだ?」
「知らねーのかよ。これだぜこれハンターウォッチ。モンスターを狩って素材を集めて強くなるのが面白いんだぜ」
こういうときに流行りものに強い友達がいると助かる。
周囲に溶け込むのが肝心なわけで、流行を抑えるのも観察者としては大事な要素なんだよな。
「んじゃ、本体と一緒にっと……2万ちょいだな。池はポイント大丈夫か?」
「舐めんな。半分ぐらい残ってっからいけるぜ」
おいおい、池はもう半分使ってるのかよ。
新生活のスタートってことで何かと入り用にしても、まだ10日も経ってねえのにどんだけだよ。月末までまだ半分以上あるぞ。
お調子者として結構散財してきたつもりだったが、上には上がいたな。
これは負けられない。もっと散財してアホキャラを押し広げなければ。
「へっ……俺はもっと余裕だぜ。このソフトをつけてもいけるぜ」
「お前生物の森とかやんのかよ」
「これも流行りものだろ?」
「俺はそういう系は苦手なんだよな、そっちは、付き合わねえぞ」
「無理に付き合えとか言わないって、ソロで遊ぶときに楽しむようってこった」
「ならいいけどよ」
こうして池と一緒にゲーム機とソフトを購入した。
ポイントは痛いが作戦は大成功だ。
大事なのは、生物の森の方だったりする。これこそが作戦の肝だ。
生物の森は世界中のどことでも同じサービスが提供されて繋がれるというのが最大の売りで、外部と繋がることが出来る。
インターネットは検閲されても、ゲームの内部までは検閲するのは意外と難しいらしい。あくまでもホワイトルーム調べなので検閲されない保障は無い。が、生物の森を指定してきたのはホワイトルームの方なので、これでバレて退学になったとしても俺に非は無いってこった。
なるべくバレにくいように、普段は通常プレイを心掛けてたまに情報を流すというプレイスタイルで行くか。
35000ポイントと引き換えに、こうして報告用のツールをゲットした。
本日の報告(表)
指令通りに生物の森を手に入れた。
対象は堀北という成績優秀な女子と交流を持っているようだ。目立つのを避けているのか大きな動きはない。
本日の報告(裏)
綾小路と堀北。ボッチ同士でしかつるめない二人がセットでクラスから浮き過ぎだからな。もうちょい馴染む努力しろよ。