ホワイトルーム出身の山内による綾小路清隆観察日記   作:チームメイト

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最後の試験、開始

 学期末試験も無事に突破した。

 

 2学期の中間テストの時に、予想していた通り須藤が体育祭の加点ボーナスに頼らずに最下位を脱出している。

 代わりに最下位に躍り出たのが池で、ついで俺だった。

 

 ボーダーラインまでは余裕があるとはいえ、ちょっと心配になる順位だ。

 須藤は必死に勉強して最下位を脱出したが、池はどうだろうか。

 

 俺には見守ることも応援することもできないんだから、頑張れよ。

 

 ま、特別試験ではない筆記試験なんてオマケみたいなもんで、本番はその後よ。

 

 特別試験、クラス内投票。

 

 これが俺が挑む最後の特別試験の名前だった。

 

 

「要は、不人気になるなってことかよ。完全に裏目じゃねえか」

 

 発表されたルールは、かなり不利なものだった。

 

 簡単に言えば、クラス内で賞賛する人、批判する人を選び、批判票と賞賛票を相殺して残った批判票がナンバーワンの生徒が退学という、クラスメイト切り捨て型試験だ。

 

 ほとんど強制的に1人が退学させられるとか横暴過ぎるだろ。

 茶柱の微妙な反応からも、かなり特例的な試験であることが分かる。

 

 なんでも今まで1年は退学者を出していないからってのが理由らしいけど、素直に信じる気にはなれないよな。

 

 どこかホワイトルームの匂いを感じたからだ。

 

「つーか、その方が自然なんだよなぁ」

 

 いよいよホワイトルームの介入が始まり、違和感のある試験が実施された。

 こう考えた方が自然だろ。

 

 俺の期限が3月で区切られていることからも、最後のチャンスが与えられたと考えれば辻褄があってしまう。

 

 単純な学力や身体能力では綾小路に勝つことなんて不可能だからな。

 綾小路に勝つとしたらこういう試験しかない。それがこのタイミングで、たまたま実施されたとか、俺の人生そこまで運に愛されてねえよ。

 

 運、どうこう言うなら、綾小路を倒せそうな試験であるけど、クラスとの距離を置いた俺にとってはクリティカルに不利な試験だから、ついてるわけでもねえけどさ。

 

「違うか」

 

 いや、下手すれば池や須藤がターゲットにされていたことを考えれば、俺が狙われるのはラッキーじゃん。

 一歩間違えたら親友を失うかもしれない試験とか、集中できねえし。

 

 おかげで課題はスッキリと整理できる。綾小路を退学にするのか、俺が退学になるのか。この2択のどちらかなら望むところってもんよ。

 

 須藤や池が荒れてるのをフォローしないとな。こういう投票は、冷静さを欠いた方が評判を落とす。荒ぶるのは山内だけで十分だ。

 

 高円寺はいけ好かない野郎だけど、こういうときの対処とか、冷静過ぎてやべえよ。

 目立ったのは失敗だったと思うが、ただの自意識とスペックが高いだけじゃねえんだよなぁ。好き勝手やっているようで、しっかり裏に計算が見て取れる。

 この高円寺を味方に出来れば──そんなの高円寺じゃねえか。

 

 無駄なものに時間を割かずに、現実的に取れる方法を考えないとだな。

 

 

 

   ◇◇◇

 

 

 

 放課後までに考えはまとまった。

 

 シンプルに徒党を組んで投票するしかない。組織票だ。

 戦いは数だよ兄貴。兄貴なんていないけどな。

 

 問題はどうやって組織票を作るのか。

 そして、その矛先を綾小路に向けるのか。

 

 この試験が厄介なのは、動くことにリスクがあることだ。撃っていいのは撃たれる覚悟のある奴だけって奴だな。投票を誘導するってことは、クラスメイトを陥れようとすることだから、反発を食らってしまうと逆にターゲットにされかねない。

 

 どうすっかな。

 

 動くことは決まっているが、いつどうやって動くのかが悩ましい。

 

 ここは、怖い人に相談してみっか。

 こういう時のために連絡先を交換してたしな。

 

 つーわけで、坂柳へと連絡を取ってみたら、あっさりと会うことになった。

 

「……相談しといてあれだけど、話が早すぎるのがこええよ」

 

 勝ちに行くには多少のリスクは覚悟の上だが、リスキー過ぎたかもしれない。

 

 

 

 

   ◇◇◇

 

 

 

「リスキーっつーか失敗じゃん」

 

 話し合いは終わった。

 

 坂柳がAクラスの票をまとめて俺が退学にならないように動いてくれることと、俺が退学にならないために、綾小路を狙うことが決まった。

 

 丁寧に櫛田ちゃんを利用するようにっていう指示付きだ。

 

「櫛田ちゃんか……櫛田ちゃんね」

 

 どうやって組織票のグループを作るのかで、人望が厚い櫛田ちゃんを使うことは考えなくはなかった。ただ、綾小路との関係性が読みれねえんだよなぁ。

 

 おっぱい揉ませて脅していたあたり、味方になってくれそうな気もするけど、表面上は仲良さそうにしているから困る。

 

 どっちにしても動いたらすぐに櫛田ちゃんの耳には入るだろうから、最初から引き入れた方がいいのか。

 櫛田ちゃんの人脈を避けてグループを作るとか絶対無理だしなぁ。

 

 ってのまで考えたら、坂柳の指示は的確だ。Dクラスのことをよく知っているし、見えている。

 

「ここまで知っておきながら、綾小路の名前は聞いたことがありますとか絶対嘘だろうが」

 

 誰を追い込むべきかで、俺は誰の名前も出していない。

 が、名前を出すまでもなく坂柳と話し合いの場にいたAクラスの生徒から、綾小路の名前が出てきた。

 地味で目立たないターゲットにするには、都合の良い生徒としてだ。

 

 俺の親友である、池とか須藤もターゲットにできそうなのに、そこを外してくるあたり、本当にDクラスのことをよく知っていやがる。

 

 なんつーか、Dクラスの情報筒抜けじゃん、怖えよ。

 

 体育祭の後で綾小路を呼び出しておきながら、名前を聞いたことがありますとか言い切るのとか超怖えよ。絶対嘘じゃん。名前を聞いてるどころじゃなく知ってるだろうが。

 

 どうすっかなぁ。

 

 行動の方針としては、これ以外が無いと思うぐらいに的確だけど、信用という意味では一切できない。

 

 唯一他クラスがクラス内の投票に介入できる要素として、他クラスの生徒に1票だけ賞賛票を入れることが出来るというのがある。坂柳は、Aクラスの票を集めて山内に投票すると約束してくれたが、証拠は残さなかった。

 信用してくれないなんて……とか言われたけど、出来る要素を示せや。

 

 坂柳の提案を選ぶべきだって気持ちと、選びたくないっていう気持ちのせめぎ合いだ。

 

「つっても、他にいい案もないんだよなぁ」

 

 櫛田ちゃんの人脈が広すぎるぜ。

 

 坂柳も信用できないし、櫛田ちゃんも信用できないのに、坂柳の指示の元で櫛田ちゃんを頼るってどんな構図だ。

 

 それ以外だと勝つ目が見えないんだから厄介すぎる。

 

 十中八九騙されそうだが、前向きに捉えるなら1割から2割程度は騙されずに勝てる。

 藁にもすがるってこういうことを言うんだろうか。

 

 追いつめられたら人間は、信用できない人間をも頼らないといけないんだろうな。

 

 結局、俺は坂柳の指示通りに、櫛田ちゃんに助けを求めた。

 

 裏切られたら負け。裏切らなければ勝ち。

 嘘つきの俺への当てつけみたいな分かりやすい試験になっちまったな。

 

 それも面白いって感じてるからいいけどよ。

 

 

 

 本日の報告(表)

 なし

 

 本日の報告(裏)

 信用できない櫛田ちゃん×信用できない坂柳のいやすぎるコラボだ。

 マイナス×マイナスでプラスになったりしねえかなぁ。




本日は1話のみです。
次回は明日の17時に。
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