「――――ハハッ、ハハハ! 見ろ、アラン! コロニーが落ちていくぞ! この戦争はオレたちジオンの、スペースノイドの勝利だ!」
何がそんなに面白いのか、俺の戦友はずっと笑っていた。
一年戦争。
人類が宇宙にその生存圏を広げ始めて、七十年ばかりが過ぎた頃。
地球から宇宙を支配し続ける地球連邦政府に対し、スペースコロニー・サイド3のジオン公国が宣戦布告。
ジオン側は新兵器『モビルスーツ』を実戦に投入し、圧倒的に数で劣るはずの地球連邦軍を圧倒した。
俺、アラン・ダレンも当時十六歳という若さと、モビルワーカーの操縦経験を引っ提げて志願兵となり、モビルスーツのパイロットとして従軍していた。
地球連邦政府は傲慢な圧制者だ。我々、宇宙の開拓者たるスペースノイドを棄民のように扱い、我々の自治独立の権利を否定しながら、搾取を続ける憎むべき敵だ。
俺はこの戦争が始まってから、いや始まる前からずっとそう教わってきたし、自身も地球連邦政府に対して反感を抱いていた。
だから、俺は友人たちと共にスペースノイドの自治独立を勝ち取るこの戦いに参加したのだ。一抹の不安と、それを掻き消すほどの高揚と、使命感を胸に抱いて。
自分たちならばこの悲しい歴史を変えられると、あの頃の俺は本気で信じていた。
それほどの力を、このモビルスーツという兵器は俺たちに与えてくれていたし、次々と報じられるジオン軍大勝の知らせは、俺にこの幻想が真実なのだと錯覚させるのに十分なものだった。
ブリティッシュ作戦が発動し、守らねばならないはずのスペース・コロニーが地球へと落下していく様をこの目で見るまでは。
地球の大気圏に突入し、煌々と燃え盛るコロニーが、地球の重力に吸われて落ちていく。
とてつもない質量を持つ赤い塊が、より多くの憎悪と怒りを乗せて、澄み渡った青い星に突き刺さっていく。
そして、いま地球に向けて落ちていくコロニー、アイランド・イフィッシュは、間違いなく数千万人が住んでいたコロニーだ。
住んでいた人たちはどうなったのか。全員を立ち退かせたところで、他のコロニーにそこまでの難民を養うほどの余裕はない。
まさか――――。
いま、こうして俺が呆然としている間にも、コロニーは地球に向かって落下していく。そうして、俺の見えないところで数えきれないほどの命が、跡形もなく消えるのだ。
なるほど、地球連邦政府は悪なのだろう。人でなしなのだろう。
だが。
ならば、こんな悪魔の所業を必勝の策だと宣い、実行する俺たちは何なのだ。
数億、数十億の命を一瞬にして奪い去る俺たちは、一体なんだというのか。
戦友たちが歓喜の声を上げている中、俺は自分の震える手をモビルスーツの操縦桿から離していた。
この宇宙には今、憎しみと怒りしかない。
モビルスーツを操り、自分の庭のように駆け回っていた宇宙が、今の俺には冷たく、恐ろしいものに感じられる。
そんな冷たさは、俺が持っていたスペースノイドの自治独立という浅はかな夢の熱量を、一瞬で奪い去っていった。